グレイリーヴが壮大な家系ということは比較的常識だ。しかし五十二億の歴史と言われると理解が追いつかない。果てしなく遠く、想像も難しい。
「教授、早く降りないと別の階に連れていかれますよ。」
彼女の声に意識が現実に戻される。
「あ、あぁ…すまない。」
彼女は理解が出来ない生物だ。理解出来てしまえば、それは恐らく彼女ではない何かだ。そして同時に理解しようとしてはいけない存在なのだろう。
エレベーターを抜け、地下一階に足を踏み入れる。二、三度入ったことはあるが、いつ見てもここはおぞましさと神秘が共存している。
「ここは本来入れない場所なんだろ?」
「はい、グレイリーヴの権限があって初めて入場が許可されます。」
「…ページをめくるのも許可が必要か?少し不安なんだが。」
「流石にそこまで厳しくありませんよ。強いていえば、立ち読みではなく席に座っていただきたいですね。」
「分かった。座って読ませてもらう。監視するならしてくれ。」
エイヴィは肩をすくませる。
「何か勘違いされてませんか?ここにある本は全て写し、原本はもっと厳重な場所に保管されています。勝手に写したりしない限りは違反にはなりませんよ。」
「…そうか。」
少し顔を背けながら本を探すふりをする。
「エイヴィ。」
エインガルの声に振り返る。
「どうされました?」
一度呼吸を置き、再び口を開く。
「いつもの場所に居る。戻ってくる分の許可証だけ貰えるか。」
「…もちろんです。」
エレベーター前のモニターを操作し、署名する。
「好きな時間にまたこちらへ。」
「あぁ。」
小さなサーヴァントは教授の手を握ったまま、閉まる扉の隙間を見て一礼する。
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扉が閉まり切り、エイヴィは踵を返す。長机には既に本を読み始めているシンがいる。自分も本を選ぼうと本棚へ向かった。
「こっちだ」
グイッと腕を引っ張られる。少しだけ不機嫌そうなランサー。随分と待たせてしまったようだ。
「ふふ、ごめんなさい、ランサー。好きなだけ読み漁って良いですよ。」
引きずりながら室内を行ったり来たりする。本棚の上から下まで目線をやり、時々手に取りペラペラとページをめくる。またすぐに戻し、別の本を開く。
腕を掴まれたまま、ちらりとページを盗み見る。ある独裁者の話、世界を変えた悲惨な事件、歴史の影となった血塗れた戦…。
少し遠くでため息が聞こえた。シンは本を閉じたまま、机の上で潰れている。その場で声をかけた。
「知りたいことは、知れましたか?」
顔だけこちらに向ける。
「…いいや。祖父の名前は乗ってなかった。」
「…ハサン・サッバーハの当主は十九代までですからね。それとも、お祖父様との情報が合わない、ですとか?」
こちらを向いたまま硬直する。エイヴィはランサーを引っ張って行く。
「お話、伺っても?」
「…まぁ、隠すことでもないか。アンタらには。」
シンは姿勢を正し、エイヴィと向かい合った。
「俺の祖父の名前は、サーイーブと言うんだが…」
今いい感じで脳内にストーリーが浮いてるんですけど、書くの大変…忙しい…