ギルドに着いたベジットは早速、自分の冒険者カードに記載されている様々なスキルに目をやっていた。
盗賊スキルの時と言い、彼なら要らないのでは?と疑問に思うだろうが、彼から見たらこの世界の魔法は未知のモノだ。
「気も魔法と変わらないだろ、はナシだぜ?」
冒険者の職業は本職に比べて魔法の威力が落ち、修得するまでのポイントが高いなどのデメリットがあるが、様々なモノを修得出来るのだ。
そして修得したベジットは開いた右手を前に出すと、その手から水が出た。
このスキルは"クリエイト・ウォーター"と言い、
名の通りに水を生成する"水魔法"である。
「あらら…ショボいな。
そう、この魔法は魔法職だろうと誰も修得しない"初級"魔法だ。修得するならば火力のある"中級"や"上級"を優先するだろう。
だがベジットはとある事を考案していたが、他の仲間達が来たのでそれは一旦保留する。
「おおっ!随分と派手になったではないか。」
「紅魔族の我が採点しますと、このヒラヒラと靡く上着が特に高得点です!」
「そいつはどうも。にしても似た服がよくあったな〜?」
「前の道着とあまり変わらないじゃん。これじゃあ、まだまだ"ファンタジー感"は無いわね?」
「「ファンタジー感…?」」
自分も含めて皆が言うベジットの新しい服装については少し遡る。
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とある日の出来事…
ベジットはそろそろ同じ道着を着続けるのはどうかな?と思い、街を散策していたら偶然にも雑貨屋を見つけ、そちらに目をやる。
『
妙に名前に引っ掛かるがそれは置いといて、そもそも自分の道着の素材はこの世界に無い事はわかっている。それでも似た様な物があるかもしれないとそう思ったベジットは雑貨屋に入る。
『いらっしゃいませ、よく来てくれた。』
『悪いがこれと似た服はあるか?無かったら無かったで構わない。』
『ほうほう…少し待ってくれ。』
『ああ…。』
"イケメンの店員"は店の奥に入っていた。
まさかお目当てのモノがあるかもしれない事に少々驚くベジットは店員に言われて通りに待っていた。
待っていると店の入口から何やら騒がしい声が聞こえて来た。
『おい!アルバイトが来てないぞ!?…っておお!これはこれはお客さん騒がして悪かった。いらっしゃいだな!!』
『元気なヤツだ…。』
勢いよく店から入って来ては、焦った様な声を発するのはここで働いていると思われる"筋肉隆々の店員"だ。
イケメンの店員を探していたのかこの店員も慌てて店の奥に入って行く。
『へへっ!見ない顔だな?初見でこの店を選ぶとは物珍しいね〜!さあ、何分居てくれるかな?』
『さあな。』
今度は店の奥から品出しの為に出て来たのは、こちらもここで働いている"爬虫類っぽい店員"だった。
『お待たせして悪かった。この様なのはどうだ?』
『ほーう。』
カウンターから戻って来たイケメンの店員がベジットに見せるその服は
"赤色のタートルネック型の長袖のインナー"
"水色の帯"
"赤色のズボン"
"足にまで伸びている黒色の開きの上着"
"白の手袋と靴"
と言った自分が今着ている道着と似ていたのだ。*1
『いいじゃねえか、そいつを買うぜ。』
『毎度あり。まずは寸法を測定し服の調整します。2日後には全て済ましておきますので再度この店にいらっしゃって下さい。受け取りの際に5万エリスの支払いをお願いします。」
寸法を測定し終えたベジットは店に置いている他の品を一通り目を通していたところにまた店員らしきモノが入って来た。
『お前達の話は聞いた…アルバイトなど放っておけ!』
『『『なっ…!!店長…!?』』』
「オレ達は今日中に
『『『は…はっ!!』』』
どうやらここの店の店長らしく、"冷たい眼差しに尻尾の生えた異形"が特徴だ。
そしてこの店長の登場により、少し怯えていた店員3人だった。
ベジットは思った。この顔を見た事があると…
『(
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そして今に至る。
「それはそうとダクネス。鎧の無いお前は何か珍しいな?」
キャベツクエストの時に率先して他の冒険者の盾となっていた事により鎧はボロボロになり今現在は修理中との事だが、本人は鎧が無くてもそれなりに防御が固いと自負している。
「(攻撃を当てるのにもう少し努力しろ。)」
「な…何を見てる…っ!さては…私の事を『いちいちエロい身体をしやがるぜ…!このメス豚が!!』って思って…!」
「……どうした?めぐみん。」
「成長さえすれば…我だって成長さえすれば…!!」
「くう〜また無視しゃれた〜…でもやっぱ良いっ!!///」
「早くお金を稼ぎましょうよ〜。」
ベジット達は討伐クエストなどを受ける為に様々なクエストが張られている所謂クエストボードを見に行った。
「じゃあ、また蛙にすっかな?」
「もう少し高難易度のクエストにしましょうよ!」
「ええ!その通りです!」
「なら"
「それにするか。」
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そこは夜も相まって薄暗く、手入れのされていない数多の墓が建てられており、いかにも不気味な場所に到着したベジット達は討伐対象のモンスターが出現するまでは待機しつつ、バーベキューでお腹を満たしていた。
「お前達、いつでも戦える様にちゃんと食っておけよ?」
「「「はーい。」」」
「ベジットさん。私にも水を下さい。」
「ああ。」
発動したクリエイト・ウォーターの水は、めぐみんが持っていたコップに一杯分の量が貯まる。
「少し火が弱いな。抑えてっと…ほっ!」
今度は力を抑えに抑えた気功波で焚き火の火を強める。
「気味の悪い場所だから景気良く…そらよ!はじけてまざれっ!!!…なんちゃって。」
お次は上空に気功弾を放ち、勢い良く手を握り締めると気弾は破裂し、まるで花火の様に発光する。そんな光景にアクアとめぐみんとダクネスは少しうっとりとした表情になっていた。
「…って何で器用に魔法と光線を使いこなしているんですか!!」
「そう言われても水に関しては水分補給に便利だし、火に関してはオレのこれで十分だから。としか言えないな。」
残りは風や土などの初級魔法があるのだ。
「ねえベジット。引き受けたクエストってゾンビメーカーの討伐よね?」
「そうだ。取り巻きのゾンビ共を土に還してやれって条件付きだ。」
そもそもゾンビメーカーとは死体に乗り移ってゾンビを操る悪霊の事で、初心者冒険者でもプリーストさえ居れば、油断さえしなければ討伐を出来るモンスターだ。
「ん?…1…2…3…4…5…妙だ。」
生きている人間とは違い死人故にほんの微量の気しか無く、感じ取り難いが何とか感知するも言ってた通りよりも数が多い。その中には大きめの気が一つある事に疑問に思うベジット。
「もう少しバケモンだと思っていたが…あれがゾンビメーカーか?」
高台から覗いた光景は地面に魔法陣が発生しており、その上に立つのはローブらしきモノを身に纏い、フードで顔を隠れている為、素性は判らないがシルエットから見て人間だ。その人物に向かって集まって来るゾンビの群れ。
「あーーーーっ!!アイツ…!?」
「何だ?アクア。おい待て…。」
何かを勘付いたアクアはベジットの静止を無視して高台から飛び出し、その狙いは魔法陣を出す人物に向けていた。
「ちょっとアンターーーっ!!」
「…っ!!?」
突然のアクアの声で勘付く人物だが、それよりも速く彼女の拳が振りかざされる。
ドオーーーーーーン!!!
「ひ…。」
あまりの突然の攻撃により地面に尻もちをついたお陰か直撃を免れたが、拳で地面を抉ったアクアに恐怖を感じて動けない様子だ。そしてフードが取れた事により、その正体はロングヘアーの女性だったのだ。
「"
「きゃーーーっ!!誰ですアナタはーーーっ!?」
更に捲し立てるアクアに更に恐怖になるリッチー。
その様子は見ていた3人は…
「え…?」
「リッチー…?」
「ソイツは何だ?」
「アンデッド風情が怪しげな魔法陣を作っちゃって何する気だったのよ!」
「やっやめてーーっ!壊さないでーーーっ!!」
ゲシゲシと魔法陣を踏み続けるアクアを必死に止めようとリッチーは奮闘するが止まる気配が全く無い。心なしかゾンビ達もやめてくれと懇願している様に見える…
「それは迷える魂を天に還す為の物なんですーーーっ!!それが無いと墓場が成仏出来ない魂で溢れ返っちゃいますーーーっ!!」
「そんな善行、リッチーのくせに生意気だよ!迷える魂ならアタシが纏めて浄化してやるわ!!」
まだまだ止まらないアクアは開いた手を前に出すとその手から魔法陣が発生し、光が溢れていた。
「"ターンアンデッド"!!!」
拡散する眩しい光はゾンビ達を包み、一瞬にして光の粒子になったのだ。勿論近くに居たリッチーにもそれは影響する。
「きゃーーっ!!身体が消える!?やめて!成仏しちゃうーーっ!?」
「さあ愚かなるリッチーよ!欠片も残さずに粉々に打ち砕いて…」
バシャーーン!
「もうその辺にしな、少し頭を冷やせアクア。」
アクアを嗜めたのはベジット。
彼女の顔はクリエイト・ウォーターの水によってずぶ濡れになっていたのだ。
「あ…危ないところをありがとうございました…私はリッチーの"ウィズ"と申します。"
「さっきはコイツが悪かったな。オレはベジットだ。」
「ベジット…さん…ですか。」
「ベジット!そんなのと喋ったらアンデッドがうつるわよ!!」
「喚くな。ところでさっき『魂の成仏』とか言ってたがお前がここのゾンビ達を成仏させているのか?」
「はい。あの…この共同墓地の魂はお金が無い為ロクに供養もしてもらえず、天に還る事も出来ず毎晩彷徨っていまして…」
ウィズはリッチーの自分としては迷える魂を哀れに思い、定期的にこの墓地に来ては天に送るとの事だ。
彼女がやってる事は"閻魔大王"とほぼ一緒だな、と思ったベジットは同じく日本人の魂を導く仕事をしていたアクアをチラッと見る。
「要はお前の様に甘いヤツは珍しいだけで、他の連中は金さえ出せば成仏なり何なりするって事だろ。」
「"金が物を言う"とは良く言ったものだ。」
「拝金主義の背徳者ですね。」
「は…はい。ハッキリと言いますね…。」
ようやく本来のゾンビメーカー討伐の話題に切り替わる。まずは邪魔なゾンビ達の出現を止める様に言う。
「あの子達は呼び起こしている訳では無く、死体が私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです。」
「その魂さえ無ければお前がここに来る理由も無くなるって事か。じゃあこうしよう。」
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すっかりと朝陽が昇っており、早朝から街の人達が働いている姿が見えてくる中に戻って来たベジット達。
「納得いかないわ!何でアタシが定期的に浄化しに行かなきゃならないのよ!!」
「修行になるし別に良いだろ?それともオレと修行をするか?それも…前より厳しくな。」
余程ベジットとの厳しい修行はイヤだったのか?アクアは次にウィズと会ったら必殺技のゴッドブローをお見舞いしてやると誓うのだった。
「でも穏便で済んで良かったです。もし戦っていたら私やダクネスは勿論死んでますし、もしかしたら…ベジットさんでも苦戦していたかもしれませんね。」
「アイツは態度こそあんなんだが、内に秘めている力は相当あるな。」
リッチーとは魔法を極めた魔法使いが人間の身体を捨て、成り果てたアンデッドの王。絶大な魔力と魔法防御を持ち、半端な武器では傷一つつけれないに加えて触れるだけで相手の魔力や生命力を吸い取る伝説級のモンスターなのだ。
「案外
「そうでしたらとんだ大物に何故アクアのターンアンデッドが効いたのか…我の爆裂魔法がどのくらい通用するか試したいです。」
アクアが正真正銘の神様だからこそ、伝説級と言われたウィズが泣き叫ぶ程に効いている浄化技を使えるのだ。でも…やはりまだ信じていない様子のめぐみん。
「正気を吸われて意思に反して従属させられるのは悪くない。いや…しかし相手がリッチーでは…流石に…。」
「へえ〜お前でもリッチー相手はキツいのか。」
流石に防御とタフのダクネスでも触れられるだけで生命力を吸われた終わりだ。
「まあどんなに防御や吸収があろうが必ず限界や弱点はあるけどな。」
「「え…??」」
"タワーに潜む怪物"や"吸収式の人造人間"、直近では"魔獣"や"魔人ブウ"と今まで戦った経験だ。ブウに関してはポタラで合体して、ようやく余裕で対峙出来る様になったが。
まあウィズに関してはそもそも戦う理由が無いし、本人もそこらの人間やモンスターなんて比では無い程の心優しいリッチーだからだ。
「さあて…お前達も眠たいだろうしさっさと帰るか。」
「「ふわーい…。」」
「そう言えば討伐クエストはどうなるんだ?」
「「「あ…。」」」
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「おはようだウィズ。朝から仕入れか?」
「あ、おはようございます。」
「以前は死んだ顔になっていたが、今日は随分と生き返った顔をしているな?」
「ち…ちゃんと生きてますよ!?それに悩み事が解決したからです!!」
「ほーう…件の死人共の事か。この街にお前の様な甘いヤツがいるとは驚いている。」
「それ…この前も言われました。私って…そんなに甘い…ですかね?」
どうも悪ブウにバレたカズマです…
善ブウを人質にしてやったぞーーっ!!ザマァス!!善ブウに必死にしがみついている俺を攻撃すれば、その衝撃でこいつが剥がれてお前がお前じゃ無くなるのは知っているんだぜ?
プークスクス!必死になってる悪ブウワロタ。
ねえ?今どんな気持ち?どんな気持ち?
さて…おふざけはこれで終わり…取引と行こうか。
そこの吸収した4人を全て引っ剥がせ!勿論…お前がしろ!!
なんて事をしていたらまさかの来客登場…???