深く、遠い場所へ落ちて行く。光に伸ばした手の指の間を、何かが掠めた。
目を開けて、戻らなくてはならない。どうやって戻ればいいのか、私には分からない。光はまだ見えている。手に届かないところにあるだけで。
指に挟まった何かを逃さないように、キュッと手を握った。温かいような、冷たいような。柔らかいような、荒いようなそれは、私の手を引っ張った。向かうのは光の先、戻らなくてはならない場所へ。
「なぜ進む。なぜ理解しようとする。」
どこかから、見知らぬ声がする。
「悪の先に何があると言う。何も分かっていない。全ては無駄なことだ。」
「…質問の意図が理解できません。」
「……まだ続けるか、グレイリーヴ。」
「百万。」
「千万。」
「億。」
「…。」
「遡るのも煩わしいな。」
「無意味なことをいつまで続ける。その行動は無価値だ。」
「無意味?私の人生は裕福なものです。あらゆる知識を知る機会が備わっていますから。」
「…それが、鎖か。厄介なやつだ。」
「人間なんて、屍を踏み越えていくものです。あなたなりに言うのなら、無価値の積み重ねこそが価値なのでは?」
「……哀れな。」
結局、何がしたいのか分からなかった。敵の洗脳?それにしては質が悪い。そのまま声は聞こえなくなった。まばゆい光が視界に広がった。
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「…っ、あ…エイヴィ…。」
シンさんの声がする。私はまた寝てしまったのか。
「…失礼…。」
頭も首も痛くない。足には砂利の痕が付いている。きっと彼が支えていてくれたのだろう。
「…教授は?」
「戦ってる。でも…人の心配してる場合じゃないと思うぞ。」
「…分かっています。少し、しくじりました。」
「…少し?少しで済むか!死にかけてたんだぞ!」
「…それは…そうですが…。」
「俺たちはサーヴァントみたいにタフじゃないんだ。もっと、気を付けないと…。」
「…えぇ、気を付けていますとも。これでも。」
「なら、もっと気を付けろ。これ、傷残るぞ。俺は回復魔術?とかそういうのは出来ないし、そもそも魔術なんて使ったことないからな。」
「…なぜ聖杯戦争に?」
「…あー…それは…。まぁ、帰ったら話す。それまで死ぬなよ。俺より、あんたらの方が強いんだから。」
「…分かりました。ちゃんと、みんなで帰りましょうね。」
「……フラグか?」
「違います!本心です!」
「元気そうでなにより。…良かったよ。」
シンさんは砂埃を落としながら立ち上がった。
「ほら、立てるか?無理ならもうすこし休んだ方がいい。アサシンに見張らせておくから。」
「い、いえ…大丈夫です。今度こそ、起きれなくなりそうですし。」
「…そうか。わかった。無理はするなよ。」
章を毎回書いてますが、意味あるんですかね。分けすぎですよね、章。自分で振り返る分には数字で管理出来るので良いのですが。