「さて、どうしたものか。」
退けば詰まる、止まれば捉えられる。こちらを窺うと言うより…
…妙だ。
外に出たのは良いものの、姿は全く見えない。建物か、路地裏か。ここは死角が多すぎる。
シンを抱え直し、路地裏に飛び込んだ。突き当たり、逃げ場はない。
「しばし待たれよ。」
余裕ぶったが、依然として場所すら掴めぬ。前方にいるようで、上空にも気配がある。逃げ場を測られているような圧が降りかかる。
「…人か、怪か。」
何かが遠くから聞こえる。耳を澄ますと、こちらに走ってくる音のようだった。
数歩、前へ出る。いつでも斬れる間合いに入る。
「大丈夫か、シン。」
何とか目を開き、顔を上げる。
「……エインガル…?」
柄を握ったまま、シンを隠すように下がる。あちらも一歩下がったように見えた。両手を挙げながら話しはじめた。
「動けるか、シン。」
続けて、
「サーヴァントほどでは無いが、身を守ることくらいなら出来る。前もそうだっただろう。」
刀を収める。が、下げ緒は握ったまま。確かに言っていることは合っている。
シンを一瞥する。
「心得た。…と言いたいところだが、主の言葉が無くてはなぁ。」
「…大丈夫だ。行ってくれ。」
「…心得た。」
エインガルの横を通り過ぎながら、顔を見た。
───違う。
しかしどこが?
「───。」
口を閉じる。確信が持てない。
霊体化し、路地裏を出た。ここは一つ、
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「ここでは逃げ場が無くなる。急ぐぞ。」
立ち上がろうとして、少しよろめいた。いや、視界が回っているのか?
エインガルの手を取って、なんとか立ち上がる。
「…悪い、助かった。」
ここはどこだ。ファミレスからどれだけ移動した?
「あの後、エイヴィが居なくなっていた。先にランサーと逃げたか、どこかで戦っているかもしれない。」
シンの右肩を支え、路地裏を出る。
「行こう、シン──。」
その刹那。
「──不意打ちにて御免。」
「…は?」
言い終わる頃に、腕が落ちた。吹き出た血がアサシンの服を染めている。
「アサシン…何して、」
素早くエインガルから引き離される。
「姑息なものよ。まさか味方を装うなど。」
エインガルは何も言わず、こちらに体を向けた。血が流れるのも気にせず、棒立ちで。
「…アサシンってのは、ほんとウザイよな。気配遮断に、おまえに関してはなぁんか違うけど。とにかく厄介だよ、ほんと。」
ぴたりと血が止んだ。まるでトカゲのように腕が生えてきて、こちらを指差した。
「でもおまえも嫌いだ。昔もいたんだよな、おまえみたいなの。英雄ごっこしてるやつ。」
エインガルじゃない。そもそも、人間じゃない。
「お前…!」
少しニヤついた目、そして視線。ずっと見られてた。
「ッ、アサシン!巻いてくれ!」
「承知いたした。」
今は分が悪い。
「なに、良い判断であろう。」
「…信じてないわけじゃない。というか、あんまり読まないでくれ。」
「そんなに皺を寄せてはいかなんだ。読むも何も、顔に出ているが。」
「…気を付ける。」