ニセコイ・モウソウ   作:ぬめり

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今回はプロローグ的な?前編的な?感じです。
こっから長くなるかどうかは僕の枯死寸前のアイデア次第でございます。
全然ラブコメしてませんね。ホントにごめんなさい。
相変わらず小説の書き方はよくわかっていません。語彙力皆無人間とは私のこと。


第十五話

 目覚ましも鳴っていないのに、何故か目が覚めた。いつもならジリリリとけたたましい音の目覚まし時計の音で耳障りだというのに。

 寝ぼけ眼を擦って、ぼやけた視界を矯正する為に眼鏡を…あれ?

 

「目が見えてる…」

 

 感覚的に眼鏡はかけていない。眼鏡をかけたままに寝たということではない。いや、そんなことより、

 

「ここ…一条の家か…?」

 

 本来なら僕は洋式の一軒家、その自室のベッドの上で寝ていなければならない。

 なのに、僕が居たのは和室で、敷布団の上。この間取りには見覚えがあった。それで、一条の家であることが判断できた。

 だが、これが夢なのか、現実なのかという判断はつかない。頬をつねって痛くなければ夢であるというベタな確認方法を取ってみた。痛い。夢か現実のどちらであるのかは分からないが、少なくとも痛覚があるのは分かった。

 

 ここでじっとしていてもどうにもならないから、立ち上がる。身体の風通しが良い。身体に目をやると僕は和服寝巻きを着ていた。こんなものを着ていた覚えはない。僕はパジャマだったはずだ。

 もう一つ身体に目を向けて気付いたのは身体付きの違い。どこか違う。男の身体であることに変わりない。しかし肌の感じや手足の大きさやら、何か細部が違う。

 

…とりあえず、洗面所とか、鏡のある所で自身の姿を確認するか…?

 

 恐る恐る、部屋の戸を開く。襖だった。横にガラガラと開いていく。外に現れるのは廊下。木造の家の匂いがする。また恐る恐る足を踏み出して部屋を出た。

 自分の家では感じたことのない奥行きを感じる。どこがどう繋がっているのだろう。進んで行くと、旅館みたいな廊下だった。着物を着た仲居さんでも通りかかりそうな雰囲気だ。

 

「お!坊ちゃん!おはようごぜーやす!今日はいつもよりお早いお目覚めで!」

 

「!?」

 

 突然角から出没し、朝の挨拶をしてきたのは、確か一条のところの…竜さん?だったか。鋭い目つき、顔についた切り傷、整えてツンと尖った口髭。ヤクザということも相まって威圧感がある。

 

「どうなさいました?坊ちゃん?」

 

 何故、僕のことをまるで一条のように『坊ちゃん』と呼ぶのか。全く思い当たる節が無い訳ではなかった。

 

「べ、別に?おはよう。えー、と、偶には早起きも悪くねぇかなーなんて。あー、と…ち、ちょっくら洗面所行ってくるわ。り、竜」

 

「そうですかい!そりゃ、殊勝なことでございやすなぁ!…って、洗面所は方向が逆ですぜ、坊ちゃん」

 

「お、おーそうか!まだ寝ぼけてるみてーだな、は、はは…はぁ」

 

 …渾身の一条のモノマネはどうやら通用したみたいだった。大きな違和感を抱かせることもなく、この場はやり過ごせた。あの人声でかかったな…怖。この後もヤクザに会うかも知れないのか。僕の心臓は持つのか?

 

 フラフラと歩いて、若干迷いながら洗面所についた。鏡を見る。目の前に居たのは僕…ではなく、一条だった。

 

「ははっ…」

 

 乾いた笑いが口から漏れる。あまりにも予想通りだった。声を出した時に一条の声がするなとは思っていたのだ。予想内すぎて逆にびっくりするくらいだ。こういう時「ぎゃあー!」とか「うわー!」とか出たら、リアクション的には正解なのだろうけれど。

 

 水道水で顔を洗う。冷たい水だった。頭が少しスッキリした。僕の姿は一条のまま。

 口角を引き攣らせて血の気の引いた鏡に映る顔はどうしようもなく一条楽という人間だった。佐藤悠也という人間はどこにも映っていない。共通点といえば気の抜けた顔だということくらいだろうか。

 

 今日は平日だったはず。すると、この身体が一条であることを前提に勘案すれば、僕は現実を確認する為にも学校に行かなければならない。体調が悪いフリをして学校を休み、対応策を練るという選択肢もあるにはあるが、僕の…僕の身体の方がどうなっているのかが知りたい。

 なら、とりあえず行くしかない。

 

 

 制服に着替えて登校する。着慣れた男子制服だったから大して時間がかかるなんてことはなかった。ただ他人の野郎の下着姿を近くで見るという体験はあまり良いものではなかった。

 

 歩いていると、桐崎さん、鶫さん、小野寺さん、宮本さんの姿が見えてきた。今日に限ってどうして雁首揃えてるんだ。エンカウントの回避はできなかった。

 

「珍しいわねダーリン。いつもならギリギリの癖に」

 

「ちょっと早起きしちまってなぁ〜?」

 

 癖にって何だ癖にって。どんだけ信用無いんだよ一条は。

 僕が…いや、一条が…?よく分からないな。とりあえず僕だ。僕が来て皆んなは歩みを進めた。

 

「…さまー…ら…さま…」

 

 …何か遠くから聞こえる?

 

「くさまー!ら・く・さ・まー!!」

 

「うぉぉぉ!?」

 

 橘さんがいきなり飛びついてきた!?何で!?いや、僕が一条だからか!

 

「…あら?あらあら?今日は何だか反応が初々しいですわね」

 

「貴っ様ぁ!一条楽!お嬢というものがありながら他人の女の抱擁に赤面などしおって!」

 

 鶫さんが袖口から仕込み銃を出して僕に突きつけてくる。前門の虎後門の狼というやつか。いやそんなこと冷静に考えている場合じゃない。

 

「つ、鶫さ、じゃなかった。…つ、つぐ、み!銃を向けるのをやめてくれ!た、橘も抱きつくな…ぐ、力が強い…!?」

 

 橘さんをまず引き離そうとしたがなかなか引き剥がれない。この人病弱設定とか無かったっけ!?ぬぐぐ、強い!

 

「はぁはぁ…やっとか…」

 

「っもう!いけずですこと」

 

「このまま眉間に一発いきたいところだが…ふんっ」

 

 橘さんを剥がすと鶫さんは銃を下ろした。なかなか怖かった。命の危険というものを感じた。

 

「ふぅ…」

 

 体力と精神力がごっそりと削られた気分だ。

 

「…何だか…違う?」

 

 鶫さんと橘さんに板挟みになっていた僕を見て、宮本さんは眼鏡を輝かせる。…その違和感、全くもって大正解です。

 

「そうかなぁ?いつもの感じだよ?」

 

 宮本さんの発した言葉に対し、小野寺さんが反対意見を出した。成程これは鈍感である。そりゃ一条の恋心にも気付かないってものだ。

 

「うーん、そうかしら…?ま、そうね気のせいかも」

 

 あ、折れた。

 

 

 一悶着あって学校に着いた。もう疲れている。しかし、こういうのをほぼほぼ毎日体験しながら登校している一条って一体どんな心持ちなのだろうか。あれに「やれやれ」くらいで済ませているのだとしたらアイツは悟っているんじゃないのか?

 そんなことを一条の席で考えていると、

 

「よっすー!」

 

 舞子が機嫌良さげに教室へと入ってきた。隣には僕。

 ん?僕?…僕だ!?

 なんか挙動不審な僕がいるぞ!?他人から見える僕ってあんな感じなのか!我ながらビックリするくらい影薄いな!?

 

「あら、舞子君、今日は遅いから休みだと思ってたのに…ケッ」

 

「酷いなぁ、るりちゃ〜ん。でもそんなキツいお言葉が気にならないくらい俺は上機嫌なのだ〜」

 

「佐藤くんおはよ」

 

「あら無視?」

 

 めちゃくちゃガン無視された舞子は置いておいて、僕がついに口を開く。さぁ、第一声はどう出る?これによって僕(一条)の対応が変わってくるぞ。

 

「よう…じゃなかった…おはようござい、ます?宮本…さ、さん」

 

 うっわ。

 

 僕以上に辿々しい。見ていて恥ずかしいぞ僕。ていうかあれ僕なのか?絶対違うよね?

 

「あ、おーい楽〜!聞いてくれよ!」

 

 舞子がこっちに来た。

 

「なんと!なんと!悠也がさ!ついに!俺のこと名前で呼んでくれたんだよ!」

 

「へっ?」

 

「おいおいリアクション薄いなぁ?これは大事件だぜ?中学では終ぞ呼んでくれなかった下の名前で…ついに…ついに!今日から悠也が真の友達になった気分だぜ…!この喜びがわかんなぇのかよ!?」

 

「あ、あー…その、そうだな!うん!感動的…だぜ!」

 

「だろ〜!?」

 

 アンタの目の前に居るのがその悠也なんですがね!?どういうことだよ!?僕は何してんだよ!?

 

 僕(一条)は僕に視線を向けた。すると僕は僕(一条)からの視線を逸らした。焦ったような表情でだ。

 …絶対中身が僕じゃない。中身は予想がつく。おそらく、いや、絶対にそうでないと困る人物だ。

 

「悠也…?」

 

「…!?な、何でございましょう!?」

 

「休み時間、ちょっと良いか?」

 

「は、はい…」

 

 

「実は俺─」

 

 僕…いや、彼の口から語られたのは思った通りの内容だった。

 

「朝起きたらお前の家で、鏡を見たらお前の姿になってたんだよ」

 

 一条はそう語る。僕の声で。僕の姿で。

 今、僕たちはあまり人の来ない校舎裏の物陰で話をしていた。目の前に自分がいるというあまりにも非現実的な現象を体験しながら。

 

「…まーじで、どうすりゃ良いんでしょうな」

 

「わっかんねぇ…つか、お前妹居たんだな」

 

「言ってなかったっけ?」

 

「初耳だよ…」

 

「まじか」

 

「…積もる話はあるが、先ずは原因か?何か思い当たる節はねぇか、悠也?」

 

「思い当たる節…ないことも…ない」

 

 僕がそう呟いた瞬間だった。どこからともなく、シャラランと琴の音が聞こえる。

 そして、おたまが現れた。

 

「その通りじゃ。わらわがやったことなのじゃ。どうじゃ凄いじゃろ?」

 

「うわっ!?どっから現れたんだこの子…って、確か、おたま、だっけか?」

 

 突然の事態に驚く一条。そして想定内の事態に首をガクッと落とした僕。

 

「そうじゃ一条楽。稲荷神社で会ったぶりじゃの」

 

「…お前が…犯人か…おたま」

 

「犯人とは人聞き悪いのぉ。これはお主らの知り合いが願った結果じゃ」

 

「「知り合い?」」

 

「教えてやらんでもないが…ここは、そうじゃの、暫く様子見じゃ。ではの。今日の夕餉はカレーライスじゃからなー」

 

 おたまは消えた。おそらく僕の家に帰ったのだろう。

 

「…どうしよう」

 

 僕は一条に確認をとった。

 

「とりあえず、情報交換だ。一日を乗り切る為にも、互いの家庭事情は把握しとかないとなんねぇ」

 

「じゃあ、僕から先に。家族構成は─」

 

「─成程な。妹の早苗は最近機嫌が悪いから、こっち側から話し掛けないのが吉と…。他には何か気をつけないといけねぇことはあるか?」

 

「そうだな…言葉遣い…もう手遅れかもだけど、なるべく気をつけるように。一人称は『僕』だからな」

 

「僕、僕…よし。分かりましたぜ!」

 

「それは誰だよ…まぁ何とか頑張ってくれ。一条の方は?」

 

「俺は─」

 

 一条は自身の家に住む父親の名前、ヤクザの構成員達の名前を言っていく。また、気をつける点なども言っていった。

 

「─いかんせん組員の人数が多いな…覚え切れない…」

 

「そんときはなぁなぁで何とかやり過ごしてくれ」

 

「きっつ…」

 

「あ、そうだ。明日、そういや朝飯の担当だったな俺」

 

「え?僕料理なんてできないんだけど?」

 

「俺の部屋にある本棚の右下、確か辞書の隣だったかな、に、レシピ帳があるんだよ。付箋貼ってあるからそれを頼りに何とか頑張ってくれ」

 

「さっきから何とかばっかりだな。大丈夫かな…」

 

「…まぁ…イケるって信じようぜ。とりあえず、一日」

 

 半ば無責任で楽観的な一条の励ましに胸が痛む。不安が襲う。僕と一条が入れ替わっているという事実がバレた時、一体何が起こるというのだろうか。それに、元に戻ることは可能なのだろうか?おたまに言ったら…ん?ちょっと待て。

 

「一条、僕の家におたまが居るって言ってたっけ」

 

「言ってねぇ…」

 

「危なかった…。僕の部屋は階段登って最初に見える右側の扉ってのは言ったよな、その部屋におたまは居座ってる。何とか強請ってでも元に戻る方法を聞き出してくれ」

 

「おう、分かった…!」

 

「…頑張れよ一条」

 

 僕は何となく決意の表明的な感じで手を差し出した。

 

「お前もな悠也」

 

 一条は僕の手を握って握手を交わす。

 

「こ、…これは…一体どういうことなのだ…?」

 

「「え?」」

 

 声がした。2人して首を真横に曲げると鶫さんが居た。なるほど。ふーん。

 

 …話が…ややこしくなった…。

 

 




キャラエミュ間違ってないかいつも不安です。
元ネタはゲーム版の鶫誠士郎と一条楽が入れ替わるエピソードです。中身は完全にオリジナルですが。
こっからどう展開させよう。予め結末は決めているんですがね。どうしたもんか。
次回は気長に待っておいて下さい。そして更新されたことに気付いたら、見てもらえると嬉しいです。

因みに言うとマジで早く原作路線に引き戻して、2年生編まで行ってキャラを気兼ねなく自由に扱いたいもんでございます。ポーラ出したいんじゃ。後、もうちょっとこの二次創作の主人公を気安くオリキャラ達と喋らせるようにしたい。
でもなーんか、拗れちゃう…。どないひまひょ…。
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