3/20 改訂
大きな変更ないです
同日、午前五時。その山は人類から忘れ去られた地であった。
時々麓から聞こえてくる奇声。喪失に暮れる者の叫び。追い打ちをかけるような無機質な放送の声。
「脳内管理サービスは───」
少し鬱陶しいと思いながら、俺はいつもの日課をこなしていた。山道の中、白い息が浮かんでは消えていく。その最中、鳥が地面に横たわっていることに気が付いた。慎重に近づいて行ったが、鳥は逃げず、そのままだった。
(…死骸にしては綺麗だな…。)
目立った外傷もない。羽が乱れている訳でも、皮膚症状が出ている訳でもない。まるで剥製のように動かない。
すぐ近くで再び同じ奇声が聞こえる。もうそんな所まで来ていたか。小屋の中で暴れるような音。窓から溢れ出す光と、狂気に満ちた笑い声。いつもと様子が違う。
気配をなるべく消して窓の下にしゃがみこむ。ぶつぶつと独り言を言っているように聞こえた。しかしその声に反応する者がいた。
『いいねぇ…乗った。壊せばいいんだろ。大好きなんだよね、そういうの。』
いつも中にいる男とは違う声。ここらで聞いたことのない声の主は続ける。
『その代わり、命令するなよ。お前はマスターであって、僕の魔力を維持してるだけでいいんだからさ。』
マスター。祖父がそんなことを言っていた気がする。夢物語のような、作り話だと思ったていた。
(止めないと…。)
爪が手にくい込む。無意識のうちに、手を握りしめていたようだ。
止めると言っても、俺にはその力があるのか?あんな狂った使い魔に対抗する力が。
(無理だ。あいつらは人間離れしている。)
きっと他の誰かがどうにかする。
(───でも。)
見て見ぬふりをする訳には行かない。周囲の情報も持っておくべきだ。地形、人物、どんな些細なことでも。
俺は気付かれないように静かに小屋を離れ、山小屋に戻った。
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外で鳥が鳴いている。
結局いつもと変わらなかった。日課を済ませ、食事をし、言葉にならない罪悪感を掻き消そうとした。
でもそれは消せなかった。一度決めたことは放棄出来ない。
雑音に紛れるように、意識を深く沈めた。
(聖遺物と魔力が必要だ。でも俺にそんな蓄えはない。ならば、霊脈はどうだ?ここは確か──)
問題は何が呼び出されるのか。
聖遺物。英霊を呼ぶための鍵のようなもの。それが俺にはない。家の中を粗探しする。唯一見つかったのは、荷物に紛れていた鉄の破片。多分、祖父から押し付けられたガラクタだ。
「これでいけるか…?」
俺は片手に破片を握り、外に出る。祖父から継がれた冊子を読み込んだ。手書きでかかれた陣を、見よう見まねで書き写していく。そして、正体不明の破片を中央に。
(…大丈夫。俺なら出来る…。)
「……閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
「───Anfang」
「───告げる」
妨害するように辺りの木が音を立てる。尖った葉先が頬を掠めて行く。
頭上で、鳥が羽ばたく音がした。
「─────告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。
我は名を残さぬ者。
我は影にて消える者。」
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」
突風が襲いかかる。力を抜けばそのまま飛ばされてしまうほどの強さ。風と共に何か柔らかいものが顔に触れる。
風が止み、ゆっくりと目を開く。そこには長い刀を背負った剣士が。そして何よりも、大量の燕が地面に落ちている。その全てが、操り人形の糸が切れたようだった。
まるで雪のように、羽毛が舞い降りる。顔に付いたそれは、俺の血で染まっている。微かな痛みが頬に走った。
(こいつがやったのか…?それともあの風で…?)
「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。ここに参上つかまつった。斬れぬ物があるのなら、この小次郎が斬ってみよう。」
アサシン。こんなときに、祖父の言葉を思い出してしまった。俺が継がなくちゃいけない。でないと、自分で自分を否定することになる。
話の全体図とキャラクター設定はほぼ全部出来上がってるので、あとは書くだけなんですよね。下手くそですが皆さんが読んでくれるとモチベになります。