ロック・リー転生伝   作:六亭猪口杯

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遅くなりまして申し訳ございません。

例に漏れず捏造盛り沢山…特に第八班、ならびに下忍の解釈違いがある恐れがあります。

それでも楽しんでいただけましたら幸いでございます。




木の葉崩し

 

 

 

 

一瞬飛びかけた意識を取り戻して目の前に迫った砂を回避する。

 

「…危ねッ!」

 

さっきの声は我愛羅のもので間違いない…と、思うんだが視界にあるのは砂だけで姿が見えない。

 

攻撃が荒くなれば俺を捕らえられなくなるのは予選の時に嫌というほど見せたはずなんだけど…防御主体で俺に勝てると踏んでいるのだろうか?

 

回避しようとした方向に回り込もうとする砂の群れを見て移動先を無理矢理変更する。

 

不発に終わった追撃を発動させずに纏まり始める様子を見て思考を回す。

 

予選で砂の繭を使った時とは違う。

 

今俺がいる位置への攻撃って訳じゃなく回避先を潰す様に徹底している。

 

俺の行動を見切って先んじたってわけでもない。

 

見えてない状態で攻撃してるなら不発に終わろうと空振りするはず…それだけの速度で切り返しても相手の反応が間に合っている。

 

…少なくとも相手から視認できる位置に俺がいるのは間違いないな。

 

「箱入り息子が引き篭もりにランクアップ?笑えないね!」

 

挑発してみるが返事はない。

既に一尾を解放している…にしては威力も速度も足りていない。

 

予選時の半覚醒状態でも今より速かった。

 

今の攻撃は覚醒前よりも速くなってはいるがあの滅茶苦茶理不尽さを感じない。

 

まだ我愛羅の意識があるのはほぼ確定…今のところ回避するだけなら余裕だが…

 

「うざったい…!」

 

全体攻撃と重ねて回避先に襲いかかってくる砂の鞭を回り込むように走り抜ける。

 

幻術に掛けられて若干意識が朦朧としている様子のサスケが巻き込まれないように抱えながら。

 

範囲攻撃(我愛羅と幻術)を同時に重ねるのは反則じゃね?

 

 

俺は幻術への対策を終えていたからすぐに抜け出せた…或いは弾けた訳だが。

 

 

()()で幻術から抜け出すために必要な事は二つ。

 

一つ目、幻術だと100%信じ抜く事。

 

二つ目、自身のチャクラを意図的に乱し相手の制御を振り切る事。

 

 

一つ目の幻術だと信じ抜く必要があるというのは奪われたチャクラ制御を自分の手に取り戻すための第一歩でしかない。

 

基本的に幻術に掛かってしまった=自分のチャクラ制御を相手に握られているのと等しい。

 

そもそも幻術を掛けられていると気付けないなら解除が選択肢に上がらないんだから無抵抗で殺してください(まな板の上の鯉)ってなもんだ。

 

制御権を相手に渡していては対応しようが無い…それに気付いた上で相手の制御を掻い潜って僅かなりともチャクラを乱すのが一般的な解除方法で、そこからの綱引き(制御権の取り合い)は互いの力量次第な訳だが。

 

要は幻術を解くために重要なのは二つ目、チャクラを意図的に乱して相手の制御を振り解く方にある。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

他者からの解除は自力で解くのに比べれば容易い。

術者の意図していない方向からの奇襲になるからだ。

 

まぁ、以上の事からいつ来るか分からない幻術は初見殺し性能が高いぶっ壊れ忍術筆頭な訳だ…俺みたいなタイプ(術を使えない忍)にとっては鬼門である。

 

しかし逆に言えば()()()()()()()()()()()比較的簡単に対処出来る類のモノと言える。

 

更に今回に限れば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が存在する。

 

 

要は相手が制御出来ないレベルの量でチャクラを乱せば良いのだから、サスケとの試合中は()()()()()()()()()()()()()()()()幻術に掛からないようにしてしまえば良い。

 

 

月読(写輪眼)などの壊れ瞳術を除けば幻術の基本的な仕様は単純だ。

 

術者のチャクラを対象のチャクラに合流させて違和感を持たせない様に方向を変える事で無いものを有ると誤認させたりと対象の認識を歪める術理。

 

相手が普段の状態(チャクラの流れが正常)…戦闘時の()()()は除く…で、自身と相手のチャクラ量に大きな差がない場合に効果を発揮する術と言い換えても良い。

 

つまり八門を開いて()()()使()()()()で使えば両方の条件を満たす事(チャクラ量の差と制御を手放した状態)が出来ると言う訳だ。

 

一応この辺の仕様はガイ先生にも確認した事がある。

 

『…特殊な幻術、例えば血継限界によるものはチャクラではなく精神に直接作用するものも有るから油断は禁物だぞ?』

 

それに対象を一人に絞って仕掛けられた場合は術の強度が跳ね上がるから耐性に関しても過信はするな。

 

と念を押されたが、今回の様な対象を絞らない広域型(対象を絞らない無差別攻撃)なら弾くのは容易だった。

 

仮にそれで幻術に掛けられても何時もの制御を手放した本来の三門を開いた状態なら自動的に弾いてくれるという二段構えの対策。

 

まぁ、弾くのはともかく自動解除は賭けだったが。

 

そもそも三門まで開いた俺に幻術を成功させられる知り合いが居なかったから事前に試すことが出来なかったから仕方ない事ではある。

 

紅上忍なら…とも思ったんだけど俺、あの人と接点ないし。

 

ガイ先生のツテを辿ろうにも中々タイミングが合わなかったからぶっつけ本番になったのは幻術に対しては怖い部分だったが何とかなって何よりだ。

 

何はともあれ、そのせいで普段よりも経絡系に負荷が掛かっちゃったけど…俺まで幻術に嵌っていた場合、初手で始末されていた事を考えると必要経費だろう。

 

ゴリ押しにも程があるが俺の才能では正攻法での幻術への対策まで手が回らなかった…相手の足元だけ見て殴り合う練習の方はやってるが。

 

 

そうこうしている間にも地面に当たって散らばった砂が再度纏って新たに攻撃に加わる。

 

物理的に消し飛ばされない限り無限に再利用出来る制圧攻撃…ちょっと羨ましいぞこの野郎…!

 

「…うちはくん、そろそろ起きて!」

 

流石にそろそろ起きてもらわない(素面になってもらわない)と不味い、と抱えた腕からサスケに柔拳(弱)(チャクラ)を叩き込んで無理矢理幻術から抜けてもらう。

 

「っ…何なんだ一体!?」

 

幻術が解けたサスケを抱えたまま砂の余波を回避したり弾いたりと防御しているとその間に周囲を確認して問いかけてくる。

 

「俺だって知らないよ!もう動けるよね!?」

 

嘘をつくことに少し罪悪感を覚えるが表面には出さずに言い切る。

 

「片手が塞がってちゃやり難いんだけど!」

 

勢いのままサスケへ話し続ける。

 

「あ、あぁ…」

 

大丈夫だ、と続けたサスケを観覧席に向かってぶん投げた。

 

「何すんだテメェッ!?」

 

「とにかく襲撃を受けてるのは間違いない!ナルトくん達と合流して迎撃して!」

 

投げたサスケが更に何かを言いたげにしていたが攻めてくる砂の津波に遮られる。

 

範囲外になる様に高く放り投げたとは言え目もくれないか。

 

我愛羅の狙いは俺だけ…ならまだマシだな。

 

空中のサスケには目もくれずに殺到する砂を弾き飛ばしながら周囲を見渡すと会場は大混乱の最中だった。

 

幻術を併用した奇襲…あくまで幻術は耐性のない弱者に効けば良い程度のものなのか掛かっていない忍も多くいる。

 

現時点で行える俺の唯一の幻術対策…八門を使用することで通常時とは比べ物にならないチャクラ量で体内のチャクラを乱し続けるという力業で対処できるレベルでしかない。

 

上忍クラスや一部の中忍、下忍も弾いているのを見るにそこまで強力な術者ではない。

 

しかし、幻術だけなら素面の人達がいるからどうとでもなるがそこに襲撃者が追加されているのが悪辣だ。

 

観客の大半が幻術に掛けられて足手まといに成っている今、防衛の手が足りていない。

 

暗部としてはVIP以外はどうでも良いんだろうが他の中忍、上忍の方々にとっては防衛対象がいる中での対応を求められる。

 

流石にこの状況じゃ此方に増援を送るのは無理だろう。

まずは観客、何よりも大名達を逃さなければ不味い。

 

観覧席に居る上忍が迎撃、中忍と思われる忍達が幻術を解いて下忍は避難誘導と護衛に回っているが…人手が足りていない。

 

離れた場所に居て状況を確認していた審判役の忍がこちらに目を向けたのに対して口を開く。

 

「こっちは気にしなくて良いです!」

 

我愛羅は会場を覆う砂嵐以外は観客に手を出していない。

 

自身は未だ姿を見せていないものの主に狙われているのは俺だけで、観客席の方へは一度も攻撃していない。

 

俺は大勢を守りながら戦うのには向いてないから主に狙われてるのが俺だってのは良いニュースの一つだ。

 

悪いニュースは周りの人達への被害を考えると本気で動けない(これ以上は八門を開けない)事…一尾まで視野にいれるとどっちにしろこれ以上は使えないが。

 

プラマイギリマイナスか?いや、一尾のせいで死人が出ると次代の風影が弱体化どころの話じゃなくなる可能性が高い。

 

原作でも散々殺してたがアレは我愛羅個人で行ってたからギリ許容されてただけで流石に尾獣を使って大量虐殺したら影を継ぐどころじゃないだろう。

 

…我愛羅抜きの砂隠れの里とかルーの無いカレーライス見たいなもんだからプラスだと思おう。

 

そんなことを考えながら回避、審判への流れ弾を螺旋掌で散らしながら叫ぶ。

 

「行ってください!」

 

この状況で手の内も知らない人と協力しながらってのは難しい。それならまだ一人の方が戦いやすい。

 

人手が足りない今、人員が必要なのは俺ではなく観客席の方だ。

 

「俺なら一人でも何とか出来ます…でも他の、人達はそうじゃない!」

 

続けた俺の言葉を聞いて一瞬考えた審判は

 

「…無茶はするなよ!」

 

と一言発してテロリスト共の方へと跳んでいった。

 

よし、後は我愛羅をなんとかして引きずり出せれば…

 

次の行動を思案していると見知った影が砂嵐を突っ切って飛び込んできた。

 

「…うちはくん!?」

 

何してんだ!と口にするよりも速く俺の背後に迫った砂に蹴りを加えていた。

 

「まだ俺との決着がついてないだろうが!」

 

こんなもんに邪魔されてたまるかよ!と写輪眼を発動して周囲を索敵するサスケ。

 

ナルト達のもとに行くよりも単体で我愛羅とやり合っている俺の方が危険と判断したんだろうか。

舌打ちしながら俺の背後に迫る攻撃を防ぐサスケは昔のネジを彷彿とさせる。

 

まぁ、索敵してくれるのはありがたいんだけど…いや、もう言い聞かせる時間も惜しい。

 

会話してる間にも休みなく襲い来る砂を弾きながら考える。

 

サスケとツーマンセルか…信用できるだけの実力者だとわかっているが、即席で何処まで戦える(俺はコイツを守り切れるだろうか)

 

不安になる心(傲慢にも程がある考え)を抑えつけてサスケへ忠告する。

 

「…気をつけて!三次選抜予選の時とはまるで別物だ!」

 

最初の攻撃の時よりも明らかに砂の量が増えている。

 

既に三次選抜予選の二倍、いや三倍に成ろうかという量だ。

 

既に試合会場の地面は砂にまみれている…このままだと埋め尽くされる可能性もあるが現状では止めようがないのが歯痒い。

 

 

「分かってる!」

 

「…なら少しの間、頼むよ!」

 

 

態々此方に残るなんてバカな選択を取ったんなら遠慮なく頼らせてもらうとしよう。

 

楽勝だ!と返しながら俺への攻撃を迎撃し続けるサスケから視線を切って観覧席へ声を掛ける。

 

「ネジ!テンテンさん!」

 

観覧席にいた二人に届くように声を上げる。

用件を伝えるより先に答えが返ってくる。

 

「少し待て!……邪魔だ!!」

 

何時になくキレているネジが目の前の忍に応戦しながら答えた。

 

「何なのよもう!やり難いったらないし…ネジ!!」

 

これまた苛ついた声で返答するテンテンがネジを上手いこと壁にしながら苦無で応戦しているのが目に入る。

 

テンテンから投げられた自身の背後に迫る苦無を目もくれずに回避するネジ。

 

突然現れた苦無が襲撃者に刺さり身を捩ったところに柔拳が突き刺さる。

 

一人無力化に成功したのを見て他の下忍仲間に視線を向けると、ヒナタさんの白眼組とナルト、サクラ達下忍組が其々襲撃者と戦っているのが見えた。

 

「…リー!少しの間耐えられるか!?」

 

こっちを片付けたら手伝ってやる!

 

と返答してくるネジに

 

「舐めんな!…って言いたいところだけど早くしてくれると助かる!」

 

ちょっとジリ貧だわコレ!と叫び返しながらサスケと迎撃をバトンタッチ。

 

今のままでも負ける気は一切しないがサスケはともかく俺には時間制限がある。

 

無限湧きの砂相手に持久戦させられるのは不味い。

 

(三門まで開いたのが数分前…本気でやるなら後十分以内に我愛羅を引きずり出さないと間に合わない)

 

砂を弾き飛ばしながら周囲を観察するが相変わらず我愛羅の姿は見えない。

 

「うちはくん、その辺に我愛羅とか隠れてるやつとか居ない!?」

 

背中合わせになりながら正面に迫る砂の壁を連打で散らす。

纏わりつこうとする砂をチャクラの流動で吹き散らしながら問いかけるが

 

「見当たらないな…写輪眼(俺の目)じゃ透視は出来ないから物理的に隠れられてると分からない!」

 

苦無や起爆札、体術を駆使して砂を迎撃しながら難しい顔になるサスケに

 

「それじゃ仕方ない…暫く持久戦だね!」

 

気合い入れてよ、と答えながらチラリと観覧席に居るネジへ目を向ける。

 

…ネジとテンテンは互いを上手く利用しながら相手を徐々に無力化させていっているが他の連中(ナルト達)は戦いにくそうにしている。

 

無理もない…狭い場所で普段組まない奴らと同じ場所で戦う事になってるんじゃ互いの術や戦法が干渉してしまうんだろう。

 

さっさと離れていつもの二人組を作ったネジとテンテンが援護に回ってるのがちょっと異常なだけだ。

 

それならもう一人の特級戦力(カカシ先生)は、と目をやると。

 

他の観客席へ走るカカシ先生を見つけた。下忍のブロックはナルトやサクラに任せて他のブロックを救助しに行ったのか。

 

その判断を否定するつもりはないが我愛羅を単体で何とか出来そうな一人が消えた事に内心で歯噛みすると同時に思考を回す。

 

こっちにネジが来てくれれば白眼で確認出来るんだけど…

 

(今観覧席からネジが抜けたら戦線が崩れかねない)

 

純粋に前線を張れる戦闘タイプの忍がネジとナルトしか居ない観覧席では押し返し始めて居るものの片方を引き抜いたらどうなるか分からない程度の戦況に見える。

 

やはりサスケに観覧席へ行ってもらうか…?

 

…いや、無理だな。

 

少し話しただけでわかるレベルでプライドの高いサスケがネジと交代してきて、なんて言葉に素直に頷くとは思えないし…

 

無い物ねだりで思考が空回りそうになったのと同時に状況が変わる。

 

「…我愛羅!」

 

「作戦を忘れるなよ!」

 

砂隠れの二人組…カンクロウとテマリが視界の端に並び立つ。

 

増援か…面倒な事に成った。

 

純粋に三対二では人数差から不利だし此方は即席チームだ。

 

我愛羅さえ抑えられれば残りの二人は瞬殺出来るだろうが肝心の我愛羅が見当たらない。

 

内心で歯噛みしていると隣から怨嗟の籠もった声がする。

 

「テメェら…」

 

ギチリ、と歯が鳴るほど噛み締めたサスケが視線を周囲に向けて呟く。

 

「最初からこれが目的かよ…!」

 

サスケの視線は観客の援護と避難誘導をしている忍達を見ていた。

 

…今の所ぱっと見た感じ忍の数は互角。手練がいるところでは押され気味だがその他では戦線を維持できている様に見える。

 

さてどうするか…と頭を悩ませているとザザッと音を立てながら立ち上がった砂の塊が色づいて行く。

 

少し意外だ…このまま姿を隠した状態でハメ殺すつもりかと思っていたんだけど。

 

「…消えろ。手を出したらお前らも殺す」

 

色づいた砂の塊から現れた我愛羅が俺を睨みつけながらそう宣言する。

 

余程自分の手で殺したいのか仲間に対しても殺気をばら撒く我愛羅。

 

「で、でもよ我愛羅…」

 

作戦は、と言いかけたカンクロウを咄嗟に抑えるテマリ。

 

「…分かったよ。ソイツが片付いたら、だね?」

 

テマリが恐る恐ると言った口調で我愛羅に提案するのを見て無意識に口の端が歪むのを抑えきれなかった。

 

当たり前な話だが知識として知っているのと実際に目の当たりにするのとでは全く違った。

 

今も尚観客席で戦う忍達(仲間達)を見て、そこに倒れる人達を見て心にじわりと黒い感情が溢れていく。

 

この上で俺は三代目様を見捨てる事になる。

テンテンが慕っている、俺も世話になった恩人を。

 

…一体何様のつもりなのか。命の選別をしてる、神様気取りか?

 

心の内から囁いてくる声が俺を絡め取ろうとしてくる。

 

(…落ち着け。今やるべきは嘆く事じゃないだろう)

 

幻聴を振り払う様に頭を軽く振って思考を回す。

 

三代目も、他の人達も。

 

"俺が助ける"だなんて傲慢な考えを持って良い様な人達じゃない。

思い上がるなよ…俺は俺に出来る事をやるんだろう?

 

『多少の障害なんて踏み潰してやる』

 

試合前に嘯いた言葉が叱咤してくる。

 

(後悔は全てが終わった後でいい)

 

これからの障害を乗り越えられるかどうかは今まで積み重ねたものが応えてくれる。

 

静かに呼吸を整える。

 

修行の時と同じ様に。

 

…少し冷静になった所でこれからどうするべきかを考える。

 

少なくとも最悪の状況は免れた、と思う。

 

我愛羅の言葉に反応したテマリ達の様子を見るに最悪のパターンは免れた。

 

我愛羅達相手に二対三はネジとじゃなきゃ無理だっただろうから。

 

頼れる仲間を思い浮かべて少しだけ冷静になった所でサスケの様子に気を配ると。

 

剣呑な光を放つ写輪眼と目が合った。

 

(不味いな…頭に血が上ってる)

 

俺も冷静とは言い難いが今のサスケを見て少し頭が冷えた。

 

こんな所で怒りに任せて呪印を使われたら状況が悪化するどころの話じゃなくなるぞ…!?

 

目が合った俺を睨むサスケを落ち着かせるにはどうする?

 

…丁寧にやってる時間は無い。

しょうがない…自分よりキレてるやつを見れば逆に落ち着く方式で行こう。

 

「落ちついて…ってのも無理な話だろうけども」

 

冷静な判断が出来ないなら邪魔だから下がっててくれない?

 

どの口が言ってんだか、と自嘲しながら冷水を浴びせるように伝える。

 

「…は、こんな時でも上から目線かよ」

 

そう言いながらも少し落ち着いた声で返答するサスケ。

…これは余計なお世話だったかな?と思いつつ答えを返す。

 

「そりゃ一年先輩だからね」

 

自分の感情を出さないように軽口で返すが…

 

「…アンタはなんとも思ってなさそうだな」

 

この状況でもそう言えるのかアンタは。

 

そう言いたげな、不満を隠しきれてないサスケを見て少し頬が歪む。

 

「アンタにとっちゃどうでも良い事なんだろうが」

 

俺は、お前に勝つために…と言葉をのみ込む。

 

その気持ちが、分からないわけがない。

 

強者に勝つために磨いてきた牙を、通用すると確信できたソレを突き立てる機会を邪魔されたのだ。

 

例え敗色濃厚だとしても勝敗が決する前に水を差された。

 

ネジに挑み続けてる俺が、何も思うところが無い訳がないだろう?

 

だから、その言葉には異議を唱えさせてもらう。

 

「…そんなわけ無いでしょ」

 

冷静であろうとしてはいるものの、不甲斐ない自分と思い上がりへの怒りで内心は荒れ狂ってるのだから。

 

そんな内心を押さえ込みながら話し続ける。

 

「取り敢えず暴れ回りたい位には精神にキてるよ」

 

そうするとこの先どうにもならなくなるからやらないだけで。

 

続く言葉を飲み込んで先程舐めた口叩いたテマリ達の方へ向き直る。

 

「…そう言えばさっき、面白い事を言ってたね?」

 

目が合った二人がピクリと肩を震わせた。

…心配しなくても今、お前達の相手をするつもりはない。

 

でも少し意趣返し(八つ当たり)はさせてもらう。

 

「"ソイツ()が片付いたら"…ね。あまり舐めた口を叩くなよ砂隠れ」

 

無意識に力が入った指からゴキリ、と音が鳴った。

 

「合同試験にかこつけて奇襲しなきゃ殴りかかれない様な腰抜け共に」

 

青く揺らめくチャクラが紡ぐ言葉に呼応する様に猛り始める。

 

間近にそれを見たサスケが思わず、といった顔で一歩下がった。

それを一瞥して話し続ける。

 

「挙句の果てに俺に一度負けた奴を担ぎ出して、それに怯える様な奴らに」

 

俺の陰に隠れながら印を結び始めたサスケに木の葉で使われている一般的なサインを送りながら。

 

「俺が…()()が負けるって?」

 

将来の同盟相手といえど現状はただの敵でしかない。

少なくとも一発は殴らせてもらう。

 

「お前ら全員、タダじゃ帰さねぇよ」

 

猛るチャクラの奔流を体内に収めるように循環、身体能力を更に引き上げる。

 

苦々しい顔になった二人は観客席の方へと飛び上がった。

追撃は…しない方が賢明だな。今の我愛羅に背を向けるのは不味い。

 

先の会話通り戦闘には参加せず、我愛羅を見守る形だろうし。

 

最終的に一尾を出すことを考えれば妥当。彼奴等の役割としてはストッパー兼舵取りなんだろうが…対象にビビってる時点で力不足感は否めないな。

 

何はともあれ問題はこっちだ。

 

改めて我愛羅に視線を向けると俺の言葉を聞いて口が裂ける程の凶笑を浮かべた我愛羅が今まで以上に大量の砂を操り始める。

 

会場を覆う砂嵐を維持しながら会場に散らばった砂を一つに纏めていくのを見てサスケが飛び出した。

 

俺の思っていたタイミングとは違うが…即席ならこんなものだろう。

 

後は俺が合わせれば問題無い。

 

サスケの影に入るように砂の波を駆け抜ける。

 

「くたばりやがれ!」

 

火遁・業火球の術を発動したサスケが攻め込むのと同時に我愛羅の後ろへ回り込む。

 

「五月蝿い蠅だ…!?」

 

サスケの火遁が自動防御の砂の盾に当たって視界を防いだ。

至近距離で炸裂した炎の壁は砂を焼き焦がしながら霧散していく。

 

我愛羅にダメージは無いが一瞬だけ俺達を見失った。

 

「獲った!」

 

砂の盾を迂回して回し蹴りを仕掛けたサスケが声を上げる。

 

「いや、まだだ!」

 

重りを取った俺と同等の速度。

初見なら我愛羅にも通じただろうがそれは既に見せている。

 

ガチリ、と砂に阻まれた足を起点に二段蹴りを行なって無理矢理離脱するサスケ。

 

我愛羅の意識がサスケに向いた瞬間に懐に潜り込んで浸透勁(柔拳モドキ)を叩き込むが…

 

「チッ…ハズレか…!」

 

既に身代わりと入れ替わった後の砂塊を殴っただけの結果に終わった。

 

実体を持った分身体を作る影分身の亜種…身代わりの術も併用してるっぽいけど。

 

実体を持った分身はチャクラのみで形成せずに他のものを核に使うためチャクラの消費は少なく、分身の術と違って実体がある分見分け難い。

 

核になる物質に自身のチャクラを浸透させなければならないと言うデメリットはあるが…この場には我愛羅が操る砂が掃いて捨てる程あるからな…

 

砕かれた砂分身とは別の場所から生えてきた我愛羅が嗤う。

 

「俺の邪魔をするなら諸共に死ね!」

 

その言葉通り、狂った量の砂を操る姿を見て疑問が湧いてくる。

 

一尾の精神が表に出始めている兆候すらない…素面とは言い難いが我愛羅が主体で間違いなさそうだ。

 

(一尾を出さないのか?)

 

最初の目論見は原作では語っていなかったが…我愛羅を連れ出しての木の葉崩しなら一尾を使うのが一番手っ取り早いはず。

 

確実性を取るなら速攻で一尾を解放、暴れ散らかして終いだ。

その後は会場から里まで進撃すれば里の混乱は必至。

 

対応に回れる手練が足りず、被害は更に拡大するだろう。

 

それなのにやらない理由は…

 

目が合った我愛羅から濃厚な殺意を向けられる。

 

「…なるほど」

 

一度負かした俺を()()()()()()()()()、と。

 

納得出来るような出来ないような…と思考を回しながらチャクラの回転に巻き込んだ砂を散らす。

 

殺意満点で執着されるのは御免被りたいところだがこの場において我愛羅に一尾化する気が無いと言うのは明確なメリットだ。

 

上手くすれば避難が間に合うかも知れない。

 

先程の会話をみるに多分初手で一尾解放ってのが作戦だったんじゃないだろうか。

 

それを我愛羅が無視して今の状況に成ってるんだろうが…まぁ分からなくもない。

 

この時期のカンクロウやテマリでは我愛羅に自分の意見を聞かせるのは無理だろうし、無理矢理停止させられる上忍の姿もない。

 

そういえば砂隠れの上忍の姿が見えないのが少し気がかりではあるが…何処で何をしてるんだ?

 

そんな事を考えながら我愛羅へと殴りかかると同時に

 

「おい、お前アイツに何かしたのか?」

 

尋常じゃない殺気だぞ?と軽口を叩くサスケ。

…もう冷静になってるな。

 

熱しやすいがその熱を制御できる精神性は美点である。

イタチやうちは一族とナルト周りは除くが。

 

そんな事を考えながらこちらも軽口で返す。

 

「うちはくんも観てただろ?一ヶ月前に正面から殴り勝っただけだよ」

 

一ヶ月の間片腕をくれてやったってのにまだ足りないらしい。

 

そう続けると少し引いた表情で俺を見るサスケ。

 

「いや、それだけじゃないだろ絶対…」

 

そんな会話を続けながらも攻撃の手は緩めない。

 

予選時の様に我愛羅相手に戦うなら自動防御が反応しきれなくなるまで攻め続けるのが正攻法だ。

 

砂を防御に回さざるを得ない状況を作り続けないと回避しきれない物量で押しつぶしてくるからそうならざるを得ないんだけども。

 

今回は防御用の砂を残しても余裕が残るレベルで大量の砂で守りを固めつつ視界を確保、こちらの攻撃を少しでも緩めると防御に回してる砂まで相手の攻撃に加わって面制圧を連打してくると言うクソゲーっぷりに磨きをかけてきている訳だが。

 

…結果論になるけどサスケが此方に来てくれているのに助けられている状況だな。

 

大量の砂が存在するこの場において、我愛羅の強さは予選時を大きく上回る。

 

それでも攻撃の手数が増えたお陰で三門状態でもワンサイドゲームにならないで済んでる。

 

予選時とは比べ物にならない大量の砂の攻撃を避けながらという悪条件に磨きが掛かってはいるが、相手の防御方法が然程変わっていないのは(自動防御と絶対防御がメインなのは)救いだな。

 

砂分身と身代わりを併用してるから面倒くささは増しているが…攻略法は然程変わらない。

 

現状なら俺とネジの二人がかりなら問題なく勝てるレベルの相手だ。

 

ではサスケとの相性はどうかと言うと…

 

「即席にしては悪く無い連携だ」

 

素の身体能力が同程度だから合わせやすい。

 

サスケからすれば俺は速すぎるだろうけど俺から見れば慣れている速度。

 

俺がサスケに合わせるのは簡単である。

 

「手ぇ抜かれた状態で言われても、な!」

 

悔しさの滲む声に言い返す。

 

「そりゃ今の俺にうちはくんが合わせるのは無理な話でしょ」

 

出力が違いすぎる。

 

大元のチャクラ量はサスケの方が上だが俺は休門(第二門)…今は生門(第三門)だが…まで開けてしまえば一時的には素のガイ先生と同等の身体能力を得られるのだから。

 

サスケも千鳥を使えば拮抗するだろうけど…あの状態で連携が取れるほど習熟してないだろ君。と呆れたように呟いて。

 

「ネジでも難しいんだから尚更だよ」

 

話してる間にも襲ってくる砂を拳で弾く。

 

パンっと空気が弾ける音と共に砂が舞った。

 

この状態の俺なら本気で振るえば素の拳でも軽く衝撃波が出る。

 

飛距離もダメージも理想(ガイ先生)に比べればまだまだ足りてないから披露するのは恥ずかしい限りだが。

 

現状の脳筋式の遠当て(正拳の余波)は薄い先端部なら我愛羅の砂を砕けるのが分かったから取り敢えず満足としよう。

 

一人で迎撃と攻撃をしなければならなかった予選時では隙が大きすぎて試せなかったが…二人がかりならその隙を埋められるし、何より援護にはうってつけだ。

 

傍目から見れば拳が消えた様に見える…と言うレベルまでは行かないものの、目で追えない速度に成った正拳突きを振る度に空気が弾ける音がする。

 

それを見て何かを言いたげな顔になるサスケ。

 

何か問題でもあった?と聞こうとした時。

 

 

「…我愛羅!流石にこれ以上は待てないよ!!」

 

 

さっさと片付けないと不味いじゃん!と言う声が会場に響き渡る。

 

「…無責任な奴らだね」

 

そんなに急かすなら自分でやりゃ良いのにさ。と我愛羅に笑いかける。

 

頼る相手にビビってる状態で言う事聞かせられる訳ないじゃん。と内心で呆れながら。

 

手なづけてもない獅子が人の言うことを聞くか?って話だ。

 

自分よりも弱く、自分に怖がっている生物(雑魚)が出す指示なんて無視するに決まってる。

 

そんな生き方を人間社会でやったら村八分待ったなしだが…恐れられ、疎まれるのが日常の我愛羅にとって自分より弱い奴等の言う事を聞くメリットが存在しない。

 

…そう考えると本当にナルトは奇跡みたいな存在だな。

『逆だったかもしれねぇ』は初期我愛羅にも当てはまるし。

 

そんな事を考えていると

 

「雑魚が喧しい…」

 

姿を現わしてから初めて俺以外を睨みつけながら発した言葉に珍しく意見が合ったな、と目を瞬かせる。

 

「…降参するなら一発で済ませてやるけど?」

 

軽口交じりに問うが返答は砂の津波だった。

 

「交渉決裂ね」

 

じゃあしょうがない!とサスケを担いでトップスピードで津波を迂回、右方向に投げるよ。と合図を送ってからぶん投げる。

 

「…無茶苦茶な奴だな!?」

 

写輪眼で速度に順応していたサスケが地面に落ちると同時に跳ね返る様に我愛羅に向かって飛び込む。

 

「邪魔だ」

 

自動防御の砂の盾がそれを防ぐ。

 

「噴ッ!」

 

そこに正面から突っ込んだ俺の拳が突き刺さる。

 

「その手はもう食わない」

 

途中まで無抵抗に俺の拳を受け入れた砂の盾が腕に絡みつき、包み込むように衝撃を受け止めた。

 

攻撃をただ防ぐのではなく受け流す技術を取り入れつつある事に舌打ちが漏れる。

 

器用な真似してくれるじゃん…!

 

「砂縛柩!」

 

そんな俺に構わず包み込んだ砂で拳ごと右腕を圧砕しようとしてくるが

 

俺式柔拳・改(なんちゃって逕庭拳)!」

 

拳からチャクラを放出、二の腕ごと固めてこようとする砂を散らしながら腕力に物を言わせて引き抜く。

 

なんちゃって柔拳の応用、チャクラを内部に徹すのではなく外部を叩く様に放出する事により砂を押し退けながら離脱しつつ我愛羅の戦力を再度上方修正する。

 

二方向からの同時攻撃を防御しても十分防ぎきれるだけの砂…

 

 

()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

我愛羅(強者側)が雑魚相手に態々勝つための手段を用意して来たという事実に、強い奴は慢心しててくれよ…と辟易しながら再度距離を詰める。

 

既に試合会場に安全圏は存在しない。

 

攻撃の手を緩めず、相手に防御を強制させないと巻き添えで観客席まで被害が行きかねないレベルに成りつつある。

 

「無事か?」

 

攻撃と迎撃の手を緩めず先程無理矢理引っこ抜いた拳から滴る血をみて確認してくるサスケに

 

「無傷…とは言えないけど戦闘に支障は無いよ」

 

軽く手を振りつつ返答しながら考える。

 

三門状態じゃ時間稼ぎが精々だな…身体能力で押し切れる程の差が無い。

 

今の所サスケとの連携は問題なく機能してるが決め手に欠ける。

 

「うちはくん、さっきのあれ…千鳥って後何回使える?」

 

「…やれて後一回、その後は動けなくなる」

 

戦闘不能になるなら安易に使わせるわけにも行かないか。

 

戦線に復帰すると同時に眼前に迫る砂の群れを避けながら更に思考を回す。

 

既に襲ってくる砂の鞭、触手の様に伸びたソレは数十本を超える。

 

予選時の様に後先を考えない(五門まで開けば)なら蹴散らせるが…確実に決められる場面以外で使っていい物じゃない。

 

そもそも砂分身による身代わりがある以上、本体を見分けられなければ不発に終わる可能性が高いし…

 

ネジが来てくれれば問題はほぼ解決するけど今度は観覧席側が手薄になってしまう。

 

刻々と迫るタイムリミットに冷や汗を流しながら迎撃を続けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ネジ視点

 

 

 

「ヒナタ様!」

 

二人がかりで襲い掛かる狼藉者を柔拳込みの拳で殴り飛ばす。

 

…頭に直撃させたから運が悪ければ死ぬだろうが今はそんな些事に気を取られている場合ではない。

 

木の葉の額当てを着けた見知らぬ男が倒れると同時に変化が解ける。

 

…この乱戦で化けた相手が居るのは面倒極まりないな。

 

周囲に目を向けると酷い有様だった。

 

数分前までの試合への熱狂は阿鼻叫喚の混乱へと様変わりし、テロリスト共が殺意とともに襲いかかっている。

 

全くもって洒落になっていない窮状だ。

そんな状況に置かれたヒナタ様へと駆け寄って声を掛ける。

 

「ご無事ですか?」

 

「う、うん…大丈夫、です」

 

目の前の現実を認めたくないのだろう。

何処か上の空に成っているヒナタ様を庇うようにしながらジリジリと迫る襲撃者達へ構えを取ると

 

「悪い…助かった」

 

「すまん…手が回らず」

 

その背後から二人の下忍…犬塚キバと油女シノが無力化しながら近づいてくる。

 

先程の敵もそうだが、白眼による真贋の見極めはこう言う乱戦時に効果を発揮する。

 

本人かそれとも変化した敵か。

 

本人だとしても幻術に掛けられているか否かを瞬時に見極められるのは乱戦における明確なアドバンテージだ。

 

キバ達が正気かつ本人であることを確認して構えを解くと安心した様な声色で

 

「……実戦経験の差、か」

 

俺の周囲を見て少し唖然としたシノから感嘆の声が漏れた。

 

確かに俺はこの襲撃から既に数人、砂隠れの額当てを着けた忍と木の葉の忍に化けた襲撃者を無力化している。

 

当然この場にも何人か力なく転がっている。それを見ての感想だろう。

 

…この場における俺とお前達の差は経験ではなく、精神的なものだと思うが。

 

 

周りに転がる襲撃者達を見る後輩達の目に焦燥の光があるのに気づく……柄にもなく、少しお節介を焼く事にした。

 

コイツらの戦い振りを見るにこのまま放っておいても勝手に生き残るだけの力はあるし、その間に勝手に心構えも出来るだろうが…ヒナタ様の仲間に万が一死なれたら寝覚めが悪い。

 

テンテンに見られたら後で揶揄われそうだが今はナルト達と協力して迎撃中だしな…少し話す位なら構わないだろう。

 

「…俺とお前達の実力に差があるのは当然だ。一年間の積み重ねは簡単に埋まるものじゃない」

 

お前達が鍛えている間に俺も修行し続けているのだから当然その差が簡単に埋まるわけもない。

 

そう告げるとやっぱりか…といった顔になる二人に話し続ける。

 

「しかしこの状況での差と言うなら…違う」

 

そう言うと疑問が顔に浮かぶ二人。

ヒナタ様も何を言うのだろうか、といった顔になっていた。

 

少しだけ躊躇いが生まれる。

これは優しい貴女には少し酷な話だから。

 

それでも、この場で死ぬ確率を少しでも下げる為には必要な事だ。

 

ヒナタ様だけなら俺が側にいれば守りきれるだろうが…此処に俺が張りつけられてしまうと今も階下で化物を足止めしている奴等がいずれ持たなくなる。

 

予選時とは比較にならない物量を前に下忍が二人だけで耐えているのが異常なんだ。

 

彼奴等の限界が来る前に二人には少なくともヒナタ様を任せられる様になってもらわねば下から崩されかねない。

 

あの体術バカがそう簡単にやられるとは思わないが…一ヶ月のブランクがどう影響するかわからない。

 

 

ふと頭に過った嫌な想像を振り払いながら三人に向けて話を続ける。

 

この場で迎撃しながら白眼によって広がった視界で見ていて分かった事…これは他の連中にも言える事だが。

 

 

「相手を殺してでも止める、その覚悟の差だ」

 

 

正直、今こちらに来ている襲撃者は弱い。

 

俺達を下忍と舐めているからか戦闘員の中でも下から数えた方が早い雑魚がメインで手練と言える強者(中忍以上と確定出来る敵)は少ない…本来ならコイツらが後れを取る様な相手じゃない。

 

その一握りの強者に関しても一対一ならまだしも、いつも通りのスリーマンセルなら問題なく勝てるレベル。

 

そんな相手に手こずっている理由は単純明快だ。

 

意識的、無意識的に関わらず。

 

急所への攻撃の際にその手が僅かに鈍る。

相手の命に届き得る手に僅かとはいえ躊躇いがあるのだ。

 

今まさに殺しに来ている相手にも拘わらず、なるべく殺さない様にしている節が見受けられた。

 

十代前半(まだ子供)だから無理もない話…勿論俺もだが。

 

自分の手で人を殺す、という覚悟をまだ持てていない。

 

忍を志す者なら必ず通る道とはいえまだ下忍の身、自身の手で人の生死を左右する決断などしたこともないだろう。

 

名家の跡継ぎですら躊躇いが見て取れるのだから他の連中は言わずもがなだ。

 

俺だってそうだ…ただ、それよりも大切なものがあるだけで。

 

 

「殺しに来た敵に容赦するな。無意識にでも手を抜けば死ぬのはお前達だけでは済まない」

 

 

そう続けると犬塚キバが少し不貞腐れたように呟く。

 

「そりゃお前には柔拳があるから…」

 

手加減なんてお手の物だろうが。

 

そう呟くキバにため息が出る。

 

ヒナタ様の柔拳を知っているからこその発言だと分かってはいるが、それがデフォルトだと勘違いされているのは業腹だ。

 

第八班は基本斥候向き…荒事向きとは言えない組み合わせとはいえ、ヒナタ様が属する班員としての心構えに少し不満を言わせてもらう。

 

「…日向の柔拳が活人拳だとでも思っているのか?」

 

柔拳は内部破壊の拳法だ。その本質は相手を確実に仕留める事に他ならない。

 

外部破壊の剛拳と比べれば被害の調整は容易だが相手を害する為の術法なのは変わりないのだ。

 

「人を害するという観点ならお前達の術とそう大差はない。寧ろお前達より強い分加減しなければ容易に相手を殺し得る」

 

今の俺でも相手の心臓を止める事など造作もない…そうでなくとも加減をしくじれば忍としては生きられないほどに経絡系を破壊出来るのだから。

 

思わず呆れが混じった言葉に顔が強張るキバを見て頭を抱えたくなるのを抑え込む。

 

まぁ、ヒナタ様がいるから危険な修行や任務をさせていないと考えれば仕方がないのだが…修行時位は死ぬ一歩手前まで追い込む必要があるだろうに。

 

ガイ相手に行なっている模擬戦で幾度となく感じた死線。

 

勝ち目の薄い強敵相手にこれ以上やれば死ぬ、または殺されていただろうと言う線引きは実際に経験しなければ身に付かないのだから。

 

現にBランク任務(対忍戦闘を含む任務)を熟した経験者(ナルト達)はこの状況に対応、他の班員の援護に向かう余裕すらあった。

 

前線に意識を向けると観客の幻術を解くサクラを守りながら他の下忍をフォローしつつ兵糧丸を齧っているナルトが目に入る。

 

…こう言う状況では多重影分身の利点が大きいな。弱点に常に護衛をつけながら戦線の維持も並行出来る。

 

まぁ、あんな使い方を出来る(チャクラを贅沢に使い潰せる)のはナルトだけだろうが。

 

そんな事を考えながら話し続ける。

 

「…お前の言う通り、柔拳は相手を無傷で無力化するのに適しているのは確かだ。だがそれは手加減出来る状況、相手に限っての話…今はそんな余裕はない」

 

これはヒナタ様にも向けた言葉だ。

今はまだ茫然自失としているが、いざ戦おうとした際にその覚悟がなければ不覚を取りかねない。

 

何人か相手した感じでは今のヒナタ様でも雑魚相手なら手加減出来るだろうが…それでも完全に戦闘不能にするなら100%不殺とは行かない。

 

俺は今まで始末した敵には手加減せずに点穴を突いた。

 

心臓を止めた相手はいざ知らず、経絡系を断った奴も何の処置もしなければそのまま死ぬだろう…俺が、この手で殺したんだ。

 

僅かに震える指先がバレない様に拳を握りながら続ける。

 

 

「俺はそうしている、だからお前達も殺せ…とは言わない。手加減するなと言っているんだ」

 

 

仲間を助けたいのなら躊躇い(甘さ)を捨てろ。

 

手加減した結果戦線復帰した敵が仲間を、友人や家族を後ろから刺すのを見過ごせるのか?

 

そんな事になるくらいなら例え両手が血に染まろうとも俺の拳は止まらないし、止める気もない。

 

敵と仲間とで比較すれば天秤は容易く傾いたのだから。

 

俺の意図が伝わるように、冷静に話し続ける。

 

「それが出来ないのなら下がっていろ。邪魔になるくらいなら居ないほうがマシだ」

 

()()の後ろにいるなら守ってやれる。

 

確実とは言えないが全力を尽くすと約束しよう。

 

最後にそう告げるといつも通りの表情に戻ったキバとシノが

 

「そんなダセェ真似できっかよ…あぁ、やってやるよ!」

 

赤丸ぅ!と叫んで忍犬と共に襲撃者へ襲い掛かる犬塚キバ。

 

「覚悟、か…耳が痛いな」

 

だが、目は覚めた。そう言うと蟲を展開して一人、また一人と襲わせ始める油女シノ。

 

この分なら勝手に覚悟を決めてただろうな…やはり余計なお世話だったか。と苦笑すると同時に。

 

「私は…」

 

一人、言葉をのみ込むヒナタ様。

 

「私も、仲間が死んじゃうのは嫌だ」

 

そう言って顔を上げたヒナタ様に先程までの何処か虚ろな表情は無かった。

 

日向の宗家、その長女たる貴女にこの鉄火場は似つかわしくない。

本来ならば手勢を率いて指揮をする立場にあるのだから。

 

しかし覚悟さえ決まってしまえば芯は驚くほど強い貴女は、きっと止めても振り切ってしまうのだろう。

 

ならば伝えるべき言葉は制止ではない。

 

「…どうか、無理はなさらぬよう」

 

ヒアシ様に後で何を言われるか分からないが…守りきれば問題は無い。その時に俺が生きていたなら土下座でも何でもしよう。

 

「いざと言う時は命に代えても守ります」

 

そう言いながら目を合わせると何故か目を逸らされてしまった。

 

「…そう言う事は別の方に言うべきです」

 

俺から顔を背けながらキバ達に合流するヒナタ様を見て首を傾げていると

 

「ネジ!話が終わったなら手伝ってよ!」

 

私、こういう場所じゃあんま役に立てない!と文句を言いながら鋼線を繋いだ苦無や暗器を駆使して敵を足止めをしているテンテンから声がかかった。

 

「もう、全員避難してくれれば一掃出来るのに…!」

 

毒を食らったのか泡を吹いて倒れる襲撃者を足蹴にしながら言うテンテンに

 

「…やるなよ?まだ避難できてない一般客も居るんだからな?」

 

念を押すように口にすると

 

「やらないよ!人をなんだと思ってるわけ!?」

 

失礼しちゃう!と憤慨しながら口寄せしたチャクラ刀で襲撃者に不意討ち、貫通した所に峰の上から踵を落として傷口を広げたのを見る限りコイツは余裕そうである。

 

「寝てろ!…何見てんの?そんな余裕があるわけ?」

 

苦悶の声を上げる敵の頭を足蹴にして意識を奪いながら注目を集めている事に気づいて睥睨しながら吐いた言葉に

 

「い、いや何でもないってばよ!?」

 

「ならさっさと前線支えなさい」

 

ネジもさっさと来る!と俺に向けて呟くテンテン。

 

こえー…と呟きながら前線に戻るナルト(影分身)

 

リーとの約束がぶち壊された現状にキレてるからと言うのも大きいだろうが…アイツは敵に対して容赦がないな。

 

何時もの様なやり取りをした事で少し心が軽くなった…我ながら現金なものだと苦笑が漏れる。

 

「あ、いた!」

 

おーい!と声を掛けられた先で幻術を解いて回っていた春野サクラと山中いの、それを護衛していたナルトやシカマル達と合流した。

 

一時的に作られた安全圏へ引き込みつつ再度戦線の維持を頼む。

 

「すまん、また少し頼めるか?」

 

チラリとヒナタ様達へ目線を向けると

 

「楽勝だってばよ!…さっさと片付けてサスケ助けに行きてぇんだから早くしろよ!」

 

階下を見て少し焦った声で答えるナルト。

 

「また!?良いけど早くしてよね!」

 

あんまり遅いと全部吹き飛ばすよ!と洒落にならないことを言うテンテン。

 

「あぁ。そろそろ片付けて彼奴等を回収するぞ」

 

だから頼む、と軽く頭を下げると変なものを見た様な顔で前線に戻っていった。

 

ナルト達が前線に加わって余裕が生まれたのを確認してからシカマルへ問いかける。

 

「状況は?」

 

「最悪だな…どこもかしこも襲撃されてる」

 

眉間を揉むようにしながら思考を巡らせるシカマルが呟く。

 

「まだ救いがあるとすればあの砂…我愛羅がリーにご執心ってことくらいなもんだ」

 

アレが無差別に襲ってきてたらもっとヤバかったぜ。

 

会場でアクロバティックな動きをしながら砂の猛攻に耐えているリーとサスケを見やって苦い顔になるシカマルに再度問いかける。

 

「そうか…この状況、俺達はどうすれば良い?」

 

俺の指示を仰ぐような発言に一瞬言葉がつまるシカマル。

 

「…なんで俺に聞くんだ?」

 

俺如きじゃどうしようもないだろこんなの…と呟くシカマルに答える。

 

「この中でお前が一番冷静だからだ」

 

俺も含めて全員が恐怖、ないし怒りの感情に支配されそうなのを耐えている。

 

それはテンテンも同様だろう、と水を向けると

 

「正直、この阿呆共を皆殺しにしてやりたいって思ってるよ!」

 

滅茶苦茶やってくれたんだし…後でお礼参りは必須だよね。とやはりキレてるテンテンが襲撃者の一人を呼び出した投網で縛り上げて投擲物への盾にしているのを見ながら頷く。

 

「上層部が許すなら砂隠れへの襲撃(逆襲)の際は俺も参加したいものだ…ヒアシ様に頼んでみるか」

 

こういう時は分家の身の軽さが有り難く思えるな、と軽口を叩く。

 

テンテンに同意した俺を見てなんとも言えない顔になるシカマルに

 

「…まぁ、こんな具合に俺たちは冷静とは言えない訳だ」

 

冷静であるように努めているが心の底では腸が煮えくり返っているから客観的な状況判断は難しい。と続ける。

 

当然シカマルもいつも通りとは行かないだろうが…それでも。

 

「この状況で冷静に周りを見る事が出来ているのはお前だけだ。この場を抑えるのに手っ取り早い方法は無いか?」

 

下にいるバカの限界が来る前に。

 

「俺の頭じゃテンテンに全部吹き飛ばさせる位しか思いつかん」

 

勿論、できるだけ避難させた上での話だが…少なくない被害が出る。

 

そう告げた後に内心で独白する。

 

…アイツに味方を犠牲にする様な真似をさせたくないがな。

 

「いや、それは流石にないでしょ!?」

 

何人巻き込むつもり!?と否定してくる山中いのに

 

「あくまで最終手段だ…そうしないためにも、お前の知恵を借りたい」

 

そう話を結ぶとため息を吐いた後、少し考え込むシカマルだったが数秒も待たずに答えが返ってきた。

 

「…アンタなら相手が止まった状態、無抵抗なら何秒で鎮圧出来る?」

 

「このブロックだけなら五秒もあれば可能だ」

 

テンテンとナルトやキバ、シノがせき止めている襲撃者の人数と増援に向かってきている襲撃者の数を考えればそれくらいだろう。

 

俺の答えを聞いて策が固まったのか口を開くシカマル。

 

「…上空の砂嵐をどうにか出来るなら。後は何か影を作れる物があればこの席周り位ならすぐに鎮圧出来る」

 

このブロックは選手(下忍)や関係者専用だからな…一般人がいない分向けられた手勢も他と比べれば少ない。

 

「それだけ片付けりゃお前らが居なくてもどうにかなるだろ」

 

後は他のブロックに合流するなり避難するなりするだけだ。

 

「さっさとあの(化物)なんとかしてきてくれ」

 

軽口を叩くシカマルにいつの間にか下がってきたテンテンが口を開く。

 

「砂嵐を散らせばいいのね?」

 

危険物倉庫の巻物(禁止札を収納している巻物)を開いて口寄せの術!と呼び出した一枚の起爆札(見覚えのある印が入った起爆札)を苦無の一本に慎重にくくりつけるテンテン。

 

「おい、それは…」

 

「非常事態だししょうがないでしょ」

 

後でどうなるかなんて考えて動かずに此処で死ぬのに比べれば安いものだと微かに笑うテンテン。

 

「それもそうだな」

 

その時は一緒に頭を下げよう…足りないかも知れんが。と呟いて苦無(危険物付き)を受け取る。

 

俺達のやり取りを聞いたシカマルの顔が更に引き攣っているが問題はないな。

 

「後は影を作れるモノだけど…何時もの(大岩)はちょっと被害が大きいし…」

 

混戦状態の観客席を見渡しながら

 

「長ければ大きくなくても良い?」

 

と問いかけるテンテンに

 

「構わねえ。総面積が必要なだけだからな」

 

その言葉を聞いてニッコリ笑うと

 

「ねぇ、そこの…秋道家の子!力に自信ある?」

 

「僕?…まぁそこそこ?」

 

よろしい!と口寄せの術で呼び出したチャクラ刀を押し付ける。

 

シカマルとの試合で大分消耗しただろうにまだ2mほどの長さがあるがそれでは足りんだろう…あぁ、そうか。

 

「妙に長い刀だがその程度じゃ足りねぇ。もっと影が居る」

 

まぁ見てなさいって!と続けてナルトを呼び寄せるテンテン。

 

確かに、今も尚余裕が有り余っているチャクラ量の化物(うずまきナルト)なら問題なく補填出来る。

伸ばした後還元すれば戦闘維持も可能と考えれば悪く無い手だ。

 

相変わらず頭が回るな…と感心していると。

 

「なんだってばよ…今俺達忙しいんだけど!」

 

さっさと片付けてサスケを助けに行かねぇと…と焦るナルトに

 

「そのためにも協力してって言ってんの!ほら、柄握ってチャクラをねじ込んで!」

 

ナルトが半信半疑で握った柄から急激にチャクラを供給された草薙の剣が一気に伸びた。

 

「うわっ!?」

 

いきなり重量を増したそれを落とさないように支える秋道チョウジとナルト…バカげたチャクラ量に反して制御が甘すぎやしないか?

 

一気に半分近く注ぎ込んだぞコイツ(ナルト)

 

「これなら足りるでしょ」

 

丁度太陽も背中側だし。と続けるテンテン。

 

「チャクラ刀!?なんでそんなレア物を…」

 

山中いのやシカマル、春野サクラはそれがどんな物なのか気づいて二度見するが

 

「そういう話は後で!ネジ!」

 

テンテンの言葉に答える。

 

「真上で良いか?」

 

「大丈夫。でも最低20mは上げてね?……巻き込まれるから」

 

横方向の範囲に特化させてるけど余波で縦にも広がるし。

 

最後にボソッと付け加えた言葉は周りに聞こえない様にしてたが…そんな危険物を試験に持ち込むんじゃない!と思わず天を仰ぎそうになった。

 

…まぁ、この場合は助かったし今は何も言わないが…コイツには後で一言二言言っておかなければならんだろう。

 

その時はリーも同席させよう…どんな言い訳をするのか楽しみだ。

 

内心でこの後の事を考えられている事に再度苦笑が漏れた。

 

それを噛み殺しながら体内を循環させているチャクラ量を戦闘時の状態まで跳ね上げる。

 

「…行くぞ!」

 

周囲に声をかけると共にチャクラによる身体強化と回天の応用で加速させた腕から起爆札付きの苦無を射出する。

 

綺麗に真上に向かって飛んでいくそれは砂嵐の中に消えていく。

 

「今だ!」

 

およそ25m程度まで上がった所でテンテンに合図を送る。

 

「行くよ…!」

 

テンテンが第一の札、起爆!と印を結ぶと。

 

爆破音と共に上空で小さな爆発が起きた。

 

…思ったよりしょぼくない?とサクラ達がテンテンを見るのと同時に爆発音が連続し始める。

 

「な、なんだってばよ、コレ!?」

 

「今度は一体何を仕込んでんだ…!?」

 

周囲から上がる疑問に答える間もなく、上空の爆発が連鎖的に増えていく。

 

驚異的な速度で広がるそれは会場の上空、その半分を覆うまでに至った。

 

轟音で何も聞こえなくなる直前でテンテンの声が響き渡る。

 

「私の奥の手」

 

詳細は内緒ね。と言いながら結果を見届けるテンテン。

 

想像以上の威力に思わずテンテンの方を見ると

 

やっぱり範囲を広げると完全に展開しきるまでが遅くなっちゃうか…要研究だわ。

 

口の動きを見るとそんな事を言っていた。

 

…これを改良する余地は無いと思うが?

この展開速度と範囲…ガイや八門を開いたリーよりは遅いが並の忍なら逃げる間もなく爆発に飲み込まれるぞ?

 

所詮は起爆札だから範囲のみで見るなら防御に長けている連中は防ぎきれるだろうが…問題なのは()()()()になっている所だ。

 

見た感じ中心部では十数回重なってるぞアレ…一応、里周辺における同時使用限界枚数は守っているのか。小賢しい事に。

 

…制限を無くしたらこの程度で済んでないと考えると三代目は英断だったな。そんなもの、個人に向けたら骨も残らない。

 

そんな事を考えている内に上空で口寄せした起爆札群の爆破範囲が広がりきって爆発が止んだ頃には砂嵐が破れて青空が覗いていた。

 

砂嵐が晴れたお陰で地面に影が伸びる。

 

「…〜影真似の術!」

 

言いたい事は山程あるが今はそんな場合ではない、と言った顔をしながらシカマルが発動した術が草薙の剣の影と接続、射程の伸びた影が襲撃者達の影と繋がった。

 

「よし…片付けてくる」

 

少し耐えろよ、とシカマルに声をかけてから案山子の様に固まった阿呆共の点穴を突いて行く。

 

影真似の術は掛けた対象の動きが本体にもフィードバックされる様だが柔拳なら衝撃無しに内部を突けるからその点は問題無い。

 

流石に動く相手に無反動で叩き込むのは至難の技だが、動かない的なら容易いものだ…取り敢えず復帰しても後遺症が残るレベルで無力化する(この騒動後に尋問出来るように生かしておく)

 

適切な処置を受けられれば忍を続けられるだろう…まぁ、この状況では難しいだろうが。

 

その間に秋道チョウジから回収した草薙の剣はテンテンの危険物倉庫に収納された様だが…あんなにチャクラを練り込んだ割にナルトがピンピンしてる方が恐ろしく感じる。

 

つくづくナルトのチャクラ量は異常だ。

 

先程兵糧丸を齧っていたとは言え俺との試合の後で最早刀と言うより柱と表現した方が良いレベルの長さまで草薙の剣にチャクラを込めた癖になんで立っていられる?

 

それだけ溜め込むのにテンテンが何日掛かるのか…と考えながら皆の元に戻る。

 

「これでこの辺は鎮圧完了だ」

 

白眼で確認したが隠れてるやつも居ない。と告げると

 

「ようやく一息つける…ってわけにゃ行かねぇか」

 

先程の大爆発と突然現れたそびえ立つ柱のようなチャクラ刀が目立ったせいか周囲の奴らも集まりつつあった。

 

「今のは何だ!?」

 

木の葉の額当てを着けた忍が尋ねてくる…変化ではないし、攻撃する意図もないな。

 

間違いなく木の葉の忍だ。

 

この慌てっぷりを見るに応援に来たと言うよりは新たな脅威を確かめに来たって所だろうが。

 

「味方の術だ。こちらに被害はない」

 

アレが地上で炸裂していた場合、観客席の半分は消し飛んでただろうから恐怖するのも無理はないが。

 

「此処には下忍しか居ないだろう!嘘をつくな!」

 

面倒くさくなってきた…もう一発打ち上げさせるか?と物騒な考えが浮かんできたのと同時に

 

「今はそんな事をしている場合ではなかろう」

 

同じく大爆発を見てすっ飛んできたヒアシ様の言葉で追及が終わった。

 

ハナビ様や他の日向家の方々も一緒に来られたのか…ヒナタ様のいる場所からあんな大爆発が起きれば心配にもなるか。

 

有難い事に先程の忍も日向家当主の言葉に噛み付く気概は無いようだ。

 

…テンテンはさっさと中忍に上げさせないとこう言うケースが多くなりそうだな。

 

頭を振って明後日の方向に行きかけた思考をもとに戻してヒアシ様へと向き直る。

 

「お父様…」

 

当主の顔を見て呟くヒナタ様を見て少し安堵した口ぶりで話し出すヒアシ様。

 

「無事だったか…ネジ、よくぞ守り抜いてくれた。後は任せろ…と言い切れたなら良かったんだがな」

 

お前達を危険に晒した後では信用できんだろうが…と心痛な表情で続けるヒアシ様に目を白黒させているヒナタ様を預ける。

 

「それが俺の役目ですから」

 

不安そうなヒナタ様の手を取るハナビ様を見て少し頬が緩む。

宗家の姉妹に何事も無かった事に胸を撫で下ろしながら

 

「それにヒアシ様がいらっしゃったのなら万の援軍を得たも同然です」

 

いきなり現れた日向家当主に驚いている周りの連中を見渡して続ける。

 

「…此処をお任せしても構いませんか?」

 

「全力を尽くすと約束しよう」

 

その言葉に頭を下げる。

 

「ありがとうございます。…すみませんが、俺は行かねばなりません」

 

ヒナタ様にも同じ様に。少し寂しそうに見えたのは目の錯覚だろう。

 

バカげた考えを振り切るように視線を階下へと向ける。

 

「俺は…あのバカを手伝わねばならないので」

 

試合会場で舞う砂の群れに対して拙いながらも連携している二人を見ながら言う俺に。

 

「構わん…行ってやれ」

 

ヒアシ様がそう言うが早いか

 

「サスケェ!」

 

「リー!」

 

ナルトとテンテンがもう我慢できないとばかりに飛び出していった。

 

「あんのバカ共…!すみません、ヒアシ様!」

 

お願いします!と言うが速いか後を追う。

 

 

『行ってこい…死ぬなよ、ネジ』

 

 

走り出した背中に掛けられた言葉を噛み締めながら。

 

 

 






幻術周りの補足とリーの内面、サスケや第八班の扱いに悩みましたが拙作ではこの様な形でやらせて頂きます。

前の話でネジが制御を手放した三門状態のリーを見て特に何も言わなかったのは出力を上げる手っ取り早い方法だから、と言うのがあります。

整然とさせるために制御に意識を持っていくよりも制御を手放して身体操作に集中する方が強い訳ですね…継戦能力が著しく劣るので短期決戦向きですが、相手も同様に短時間の強化であれば四門開くよりは反動も少ないと言う感じです。

原作サスケは幻術を弾いてましたが、拙作の体術方面に特化した修行をしていたサスケでは無理だったと言う事でどうか一つお目溢し下さい。

写輪眼持ち相手に幻術って通じるの?と言われると痛いんですが鍛えれば容易、素のままでは無理とさせて頂きます…


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