月曜日、ギャルについて熱弁する親友。その次の日以降、親友の様子は少しずつ変化していく…

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第1話

◯月曜日

 

 

「ギャルっていいよなー。金髪でアイメイクして、袖とか捲ってると特にいいよな。」

 

朝の登校中、幼馴染で親友の佳樹はギャルについて語っている。俺たちは高校2年生になったが彼女はおらず、専らサッカーと無駄話に時間を割いていた。

 

「俺ってさ、その気になれば彼女くらいできると思うんだけどなー。タイプのギャルがなかなかいないんだよ。」

「同い年のマネージャーはどうなん?そこまでギャルではないけど、みんなのこと気遣ってくれたり、記録取ってくれたりいい子だと思うけど」

「んー、でもやっぱギャルじゃなきゃな!」

「どれだけこだわるんだよ。そこまでいくと、佳樹自身がギャルになった方が理想の彼女になれるんじゃね?w」

「バカ言うなよーw」

 

 

そんな冗談を言いながら、それぞれのクラスに入っていった。

 

 

◯火曜日 

 

 

「おはよー、なんか今日はスッキリ目覚められなかったな。」

 

そう言いながら佳樹は頭を掻いた。少し気になるのは、昨日より髪が伸びているように思えたことだ。心做しかサラサラで艶のある髪になった気もする。

 

「シャンプーとトリートメント変えたか?髪がいつもより艶やかな感じだけど。」

「お、わかるんだ。流石幼馴染!昨日の帰りに、ちょっと高かったけど買ったんだよ。ついでにこのマスコットのキーホルダーも買ったんだよ。今すごく流行ってるみたいで気になってな。」

 

サッカーに明け暮れ、帰りには無限に買い食いして駄弁ってた奴とは思えない発言だった。メンズもののシャンプーや制汗剤は使っていただろうけど、この香りはどちらか言うと女性用な感じがする。それに、流行ってるキャラクターのキーホルダーなんて買っていた覚えがない。

 

「珍しいな、佳樹が流行りのものを買うなんて。それにシャンプーまでも。」

「流行ってるならまずは買いだよね、みんなの話についていきたいし。それにシャンプーはちゃんと髪質にあったものを選びたいじゃん?」

「まあ、わからんでもないよ。」

 

 

少しの違和感を残しつつも、それぞれのクラスに入っていった。

 

 

◯水曜日 

 

 

「昨日のドラマ観た!?めっちゃ良かったよなー!!特に主人公がヒロインに告るシーンはドキドキした!」

 

こいつ、恋愛ドラマ観るタイプだったか?スポ根ドラマとか刑事ドラマの方を好んでたと思うが。それに髪色が明るくなったような、明らかに黒髪から茶髪になっている。他の友達の影響か?昨日からの違和感が増す。

 

「佳樹、他の友達の影響なのかもしれないけど、髪を染めるのはどうなんだ?趣味も変わってきてるし」

「えー、前からこんな感じだよ?それに恋愛ドラマも昔から好きだしー。」

 

なんだろう、月曜日以降から少しずつ変化がいるような気がする。話し方も少し変わったか?

 

「それが好きな人でもできたとか?」

「な、な、何を言ってんのー!!そ、そんな好きな人なんてー。い、いないかも??」

「そうか、ならいいんだが。なんとなくここ数日で変わったというか、柔らかくなった?角が取れたと言うか。」

「ま、まあ!オレも色々と努力してるし!」

「まあ、色々あるよな。」

 

違和感が増す一方、本人は気にしていない様子である。

 

「そろそろホームルームだし、先に行くからな!」

「おーう」

 

 

そう言って早々自分のクラスに入っていった。

 

 

◯木曜日 

 

 

今日、一連の違和感の正体がわかった。佳樹は、少しずつ女子になっている。原因は何か、病気なのか、はたまた世界がそうさせているのか。しかも家族や友達はこの変化に気づいていない、なんなら元からそうであったような様子である。この変化に気づいているのは俺だけのようだ。

 

「おはよー!今日もいい天気だね!」

 

「なんだー?返事がないぞー?」

 

「もっしもーし、聞こえますかー?」

 

そう挨拶してきた佳樹は服装こそ変わっていないが、髪が伸び、髪色も昨日より明るくなっている。背も少し縮んで、話し方もより女子っぽくなった。あべこべな状態だ。

 

「あ、ああ…。朝から元気だな。」

「もちろん!今日の星座占いで一位だったからねー!いいことあるかもー。」

「そうなんだ…」

「なんだー?テンション低いぞー?」

「べ、別になんでもない。そう言えば、部活はどうなんだ?行っているのか?」

「何言ってるのー。毎日行ってるよ?マネージャーとして大切な選手たちのサポートしてるんだから。」

「そうか、楽しそうでなによりだ…」

「何か悩み事?いつでも相談してよ!」

「お、おう、その時は頼らせてもらう。」

 

今の佳樹は男子と女子の中間の、変化の途中な感じだ。おそらく明日も変化があるだろう。幼馴染として、親友として複雑な気持ちだ。知っている人がどんどん変わっていく、現実が改変されるような、知らない世界に来てしまったような気分である。

 

「それじゃあ、またね!うっかり自分のクラスを間違えるんじゃねーぞー!」

「おーう。」

 

 

最後の言葉は以前の佳樹を感じられた。もしかしたらこれは悪い夢で明日には元に戻っているのかもと思えた。

 

 

◯金曜日 

 

 

「おっはよー!なーに、キョトンとして!アタシに見惚れちゃった?」

 

現実は甘くなかった。言葉が出なかった。

 

「今日って小テストあるっぽいんだよねー。マジダルいっしょ!それよりもみんなでカラオケ行きたいってカンジ。」

 

これはほぼ変化が完了したのか。佳樹はギャルになっていた。そう言えば、月曜日にギャルについて力説していたが、概ねその言っていたギャル像に近いものになっていた。女子の制服、金髪、アイメイク、言葉遣い。あの発言が影響しているのか?

 

「まあ、サッカー部のみんながアタシのこと必要としてるっぽいしー、そっちに行ってあげてもいいかなーって!」

「そ、そうなんだ。それなら行けばいいんじゃないか?」

「なーんかテキトー。マネージャーも大変なんだよ?備品管理したり、記録とったり、選手の状態把握したり。」

「色々頑張っているんだな。な、なあ。もしもの話しなんだが、お前が元々は男だったみたいなことって考えたことあるか?ある日から突然女に変わっちまったとか。」

「何それー。てかお前って言うのやめな?モテないよ?アタシには佳子って名前があるんだから呼んでほしいなーって。」

「お、おう。悪かったな佳子。」

 

ヤバい、ついに佳樹から佳子になってしまった。いよいよ俺の知っている佳樹が消えてしまった。本人は全く気づいていない。むしろ昔から佳子であったかのように感じる。俺の口も自然と"佳子"と呼んでしまった。

 

「な、なあ佳子。小学生のころ、一緒にサッカーしたのを覚えてるか?」

「もちろん覚えてるよー。あれがきっかけでサッカーが好きになったんだから。でも、男子の中に1人だけ女子が混ざってるのが変って言われて、だんだん参加しなくなったんだよなー。そこから他の女子と遊ぶようになって。その頃から雑誌に載ってるギャルに憧れて、ギャルになりたいと思ったんだよね。」

「そ、そんな感じだったな。」

 

記憶の改変も進んでいる。本当は少しずつ変わっていたのかもしれない。もう、戻れないところまで来たのかもしれない。

 

「なんか昨日から変だよー?」

「色々考えてちゃってな。」

「いつでも話においでよ!アタシは待ってるからさ!」

「ありがとう。」

 

 

そう言い合ってそれぞれのクラスに入っていった。明日、アイツの家に行ってみよう。

 

 

◯土曜日 

 

 

「佳子?少し待っててね!おーい、親友くん来てるよー」

 

次の日、佳子いや佳樹に会いに行った。俺の疑問を正面からぶつけたくなった。佳樹の母親は変わっていないが、当然記憶は変わっていて佳子と呼んでいた。

 

「お待たせー!何々?アタシに会いたくなっちゃった!?」

「まあな、少し話したいことあってな。」

「ちょっ!何改まって!もしかして告白!?」

「そうじゃないんだけどな。」

「へ、へぇ。そうなんだー。で、何の用?」

「よく聞いて欲しい、お前は本当は男でサッカー部で汗を流すヤツなんだよ!それが少しずつ変化して、どう言う訳かギャルになっているんだよ!!」

「何言ってんの?アタシは元々女だし、意味わかんない。昨日の続き?冗談ならわかるけど、マジになってるの、つまんないよ?」

「本当は佳子じゃなくて佳樹なんだよ!!思い出せ!!いつも冗談言いながら通学したことを!!」

「やめてよ、大声。迷惑。」

「ごめん、熱くなった。でも本当なんだ。どうしてこうなった、俺だけ覚えていて、他の人はお前が元々女だった記憶になっている。俺だけが取り残されている。怖いよ。」

「アタシからするとアナタの方が怖いよ。変だよ。言っていることがわからない。映画の観過ぎじゃない?アタシこの後友達とカラオケ行くから。バイバイ。」

「ま、待ってくれ。」

 

 

扉を閉められてしまった。ダメだ。もうアイツは佳子になってしまった。どうしよう、もうこの状態を受け入れるしかないのか…

そう思いながら、家に帰った。

 

 

◯日曜日 

 

 

何もせず、1日中考えていた。昔の写真やアルバム、小学校や中学校の卒アルを見返してもアイツは佳樹ではなく佳子になっていた。メールやチャットのやり取り、SNSのアカウントまでも変わっていた。ここまでくるともう驚かない。期待もしない。俺1人取り残されてしまった…

孤独感を抱えながら、眠りについた。

 

 

◯月曜日 

 

 

昨日まで何か大きい悩みがあった気がするが思い出せない。それどころかスッキリした気分。いつもの様に朝ごはんを食べ、いつもの様に着替える。顔を洗い、髪を整えて、鏡を見る。いつもと変わらない、いつもの自分だった。まあ、思い出せない悩みなら考えるだけムダかも。

 

「ヤバ!!もう時間じゃん!!」

 

スマホを見ると、いつも家を出る時間ギリギリだった。カバンを持つと、佳子とお揃いのキーホルダーが揺れる。玄関まで駆け下り、急いで靴を履く。

 

「行ってきまーす!今日は友達とカラオケ行くから遅くなるかも!」

 

そう言い残して家を出た。

 

「おっはよ〜、今日もギリギリだねー。」

「おはよー、佳子!SNSで見たかわいい髪型にしてたら時間無くなっちゃたよー!」

「そうなんだねー!その髪型めっちゃ似合ってよ!アイラインもいいカンジだね!」

「でしょー!佳子もやってみたら?あのインフルエンサーの子、他にも色々ヘアアレンジしてるからオススメ!てか、今日の髪型この前言ってたやつ?かわいいじゃん!」

「流石幼馴染!よく気づくねー、この編み込み難しいから早起きしたの。」

「それはツラ。ぜってー授業中に眠くなるやつじゃん」

「それなー。」

 

 

 

───こうして、2人の幼馴染ギャルは学校に向かうのであった。

 


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