Fate/Unfinished   作:サルンパス

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今回少し長いです。


第四章 荒廃 後編

ふと、目の前を走っていたランサーが止まる。その前には青い髪の美男子がいた。

「…貴様、混ざりものだな。しかしまぁ、此度も面白い奴だ、貴様は。」

状況が読めない。ランサーの知っている人…?でもランサーが知っているということは、きっと北欧の誰か…。

 

頭の中をフル稼働させる。容姿の整った男といえば、豊穣の神フレイ。勝利の剣を持ち、黄金の猪を連れているはず…。わからない。情報が少なすぎる。混ざりもの、というのも引っかかる。

 

背中から降り、ランサーに近付こうとするが、青年に止められる。

「やめておけ。敵か味方か分からないんだぞ。」

 

確かにそうだけれど、正体が気になる。彼の腕の後ろで、ランサーに隠れた美男子を見ようと必死にジタバタする。

「何なんだあんた!どっかのお嬢様じゃなかったのかよ?!」

 

揉みくちゃになっている私たちを見て、こちらにゆっくり歩いてくる。

「へぇ…面白いじゃん。特に紫のお前。なぁんか、引っかかるんだよな」

 

彼を眺める美男子をじっくりと見ていると、私の目線に気付いたのか視線を移す。

 

「あんたは…あー…まぁ、いいんじゃねぇの?チョット不安定だけど、面白いぜ。なんとなぁく生理的に受け付け無いところもあるけど?そこも愛嬌ってことで許してやるよ。」

 

ランサーは珍しく眉をひそめている。怒りとも違う、一種の悲しみのような…。

「…行くぞ。興味が失せた。今日は貴様の好きにさせてやる。」

 

私の好きに?彼が?

「…大丈夫ですか、ランサー。どこか優れないところでも…」

 

「黙れ。何も聞くな。」

ランサーは無理矢理、青年と私の首根っこを掴んで離れようとする。

「まぁ、待てよ」

 

美男子はランサーの目の前を遮る。

「お前らも聖杯戦争参加者だろ?僕も喚ばれた側でさぁ。でもうちのマスターったら放りっぱなし。着いてってもいいだろぉ?ちゃあんと力になるからさぁ。」

 

『無理だ。』

ランサーと青年がほぼ同時に拒絶する。

 

「何故ですか?仲間は多い方が良いでしょう。それに、ランサーは彼のことを知っているんでしょう?」

 

私の言葉にランサーは掴む力を強める。

「貴様は黙っていろ。それにこの停電は此奴のせいではない。今は後回しだ。」

 

そこまで言われては流石に黙るしか無くなってしまった。

 

────────────────────────

停電したサーバー街とホテルの中間地点。

「やはりな。良い宝具だ。だが、戦力自体は低いことに変わりない。お前は私のところまで誘導してこい。」

 

「…了解しました。」

兜の男は瓦礫や車の間を通って消えて行く。それからしばらく。男の元に来たのは違う人物だった。

 

「…お前が、そういう男だったとはな。師として、いや、元同級生として心が痛むよ。その痛む心もないがなッ!」

後ろ手に持っていた折れた鉄パイプで殴り掛かろうとする。

 

しかし元同級生と言われた男は一歩下がり、指を鳴らす。

 

すると倒れていた市民達がゆらりと立ち上がり始める。目はどこを向いているのか分からず、口からは血と涎が垂れ流しになっている。

 

ギリッと奥歯を噛み締める。

「そんなことをするために…お前に魔術を教えた覚えは無い…!」

鉄パイプは男ではなく、目の前に壁となって立ち上がる人々(死体)に鈍い音を立てて当たり、冷たい血が飛ぶ。

 

「私はこの後も予定が詰まっていてね。誠に申し訳ないが、君と戯れる暇はないのだ。雑な魔術だが許してくれよ"教授"」

 

そのとき、教授を取り囲む人々(死体)に閃光が突き刺す。道具離れたどこかから、弾丸のように降り注いでいき、いとも簡単に壁を崩していく。

 

「…それが貴方のサーヴァントか。全く、いつまで経っても貴方は、私の邪魔ばかりする…!」

倒れた人々(死体)を無理矢理、魔術で立ち上がらせる。原型を留めていないもの、体が欠如した者。その血すらも操る。

 

血は矢のように閃光の元である方向へ飛んでいき、肉は教授を津波のように覆い被さる。

教授はただ鉄パイプを魔術で強化し、剣のように肉を切り裂く。

 

鉄同士が弾け合う音を立てながら、後ろから何かが近付いてくる。

 

『教授!!』

 

後ろから放たれた朱色の魔弾により、肉の壁は爆ぜていく。しかしいつもの強さは失われている。

 

やはり、何らかの魔術的干渉か…。魔術で強化してやっと、本来の力が出せる程度。まるで霧がかかっている様だ。とは言えアーチャーの援護も今は望めない。

 

崩れた壁の隙間から兜の男が見える。そしてそれを追うランサー。不味いなこれは…。

「隠れろ!!」

私の声に少女と青年は一度攻撃を止め、瓦礫や車の影に隠れる。

 

先程までビルの隙間を撃っていた冷血の矢がくるりと向きを変え、私達へ向かってくる。

 

車の窓を割り、瓦礫を削っていく。そして、壁を突き破り、その隙間から私の体を穿つ。

痛みは無い。しかし皮膚である人工素材を突き破り、肉である2Dポリアラミドを削っていく。

 

 

『おっと、そんなの面白くないよな?』

どこかから聞こえた軽薄そうな声と同時に、当たり一面が白くなり、後ろに引っ張られる。

 

────────────────────────

気が付くと、まだ崩れていない道路に立っていた。どういう訳かアーチャー付きで。

そして青髪の男が壁に寄りかかったまま、こちらににやりと笑いかけている。

「さっきぶりだな、役者方。そっちのボロボロのは知らないけど、お前たちのお仲間なんだろ?それに、お前が一番面白そうだからな。オマケってことにしてやるよ。」

 

男はランサーの方へ歩いていき、肩をぶつけて去っていった。




更新遅くなりましたm(_ _)m
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