ロック・リー転生伝   作:六亭猪口杯

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大変遅くなり申し訳ありません…資格勉強が佳境に入り始めたためまた暫く掛かります。

リーと我愛羅の会話が超難産でした…()後で書き直すかもしれません。

※毎度の事ですが捏造がございます。ご注意下さい。


対一尾戦

 

 

遂に目の前に現れた一尾。

 

大分薄れた記憶でも大きい方だと思ってはいたけれども…

 

「大きすぎじゃない?」

 

額にくっついてる我愛羅がオデキに見えるんですけど。

 

「あれだけの質量…まともに食らったらひとたまりもないな」

 

白眼で確認したネジから全員に指示が飛ぶ。

 

「前線を絞る。俺とリーを起点に動くぞ」

 

下忍にどうこう出来るレベルかは怪しいが…それでも他よりはまだマシだろう。と続ける。

 

なにか言いたげな七班の二人を視線で制止して黙らせた。

 

この場では白眼で常に全体を把握出来るネジがリーダーに相応しい。

 

次点で写輪眼持ちのサスケだが…この面子ならネジが適任だ。

 

完全に納得してはいないものの取り敢えず話を聞く姿勢を見せた二人を見て頷いたネジが続きを話しだす。

 

「テンテンは離れて援護…出来る限りで良い」

 

あの巨体がそれほど機敏に動くとは思えないが…最悪を考えた場合、一度に全滅する事態は避けたい。

 

そう続けるネジに

 

「それは良いけど…アレ相手に投擲が届く距離だと防御しきれるか怪しいよ?」

 

火力にはそこそこ自信があるけど防御面はあんまり…と答えるテンテン。

 

「例のカタパルトを使えばやれるだろう?…殺る時は一次試験で使った無線で連絡してくれ」

 

そう言うとテンテンから投げ渡されたイヤホンを其々の片耳に嵌める。

 

…これ、高校生のカップルとかがやる奴じゃない?と少し的外れな考えを隅に追いやりながら二人の会話を聞き続ける。

 

「2つしか無いし一方通行だからそれなりの距離は届くけど、砂が舞いすぎたら通じるか分からないよ」

 

こんな状況で使ったこと無いし。と続ける。

 

「それにカタパルトでの支援ってなると本体側からだと遠隔起動の範囲外だから影分身を中継するし…ちょっとラグが出るからね?」

 

合図より少し遅れると思って動いてね、と念を押される。

 

「あるだけマシだ。俺とリーは最悪巻き込んで良い」

 

きっぱりと言い切ったネジ。

 

「ま、何時ものことだしね」

 

アレ相手に遠慮してたら纏めてあの世逝きだろうし?と俺も冗談交じりに続ける。

 

それを聞いてギョッとした顔で俺達を見る第七班の二人に

 

「俺達は慣れてるから大丈夫だよ」

 

不安にさせない様に笑顔を向けると理解出来ない生き物を見る目で見られた。解せぬ。

 

「…本格的な火力の投射は俺達が隙を作ってからだ。流石にあの大きさ相手に全員庇うのは難しい」

 

ただ押し流すだけの砂の津波とは訳が違う。

 

芯がある大質量を相手に今の俺が完全に逸しきれるかわからない、とネジは少し悔しそうな顔で続ける。

 

「それをぶっつけ本番で試す気はない。テンテンの護衛はナルトに着いてもらう。…数体影分身作って俺達と前衛に回せるか?」

 

口調こそ確認だったが、やれるだろうと確信している口ぶりに

 

「…!任せろ!!」

 

ナルトは大船に乗ったつもりでいろってばよ!と胸をたたく。

 

「うちはは…」

 

チラリとサスケの全身を白眼で確認したネジの顔が僅かに歪む。

 

「まだ、やれるぞ」

 

強がってはいるものの千鳥の連発で既にチャクラが枯渇寸前なのだろう。

 

千鳥の反動で経絡系が痛むのか額に脂汗を浮かべながら言い切った。

 

「…少し休め。兵糧丸はあるな?」

 

それを食った後はテンテン、ナルト(本体)と後方で待機だ。

 

「舐めんな…!」

 

俺はまだ戦える!と息巻くサスケに

 

「だからだ。さっさと回復してこっちを手伝え」

 

お前を悠長に休ませてる余裕は無さそうだ。

 

そう告げるネジに見つめられて舌打ちと共に黙り込んだ。

 

「…来るよ!」

 

その間も睨みつけていた一尾に明確な変化が起きた。

 

先程まで纏っていた砂が色付いて化け狸を象る。

 

「散開!」

 

ネジの号令と共に駆け出す。

 

「リー!」

 

「残り十分!更に開くならもっと短くなる!」

 

今まで開きっぱなしだった三門も限界が見えてきている。

 

四門以上と比べれば長時間の運用が可能とはいえ流石にこうも連続するとキツい。

 

「全く、嫌なタイミングで仕掛けてくれたものだ」

 

ネジが苦々しい顔で吐き捨てる。

第三班の明確で覆しにくい弱点を突かれた、と。

 

俺が全力を出せる時間に制限がある事…恥ずかしい話、今の俺では八門を使用しないとネジの全力に着いていくことが出来ない。

 

第三班における長くとも十分以内に仕留めるか逃げる事を前提とした連携は俺の事情を鑑みての所が大きい。

 

(…既に下忍レベルを優に超えているネジに負けない様にするなら仕方がない事ではあるけれど)

 

鍛えたとは言え今の俺は素の状態では原作のリーと然程変わらない。

 

そもそも限界まで鍛えた限界値が原作なのだから当然だが。

 

故に八門の制限時間を伸ばす様に修行を追加していたのだが…それも三門まで、それ以上は反動が大き過ぎる。

 

現状では本来の実力以上の相手にも食い下がれる代わりに継戦能力を捨て去ったピーキーな忍に成ってしまっている。

 

(原作よりはマシだけども)

 

突きつけられる事実に歯噛みしながら言葉を飲み込む。

 

八門抜きの俺では今のネジに追従するのは難しい。

素の能力値ではネジに負けるからだ。

あくまでリミッターを外した状態で漸く同格、そうでないなら現状のサスケにも容易く負けるだろう。

 

要はネジからすれば素の状態の俺と連携を組むより一人で前衛を支えた方が荷物がない分身軽なのである。

 

…まぁ、これを見越してサスケとの試合では三門に抑えていたわけだが…それを知らないネジにとっては今の状況がギリギリ過ぎる様に思えているのだろう。

 

実際、時間制限に関してはその通りだが手が無くはない。

 

最悪、七門を使用すればなんとかなる。

感覚的にはあの巨体だろうが吹き飛ばせるし、額の我愛羅ごと一尾の首をもぎ取ることも出来るだろう。

 

まだ自分で止められないからネジによる緊急停止が無ければ使用=死亡だが死に近くなる分、六門以上は強化倍率が跳ね上がるからな…それこそ界王拳と超野菜人2くらいには差がある。

 

…その場合我愛羅と俺が忍界大戦離脱確定だから本当に最終手段だが。

 

そんな事を考えていると

 

「…それを狙われたんじゃないの?」

 

ネジの言葉にテンテンの影分身が答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度負けてる相手の事は調べるでしょうし…何よりリーは私達の中で唯一、格上相手に単独で勝ち得るから」

 

私は格上を吹き飛ばすだけなら出来る。

でも防御面で不安が残る私は正面戦闘で格上を相手取るのは難しい。

 

ネジなら時間を稼ぐのは容易だろう。

でも防御ほど洗練されていない攻撃では格上の相手に通じる可能性は低い。

 

その点、リーなら。

 

「八門遁甲を使えば身体能力で優越できる。現状では一番格上相手に白星を取れる可能性が高いのはリーだもの」

 

格上とも真正面から殴り合える、木の葉の里における下忍詐欺筆頭だし。

 

その言葉に納得したような顔になるナルトと、苦い顔をするサスケに苦笑しながら。

 

「もし私が第三班を相手取るならそうする」

 

まず最初にリー。次に私。

ネジは取れたら良いな、程度の目標にして巻き込みを狙う。

 

ネジ相手に近接距離まで寄られたら脅威だけど…ただ逃げるだけならそこまで厳しくないし。

 

「面倒な相手は戦場に出る前に消す方が楽だもの」

 

ぶっちゃけ一番楽なのって事前に罠張って全員吹き飛ばす事だもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分敵も同じ考えなんでしょ。と話を結んだテンテンに顔を顰める。

 

(仮に俺が敵なら…多分、同じだろうな)

 

八門使いは格上狩りが可能…と言うよりはコンセプト通りに使うなら常に相手が格上になるから必然的にそうなる訳だが。

 

使用後に相手が動ける状態ならどれだけ優位に運んでも死亡が確定する必殺の術理は、あまりにも危うい諸刃の剣。

 

最初にこの術を考えた奴は相当頭の螺子が吹っ飛んでると断言できる。

 

自分の命と引き換えにしてでも強者に一矢報いる、その為に培われた技術群の一つ。

 

…それを単純な自己強化の様に使い回している二人が異常なんだが。

 

そんな奴と組手をして勝ち越している身で何を言うか、と言われれば

 

『コイツが普段使いしてるレベルなら慣れてしまえばなんとか対処できるから』

 

と言う身も蓋も無い結論になってしまう訳だが。

白眼ありきとは言え見切れるなら体術主体の攻撃への対処はそう難しくもない。

 

なにより接近戦で日向が…俺が、リーに後塵を拝するわけにはいかないと言う意地もある。

 

だったら俺の方が強いのか?と問われれば答えは別だが。

 

「俺よりネジの方が強いじゃん?」

 

このバカは自己評価が低い節があるな…と苦笑を漏らしながら答える。

 

「俺は順当に強いだけだ。自分の地力以上の相手には勝ち目が薄い」

 

耐えて時間を稼げと言う条件ならば俺に軍配が上がる。でもそれだけだ。

 

俺にはコイツらの様な大番狂わせを行える攻撃力が無い。

 

八門遁甲や禁じられた口寄せの数々の様な、格上相手にも通じる攻撃手段が。

 

それは日向流柔拳法が弱いという事ではない。

柔拳による攻撃は相手の防御をほぼ無視出来るのは変わらない…格上相手でも区別なく刺さるだろう。

 

しかし木の葉でも有名な日向の柔拳はその強さと共に弱みも知れ渡っている。

 

チャクラを封じることが出来る日向流柔拳法の弱点…と言うには余りにも乱暴なそれは点穴を正確に突かなければ効果が激減するという点。

 

身も蓋もなく言うのなら当てられなければ意味が無いのである。

 

更に言うなら柔拳は身体能力を向上させる類の術とはチャクラの精密操作を必要とする分相性が悪い。

 

八門遁甲の陣の様な暴れ馬を御しながら使うのは現実的ではないのだ。

 

要は自己強化を自前のチャクラでしか行えないと言う事になる。

 

「故に身体能力で遥かに優越されている場合…俺には時間稼ぎ以上の事は出来ない」

 

速いだけなら白眼によるカウンターが刺さる。

力自慢なら経絡を断って雑魚同然に出来る。

術を使おうが八卦掌・回天で無効化出来る。

 

それだけ見れば相応に強者ではあるが…あくまで柔拳が当たる相手に限る、と言う注意書きがある。

 

「日向流柔拳は木の葉にて最強だが…俺はまだその頂に程遠い」

 

だから、今はまだ地力の差があると勝ち目が薄くなる。

 

少し格上程度ならどうとでもなるが圧倒的な格上となると厳しいだろう。

 

最近はそこをなんとか補填する為の修行もしているが…今使い物にならない物に意味はない。

 

「今、俺達の中で一番勝ち目が有るのはお前だ、リー」

 

まぁ俺には負け越してるが。と付け加えると

 

「アイツの次に殴る相手は決まったね?」

 

リーは額に僅かに青筋を立てながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

褒めた後に落とすとかどう反応すれば良いんだよ俺は。

 

「じゃ、私はこの辺で!巻き込まれないでねー!」

 

テンテンの影分身が一尾の攻撃範囲の外側で別れる。

 

…取り敢えずネジは後で殴る、と宣言して一尾が振り下ろした右腕を回避。

 

着弾した地面がめくれ上がって盛大に巻き上がった。

…遠くでうひゃー!と気の抜ける悲鳴が聞こえた気がしたけど気にしない。

 

「…ッ!質量は正義って言うにも程があるだろ!?」

 

余波に巻き込まれそうに成った俺をネジが引っ張り出して範囲外に抜け出した。

 

「気をつけろ!」

 

「ありがと!」

 

短く礼を述べると手を離す前に小さな声で

 

「俺とナルトで体勢を崩させる。そのタイミングでコイツを引き倒すぞ」

 

「了解…俺達は上、ネジ達は下だね」

 

最小限に方針を固めて分かれた。

二人で相手を崩した後はテンテンによる爆撃で片付ける、いつものパターンだ。

 

それで隙が出来れば我愛羅を一尾から引っこ抜いて終わりである。

 

ナルトによるメンタルケアは拘束後でも出来るだろう。

 

 

「が、アァァァアァァ!!」

 

 

我愛羅の叫び声と共に振り回される腕。

 

型も何もあったもんじゃないがその巨体で暴れ回られると…

 

「近過ぎると出所が分かり難いぞこれ!?」

 

視線を振らないと視界一杯に広がる一尾の腕が何処から来るのか分からねぇ!

 

デカいやつとの戦闘は初めてだから勝手が分からないぞ…だなんて考えて回避した先に振り下ろされつつある一尾の腕が有った。

 

回避…間に合わない!

 

「おわっ!?」

 

「走れ!」

 

影分身のナルトを壊さないように押しのけて両手で受け止める…巨体に見合った重さと力だなぁ!

 

「この、程度でぇ!」

 

ミシリ、と受け止めた腕が音を立てながら押し返す。

ギリギリ押しつぶされない程度には拮抗出来るがそれ以上は無理だなこれ…!

 

俺一人で腕一本抑え込めてると考えれば費用対効果は黒字も良いところだろう。

 

「ネジ!まだか!?」

 

作戦とはずれるけど無理矢理引き倒すなら今がチャンスだぞリーダー!

 

「少し待て…!?援護射撃が来る!頭を下げろ!!」

 

巻き込まれるなよ!と忠告が飛ぶのと同時に

 

『第一射、行くよ!』

 

イヤホン越しにテンテンの声がした。

遅れて上の方で爆発音が鳴り響く。

 

「…ナイスタイミング!」

 

一尾がテンテンの攻撃に対処する為に動いたお陰で少し軽く成った負荷を逃がす。

 

「今だってばよ!!」

 

それと同時にナルトに引っ張り出された事でなんとか一尾の腕から抜け出せた。

 

上方で炸裂した爆発…あれは改造した起爆札による連続口寄せだな…を食らってたたらを踏んだ一尾の口から苦悶の声が漏れていた。

 

(一尾の自我が目覚め始めてるのか?)

 

少年編…というか中忍試験編では我愛羅と一尾は一つの身体に二つの魂で相乗りしてる状態で、片方が起きているともう片方は意識の底に眠るシステムだったはず。

 

(もし今、二人がかりになると面倒どころの話じゃなくなるな)

 

自然と顔が歪んだ。

 

一尾化に慣れてないのかデカい身体を持て余し気味、その代わりに威力が跳ね上がった術をぶん回してくる我愛羅と。

 

慣れた巨体で暴れ回る一尾の組み合わせは自動砲台が乗った要塞みたいなモノだ。

 

額にくっついてるせいで我愛羅の視界が中途半端に死んでるのもプラス要素か…もしコレで下も見えてたなら上下共に弾幕張られてより難易度がイカれてたな…と内心で顔をしかめていると

 

「大丈夫か、リー!?」

 

「ありがとう、ナルトくん」

 

これを正面から受け止めるなら最低でも四門開かないと話にならないと言うのが分かっただけ良しと思おう。

 

断続的になり始めた爆破が止んで爆煙が晴れる。

まだ立っている一尾を見てテンテンの声が耳に入ってきた。

 

『…これでもダメか』

 

みるみる内に再生されていく一尾の姿を見ながら淡々と言うテンテンの言葉を聞きながら想定以上の力に歯噛みする。

 

(甘く見すぎてた…!)

 

尾獣…各里に配られた戦略兵器級の戦力。

その中でも一番弱いと目されていた一尾相手なら今の俺達でもなんとかなると思っていたが…

 

「次、来るぞ!」

 

ナルトの警告を聞いて即座に走り出す。

 

そもそも巨体から繰り出される攻撃が全部即死レベルの暴力かつ範囲攻撃なのがヤバすぎる。

 

「ナルトくん!」

 

手招きするとすぐに理解してくれたのか

 

「…おう!」

 

即座に飛びついてきた影分身のナルトを担いで攻撃範囲を走り抜ける。

 

ただの振り下ろしが全体攻撃じみているので回避に専念するとこっちが攻撃に移るまで時間が掛かり過ぎる…!

 

遠当てなら反撃出来るけどあの大きさ相手じゃマジで蚊が刺したレベルでしかないだろう。

 

「やべーなアイツ…!」

 

「だね…ちょっと派手に動くよ!」

 

ナルトの言葉に頷きながらネジとナルトが我愛羅の砂を弾きつつ前進しているのを見て早々に殴り込まなければならないと判断。

 

ナルトに注意した後すぐに振り下ろされた一尾の左手を踏台に跳ね上が…コイツ腕バラけさせやがった!?

 

足場にしようとしていた部分が砂へと変わり、踏みこもうと繰り出した足が宙を搔く。

 

「このッ…」

 

小器用な真似してくれる…まだ完璧じゃないから使いたくなかったが仕方がない!

 

「木の葉流秘技・空中歩行の術!」

 

空中を蹴って跳ね上がる。

 

最終盤では皆飛びまくってたから秘技と言うには大分名前負けだが…現在の忍界では比較的あり得ない光景を目の当たりにして我愛羅の動きが一瞬止まった。

 

「うおぉぉ!?」

 

今、ちょっと飛んだってばよ!?と背中から驚いた様な声が上がった。

 

「舌噛むよ!」

 

まだ終わってないんだから!と続けると口を閉じるナルト。

 

 

なんとか上手くいったけどかなり厳しいんだよなコレ。

原理としてはトンデモ物理かつ脳筋式だから制御が難しい。

 

軸足の足裏からチャクラを放出、単一方向への噴射の反動で暴れようとする足腰の関節を筋力でロック、頭から足裏までを一直線に並ぶように固定する事で短時間に限って漸く形に成った空中機動…ぶっちゃけ原理的にはペットボトルロケットである。

 

実際、空中歩行とは言うものの正確には歩行ではない。

某ロボットアニメの様な足裏からのエネルギー噴射を出力最大・極短時間行う事により空中で軌道を変える荒業である。

 

より簡単に言うならば水をチャクラに、ペットボトルを自分に置き換えたペットボトルロケットみたいなもんだからナルトの全力なら俺より長く吹き飛べるだろう…まぁ、ネズミ花火より酷い事になるだろうが。

 

言うまでもなくコレの大変なところは飛び上がる事じゃなく、飛んだ後の姿勢制御にある。

 

元々飛ぶ形をしていない物を無理矢理飛ばすのだから当然燃費は悪いし軌道もランダムになる。

 

そもそもそれを行えるだけのチャクラ量を保持している事が大前提、飛んだ方向が体勢を整えられる状態かつそれを行える体術を修めている事が必須。

 

特訓を重ねた結果なんとか上方向に限定して飛び上がれる様には成ったものの、斜め方向か真上かはガチャみたいなモノである…少しでも出力をミスるとあらぬ方向に回転するし。

 

将来的には狙った方向に跳べる様に鍛えるつもりではあるが今は半分運任せになってしまうのだ。

 

 

一尾の顎辺りまで跳ねて失速し始めた俺たちに向かって気を取り直したのか再び我愛羅の砂が襲いかかって来る。

 

二人分だといつも通りじゃ威力が足りなかった…それなら

 

「…二段!」

 

空中で無理矢理足裏を地面に向けて再発動…やべ、ちょっと制御ミスった!

 

「おおぉぉぉ!?」

 

洗濯機に入れられたかのように回転する俺の背中で奇声を上げるナルト(影分身)。

 

回転する視界の端に掠めていく砂の群れ。

 

「ッだらぁ!いう事聞けぇ!」

 

自分から砂に突っ込む様な間抜けを晒したらネジ達になに言われるか分かったもんじゃ無い!

 

チャクラを掌や肩から放出する事で空中で前後不覚になる前に無理矢理回転するベクトルを殺す。

 

人一人担いだ状態だと難易度爆上がりだなこれ!

 

「ナルトくん、変化で苦無に化けられる!?」

 

一人抱えてると制御しきれない、と申し訳なく伝えると

 

「任せろってばよ!…無理すんなよ!」

 

ナルトは心配そうな声でそう告げた後、苦無に変化した。

 

「ごめん…ありがとう!」

 

苦無(ナルト影分身)を握り締めて即座に空中機動を再開、バチッとチャクラが弾けるような音を立てながら縦横無尽に跳ね回る。

 

「…その場しのぎなら慣れたもんだ!」

 

鍛錬中は空中で一人ピンボールみたいな状態に成っていたからなぁ!

 

そんな事を嘯きながら一尾の攻撃を避け続ける。

 

一尾の頭の周りを飛び回る俺はさながら夏の夜に出てくる蚊の様なもんだろう。

 

「こんな大層なモン出しておいて俺一人潰せねぇのかぁ!?」

 

足元から攻めている二人から少しでも目を逸らさせる為に挑発を重ねる。

 

「死、ねぇぇ!」

 

鬼の形相で砂を操る我愛羅。

それに追従する様に両手を振り回す一尾。

 

「やれるもんならやってみろ!」

 

べ、と舌を出して再度跳ね回る。

視界があっちこっちに飛ぶ。

砂が掠める度手に持った苦無を握り締めながら。

 

(あんま長くは持たないぞ、ネジ)

 

そう思いながら回避を続けているとテンテンから通信が入った。

 

『…第二射、行くよ!』

 

空気を裂く音と共に飛来した塊。

咄嗟に跳ね跳んで回避、それを払おうとした一尾の手前で、塊が空中でバラけた。

 

細かく成った苦無が一尾の腕に当たって落ちる。

防御を抜けた物の内数本が我愛羅に向かう。

 

『3、2、1…起動!』

 

カウントダウンと同時に苦無が炸裂した。

 

弾けた苦無から投射された大岩の群れが一尾を襲う。

 

口寄せされたものはそれまでの運動エネルギーが乗り辛いから高速でとは行かないものの、高さと質量があればそのデメリットをある程度無視できる。

 

これなら隙が出来るだろうと思っていたが

 

 

「…流砂瀑流!」

 

 

一尾の額に張り付いた我愛羅が印を結ぶと同時に周囲の砂が巻き上がって巨大な壁を形成、大岩を迎え撃った。

 

『質量じゃダメかぁ…次は山でも用意しなきゃダメかもね』

 

相手が大き過ぎる場合は想定してなかったわ…と呆れたようなテンテンの言葉に思わず苦笑が漏れる。

 

それはもうマダラとかペインのレベルなんだよなぁ…

 

なにはともあれ、我愛羅の意識があるからか咄嗟の防御に術を使えるのは当然なんだが…それにしても規模がイカれてる。

 

縮尺がデカくなった我愛羅を相手にしてる様なモノだ。

 

怪獣大決戦みたいな術の応酬に巻き込まれない様に空中歩行と大岩を足場にしつつ上空に逃げる。

 

左手の苦無を傷つけない様に胸元で構えながら。

 

「…ナルト!」

 

「わかってるってばよ!」

 

ネジの声と共に見慣れたチャクラの回転が一尾の足元付近で発生、砂の津波から身を守っているのが見えた。

 

漸く準備が整ったか…なら次は俺達の仕事だ。

 

「ダイナミック・エントリー!」

 

ほぼ真上からの強襲。

反応が遅れた一尾が僅かに身動ぎしたので我愛羅には直撃せず、一尾の額を割っただけに留まった。

 

吹き飛ぶ砂に紛れさせてナルト(苦無)を一尾の後頭部方向に投げる。

 

「とっとと倒れろやぁ!」

 

それから意識を逸らさせる為に我愛羅へと一足で間合いを詰めると間に砂の繭が形成された。

 

「またそれか!」

 

舌打ちと共に右手で柔拳モドキを叩き込む。

砕けた繭の間から我愛羅と目があった。

 

「お前、お前は」

 

なんで、お前みたいな奴が強いんだ。

 

我愛羅が呟いた言葉がやけに大きく響いた。

 

俺を振り落とそうと暴れる一尾をネジとナルトが邪魔をしているのか足元から爆破音が鳴り響いている。

 

俺が我愛羅に近い位置にいるからか一尾の攻撃は下に集中している。

 

そのおかげで、というべきか我愛羅の独白がよく聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

「強さは憎悪、憎しみから生まれる」

 

再生させ続ける砂の壁をひたすら殴り砕く化物(強者)を睨みながら口を開く。

 

話すつもりも、意味もないと知りながら。

 

「そうじゃなきゃ…俺は、俺はッ」

 

何で俺は、誰も彼もから憎まれなければならなかったのか。

 

苛立ちと、自分でも理解出来ない感情をぶつける。

 

「お前の存在が気に食わない…!」

 

何故憎しみも恨みも無く。

 

「それだけの力を持ちながら!」

 

ただ幸せそうに、仲間に囲まれて。

 

「何故貴様はそうならない!?」

 

幸せそうなお前と違って、何故俺は実の父から…肉親から殺意を向けられなければならなかったのか。

 

そう絞り出すように叫んだ言葉が戦場に木霊した。

 

 

物心着いた頃には腹の中に化物が居た。

 

いつ何時も悪意を伝えてくるソイツのせいで禄に眠れず、自分でも良く分からない理由と共に化物として扱われる毎日。

 

『何で俺だけ』

 

そう考えない日は無かった。

 

それが瓦解したのは数年前、信頼していた人に殺されかけた時の事。

 

ようやく知れた俺の正体は

 

『尾獣を入れた人柱力としての戦略兵器』

 

としての機能のみを求められた結果だったと言う。

母も望まぬ悪魔の子として。

 

それから俺は人に期待するのを完全に辞めた。

 

俺を兵器扱いするのなら良いだろう、そうしてやる。

もうこの感情を制御しようとは思わない。

 

『殺すのが役目だというのなら。そうする事で俺は俺を証明する』

 

それからは気に食わない奴は皆殺しにした。

俺を恐れ、排斥しようとした奴らはもう居ない。

 

俺に石を投げる奴はもう、居ない。

 

要らない物を全て捨てた先にある、全てを憎悪して手に入れた力。

 

全てを憎み、自分のみを愛する俺の力は他の連中を簡単に捻り殺せる…はずだった。

 

お前に負けるまでは。

 

暴れ出そうとした守鶴を封印されて意識が朦朧とする中で見えた光景は到底理解出来ないもので。

 

『良くやったな!』

 

『おめでとう!』

 

『まぁ、及第点だ』

 

何で、お前は祝福されているんだ?

 

俺よりも強いお前も化物じゃないか。

 

草を刈るより簡単に人を殺せる力がありながら何故そんな言葉を掛けられる?

 

何故、他人から愛されている?

 

意味が分からない。

 

気持ちが悪い。

 

折られた肋が痛む度に思い出すその光景が。

 

心底気持ちが悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

「貴様が、ぬくぬく生きてきた奴が俺の存在を否定するな!」

 

さっさと死ね!というが早いか四方八方から襲い来る砂を避ける。

 

…俺が勝ったせいで変な執着が生まれてる!?

やべぇよ…こんなの想定してないって!

 

どうする?どうしよう?と混乱する俺を睨む我愛羅と目があった。

 

暗い瞳。

その中に激情を押さえ込んだ恨みがましい目を見て。

 

ちょっとだけ、昔の事を思い出した。

 

本物のお前(原作のロック・リー)なら、きっと…』

 

それはこの世界に生を受けて自我を持ってから。

毎朝鏡の中にあった目だった。

 

「……俺は、お前とは違う」

 

自然と言葉がこぼれ落ちた。

 

俺はお前みたいに強くない。

人を殺す覚悟をしているつもりでも土壇場になればどうなるか分からない。

 

一人でも走り切るつもりだったけれど、今となっては二人と…先生と離れるなんて出来ないだろう。

 

そう言う面では俺は弱くなった。

楽しいと、そう感じてる暇なんて無いとがむしゃらに修行していた頃よりも。

 

精神的に弱くなった。

 

「俺には大切なものが出来ちゃったから」

 

全てを擲ってでも強くなると息巻いていた頃の熱はもうない。

 

でも、今の俺が昔の俺に劣るとは思わない。

 

「それでもお前には負けてやれない」

 

此処でお前を倒さないと将来的に詰むってのもあるが。

なによりもそんな目をしてる奴が気に食わないと思った。

 

「孤独はキツいか?…そうだろうな」

 

それに耐えられる奴なんて一握りだ。

 

そんな経験をしたら仕方がないとは思う。同じ様なケース(うずまきナルト)を間近に見て、実際に胸糞悪く思った事だってある。

 

「殺さなきゃ認められないのか?…そんな事はないだろう」

 

今の時代、殺さない方が丸く収まることの方が多い。

人柱力として迫害されていてもマトモに生きている奴だっている。

 

現にナルトは捻くれず真っ直ぐに生きている。

その結果、仲間と呼べる人間が増えて来てるのだから。

 

「お前を見てくれる奴はいるよ」

 

力を誇示して、周りを威嚇しなくても。

お前を大事に思ってくれる人はいる。

 

「煩い…煩い煩い煩い!」

 

聞きたくないとばかりに砂を叩きつけてくる。

それを回避しながら、時折殴り飛ばしながら話し続ける。

 

「…お前は俺も化物と言ったけど」

 

ゴシャ、と砂の塊を殴り抜いて。

 

「俺達以上の強者なんてその辺にゴロゴロいる」

 

例えばマダラとか。イタチとか大蛇丸とか暁とか宇宙人とか。ガイ先生だってその枠の一人だ。

 

「ちょっとデカくなれて、砂を操れるからって化物気取りは笑っちまうよ」

 

バチッとチャクラで砂を弾く。

 

「お前も俺も、まだまだ人間の範疇だ」

 

拳の届く距離で目を合わせながら真剣に話す。

 

「だから…」

 

続きを言うよりも早く。

 

「黙れ、黙れぇえぇぇえ!」

 

形成された砂の刃が俺を襲った。

背後からのそれを螺旋の回転で受け止め、身体を反転させながら乗り越える。

 

…やっぱり俺じゃ無理か。付け焼き刃の言葉じゃ我愛羅には響かない。

 

ナルトになんとかしてもらわないと。

 

更に苛烈さを増した砂の攻撃を受け流しながら下にいるネジに問いかける。

 

「ネジ、まだ時間かかる?」

 

「チッ、注文が早すぎるぞ…今!」

 

足元を払う様に振るわれた一尾の腕をネジの回天が受け止める。

 

それに合わせる様に震脚で一尾の頭を無理矢理下げさせて体勢を崩させた。

 

一尾の重心が前に傾く。

 

「「ナルト(くん)!」」

 

「やってやるってばよ!」

 

「任せろ!」

 

俺がぶん投げた苦無がナルトに戻り、手にした起爆札の束を一尾の後頭部に押し付けて。

 

足元では起爆札を着けた連結式苦無を持った影分身が一尾の足元に取り付いていた。

 

「「意地でも引き倒してやらァ!」」

 

前傾姿勢に成った一尾の足元が影分身毎爆破される。

…テンテンの奴、ナルトに何を吹き込んだんだろう?

躊躇いなく自爆を選んだナルトに少し鼻白みながら

 

ぐらりと傾いだ重心をチャクラの回転で絡め取ったネジが苦悶の声を漏らしながら地面に引き倒した。

 

「…ッテンテン!」

 

『本番ね、了解!』

 

先程吹き飛んだナルトの影分身から状況を理解したのだろう。

 

投射された第三射は歪な形をしていて…

 

「テンテンさん!?」

 

「トドメなら特等席で見させて貰うわ!」

 

口寄せの巻物を開きつつ。大量にばら撒いた起爆札が一尾の上に振り注ぐ。

 

「ありったけ持ってけ!」

 

一尾の目の前に飛んで来たテンテンの懐が光り輝く。

直後、ばら撒かれた起爆札が一斉起爆、辺りを爆煙が包み込んだ。

 

ナルトにやらせて自分でやらないワケはないとは思ったけど…影分身自爆に起爆札爆弾を合わせるとは思わなんだ。

 

「「っ!?」」

 

ネジと俺の少し間の抜けた声を最後に引っ張られる感覚。

どうやら起爆と同時に口寄せされたらしい。

 

 

「おかえり、二人とも」

 

「…ただいま」

 

「これで沈んでくれれば良いが…」

 

 

テンテンの言葉にしれっと答える俺と白眼で爆煙に遮られた先の一尾を見るネジ。

 

「なぁ、ナルト…」

 

「うん、まぁ影分身だし構わねえってばよ」

 

俺達が纏めて自爆したナルトの影分身には一切言及しないのを見てサスケとナルトが話し込んでいるのを尻目に

 

「…ダメだな。また復活してる」

 

白眼で見ながら顔を顰めるネジ。

 

「砂だから不味いのかな?沼で固めてみる?」

 

水を吸って動きが重くなる可能性も…と続けながらも爆撃を続けて時間を稼いでくれているテンテンに

 

「それで止まれば良いけど…更に重量増したら破壊力が洒落にならなくなるよ?」

 

某海賊漫画でも水分で攻略された砂だがアレは自分の体を砂に変えると言う能力だから通じた話。

 

砂を操る術を扱う我愛羅に効くかは怪しい。

 

砂を操る術は土遁系列だから問題なく操作出来る可能性も捨てきれないし…

 

「あの狸、砂ってよりは生き物よりに成ってる気がするよ」

 

額を殴った時、血肉を持った生き物と砂の詰まった革袋の間みたいな感触だったと告げると

 

「今より重くなったら防ぎきれん…却下だな」

 

チラリとサスケを見て

 

「うちは。そろそろいけるか?」

 

「…あぁ。万全とはいかねぇが」

 

バチリ、とチャクラを雷に変更して腕に這わせながら呟く。

 

「後一回は撃てる」

 

「良し。次は…」

 

とネジが言いかけた所で

 

「俺に行かせてくれってばよ」

 

チラリと俺を見た後、ナルトが口を開く。

 

「アイツの言葉を聞いて、我慢ならねえ部分がある」

 

真剣な眼差しでネジを見るナルトに答えるネジ。

…まぁ、我愛羅とナルトは同じ様な環境で生きてきた同類だものね。

 

「却下だ。お前じゃ我愛羅に勝てない」

 

勿論全員で掛かるのが前提だが。

 

「アレと接近戦をするなら俺かリー…或いはうちはがやるべきだろう」

 

ネジはナルトの目を見ながら話し続ける。

 

「お前を庇いながらだと死人が出る可能性がある」

 

故に却下だと告げる。

 

「それでも!」

 

「…ネジ」

 

ナルトが食い下がるのに乗っかる。

 

我愛羅を殺すのならネジの言う通りだけれども。

この先を考えた場合、此処で我愛羅を消してしまうのは非常に不味い。

 

この状況から軟着陸出来るのか?とは思うが、我愛羅を止めるなら同じ境遇だったナルトが一番効くはずだから。

 

…予想以上に俺に執着してるのがどう転ぶか怖いところだが。

 

「言っても聞かないよ、きっと」

 

チラリとナルトを見ると少し驚いている。

…まぁ、ぶっちゃけ此処までの俺の行動からすれば大分らしくないだろうしなぁ。

 

ネジもそう思ったのか怪訝そうな顔になった。

 

「お前まで何を言い出すんだ?直接我愛羅とやり合ったお前が一番分かってるはずだろうが」

 

今のナルトじゃ力不足だと。

 

そう続けたネジに対して答える。

 

「俺が連れて行く…その先はナルトくん次第だけど」

 

我愛羅の元まで連れてくのはそう難しくない。

現に一度連れて行けたのだから。

 

「ダメで元々、無理そうなら責任取ってちゃんと殺してくるよ」

 

それに…

 

「この様子じゃ勝手に来ちゃいそうだし」

 

チラリとナルトをみるとバツが悪そうに俺を見るナルトと目が合った。

 

苦笑しながら続ける。

 

「それなら最初からそうした方がマシじゃない?」

 

後はまぁ…言いたい事があるってのも少し分かるから。と呟くとナルトを見て何かを察したのか溜息を吐いた。

 

「…お前は言い出したら聞かないからな」

 

諦めた様に少し笑ってから

 

「テンテン、さっきのをもう一回やれるか?」

 

「規模は小さくなるけど…奥の手込みならやれるよ」

 

一点特化に成るから巻き込まれたら死んじゃうけど。と答えるテンテンに

 

「構わん、俺とうちはでアレの気を引くから頭以外吹き飛ばしてやれ」

 

後はお前達の仕事だ。

 

「リーとナルトでアイツ本体を叩け」

 

次はもうない。

時間制限が迫る俺を見て呟く。

 

「どちらにしろ、次で仕留めるぞ」

 

そう告げたネジに全員で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたよ、宿主様?』

 

「煩い…!」

 

酷い頭痛を振り払う様に頭を抱える。

視界の先では体勢を整えた雑魚共が戦意を滾らせた目で俺を睨んでいた。

 

あぁ…うざったい、喧しい。

殺せない俺に存在意義などないのに。

俺の存在を証明するためには殺すしかないのに。

あんな、甘ったるい事を抜かす奴がまだ息をしている。

 

『アイツが憎いんだろう?殺してやりたいんだろう?』

 

心の中から悪意が語りかけてくる。

 

『俺様なら簡単に出来る。主導権を渡してくれればな』

 

ニタニタと嗤う狸を幻視する。

 

「あ、がぁあぁああ!?」

 

頭が痛い。

 

殺したい、殺さないといけない。

あんなものが存在する事を、認められない。…本当に?

 

僅かに浮かんだ疑問を押しつぶすように悪意が語る。

 

『ほら、任せちまえよ』

 

殺意は同じ、結果もいつもと同じだ。

 

『鏖殺してやるよ…悪い話じゃあないだろう?』

 

この間は不完全燃焼だったからなァ!

当てられた激情と共に身体の自由が効かなく成っていく。

 

「守、鶴ゥ…!」

 

『選手交代だ』

 

トン、と背中を押された様な感覚と共に意識が遠のく。

 

やめろ、アイツは…アレは、俺の…!

 

最後の足掻きも虚しく。

ゲタゲタと響く嗤い声を聞きながら。

 

俺は意識を失った。

 





これで一尾on我愛羅との戦闘終了です。
次回は守鶴100%との戦闘に入ります。えぇ、まだ一尾戦なんですね…申し訳ありません。

本来はこの話で決着まで持っていくつもりだったんですがそうすると切りどころが難しくなったため二分割しました。

後、狸寝入りの術さんの出番が消えました。

初期の頃は尾獣ってもう一人の僕方式だと思ってたんですよね…一つの身体に二つの魂的な。

後に別物だと判明したわけですが。

拙作では憑依式の一尾さんはこの様な形とさせて頂きます…

試験的に視点変更に名前を付けてませんが分かりにくければ後入れで追加します

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