「…そういえば、少し前のことですが。」
エイヴィの言葉にランサーは耳を少し傾ける。上から見下ろす訳でもなく、ただ正面を見ていた。
「…あなたが興味を示していた人物はあの青髪の方でしょうか?」
「雰囲気の問題だ。あいつ個人への感情ではない。」
「召喚されてすぐに、ですか?それにあなたはあの日“見知った空気”と言いましたね?人物以前にも何か違和感があったのでは?」
「…お前がそう食いつくのなら、少しは関わりがある、か。そうだと言うなら話すが、人間には難しい話だ。」
「そういうものを理解するのが魔術師で
す。」
ランサーの灰青の瞳がエイヴィをじっと見つめる。指先まで力が入り、体が強ばる。
「…魔術師以外も、だと思うがな。」
ランサーは顔を背け、エイヴィの腕を引っ張り、早歩きでシンの元へ戻った。
「…あぁ、おかえり。」
シンは少し顔をあげるだけで席に座ったまま動かない。それを無理矢理剥がすようにランサーが引っ張った。
「考えるなら動け。今は考える段階ではない。行動しろ。」
「…俺に殺人犯になれって?」
「サーヴァントの一騎でも手にかければ、見える景色も変わるだろう。」
はぁ…と溜め息を着きながら席を立った。
「わかった、頭には入れておく。そもそも、俺の将来以前に聖杯戦争をどうにかしない限りは進まないからな。今は忘れることにする。」
「…教授を迎えに行きましょう。おそらく連絡しても気付いてくれないでしょうし。」
「一階だったな。一階には何があるんだ?」
エレベーターへ向かいながら出来るだけ明るく話す。
「現在は閲覧可能な普通の本ですよ。個性的ではありますが。」
「制限されてるのは、この階“だけ”なのか?」
「…さぁ、どうだと思います?」
全員がエレベーターに乗ったのを確認し、1Fのボタンを押す。
「…まぁ、知られたくないこともあるか。」
長い間、狭いエレベーターが上昇する機械音だけが響いていた。
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エレベーターが一階に到着する音が微かに聞こえた。男は手に持っていた本を閉じ、表紙の文字を撫でた。金の装飾が窓から差す日を反射する。
隣の少年が視界に入る。再び本を見つめ、元の場所に戻した。
「…アーチャー、行こう。」
少年はすぐには動かず、男の瞳を見つめる。男はその目線に動きを止め、少年に手を差し出した。少年は迷わず男の手を取り、音の方へ歩き始めた。