Fate/Unfinished   作:サルンパス

8 / 29
遅くなりました。


第三章 起動 後編

「次に彼のことですが。」

私が何か言う前に彼女は話し始めた。彼女なりの気遣いだろう。

 

「彼は私が召喚したサーヴァントです。クラスはランサー。真名は流石に伏せさせていただきます。」

止めるまでもなかった。文を綴るが如く洗いざらい話してしまった。私だけならまだしも、ここには正体不明の青年がいるのだ。

 

「待て、そこの青年は信頼に値する人物なのか?」

 

青年は静かに布で巻かれた何かを机に置き、布を解く。巻かれていたのは恐らく短刀だったもの。人の業とは思えぬほどに美しく断たれた刃先。

「昨晩そこの女と男に接触して、このザマだ。無駄な抵抗はしない主義だからな。今のところはその気はないさ。」

 

少年は青年の言葉に眉をひそめる。

「では、敵対の意思はない、と?」

 

「さあな。あんたらが無秩序な行動を取らなければ攻撃するつもりはないさ。」

 

状況は比較的理解できた。だが何故だろう、まだこの青年への警戒心が解けない。この異様な空間に溶け込んでいること。“サーヴァント”という言葉に疑問を持たなかったこと自体が奇妙だ。

 

「…率直に聞くが、君は聖杯戦争参加者だな?」

 

青年は一口紅茶を飲んでから答える。

「だからどうした。この刀が一番の証拠だろう。」

言葉が終わると同時に本をバタりと閉じる音が聞こえる。

「まだ終わらないのか。わざわざ待っていてやったというのに。ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃと。そういう所がいつまで経っても馬鹿なのだ。俺はもう行くぞ。勝手に話してろ。」

ガタリと席から立ち、扉の方へ行ってしまうのを彼女が引き止める。

 

「待ってください!私も行きます!」

彼女がそんな理性的な行動を取るわけないか。期待した私が阿呆だったようだ。何より、彼女の安全が保証されている訳でもない。だがこの青年の安全性も不確か。別行動はまだ控えた方が良さそうだ。敵の情報を収集するためにも。

 

私はチラリと青年を見てから席を外す。そして隣の少年も私と同じように席から立った。

 

────────────────────────

部屋に一人残された青年が呟く。

「アサシン、あんたはどう思う。あいつらは消すべきか、守るべきか。」

 

アサシンと呼ばれた姿なき者は青年にだけ聞こえる声で答える。

「そうさなぁ…善き者のように見えたが。何か引っかかるところでもあるか?」

 

青年は沈黙する。

「…いいや。だが、信じるべきかは判断できない。」

 

アサシンはその判断を否定も、肯定もしなかった。

「なら、思う存分見届ければ良い。今はまだ行動に移すべきではない、そういうことなのだろう。」

 

静かに頷き、彼らの跡を追った。部屋にはまた静寂が戻り、外では賑やかな話し声が続いている。どこか遠くで、それとは別の騒がしい、嫌な音が聞こえたような気がした。

 




3章終
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。