ふと、目の前を走っていたランサーが止まる。その前には青い髪の美男子がいた。
「…貴様、混ざりものだな。しかしまぁ、此度も面白い奴だ、貴様は。」
状況が読めない。ランサーの知っている人…?でもランサーが知っているということは、きっと北欧の誰か…。
頭の中をフル稼働させる。容姿の整った男といえば、豊穣の神フレイ。勝利の剣を持ち、黄金の猪を連れているはず…。わからない。情報が少なすぎる。混ざりもの、というのも引っかかる。
背中から降り、ランサーに近付こうとするが、青年に止められる。
「やめておけ。敵か味方か分からないんだぞ。」
確かにそうだけれど、正体が気になる。彼の腕の後ろで、ランサーに隠れた美男子を見ようと必死にジタバタする。
「何なんだあんた!どっかのお嬢様じゃなかったのかよ?!」
揉みくちゃになっている私たちを見て、こちらにゆっくり歩いてくる。
「へぇ…面白いじゃん。特に紫のお前。なぁんか、引っかかるんだよな」
彼を眺める美男子をじっくりと見ていると、私の目線に気付いたのか視線を移す。
「あんたは…あー…まぁ、いいんじゃねぇの?チョット不安定だけど、面白いぜ。なんとなぁく生理的に受け付け無いところもあるけど?そこも愛嬌ってことで許してやるよ。」
ランサーは珍しく眉をひそめている。怒りとも違う、一種の悲しみのような…。
「…行くぞ。興味が失せた。今日は貴様の好きにさせてやる。」
私の好きに?彼が?
「…大丈夫ですか、ランサー。どこか優れないところでも…」
「黙れ。何も聞くな。」
ランサーは無理矢理、青年と私の首根っこを掴んで離れようとする。
「まぁ、待てよ」
美男子はランサーの目の前を遮る。
「お前らも聖杯戦争参加者だろ?僕も喚ばれた側でさぁ。でもうちのマスターったら放りっぱなし。着いてってもいいだろぉ?ちゃあんと力になるからさぁ。」
『無理だ。』
ランサーと青年がほぼ同時に拒絶する。
「何故ですか?仲間は多い方が良いでしょう。それに、ランサーは彼のことを知っているんでしょう?」
私の言葉にランサーは掴む力を強める。
「貴様は黙っていろ。それにこの停電は此奴のせいではない。今は後回しだ。」
そこまで言われては流石に黙るしか無くなってしまった。
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停電したサーバー街とホテルの中間地点。
「やはりな。良い宝具だ。だが、戦力自体は低いことに変わりない。お前は私のところまで誘導してこい。」
「…了解しました。」
兜の男は瓦礫や車の間を通って消えて行く。それからしばらく。男の元に来たのは違う人物だった。
「…お前が、そういう男だったとはな。師として、いや、元同級生として心が痛むよ。その痛む心もないがなッ!」
後ろ手に持っていた折れた鉄パイプで殴り掛かろうとする。
しかし元同級生と言われた男は一歩下がり、指を鳴らす。
すると倒れていた市民達がゆらりと立ち上がり始める。目はどこを向いているのか分からず、口からは血と涎が垂れ流しになっている。
ギリッと奥歯を噛み締める。
「そんなことをするために…お前に魔術を教えた覚えは無い…!」
鉄パイプは男ではなく、目の前に壁となって立ち上がる
「私はこの後も予定が詰まっていてね。誠に申し訳ないが、君と戯れる暇はないのだ。雑な魔術だが許してくれよ"教授"」
そのとき、教授を取り囲む
「…それが貴方のサーヴァントか。全く、いつまで経っても貴方は、私の邪魔ばかりする…!」
倒れた
血は矢のように閃光の元である方向へ飛んでいき、肉は教授を津波のように覆い被さる。
教授はただ鉄パイプを魔術で強化し、剣のように肉を切り裂く。
鉄同士が弾け合う音を立てながら、後ろから何かが近付いてくる。
『教授!!』
後ろから放たれた朱色の魔弾により、肉の壁は爆ぜていく。しかしいつもの強さは失われている。
やはり、何らかの魔術的干渉か…。魔術で強化してやっと、本来の力が出せる程度。まるで霧がかかっている様だ。とは言えアーチャーの援護も今は望めない。
崩れた壁の隙間から兜の男が見える。そしてそれを追うランサー。不味いなこれは…。
「隠れろ!!」
私の声に少女と青年は一度攻撃を止め、瓦礫や車の影に隠れる。
先程までビルの隙間を撃っていた冷血の矢がくるりと向きを変え、私達へ向かってくる。
車の窓を割り、瓦礫を削っていく。そして、壁を突き破り、その隙間から私の体を穿つ。
痛みは無い。しかし皮膚である人工素材を突き破り、肉である2Dポリアラミドを削っていく。
『おっと、そんなの面白くないよな?』
どこかから聞こえた軽薄そうな声と同時に、当たり一面が白くなり、後ろに引っ張られる。
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気が付くと、まだ崩れていない道路に立っていた。どういう訳かアーチャー付きで。
そして青髪の男が壁に寄りかかったまま、こちらににやりと笑いかけている。
「さっきぶりだな、役者方。そっちのボロボロのは知らないけど、お前たちのお仲間なんだろ?それに、お前が一番面白そうだからな。オマケってことにしてやるよ。」
男はランサーの方へ歩いていき、肩をぶつけて去っていった。
更新遅くなりましたm(_ _)m