Fate/Unfinished   作:サルンパス

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第十章 照合 後編

本棚の角を曲がる。数列分先に見えるカウンターの近くにエイヴィ達が見える。無機質な表情のロボットが本を積み直し、どこかに運んでいく。その間を縫うように進む。

 

「すまない、待たせたらしいな。」

 

「いえ、こちらの都合ですので。」

 

エイヴィの後ろにいるシンに目を向ける。今朝より顔色が少し良くなったように見える。再びエイヴィに向ける。

 

「都合、と言うのは?」

 

「えぇ、少し。皆さんに伝えておくべきだと思いまして。」

 

エイヴィがカウンターの中に入っていく。

 

「どうぞ、こちらへ。事務室で話しましょう。」

 

奥の白い扉が開かれる。中には一列に椅子が置かれその前に長机があり、紙やペンが散乱している。

 

椅子を一脚持ち上げ、他の椅子の向かい側に移動させる。椅子に体重がかかり、キィと音が鳴った。

 

ランサーは壁に寄りかかり、腕を組んでいる。

 

「まず、俺が召喚されてすぐこの世界に既視感を感じていたということを前提とする。」

 

「あなたの生きた世界に似ていたと…?」

 

「そうではない。あり方の話だ。意図的に何かから遠ざけられているように感じることがある。」

 

シンが静かに口を開く。

 

「その何かってのは分からないのか?」

 

「詳しくは分からない。」

 

「解像度が低い、ということですか?」

 

「あぁ、それが一番近い。そしてもう一つ、月の異常についてだ。」

 

顎をさすりながら、少し目をつぶる。

 

「昨日は見なかったが、確かに明るい日があったな。」

 

 

「月は太陽光を反射する星であり、急に明るくなるなど天体の理を逸脱している。」

 

再び目を開き、話し始めた。眉をひそめながらシンは問う。

 

「地球の外で何かが起きた可能性はないのか?」

 

 

「無いに等しいだろう。本来太陽は人間の眼球が耐えられないほどの光だ。それを代替出来るとでも?」

 

エインガルは足を組み、ランサーの言葉に付け足した。

 

「もしそんな大爆発が起きたとしたら、今頃地球にも影響が出ているだろうな。」

 

「つまり幻覚か、何らかの魔術によって月という存在自体が違う星に変異、すり変わったと考える。」

 

「…流石に無理があるのでは?私が知っている限りでは、そのような実力を持つ魔術師はいません。…昔でしたら、有り得たかもしれませんが。」

 

「そうだとしたら、政府から君に連絡が来るだろう。それに、そんなことが出来る人物はとっくに封印指定になっているはずだ。」

 

三人の思考を割るように静かに声を発する。

 

「いつ人間の仕業だと言った?」

 

「確かに、サーヴァントなら有り得ますが魔力量に無理があるのでは?」

 

「では、一度天体から話を変える。常に身に付けている宝具であり、攻撃を目的としない物だとしたら、魔力はどうだ?」

 

「それは勿論、格段に削減できるでしょう。それと何か関係が?空をプロジェクターにした、なんて言いませんよね?」

 

エイヴィの反応に乾いた声で少し笑いを漏らす。

 

「はは…あぁ…。そこからは自分で導いてみろ。」

 

エイヴィは再び思考の渦に沈んでいく。

「(アルテミスや月読命は月に関係する。動機もまだ理解出来る範囲。でも、あの男性が引っかかる。ランサーが武器も構えず、サーヴァントの近くに行くだろうか…?相当な信頼か、攻撃しないと理解しての行動?)」

 

ほんの一、二分後、ランサーが再び口を開く。

 

「まだ分からないのか?お前なら簡単に導けると思ったのだがな。」

 

「…質問はよろしいでしょうか?」

 

オーディンは静かに頷いた。

 

「あなたが話しかけた青髪の男性の瞳は美しい緑でしたか?」

 

目を細め、エイヴィの目を見て頷いた。

 

「彼は本来、月とは関係していない人物ですね?」

 

再び、同じように頷く。

 

「…彼はずる賢く、好奇心から無意味な行動をすることがありますね?」

 

「あぁ、正解だ。」

 

目をつぶり、答えを確かめながら微笑んだ。

 

「…そうですね、これは秘密にしておきましょう。」

 

「随分と楽しそうじゃないか。」

 

それまでの会話を聞いていたエインガルが皮肉っぽく言った。

 

シンは考えているのか、口を閉ざしている。

 

「えぇ、まぁ。その時が来ましたら、必要最低限のことは伝えますよ。」

 

外のカウンターでは、ロボットが淡々と本を開いては積み上げているのが部屋の小窓から見える。

 

ガチャリと、扉が開き同じロボットが本を運んでくる。

 

「選別が終了しました。補修をしてください。」

 

答えを求めず、ロボットは本を置いて出ていった。

 

「古いタイプのAIか?気味の悪い話し方だな…。なんだかこう…ゾワゾワする。」

 

小窓の先を見ながらシンは表情を歪めた。

 

「えぇ、そろそろアップデートされるはずなのですが…。」

 

少し困ったようにエイヴィは答えた。

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