理凰くんと共にゲームに熱中した日からしばらくがたった。あの日があったからかは分からないが理凰くんは悩みから解放されたっぽい。俺の助けなんか無くてもきっと彼なら一人で立ち直れたと思う。
「理凰くん俺たちの関係性知らなかったらしいよ」
「アイツお子さまだから気になんなかったんでしょ」
「理凰くんは大分ませてる方だと思うけど」
今日も変わらずいるかちゃんと一緒にいる。全日本が始まる直前、触れ合える最後の機会なのでどこか行こうと思っていたが彼女の希望で我が家にてベタベタしている。普段はリビング等の第三者が見える場所でしているが今日は俺の部屋でしている、同じ行動なのに密室なだけで駄目なことをしている感じがすごい。こういう事をし始めたすぐの頃に理性が保たないからと開けた場所ですると決めたルールを破っている。
「いるかちゃん大好きだよ」
「知ってる知ってる」
「絶対離さないからね~」
「んー」
後ろからぎゅーと抱きしめいるかちゃんの熱を感じている。凄い演技をする大好きな彼女も一人の人間なんだなと簡単に理解出来るからこの行動は結構好きだ。いるかちゃんはどう感じているんだろうとよく気になるが少し恥ずかしくて聞けてない。いるかちゃんも好きだといいな。
「サチはさ、この1年で何回「岡崎いるかが負けるのはお前のせいだ」って言われた?」
「それ言わないと駄目?普通に言いたくないんだけど」
「ちゃんと教えて、嘘言ったらキレるから」
いるかちゃんは俺の腕の中から逃れ正面に座った、何が始めるのかと思ったら嫌な事を聞いてきた。いるかちゃんが狼嵜光に負けたのは俺がいるから、俺と彼女の関係性を見た名前も知らない大人たちがよく使う言葉だ。俺の存在が競技に向き合う彼女の邪魔になっているっていう理由で言われる。今までもちょくちょく言われていたが去年の全日本でノービスから上がってきた光選手が優勝した事で数が倍増した。正直な話あまり数えたりしていないから回数なんて覚えてないけど少なくとも20回は超えている。
「まぁあんま数えて無いけど少なくとも20回は言われたかな。でも別に気にしてないよ?あんな奴らの言葉」
「嘘つくなよサチ、あの日から確実に精神やられてるじゃん。距離感も近くなったし好きって言う回数も増えてる」
「そんなこと無いと思うけど」
「そんな事あるからこうして話してるワケ、サチならそれぐらい分かるよね?」
俺のメンタル状態を冷静に分析されていて彼女の言葉を上手く否定できない。思った以上にちゃんと見られていて嬉しい気持ちもあるが面倒に思われていないか凄い怖い。
「ベタベタして面倒くさかったよね、ゴメン」
「それは別に良いけど…そんなんじゃ無くて私はサチが心配なの、色々私のせいで言われて無理してないかって」
いるかちゃんには似合わないしょげた顔を見せながらそう言う。俺も嫌な思いをしてたけど彼女も責任感を感じていたんだな。悪いのは陰口を言う大人だしいるかちゃんは気にする必要ないのに気にしてくれる辺りやっぱり優しい。
「大丈夫俺は無理してないよ。いるかちゃんの為なら何も苦じゃない、コレだってその内の一つだと思ってる。」
「そうやって大丈夫ってサチは言うけど大丈夫じゃない事の方が多いじゃん。全然信用ないんだけど」
「カッコよく言えたと思ったのにヒドイなぁ」
お互いに笑い合って再び抱きしめ合う。なんだかいつもよりいるかちゃんからの力が強い気がする、凄い圧迫感があるけどあまり苦しいって感じはしない。
「大丈夫って言葉に信用が無くても約束だけは絶対に守るから、何があっても絶対に離さないし離れない」
「うん、そこはちゃんと信用してる」
なんだか今凄い幸せだな、別に普段も幸せなんだけどこの瞬間は段違いで幸福度が高い。いるかちゃんの鼓動を感じるし体温も感じれる。多分俺の心臓も凄いドキドキしてるんだろうな、いるかちゃんも同じように思っているのかなとか色々気になってしょうがない。
「いるかちゃんちょっと離れない?理性がヤバい」
「なんの為にサチの部屋に来たと思ってんの?」
「俺はいるかちゃんが高校卒業するまではそういう事しないって色々な大人と約束してるから駄目だよ、マジで」
抱き合っていて近距離で見る彼女の顔に意思が揺るぎそうになるが鋼の意志で断る。いるかちゃんは身体の成長がある大事な時期、もう終わったかもしれないけどアスリートなんだから念を入れておいた方が良い。ホルモンバランスが云々を始めとした様々な理由を以前は理解できなかったが勉強した今だと誠二先生を始めとした大人たちが言っていた事も凄い理解出来る。
「やっぱ俺いるかちゃんの事メッチャ好きだ」
「よく好意を伝えてくれないって聞くけどサチはちゃんと伝えてくれるから凄い安心するわ」
「ちゃんといるかちゃんに伝えたいからね」
一旦体を離して手を繋ぎ肩と肩が触れる距離感で座り直す。さっきほどでは無いがそれでも幸せを感じる、いるかちゃんと一緒なら何でも幸せを感じるんじゃないかと思ってしまう。簡単に幸せになり過ぎな気もするがこういうのが一番良いんじゃないかと幸せを噛み締めた。