無駄に長い廊下を渡り、重い扉を開く。中には金の装飾を施された、白のティーカップ。それを器用にスプーンで混ぜる、見知らぬ青年がいた。そしてその右斜め前に、いかにも屈強そうな男が、分厚い本をペラペラとめくっている。
頭痛が酷くなるのを強く感じた。
「…エイヴィ、彼は君の知人かね。」
彼女は答えながら、空のティーカップに紅茶を注ぐ。
「まぁ、そんなところです。」
すぐさま青年は訂正する。
「誰が知人だ。お前と友達になったつもりはないが。」
じろりと彼女を睨む。
「エイヴィ、一から全部説明しろ。今、すぐに。」
彼女が引いた椅子に座り、ティーカップに手をつける。一度落ち着かなければ。横にいた少年が私を見て、真似するように隣で引かれた椅子に座るのを横目で見る。
「お気遣い感謝します。我が主のご友人。」
少年の言葉に私は紅茶を吹きそうになり、ゲホゲホと咳き込む。その様子をチラリと見ていた屈強そうな男が席から立ち、私の方へやってくる。
「貴様の身体は実に面白い。人ならざる者でありながら、身体は人と同じく機能している。ふむ…興味が湧いた、見せろ。」
そう言い男は私の腕を持ち上げたり、手袋を外し、冷たい肌に触れてくる。しかし抵抗するのは得策ではないだろう。私は黙認を選ぶことにした。
青年は席に座ったままその様子を見ていたが、ふと声を発する。
「あんたも苦労人なんだな。」
「苦労人なんだな、じゃない!君もその原因だ!一体何なんだお前達は!さっさと説明しろ!」
隣の少年が私の叫びに困ったように肩をすくめるのを見てハッとする。一度深呼吸だ。深く息を吸い、溜まったストレスをどこかにやるように息を吐く。
「…コホン。それで、エイヴィ。君のその眼帯、私を触っているこの男、そしてあそこでスンとしている青年について説明を求めているのだが。」
淡々と、今度こそ彼女に伝わりやすく要求する。
彼女はやっと席に着き、眼帯を外し始めた。眼帯の下には、彼女のライムのような爽やかな瞳はなかった。白く濁り、機能しているかも怪しい。
「…何があった。」
当の本人は気にする様子もなく、明るく答える。
「サーヴァントの召喚のための代償です。私の自己判断であって、誰かに傷付けられた訳でもありません。」
いくら何でも、だ。太陽の延命が出来たとしても自分の身体がボロボロでは意味が無い。そう説教してやりたかったが、私のこの身体でそれを語ることは出来なかった。やはり、頭痛薬を持ってくるべきだった。