Fate/Unfinished   作:サルンパス

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前回の投稿に少し文を足しました。良かったら読んでください。


第十三章 視線 前編

「戻りました。」

 

「えぇ、おかえりなさい。どうでした?」

 

霊体化を解きながら目の前に現れるアーチャー。エイヴィの問いに小さく答える。

 

「ただの事故ではないと思います。あの道全てに魔力の残滓が見られました。」

 

「…前回のサーヴァント…?体感はどうでした?動きが鈍るとか…。」

 

「特にはありませんでしたが…。戦闘があったわけではないので、何とも…。」

 

指を唇の下に当てながら、少し考える。今もあそこにいる、ランサーに聞いた方が良いかもしれない。

 

「…度々すみませんが、身体の異常はありますか?前回のような。」

 

電話の向こう側で槍を振るう音が聞こえる。

 

『…問題はないな。ないが…。』

 

「ないが…?」

 

『近くにいるのは確実だろう。攻撃的ではないが、あたり一面染められている。上に逃げろ。』

 

「分かりました。シンさんの体調が戻り次第移動します。」

 

『…いや、迎えに行く。急いだ方が良い。』

 

ランサーのことだ、このまま窓を割って入ってきてもおかしくない。ランサーがこちらに来る前に決済だけでも済ませる。

 

「アーチャー君は教授を迎えに行って貰えますか?出来る限り上へ逃げるよう、伝えてください。」

 

「わかった。どうかご無事で。」

 

ガシャンっと窓が割れた。思った通り。ランサーの手が伸びてきて、体を抱き上げる。

 

「昇るぞ。」

 

隣のビルの窓を、足と手で上がっていく。落ちないか不安なのと、風圧が怖い。

 

どんどん地面が離れていく。下に誰かいるのが見えた。ランサーに話しかけようと、口を開きかけた。

 

『やめておけ。噛むぞ。』

 

念話で話しかけられる。そうだ、これじゃ舌を噛む。

 

『下、いや横…?どこかから見られています。』

 

ランサーの動きが止まり、そのまま辺りを見渡す。

 

「わからん。俺は弓兵じゃないからな。それと、顔を覆え。」

 

急いで手で顔を覆う。またガラスが割れる音と、少し暖かい空気になる。

 

「…もういいですか?」

 

「あぁ。」

 

またひとつ、建造物が破壊された。大丈夫なのだろうか、あちらこちら破壊してしまって。

 

そんなことを考えていると、無言で床に下ろされる。

 

「どうして上なんですか?魔力が薄いのは分かりますが…。」

 

窓ガラスの近くを叩き割り、その破片を渡される。

 

「…少し重いような気がしますね。」

 

私の手を引っ張りながら、部屋の中を動き回るランサー。何度も振り返っている。

 

「重いのではない。下に向かっている。」

 

「…それって、意味あるんですか?」

 

「気付かないだけで他にもあるのかもしれん。分析するのは得意だろう。」

 

「そうは言われましても、何にもないですし、偵察も私たちじゃ…。」

 

再び抱き上げられ、腕に乗せられる。

 

「…移動するぞ。死角を探す。」

 

どこからか分からない視線。モルモットになった気分。上から、下から、全部を見られているような不安。早くどこかに隠れないと…。

 

────────────────────────

「マスター、一旦逃げましょう。」

 

「行けるか、シン。」

 

「…先行っててくれ。動くと吐きそうだ。」

 

「アサシンは?」

 

「…ここにいるが。」

 

後ろから声がした。

 

「…実体化しててくれないか?見えないと不安になる。」

 

「それはすまなんだ。一応はアサシンのクラスだからなぁ。」

 

「…早く逃げるんだぞ。」

 

一言かけてから外に出る音が聞こえる。アサシンは後ろに立ったまま、何をしているのか分からない。

 

「…外行ってただろ。」

 

「少しな。見覚えのある顔が通った気がしてな。」

 

「青いやつだろ…?」

 

背中が凍るようなあの目線。睨んでいるようで、笑っている顔。頭に染み付いて離れない。

 

「すぐに見失ったが、関係ないようであった。また別のサーヴァントか、魔術師か。そも、気のせいであったかもしれん。」

 

バーサーカー、キャスター、あと…。だめだ。考えがまとまらない。早く逃げないといけないのに、体も動かせない。

 

「…ここで戦をすれば、巻き込むことになるが。」

 

そうだ。まだ中には一般人がいる。ここで戦うわけにはいかない。

 

「…悪いんだが、運んでもらえるか…?」

 

「承知。」

 

吐かないように、周りを見ないようにした。景色が動いていると気持ち悪くなってくる。さっきよりは良いが、万全ではない。

 

どこにいくのかはアサシンの判断に任せる。出来れば、今は敵と接触したくない。

 

まだ見られている気がする。ここには窓がないのに、すぐ近くから気配がする。逃げ場を全部測られているような───

 

───喰われる。

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