冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

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52.Epilogue

 

 シンやオッタルが倒れたところで、戦争遊戯は継続中だ。女神フレイヤが身に付けている花を散らさない限り、戦争遊戯は続行される。

 

 気絶しているシンを自身の膝に乗せているリューは、ベルにシルを迎えに行くよう進言する。

 

「あなたが行くべきだ。シルをお願いします」

 

「バカ娘のことは頼んだよ」

 

「ベル君、君に任せるッ!!」

 

「はいッ!!!」

 

 皆の言葉を胸に、ベルは女神フレイヤのいる神殿へと走っていく。彼はこれから女神フレイヤを再び傷つける事になる。それでも、彼は進んでいくのであった。

 

「どうして…、どうしてなの…、シンが負けたッ!?あり得ないッ!!最後まで味方でいてくれると…、言ったじゃないの…」

 

 女神フレイヤは、その光景を見ている事しか出来ない。残った数人の眷属たちが、ベル・クラネルを倒そうとするが、今の彼を止められる戦力は残念ながらいない。

 彼女は自身の敗北が近づいて来るのを、ただ眺めている事しか出来ないのだ。

 

 そして、ついにその時がやって来た。

 

「シルさん…」

 

「ベル、止まって」

 

 女神フレイヤは自身の【美】の権能を使うが、ベルには通じない。そのことを知っていたにも関わらず、彼女はベルを手に入れるため、無駄だと知りながらも使ってしまった。

 

「どうして、どうしてなのッ!!どうして、ベルは私のモノにならないのッ!!私の愛を拒むのッ!!私はフレイヤよ!!────シル(・・)ではダメだった…、だから、私はフレイヤを選んだ…。それでもダメなら、私はどうしたら良いのッ!!」

 

「………」

 

「私は愛の女神なのに、…あなただけを愛したくないって、胸の奥がずっと言っている!!好きなの、ベル…、苦しいの、抱きしめて欲しいの…、もう、明日を不安に思うのは嫌ッ!!──あなたが好き、ベル」

 

「僕はあなたのモノにはならない。僕はあなたの伴侶(オーズ)にはなれない。僕には、あなたの『()』を終わらせる事しか出来ないッ!!」

 

 拒まれ、泣いているフレイヤに、ベルはナイフを構える。

 そして、彼は女神フレイヤの身につけている花を散らすのであった。

 

 この瞬間、戦争遊戯はヘスティア・ファミリア率いる派閥連合軍の勝利となった。

 

 

 

 フレイヤ・ファミリア対ヘスティア・ファミリア率いる派閥連合軍の戦争遊戯から数日後。

 

 戦争遊戯で敗北したフレイヤ・ファミリア。その主神である女神フレイヤは、オラリオからの追放とファミリアの解体を言い渡された。

 彼女はそれを拒むことはしない。自身に付いて来ようとする眷属たちに、彼女はこのオラリオで英雄となるよう伝え、それでも拒むのは魅了してオラリオに縫い留めると最終通告をして従わせた。

 

「どうして、負けちゃったのかしら?」

 

 女神フレイヤは最後に、豊穣の女主人で酒を一杯飲んでいた。話し相手は、この店の女将ミア・グランドだ。

 

「理由なんて、たくさんあるよ。まず、アンタが恨みを買い過ぎていたからだろう?そして、ヘディンたちが気を回し過ぎたのもある…。それにフィンが本気だったのも理由だね…」

 

「【勇者(ブレイバー)】は強かったわね。シンがボロボロにされるなんて、驚いたわ」

 

「それは言えてるね。…さて、これからどうするんだい?──今まで通り、働いてお金を稼ぐかい?──どっかのチビ女神は街娘の一人ぐらいなら見逃すって言ったらしいよ」

 

「ダメよ。そんなの惨めだもの…。──さようなら、ミア。楽しかったわ。────ありがとう」

 

 そう言って、女神フレイヤは店を出た。店を出た先では、ベル、リュー、アーニャ、クロエ、ルノアが彼女を待っていた。

 

「シルさん…。行っちゃうんですか?」

 

「そういう決まりだもの。…それとも、また私を振り回す気?好き勝手に暴れて、自己満足で何度も私を振ったくせに」

 

「……うッ!!」

 

「──大丈夫。あなたが恋を終わらせてくれたおかげで、私は救われた。あなたが未練を断ち切ってくれた。──ありがとう、ベル。ずっとあなたを想っているわ。疲れて、飽きてしまうまで…、ずっと…」

 

 リューたちに一瞬だけ視線を向けて、女神フレイヤはリューたちのいる場所とは反対の方向へと歩いていく。

 

「私たちに何か言うことはないのか?」

 

 そのリューの問いに対して、女神フレイヤは女神フレイヤではなく、シルの姿で呟く。

 

「────ごめんなさい」

 

 その言葉が口から出た瞬間に、パチンッ!!!と大きな音が響いた。その音の正体は、シルがリューに頬をビンタされた時に出たものだ。呆然としているシルに対して、リューは涙ながらに声を荒げる。

 

「謝るくらいなら…、償えッ!!私を生かしたのはあなただッ!私がここにいる責任を取れッ!辱めてやるッ!!報いを受けさせてやるッ!!だから、一生、──私たちの側にいなさいッ!!」

 

「逃さないニャ!!ミャーたちには惨めだとか、女神のプライドだとか、知ったこっちゃないしッ!!」

 

「そうそう。だって今、目の前にいるのは、神様じゃなくて仕事の同僚だし」

 

 リュー、クロエ、ルノアの言葉を発した後、アーニャはゆっくりとシルに近づいていく。

 

「フレイヤ様……、──シルッ!!」

 

「─アーニャ」

 

「ミャーは何も分かんニャいけど、シルとお別れしたくないッ!!………行っちゃ嫌ニャッ!!!」

 

 泣きながらアーニャは、必死でその言葉を口に出した。

 

「シルさん…、これ…」

 

 ベルはシルの目の前に行くと、彼女に銀のブローチを手渡した。それは女神祭にて、二つで一つとなるブローチ。ベル自身が持っていた騎士のブローチを彼女に渡した。

 

「僕はあなたの伴侶(オーズ)にはなれない。英雄フルランドでもない。だけど、一緒に傷つきながら、あなたを守れる騎士には、なれると思うから」

 

「ベルさん…」

 

「それで…、その…、……」

 

「「「「「「………」」」」」」

 

((((((照れずに、早く言えッ!!!!!))))))

 

 言葉に言い淀むベルに対して、彼を見ていた者たちは全員そのように思うのであった。

 ベルに言葉を綴らせたのは、彼の師匠(マスター)であるヘディン・セルランドの睨みだ。

 

「うぅん…、…い、いけない子猫ちゃんだ。もう悪さをしないように、ずっと見張っててやる。覚悟しな。…ははっ」

 

「ベルさん!!────私は女神を辞めたい!!私は、ずっとここにいたいッ!!皆の側で、シル(・・)でいたいッ!!」

 

 涙を流しながらずっと心の奥底で望んでいた事を、シルは言葉に出した。

 それを聞いて、歓喜したアーニャたちは彼女に抱きつく。もう、離さない。そのような気持ちで…。

 

 

「これで良かったと思うか?」

 

 豊穣の女主人の2階の一室で、窓から覗きながら、事の成り行きを見ていたシンとフィン。彼等の使っているテーブルには、高級な酒が何十本と置いてあった。それも半分以上が空だ。

 

「最善かは分からないけど、悪くは無いよね。彼女は救われたと思うよ。少なくとも、僕にも、君にも、その他の者たちにも出来なかった事だ。彼女を救えたのは、間違いなくベル・クラネルだけだったよ」

 

「そうだな…。あの無自覚天然人たらしも今回の件で、自分がモテるということを自覚しただろうな…」

 

「そうだと良いね。彼はそういうのに鈍感だったから」

 

「にしても、リューのあのビンタは痛そうだったな」

 

「そうだね。レベル6のビンタか。加減されていたとはいえ、痛そうだったね。君もやられるんじゃないかな?」

 

「あり得そうだから、言うな。マジで現実に起きそうだ。言っておくが、今も疲労は回復していないんだ」

 

「自業自得だよ」

 

 そう言って、フィンはゴクゴクッと酒を飲んでいく。これは全てシンの奢りなので、彼は容赦なく飲んでいた。そんな彼同様に、シンもまた酒を飲む。

 そして、これからの事をフィンに尋ねた。

 

「……お前等はディオニュソス関連の騒動の根源である【穢れた精霊】の討伐を行うのだろう?」

 

「そのつもりだ。間違いなく60階層か、それよりも下にいるだろう。もう少し都市が落ち着いてから、派閥連合での遠征を行うつもりだ。まぁ、今はフレイヤ・ファミリアが解体されたから、ギルドと連携して色々としなければいけないけどね。それに…」

 

「それに?」

 

「移動教育機関【学区】がそろそろ帰港するらしい。そちらとの調整もあるんだ」

 

「色々大変だな」

 

 フレイヤ・ファミリアが表向きは解体されている。つまりはフィンの所属するロキ・ファミリアが必然的にオラリオの第一ファミリアとなってしまう。ロキ・ファミリア団長のフィンはこれからやる事が山のようにあるのだ。

 

「本当に飲まないとやってられないよ」

 

「──なぁ、フィン」

 

「ん?どうしたんだい?そんな真剣な目で僕を見るなんて?愛の誘いならやめてくれよ。ティオネにも、君の彼女にも、ボコボコにされるからね」

 

「お前に愛の告白なんてするわけないだろう。──遠征の件だ」

 

「遠征の件?」

 

「オレもお前たちと一緒に行っても良いか?」

 

「へっ!?」

 

 シンが口にしたのは、フィンがとても予想出来なかった事だ。あまりの内容にフィンは驚いていた。

 

「そんなに意外か?」

 

「意外だよ。どんな心境の変化かい?」

 

「別に…。深層に倒さなければいけない怪物がいるからな。そいつを倒せるのは、今のところオレだけだ。お前たちと一緒に行けば、食料やらルートなど、一人で行くよりも幾分かマシだと思った。…それに、お前も敵を倒す力になると判断した」

 

「深層には、どんな怪物がいるんだ?」

 

「オレよりも圧倒的に強い奴だ。故に少なくともオレは、海賊団時代までの強さに戻さないといけない。忙しいと思うが、もし時間があるなら、オレとの修行に時間を作れ。お前との修行は糧になると判断した」

 

「それは光栄だね。詳細はシラフの時に話してくれ。君の口ぶりからして、まだ時間的余裕はあるのだろう?」

 

「まぁな。少なくとも、修行する時間はある」

 

 戦争遊戯の件で、シンは修行を止めていたが、戦争遊戯のおかげで、成長出来た部分もかなりあった。

彼はこれから本格的に始めようとしている。

 

「そうか…。この先も困難が待ち受けているね」

 

「そうだな。愛する者の為にオレは強くなる。リューの笑顔を守りたいからな」

 

「良いね、そういうの。僕も小人族のお嫁さんが欲しいよ」

 

「オレとリューはまだ結婚していないぞ」

 

「まだ、だろう?」

 

「………」

 

「黙るとは、君らしくないね。ほら、もっと飲んで色々と話を聞かせてもらうよ。君たちの馴れ初めや君が彼女を意識した瞬間。入院していた時にも、何やら会話をしていたようだね。その時の件も詳しく聞こうか」

 

「誰からの情報だよッ!!」

 

「さぁ、誰だろうね?」

 

 フィンの尋問を受けながらも、シンは酒をゴクゴクッ!!!と飲む。彼に負けじとフィンも酒を飲んでいく。

 尚、シン曰く、この日の酒代は過去一のものだったらしい。

 

 

 

 第4章 愛【完】

 

 

 

 

 




第4章『愛』完結です!!
ここまで見てくださった方、ありがとうございます!!
お気に入り、高評価、感想をしてくれた皆様、大変ありがとうございます!!!応援はとてもとても励みになります!!!

面白いと思っていただけたら、高評価やお気に入りをいただけると嬉しいです!!!!
かなりのモチベーションになります!!!!!!!!!!

次章の投稿は未定です。
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