何時間経った。早く出ないと。
(暗い。何も、見えない。)
砂の匂いがする。懐かしい。
(あぁ、そうだ。魔術──)
「
(……見える。)
瓦礫が乗りかかっている。重みが、ない。
(手が───)
届かない。起き上がれない。
(ランサーが、見えない。)
(…独りだ。)
音がない。
(聞こえない?)
(そうじゃない。)
僅かに、何かが引っかかる。
(あぁ、これは──)
どくどくと、嫌な音。
(…うるさい。)
少しずつ、戻される。それでも───誰もいない。
(令呪は───)
「……ダメだ。」
額に触れた腕が、生暖かい。
「……綺麗。」
視界に映る紅。
お母様の色。
「少しだけ…。」
瞼が、落ちる。
────────────────────────
『…ヴィ。きろ、エイヴィ!』
誰の、声?
『………やばい、ぞ……これ…』
眩しい。もう少し、このままに。
『…血が───』
(……血?)
『……どかす……手伝って、くれ』
(なん、なの…?)
『エインガルは。』
『…いかがしたものか……。』
(違う。)
(まだやることが───)
「……シン、さん……?」
『…エイヴィ!聞こえ…か……?!』
(返事が、出来ない。)
「……ッ、は……」
喉が張り付く。
瞼が重い。
(寝ちゃ、だめなのに…)
(……さむ、い…)
────────────────────────
口の中でジャリっ、と音がした。崩壊の轟音が背後を襲った。
「ッ、マスター!」
───音が、戻った。
「……駄目だ。死ぬぞ。」
(でも、このままじゃ…。)
『行け!ブケファラス!!』
「っ、と…。あれは…隠す気あるのか…?」
真横を突風が掠める。正面が塞がった。
(逃げ場はあるが…)
「マスター、ここは僕が。」
「……分かった。サポートする。」
半歩後ろへ。正面を見据える。
『…我が名はアレキサンドロス3世!君に戦いを申し込みたい!』
(これは、ないな。)
「…僕は───」
「申し訳ない!僕はあなたに、名乗ることが出来ない!」
(…そうか、
『…あぁ、分かっているとも。君の意図は受け取った。』
『その上で、君に申し込もう。』
「…いいとも。僕に断る理由はない。そうだろう、マスター。」
(いかなる挑戦にも応え無ければならない。誰にも名乗ってはならない。)
「…思う存分にやれ。手は出さない。君の力で、勝ち取って見せろ。」
(……マズイな。)
(情報が漏れている…?偶然か…?)
戦場は待ってはくれない。戦火は切られた。
受験生になったので、投稿不定期になります。