犬とお姫様   作:DICEK
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色々あって、比企谷八幡は彼女のことを知っている

「お兄ちゃん、ちょっと会ってほしい人がいるんだけど……」

 

 折本との不意な遭遇からしばらく。勉強の合間、自宅の居間でマッカンを楽しんでいた八幡は、愛する妹の小町からそう声をかけられた。その言葉の意味を吟味することしばし。対面のソファに座るように促した八幡は、明日の天気を訪ねるような口調で小町に問うた。

 

「東南西北白發中。どれが良い?」

「それって麻雀の話? 別にどれでも良いんだけど……じゃあ、白で」

「解った。俺はこれから大量の塩と壺を買いつつ、信頼のできる業者を知らないか陽乃に聞いてくるから、お前は何もせずにここで待ってろ」

「……ちょっと待って、何の話?」

「いや、付きまとってくる男が迷惑だから、どうにかして闇に葬れないかって相談じゃないのか?」

「違うよ! もう、心配してくれるのはポイント高いけど、ただでさえ見た目がインテリヤクザになってるんだから、言葉には注意してよね! 本気にする人だっているんだから!」

 

 もう、とぷりぷり怒る小町はかわいいなぁと思いつつも、半ば本気だったことは口にしない。塩と壺は冗談だが、本当に小町にそういうことが起きたのならば、あらゆるコネを尽くして潰しにかかるだろうことは、自分のことだからこそ想像に難くない。

 

「あのね、塾のお友達のお姉さんが総武高校に通ってるらしいの。すごい真面目な人だったんだけど、最近帰りが遅くなってきて、その……素行が悪くなったんじゃないかって心配してて」

「素行なぁ……」

 

 総武高校は進学校であるが、一応世間一般で言うところの不良というのは存在している。勉強についていけなくなった、家庭の事情、高校デビューに失敗した等々、グレた理由はそれぞれであるが、所謂進学校の不良であるので他所の気合の入った連中と比べるとどこか大人しい。素行が悪くなったのかもと心配している辺り、家族に実害は出ていないのだろう。正直、それ程大きな問題とも思えなかった。小町からの話でなければ、聞き流していたことだろう。

 

 しかし、小町からの話であるなら、どんなものであれ聞かない訳にはいかない。あえて聞いていないふりをしながら、考えを巡らせてみる。

 

 執行部を離れて久しいが、校内における八幡のアンテナはまだ高いままだ。会長であるめぐりとの交流は続いており、彼女は聞いてもいない情報を話してくれる。陽乃閥に所属していた面々も主力のほとんどは卒業してしまったが、まだ校内にもいくらか存在していた。

 

 素行不良の人間というのは、執行部としてはそれなりに重要な情報だ。学内で完結するならばいくらでも揉み消しは可能だが、一度外部に話が漏れてしまうと、それだけ大事になってしまう。外で問題を起こしそうな人間は、それとなくマークしているのだ。

 

 そんな訳で。まだ生きている情報網から素行不良の生徒について情報が八幡の元には集まっていたが、ここ最近となるとまだ網に引っ掛かっていない可能性があった。

 

「その姉は何年だ?」

「今年入学したばっかりの一年生だって」

 

 小町の言葉に、八幡は嘆息した。

 

 素行が不良になったのが最近であれば、情報はまだ入っていない可能性が高い。それでもダメ元で当たってみるつもりで、八幡はスマホを操作した。一年女子で素行不良の可能性アリ。端的に情報を入力していた八幡の指が、ぴたりと止まる。

 

「名前と風貌、解ったりするか?」

「わかんないよ。小町もまだ話は聞いてないし。でも、その子の名前は川崎って言うんだよね。お兄ちゃん、知ってる?」

 

 小町もダメもとで聞いたのだろう。その言葉に期待するような色はなかったが、八幡は川崎という言葉にぴたりと動きを止めた。

 

 素行不良で総武高校の高校一年という情報から、一人の少女の姿が脳裏に思い浮かぶ。女子にしては高い身長、青白いロングヘア―を頭頂部で縛った、とにかく目立つポニーテール。素行不良という印象は受けなかったが、思い返してみるとヤンキーと言われれば、そう見える気もする。

 

 いや、まさか、そんな偶然は……考えを巡らせるが、考えれば考える程、その『川崎』は小町の言う条件に合致するような気がした。

 

 流石に小町も妹で、兄の変化にいち早く気づいた。陽乃と付き合うようになってから、友達以外の繋がりは無駄に増えていると聞いている。同級生の姉がその中にはいっていた所で今さら驚いたりはしないが、楽天的な小町をしても、その話はデキ過ぎていると思った。

 

 そして小町は、こういう降って湧いた幸運に、素直に感謝できるタイプである。兄の正面に回りにっこりと微笑んだ彼女は、兄に無理難題を吹っ掛ける時の声音で、おねがいをした。

 

「お兄ちゃん、協力してくれる?」

「一応な。違うって可能性も考えて、その川何とかにも繋ぎを取ってくれ。二人きりにはなるなよ? ちゃんと人通りの多い所を通って、指定の場所まで連れてこい。不埒なことをされそうになっても安心しろ。その時は壺と塩の出番だ」

「……お兄ちゃんだけだと心配だから、学校のお友達も連れてきてもらえる?」

「かわいい顔して酷いこと言うな。あの学校の俺の友達は一人しかいないぞ?」

「そういう悲しい暴露はもう良いから! 奉仕部って部活を作って女の子といちゃいちゃしてるんでしょ? 陽乃さんから聞いてるよ」

「内申のためで、別にいちゃいちゃしてる訳じゃないんだが……」

 

 少なくとも、放課後集まって過ごしているアレを、いちゃいちゃしていると思っている人間は、八幡を含めて一人もいない。陽乃らしい、微妙に悪意のある伝聞である。ともかく一人よりも二人、二人よりも三人である。女性からの女性がらみの相談であるなら、相談を受ける側にも女性がいた方が良いだろう。

 

「解った。全員の都合がつく日を選ぶから、その日に川何とかを連れてきてくれ」

「りょーかい。あと、壺も塩もなしだからね!」

 

 こっそりと、某通販サイトで壺を検索していた八幡は、小町の言葉にそっとブラウザを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校外から依頼を受けるというのは、そう言えばアリだったのね……」

 

 依頼と言えば彩加の手伝いでテニスをしたくらいで、残りは自発的にボランティアをしたくらいである。奉仕部の依頼として、実質的にはこれが二件目だ。設立の目的を考えるならば、ここで外部からの依頼に奮起しているところなのだろうが、学校生活のカモフラージュの側面が強い部活である。人のために、ということでは唯一奮起しそうな結衣も、部員の身内からの依頼ということで少し気を抜いている風である。

 

「ところで海老名さんに由比ヶ浜さん。その川崎さんとやらに心当たりはあって?」

「同じクラスにはいないよね。体育とかでも一緒になったことはないと思うけど、姫菜は知ってる?」

「私も知らないかな。素行が悪くなったとかなら、少しは目立つと思うんだけど」

 

 一年生の中でも目立つ集団に所属している二人が知らないのだから、学内ではそれ程目立っていないのだろう。素行不良が事実であったとしても、少なくとも同学年の中で実害は出ていない可能性が高い。

 

「そういう雪乃は知らないのか? 実はそっちの学部とかだと話が早くて助かるんだが」

「うちのクラスには川崎さんというのはいないわね。他のクラスとは交流がほとんどないから解らないわ」

「そうか……まぁ、難しいところは会ってみてだな」

「ちょっと待つし、ヒッキー先輩! どうしてゆきのんのこと名前で呼んでるの!?」

 

 結衣にしては、凄い剣幕である。

 

 今この時呼び捨てに気づいた結衣であるが、呼び捨てそのものはこの前、陽乃に連れられて折本に会った時から続けている。それが一週間前のことだ。今週も奉仕部の活動があったが、結衣は家の用事とグループの用事で、今週はほとんど顔を出すことができなかったのだ。

 

 八幡からすれば、実に面倒くさい質問だった。呼び捨ては八幡が自発的に始めた訳ではなく陽乃から言われたので仕方なく始めたことだが、そうであるが故に、八幡にとっては絶対のものだった。陽乃の目が届かないからと言って手を抜く訳にはいかないし、可能性は低いが雪乃本人が陽乃に告げ口をする目もある。陽乃からの、特に雪乃がらみの命令に関しては、特に気が抜けないのだ。

 

「どうしても何も、こいつの姉からそう言われたからとしか……」

「お姉さんに言われたら何でもするの、ヒッキー先輩!」

「そりゃあなぁ。今すぐ死ねとでも言われなければ」

 

 一瞬も躊躇わずに答えた八幡に、質問した結衣の方が絶句してしまった。

 

 犬を自認する八幡からすれば当然の返答であるが、その感覚はそうでない人間には馴染みが薄いものだ。友人からは犬っぽいと評されることもある結衣は今まで、誰かのために何でもするという極まった感性とは無縁に生きてきた。何か言葉を続けようとするが、上手く言葉にならない。うーうーと繰り返す結衣に、助け船を出したのは集まった奉仕部のメンバー三人の中では、最も八幡に感性が近い姫菜である。

 

「それじゃあ、私も姫菜って呼んでくださいよ。ほら、親愛の情でも込めて」

「陽乃がそう言ったらな」

 

 笑顔ですり寄ってくる姫菜に、八幡の答えはにべもない。雪乃を呼び捨てにすることにまだ違和感があったが、それもいずれ慣れるだろう。三人いる中で、一人だけが呼び捨てにされている。見る人間によってはそれは特別扱いとも言えるものだったが、名前で呼ばれた雪乃と言えば、結衣の八幡への追及も、姫菜の要請にもどこ吹く風だった。

 

 それでも、それが当然という風ではない。雪乃を名前で呼ぶ人間は、家族以外では皆無と言って良い。一番呼ぶのが姉で、次が父親、その次が母親だ。家族以外で、それも男性に呼び捨てにされることは、高校一年とまだ幼く、多感な時期である雪乃にとってそれなりに衝撃的なことだったのだが、姉に付き合わされたあの日以降、一週間も時間があったことで、どうにか表面を取り繕うことくらいはできるようになった。

 

 八幡が感じている以上に、雪乃もまた、違和感を覚えているのだ。その微妙な感情の機微を見抜いていたのは、その場の人間では姫菜だけだった。腐った妄想を脳内ではかどらせながら、ぐふふと笑みを漏らす。彼女の脳内では男性に変換された雪乃が、八幡にあれやこれやされているのだが、その妄想には口を挟まないというのが奉仕部の暗黙の了解である。

 

 姫菜の様子を見て、逆に冷静さを取り戻した結衣は、呼び捨ての件でさらに食い下がろうとしたが、その時には八幡は歩みを進めていた。声をかけそこなった形になった結衣は唸り声を挙げたが、友人の不満そうなその態度に、雪乃は口を挟むことができなかった。

 

 自分の友人であるという事実、ただ一点において姉は結衣のことを許しているが、八幡が死にそうになったという事実については、恐ろしいことにまだ彼女の中では整理がついていないようである。結衣とはまだ顔を合わせていないが、下手にちょっかいをかければ怒りがぶり返す可能性もある。雪乃の目から見て、結衣が八幡のことを憎からず思っているのは良く解るのだが、そろそろ自重させた方が良いのではないか、というラインに結衣の態度は迫りつつあった。

 

 元々、親しい人間とは距離感の近いタイプなのだろう。同性である雪乃も、たまに結衣との距離感を測りかねている所がある。男性の八幡ならば猶更だろうが、姉に鍛えられた犬は、年頃の男性ならば挙動不審になりそうな結衣の距離感にも冷静だった。あまりにも冷静なその態度は、お前らとは経験が違うのだと言われているようで、少々気分が悪い。

 

 少女らの心中で様々な感情が燻っているのを気にもせず、ぷらぷらと歩みを進めた八幡が待ち合わせのファミレスに着くと、その姿を見つけた小町が窓際の席で軽く手を振ってきた。その向かいにはこざっぱりした恰好の男子が座っている。愛する妹が知らない男子と向かい合わせに座っているという事実に、八幡の心は瞬時に苛立ったが、そんな八幡の肩を軽く叩く者があった。

 

「ただでさえ怖い顔が、人殺しの形相になっているわよ」

 

 微かな苦笑を浮かべた雪乃である。妹と男が一緒にいるという事実の前には、そりゃあ気分も荒立つだろうと思うが、公衆の面前で人殺しの形相というのも具合が悪い。顔の筋肉をほぐすようにしながら歩いた八幡は、雪乃たちを伴ってファミレスに入った

 

「お兄ちゃん、来てくれてありがとう。こっちが川崎大志くん」

「今日はよろしくお願いします、お兄さん」

「小町の頼みだからな。後言っておくが、二度と俺をお兄さんとか呼ぶな」

 

 怖い顔をしないようにと、僅かに努力しようとしていた気持ちをあっさりと放棄して、八幡は全力での不機嫌な顔と声音でもって大志に詰め寄った。妹フィルターを持っている小町をして、インテリヤクザと言わしめる風貌である。ただの中学生である大志にとって、それは恐怖以外の何物でもなかったが、恐怖で硬直する彼を救ったのは、八幡にとっては女神に等しい小町の行動だった。

 

 友人相手に凄んでいる兄の頭に拳骨を落とすと、全力で自分の隣の席に座らせる。頭を押さえながら自分を見る兄に、小町は小さく舌を突き出した。かわいらしい仕草に、対面の席に座った大志がぼーっとするのが見えた。即座に脛を蹴り飛ばすと、大志は軽く悲鳴を挙げる。テーブルの下で何かをしたのは解ったのだろう。小町がまた拳骨を放つが、これが兄として当然と思っている八幡は、悪びれる様子もない。

 

 兄の子供っぽい姿に深々と溜息を吐いた小町は彼を放って、同道してきた雪乃たちに目を向けた。

 

「はじめまして。妹の比企谷小町です。兄がいつも、お世話になってます」

「雪ノ下雪乃よ。聞いていると思うけど、その人のご主人様の妹になるわ。よろしくね、小町さん」

「海老名姫菜です。部活の後輩……ってことで良いのかな。八幡先輩には、いつもお世話になってます」

 

 小町の初めて顔を合わせた二人は、自己紹介をした後八幡たちの隣のテーブルに腰を下ろした。三人の中で唯一、小町と初めて会った訳ではない結衣は、小町を前に不安そうな顔をしていたが、兄が事故にあった事実など知らないとばかりに、小町は努めて明るく結衣に話しかけた。

 

「お久しぶりです。一緒の部活だったんですね?」

「うん。その、ヒッキ――比企谷先輩には、いつも良くしてもらってます」

「学校で話し相手がいるようで、嬉しいです。これからもうちの兄をよろしくお願いします」

 

 と、型通りのやり取りを横目で眺めていた八幡は、正面に座る大志に視線を戻した。

 

 そうでなければ良いなと思っていたのだが、彼の顔を見て確認した。八幡の記憶にある『川崎』と大志は地味に面差しが似ている。まだまだ他人の空似と言える範疇であるが、年齢、性別、名字、所属など合致している諸々のことが、眼前の少年と彼女が姉弟であることを示していた。はぁ、と小さく息を漏らした八幡は、言った。

 

「お前の姉ちゃん、俺と同じくらいの身長だろう。青白い色のロングヘアーで、このくらいの位置で髪をシュシュで縛ってる。細身で切れ長の目。どちらかと言わなくても、パッと見は怖い印象の」

「ど、どこで見たんすか!?」

 

 姉がどこで働いているのか解れば、問題の半分は解決するのだ。身を乗り出して問い詰めてくる大志に、八幡は彼の本気を見た。本当に、この少年は姉のことを心配しているのだろう。家族に対して心を砕ける人間に、悪い人間はいないと思いたいが、それでも小町に近寄る毒虫には違いない。早いところ問題を解決して、永久にお引き取りを願おう。そうしたいのは山々な八幡だったが、大志の姉である所の川崎――下の名前は確か沙希だったと思う――とは、あまり顔を合わせたくない事情があった。

 

 しかし、それは八幡と沙希とついでに言えば、その時その場にいた陽乃の都合であって、それ以外の人間には関係がない。姉の問題の手がかりを持っていると確信した大志は、梃子でも動かないという顔で八幡の目をまっすぐに見据えていた。

 

 根負けしたのは、八幡の方だった。

 

「姉ちゃんのシフトは解るか? 今日仕事なら、今日話を付けてくる」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

「ただ、何かしてるってことはなるべく気づかれないようにな。俺らが合流するよりも前にバイト先を変えられるようなことになったら、また最初からだ」

「比企谷くん、まさか一人で行くつもり?」

「そうだ、と言えると心強いんだけどな……悪いんだが、一人で行くのは心細い。こいつから今日だって連絡があったら、今日決行ってことで手伝ってもらえると助かる。ジャケット着用の店だからそれなりの恰好をして――」

「ちょっと待って、待って! ヒッキー先輩とゆきのんだけで行くの?」

「話聞いてただろ。こいつの姉ちゃんがバイトしてるのは、それなりの恰好じゃないと門前払いされるところだ。俺は一応そういう服持ってるし、雪乃も持ってると思うが、お前ら持ってるか? そういう服」

「でも仲間はずれは良くないと思いまーす」

 

 ぐぬぬ、と呻く結衣に、姫菜が助け船を出す。結衣と同じく持ってはいないのだろうが、こちらは置いて行かれるつもりはないと目で言っている。置いていくのは簡単だが、姫菜のこの顔は、そうなった場合は勝手にこっそりと付いていくと言っている。一緒に連れて行った方が、おそらく被害は少ないだろう。

 

「こいつら用の服って、見繕えるか?」

「多分大丈夫よ。姉さん程ではないけれど、私も結構な衣装持ちだから」

「ありがとー、ゆきのん!」

 

 感激して抱き着いてくる結衣を鬱陶しそうに、それでもどこか嬉しそうにあやす雪乃を横目に見ながら、八幡は義務的に大志と番号のメアドの交換をした。こういうことでもなければ絶対にしないという不満がありありと顔にあふれているが、姉の問題を解決できると希望が見えたばかりの大志はそれに気づかない。八幡としてはもっと、小町に近づかないようにと釘を刺したいのだが、隣では小町が目を光らせている。

 

 あんまり兄ぶると、しばらく口を利いてくれない気配を感じた八幡は、大人しく大志とアドレスの交換を済ませた。

 

「遅くなっても戻ってこないようだったら、これで連絡してくれ」

「でも八幡先輩。バイト掛け持ちの可能性もありません? そしたら今日は、皆でおしゃれしてデートで終わりですか?」

「バイトはあそこだけだ。本人が言ってたんだから、間違いないだろ」

「この間の一件と言い、不思議な女性の友人がいるのね。もしかして他にも沢山いるのかしら?」

「知り合いであって友達ではない。友達の少なさなら自慢できるぞ? 何しろ一人しかいないからな」

 

 八幡としては会心のネタのつもりだったのだが、それを聞いた奉仕部の面々は一様に不満そうな顔をした。結衣と雪乃ははっきりと、あの姫菜でさえ、八幡が見て解る程度には不満そうな顔をしている。俺の友達が少ないことの、何が不満なんだろうか。本気で首を捻った兄を見て、隣に座っていた小町は深々と溜息を吐いた。

 

 

 





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