因みに例のベートさんに対するヘイトシーンは読み返しててもアレだし皆擦り切れる程見た様な展開だろうから暈してスキップです。
ベルに案内されてたどり着いた『豊穣の女主人』は外からでも繁盛している事が分かる位賑やかな喧騒が中から聞こえていた。
店を覗き込んだベルが少し顔を赤らめながら慌てる様に此方に来たのだが、如何やら店員が女性だらけで面食らってしまったのだそうだ…酒場なんだから客寄せの為に女性店員が多いのは当然なのでは?
取り敢えず入らない事には飯にありつけないので、冒険者の身体能力で対抗するベルを体格と体重を利用した重心操作で難なく店へと押し込んでいく。
「あっ、来てくださったんですねベルさん!!」
「あ、し、シルさん…ど、どうもですっ!」
ベルと一緒に入店すると店員らしき灰色の髪色をした少女がベルを見つけて足早に近寄って来た。
「えっ…?」
「うん…?」
ベルの反応からして如何やら彼女がベルにここを紹介した『シル』という人物なのだと分かったのだが、その彼女は近寄ってくる途中ベルの直ぐ近くに立って居た俺を見て、思わず立ち止まってキョトンとした目でこちらを見てきた。
「あっシルさん、この人は映司さんといって最近オラリオに来たそうなんですが、土地勘が無いので食事出来る場所を教えてくれないかと聞かれたので案内させてもらいました」
「あっ、そうだったんですか…ベルさんは来れたらファミリアの主神様と来ると言っていたのですが、話を聞く限り女神様との事でしたので随分とがっしりとした戦神系の女神様だったのかと勘違いしちゃって…ごめんなさいね?」
「結構ゴツい方の体格なのに女性だと勘違いされたのは初めてだなぁ…」
まさかのベルの話から女と勘違いされてしまっていたらしく、誤解が解けるとパチリと両手を合わせて謝ってきた…てかこんな絶壁どころか洗濯板並みに無乳の女神とか存在しても良いのか?*1
そんなやり取りをした後、シルからテーブル席が予約含めて満席なのでカウンター席へと案内される事となった…ぱっと見結構空いてる様に見える机があるという事は、それだけ団体の客が入ったという事なのだろうか?
「アンタ等がシルのお客さんかい? ははっ、冒険者のくせに可愛い顔と胡散臭いナヨナヨした顔してるねえ!」
「いや俺まだファミリア所属出来てないんで冒険者じゃないっていうか胡散臭いナヨナヨした顔とか酷くない?」
席に着いた途端店主らしきガッシリとした身体付きの女性に思いっきり扱き下ろされたでゴザル…鏡見れてないから分からないんだけど、俺ってそんなロクデナシみたいな見た目してんの?
普通ならもうちょい言い返したいところだけど、なんか見た感じこの女将さんめっちゃ強者のオーラみたいなの感じるから言い返し辛ぇ…創作物でオーラ感じるとか何だよとか思ってたけど、これは確かにオーラ感じますわ。
「なんでもアタシ達に悲鳴を上げさせる程の大食漢なんだそうじゃないか! じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃんお金を使ってくれよぉ!」
「つい最近オラリオに着いたばかりのお上りさんに金銭面での無茶振りは草ァッ!! 取り敢えずこういった場所の値段や量の相場が分からないから、まずはよく頼まれてるヤツを注文させてもらって二人で分けながら食べるんで良いか?」
「僕もこういうお店は初めてなので、それでお願いしますっ!!」
現状如何なるか分からんのに散財なんかしてられんのですよ。
「なんだい男の癖して情けないねぇ…ま、こっちは注文を受ける側だから分かったよ」
そして出て来た大盛りのパスタ、なんていうか流石肉体労働者である冒険者向きと言うべきか、こんもりと様に盛り付けられたパスタにこれまたガッツリとトマトソースが掛けられており、その威圧感はちょっとした小山を彷彿させる代物だった。
「よし、取り敢えずは食うぞ、ベル…ッ!!」
「は、はいっ!!」
意を決してパスタの山を崩しにかかるが、その見た目から分かる量に対して意外と食べるスピードは衰えなかった。
一日中所属する先となるファミリアを探していた為なのか、かなり空腹となっていた身体は食糧を欲しており、そこに味も良しなパスタがくれば若い身体が即座に限界を迎えて食べるのを止める事などあり得なかった。
「食べる手が止まらないとはこの事かねぇ? おっと、喉に詰める様なバカはするなよベル?」
「ホント美味しいですねこのパスタ、他の料理も頼むべきでしたかね?」
「う〜む、現状無職な事に対する焦りを加速させる美味さだなこりゃ」
ベルの方も中々気持ちの良い食べっぷりを見せており、これはお得意様になるのも確定した様なものだろう。
「楽しんでますか?」
一緒に出されたこれまた質の良いエールを煽りながらも二人して夢中になってパスタを食べていると、シルがやってきてベルの隣に着席した、如何やら休憩時間に入ったので自分が誘ったベルの様子を見に来た様だった。
「はいっ、このパスタとても美味しいですね!」
「茹で加減や塩の加減も過不足無し、トマトソースも最後まで不足する心配無い程充足していて文句の付けようも無いな」
シルが来た事で一旦食べる手を止めるベルと、その隙を突くかの様に自身の取り皿にパスタを移しながら感想を述べる映司、ベルはそんな映司に気付かずシルとの談笑に移る。
和気藹々としている二人を傍目に如何やらシルの目的がベルであるらしい事を察した映司は気配を薄れさせながら食べる事に集中し出すが、唐突に十数人程の来客が訪れ予約席の方へと着いていった。
周りの冒険者達がざわめきながらしている噂曰く、彼女達がこのオラリオに於ける二大派閥が一つである『ロキ・ファミリア』の幹部陣らしく、つい先日大規模な遠征を終えてきたらしくその打ち上げなのだとか。
まぁ、個人的にはそんな事よりも今隣にいるベルの様子の方が気になるのだが…。
「おいベル、なんで不審者みたいに挙動不審になってんだ?」
「い、いやだって…」
顔を赤らめながらも様子のおかしなベルであるが、なにやら常に一点を気にしている様だったので、その視線の先を見てみればまるで人形染みた美しさを持つ少女が居た…成る程?
(アオハルってヤツかね? 若いなぁ…)
「そうだ、アイズ! お前あの話を聞かせてやれよ!」
「あの話…………?」
「うん…?」
青少年の健全な在り方にホクホクしていると、当の人形染みた美貌の少女──アイズという名前らしい──に同じファミリアの白髪で目つきの鋭い──声も合わさって某一方通行みたいな印象だな──ケモ耳の生えた男がそこそこ大きな声で話しかけたので思わず注意がそちらに向いてしまう。
如何やら自分達の不始末でミノタウロスというモンスターの集団に逃げられてしまい、結果そいつ等への追跡と撃破をしていた際に最後の一体が危うく初心者らしき冒険者を殺しかけ、ギリギリの所でアイズが倒せたので助かったらしいのだが、その際の怯えた様子が笑えたのだとか…。
(いや普通に自分達の不始末でピンチに陥った人笑うのは端的に言って笑い話にもならない位ダサいんよ…てか同じファミリアの奴等も顔顰める位なら殴ってでも止めようや…うん?)
これがオラリオトップクラスのファミリアなのかという失望から興味も失せ、取り敢えず微妙に残っているパスタを食べ切って会計を頼もうかとロキ・ファミリアから意識を逸らすと、先程までアイズを気にして挙動不審だった筈のベルが俯き何かを堪える様に身を震わせていた。
「(これもしかしてそういう事か?)あ〜…ベるぅおっ!?」
「ベルさんっ!?」
「あ、あの子…」
唐突に走り出したベルに驚いて仰け反ってしまった俺と慌てて追い掛けるシル、駆け出したベルを見て何かしらを察したのかアイズも追いかけていく。
俺もつい先程出会ったばかりとはいえ、あそこまで純粋なベルが勢いで道を踏み外さないか気になりはしたが、ここで俺まで追い掛けてしまうと完全に食い逃げの形になってしまうので会計を済ませておく事にする。
「女将さん、取り敢えず会計オナシャス」
「特別にツケておいてやるから、アンタはさっさと追いかけて一緒に支払いに来な」
「マジっすか、それじゃあすいませんが行ってきます!!」
女将さんの好意に甘えて店を出ると、何やらベルを追い掛けていた筈の二人がバベルの方を向いて立ち尽くしていた。
「あっ、映司さん」
「ベルを追い掛けていたんじゃないのか?」
「それがバベルの方に行ったみたいで…」
バベルに? 拠点とは全然道が違わないか?
「恐らくダンジョンに行ったんだと思う…」
「あれだけ貶された後にダンジョンに…ほう、ほうほう…うっはマジかよアイツ!!」
凹まされてもがむしゃらに強くなろうとするとか主人公じゃねぇかよ!?
「オーケー、それじゃあベルの迎えは俺がやっとくから、取り敢えず二人は戻っときな」
そういうと二人は矢鱈とテンションが高くなっている俺に多少思う所はある様だが、一般人だから変な事も出来ないだろうと考えたのかベルの事を頼む様に小さく頭を下げて戻っていく。
さぁて、何やら世界が動き出す様な大冒険のビッグウェーブ、乗るなら今この
一日中オラリオ見て回ってもピンと来なかった主人公、原作主人公見てテンション爆上がりな模様。
因みにピンと来なかった理由は他所の冒険者達になんか温い雰囲気を感じ取ったからだったりします、冒険者が冒険しないとか矛盾もいい所なのでは? とか言ってやらかすタイプでもあります()