Fate/Unfinished   作:サルンパス

20 / 29
続き


第八章 継承 後編

「…は?」

 

まただ。またそうやってこいつは理解不能なことを言う。

 

「よく考えてみてください。暴露されたくない情報を握っている人間がいたら、あなたはどうしますか?」

 

「…バラされないように、要求に答える…?」

 

「正解です。同じことですよ。やろうと思えばいつでも出来てしまうんです。それにこういうことは、世間に残したくないことでしょう?」

分厚い本をぺらぺらとめくり、あるページで指を止める。

 

「今から三年前、航空機ハイジャック事件がありました。イギリス行きの飛行機は目的地を変え、乗客全員への金銭要求と引き換えに一般道路へ墜落しました。」

 

「…生かすつもりなんてなかったのか?」

 

「…どうでしょう。私は当事者ではないので。…本当は着陸するつもりだったのかもしれませんね。」

 

「…そうか。」

 

「…犯人の三人組の一人が操縦士を刺殺。そのまま操縦席を奪ったようですが…。操縦士と犯人を含む乗客のうち九割が死亡。生存者六名のうち五人が重症でした。」

 

「…俺に話したってことは…それは…」

 

「…残念ながら、お祖父様が殺害した、“ハサン”を名乗る暗殺者の生き残りによる犯行かと。」

 

シンは何も言わず、俯いた。何度も本に記された犯人の証言の文を目で追った。膝の上に置かれた手は震えていた。

 

「…俺は、こいつらを見つけ出して殺せばいいのか…?」

 

エイヴィは答えてくれない。静かに本を閉じ、元の場所に戻しに行った。

 

横で霊体化していたアサシンが声をかける。

「そう気に病むことではあるまいよ。主は孫であって当事者ではなかろう?」

 

まだ俯いたまま、一点をぼんやりと見つめている。

「でも、俺は…託されて、ここに来て…」

 

「…主の好きなことをすれば良い。」

アサシンはシンの肩に手を置きながら、また空気に溶けていった。

 

────────────────────

「…あれで良かったのか。」

エイヴィの後ろを歩く男が話しかける。

 

「なんのことでしょう?」

 

振り返ることもなく、ただ棚へ向かって歩いていく。

 

「お前はあの男をどうしたい。利用か、それとも救済か?」

 

「私はただ真実を見せただけです。」

 

「…答えになっていない。質問に答えろ。お前はどうしたい。」

 

「特に、何も。好きなように生きて欲しいだけです。」

 

背後でため息が聞こえた。

 

「厄介な女だ。」

 

まだ本棚の前ではないが、歩を止める。

 

「そういえば気になっていたのですが…。」

 

「…なんだ。また気色悪いことじゃないだろうな。」

 

「奥様に、どのような感情を持っていたのですか?いつご結婚を?」

 

「…知らん。」

 

「…そうですか…残念です。」

 

「お前は隙あればあいつの話だとか馬の話をするがな、今の俺は知らん。」

 

「でしたら、また今度の機会に。」

 

「やめろ。何度聞かれても答えは同じだ。」

 

微笑みながら、エイヴィはまた歩き始める。本棚の空いた箇所を埋めるように本をしまった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。