呆気にとられていた一行だったが、一人が声をあげる。
「教授!体が…!」
人の身体であったらとっくに亡き者になっていただろう。痛くは無いものの、体がぎしりと軋み、ひび割れるような感覚に眉をひそめる。少女は教授の体に手を触れ、魔術で応急処置をする。
「…一時的に進行を遅らせているだけです。しっかり処置しないと、体が崩れてしまいます。」
少女は教授の体を支え、歩き始める。青年も反対側から肩を貸す。
ランサーは獲物を逃がしたこと、そしてあの男に助けられたことを不満げにしながら、彼が去っていった方向を見つめる。
気が付くとあの男は姿を消していた。
「…チッ」
アーチャーはマスターの状態を心配し、その脆い体を支えられぬ事を悔しがった。
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教授を少女の家まで送り、青年はエントランスで立ち止まった。
「さっきの戦闘で武器がダメになった。一度山に戻る。」
そう言って扉を開けようとするが、また足を止める。少し沈黙してから、静かに、しかしハッキリと言葉を紡いだ。
「…令呪を持って命ずる。ランサーとアーチャー、そしてそのマスターを守れ。…これが、俺の答えだ。」
手の甲の印が輝き、応えるように霊体化していたサーヴァントが姿を現す。
「承知。我が剣、主の命にて存分に振るわせてもらおう。」
髪を一本に束ねた、群青の剣士。古風、そして背中に携えた刀は、本で見た刀より長く、まるでシーツすら干せそうに見える。
「その、刀は…」
剣士は興味深げに少女の顔を覗く。
「ほう…珍しきかな。刀を知るうら若き乙女がいるとは。今世は良い主に恵まれたものよ。」
青年は剣士を尻目に見て、扉を開く。
「直ぐに戻る。」
そう言って霧のように消えていった。
しんとしたエントランスを離れ、教授を客間のベッドに寝かせる。
「錬金術は然程得意では無いのですが…」
「悪いな。構成要素を伝えれば出来るか?」
「もちろんです。ただ、有り合わせにはなりますが。」
教授はそれでも構わない、と要素をメモさせる。メラミン、エチレン、ナイロン、シリカ、etc…
それを含む物質をかき集め、教授の前に置く。スポンジだったり、ジャケットだったり…。
「ああ、それで足りる。後でその分の料金は転送しよう。」
素材さえ分かれば後は出来る。不得意言えど一通り学んだのだ。
素材と教授の体に触れ、私の体を通して変換する。
残ったのは要素が崩れて形を保てなくなった素材達と、新品同様の教授の体。ただし服は穴だらけでみすぼらしくなっている。教授の真剣な顔と合わなくて、思わず笑ってしまう。
「ふ、ふふ…んんっ……すみません。お洋服、用意しますね。」
部屋から出ると先程の剣士が立っている。その左の廊下を渡り、三つ目の部屋。お父様が使っていた部屋にそのまま残された
教授の元に持っていくと、露骨に嫌そうな顔をする。
「…それ、君のお父上の物だろう。着ないぞ。」
「これしかないですから…。」
しぶしぶと言った様子で着始める。フリルシャツに鮮やかな青のベストと膝下パンツ。靴は揃っていないのか、元のサドルシューズでみっともない。オマケに服が一回り大きく、肩幅も何も合っていない。
「……」
無言で彼女を見つめる。目を逸らしたいのはこっちなんだが。
「…ま、まぁ…その服、一応礼装ですから…。あ、私は着れないのでそのままどうぞお使いください。」
「タダでも要らん。」
部屋の外からこっそりこちらを見ていたサーヴァントは、思わず笑い声を漏らす。教授がしばらく笑いものになった後、チャイムの音が鳴る。エントランスに向かう私を、サーヴァントと教授は追う。教授は服を指で弄ったり、少し胸を張ってみたり、何とかして着こなそうとしていた。
絵が無いと分かりにくいですよね。そんな絵は上手じゃないので出すかは分かりません。