東方照歩記   作:たま紺

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どうもたま紺です。
今回は実験的な意味も込めて戦闘の描写をしてみました。

どこかおかしなところがあるかも知れませんが、どうぞ。


第五話 助けるために命を懸けれるか

 パチパチパチ、と拍手が聞こえる。おめでとうと声をかけてくれるやつもいれば、嫉妬の感情を込めた目で見てくるやつもいる。

 俺が今なにやっているかというと、ついに陸将の階級を貰ったのだ。陸将は軍のトップ、つまり都市の三大勢力の内の一つを俺が自由に操れるということだ。

 ちなみにもう二つは、研究所と政界だ。それぞれ永琳とツクヨミがトップに立っている。

 ここに至るまで五十年とちょっと、前代未聞のスピード出世らしい。まあ前までの陸将は相当年老いてたし、階級を貰った時の記念写真もなかなかに老けている。ということはかなり時間がかかったことが伺える。それなのに俺はまだ未成年で通じるほど若いままだ。最高神だから前陸将とおんなじ年齢になっても変わってないと思うけど。逆に老けられたら困る。未来にたどり着いたとき、目も当てられないような状況とかマジでやめてもらいたい。

 何でここまで早く陸将の階級を貰えたかというと、先日研究のために郊外へ出ていた班が妖怪の群れに襲われたのだ。それを俺と陸将とあとちょっとの少数精鋭で救助に向かった。

 

 ◇◆◇

 

「え!? 研究班が襲われている!?」

「そうだ。かなり危機的な状況で怪我人もおるらしい。本当は大人数で行きたいがそんな時間もない。向かおう、白神二佐」

「了解しました。急ぎましょう」

「……すまないが先に行っててくれないか。儂はもうちょっと人を集めてから追い付く」

「ええ、では」

 

 それだけ告げて俺は自分の今出せる最高スピードで空を飛び都市の外の森へ向かう。都市の人は空を飛べたっけ……まあいいか。問い詰められたら適当に返そう。

 そしてあのバリアのところまで着いた。雨は通り抜けるので人間も大丈夫だと思ってここに来たんだが、通り抜けなかったらどうしようか。能力を使うか? いや、ダメだ。そしたら帰りに穢れを消せなくなる。

 とりあえず当たって砕けろだ。俺はそのバリアをちょんと触ってみると、すぅと通り抜けたので行けるようだ。一安心。

 バリアを抜け全速力で向かおうと思ったが、場所がわからん。仕方ないので力の強い者でしか気づかないほど限りなく薄くした神力を広範囲にばらまく。集中していると、ここから北西のほうで微弱な霊力と大量の妖力を感じ取れた。

 俺は迷うことなくその場所へ向かう。すると遠くからでもわかるぐらいドンパチやってるのが見てとれる。レーザーが四方八方に飛び悲鳴や鬨の声、断末魔が上がっている。

 まずいかもしれない。そう感じた俺は急ぐ。上から戦況の確認をすると戦っているのは一人だけ。動けるやつもいるようだが怪我人の守備に徹しているようだ。全員で八名、十分助けられる。

 対して妖怪側、犬や猪、熊などの獣の形をしたやつが多いが群れと言っていたわりに少ない。人型でないやつらはどんな攻撃をしてくるかわからないが、ひとまず救助だ。

 

「はあああああ!!」

 

 雄叫びを上げて今まさに攻撃しようとしていた犬型を、踵落としの要領で上から叩き落とす。ダメだ、しぶとい。効いている感じがしない。これはある程度ダメージを与えてから遠くまで吹っ飛ばしてその間に逃げるが得策かな。

 考えているうちもどんどん攻撃してくる手はおさまらない。研究班は逆に唖然としている。

 

「研究班! ぼさっとしてないで動けるやつは仲間を守れ! 攻撃する必要はない!」

 

 熊の妖怪が右手を横凪ぎに振るってくる。それをしゃがんでかわした後、そのままの体勢で左足を基点にし、一回転するように右足で足払いをかける。かなり重かったが、無理やり払う。熊の体が浮いた瞬間右拳を引き、曲げていた左足のバネをも使って叩き込み吹き飛ばす。が、どちらかというと押した感覚だった。それでも十分威力はあり、後ろにいた妖怪二匹と大木を巻き込んで吹っ飛んだ。

 喜んでいるのもつかの間、今度は二匹の犬がペアで来た。一匹が上半身に向かって噛みついてくる。首筋を狙った攻撃にまずいと感じた俺はアッパーで打ち上げる。刹那視界が犬しか見えなくなったが気にしない。次、来る! 第六感ともいうべきところがそう感じたため、もう一匹を探すが見つからない。全身を焦りがおおう。

 その時足に鋭い痛みを感じた。なんだ、と思い見るともう一匹がそこに。クソッ! 最初の一匹はブラフか。俺が一匹目を相手している間に時間差で死角に入り、噛みついてきやがった。頭いいじゃねぇか。ならもう一枚上手を行ってやる。

 今度は左右からまた時間差で攻撃してきた。ここで俺は前に出る。頭の悪いやつは二匹が頭ぶつけることを祈っての行動だが俺は違う。目の前にいた()()()()()()()()()()()()()()()()を掴み、ぶん回す。いくら時間差とはいえあまりにタイムラグがあると俺が対処してしまうので、ほんの少しの差だったことが幸いし二匹に直撃。地面を転がっていった。

 ……なぜこいつらは群れで攻撃してこない? なぜ単騎、もしくはペアだけでしかこない? しかも全体的に張り合いがない。一撃離脱を基本にしているような……? 待てよ、俺が一撃離脱を基本にした戦闘を行うときは、こちらと相手の戦力差が大きいとき、もしくは……

 

「まずい!」

 

 俺は今までの攻撃の手を引き、踵を返し研究班のもとへ向かう。やはり向こうまでは三十メートルほどの距離があった。それに何匹かによって襲われている。

 俺が一撃離脱を使うときのもう一つは相手の攻撃を誘うとき、相手を誘い出すとき。つまり俺は誘われたのだ。……しかしここまで距離は開いていないはず。なぜだ……?

 とりあえず研究班を助ける。ここのやつらも一撃を受けたらすぐに離脱したためやり易かった。

 

「ありがとうございます」

「気にすんな。それよりさっき俺が変に移動したりしなかったか?」

「ええ! 瞬きした時には位置が変わってました。それも大幅に。ああそれと私たちを襲った敵がほとんど居なくなってるんですよね……数十匹はいたのに」

 

 数十匹? 今ここにいるのは多めに見ても十匹程度。あり得ない、逃げたか? いや、まさか隠れて攻撃している? そう考えるとつじつまが合うな。

 さっき思い付いたとある作戦を全員に伝えた後、戦闘に戻りつつ考察を続ける。

 俺が移動したのも隠れているやつの能力で、あの俺の視界を奪った瞬間に使っていれば気づけないし、吹っ飛ばしたはずのやつを攻撃に使えたということにも納得できる。

 この仮定が合ってたなら徹底防戦するしかない、か。戦えるのが俺と後一人だけ、それもレーザーのみ……厳しいな。それでもやる以外に答えなどない。

 常に研究班から目を離さないように立ち回る。それでも限りられた人数ではきついし、何より手が届かない。四方から攻められたときはほんとにまずい。俺が一体を吹っ飛ばした先にもう一体いなかったら終わってた。

 それでもなんとか防ぎきる。正面から来る敵に対しては左足を軸にし回し蹴りを放った。振り返ることによって研究班を見失うことなく攻撃を放つことができる一石二鳥の技だ。

 今度は三匹の犬が来た。ぴったり揃って駆けてくる。するとぐにゃぐにゃとしたエフェクトがかかったかと思えばそこには三つの頭を持つ犬がいた。その様はまるでケルベロスのようであった。

 ケルベロスに向かってまたも回し蹴りをする。頭三つを一気に蹴るという寸法で、仮に分裂されても全てを叩くことが狙いだ。

 ドンッ、と音を発しながらケルベロスはバラバラになりながら飛んでいく。やはり攻撃する直前に別れる予定だったようだ。

 

「隊員さん!」

 

 研究班の切羽詰まった叫び声が聞こえる。この一声で全てを悟る。やられた、ケルベロス自体がブラフだったようだ。

 

「目を!」

 

 大声で叫ぶ。これは先ほど伝えたとある作戦で、さっきの言葉を合図に目を瞑るよう、というより全力で目を隠せと言ってある。俺の能力を使って相手の目を潰すという作戦なんだが、飛び掛かってくる直前の敵の目を潰したところで何か変わるのだろうか……とりあえずやってみる。

 ──光量を出来る限り最大に、届く範囲を最小(目の一点)に。

 力が溜まったらすぐに解放。周りから呻き声が聞こえるが、すぐ近くからはなにも聞こえないことから攻撃は受けていないし、研究班は大丈夫なようだ。うまくいった。

 恐らくだが目をやられた反動で咄嗟に口を閉じて仰け反ったために誰も攻撃を受けることがなかったんだろう。

 

「急げ! 今のうちに離脱だ! あっちに向かって逃げろ! 怪我してるやつは手伝ってもらえ。俺が抑えておく」

 

 一回でも言ってみたかった、俺に任せて先に行けっていう類いの言葉言えてよかった。

 ──カッコつけたからには何人(なんぴと)たりともこの先には行かせられないな。

 そう気合いを入れて振り返ってみると、全ての妖怪が逃げ出していた。何でだよ、今のは格好よく決めるところでしょ。

 まあ不必要な殺生はしたくないし、救助がメインなので気にしない。ということでミッションクリアー、昇進出来るかな?

 走って先に行った研究班に追い付く。怪我しているやつもいるのでだいぶ遅かったため、ものの数秒で追い付けた。

 

「全員無事か? 一番ひどい怪我は誰だ?」

「ええ一人もかけることなくここにいます。それと一番ひどい怪我ですが……彼ですかね」

 

 視線の先にいたやつの怪我は、左の脇腹にある大きな裂傷だ。そこも直接圧迫止血法で処置はされているものの、このままでは長くは持たない……ことはないが細菌感染やらなんやらの可能性がある。……詳しくは知らんから言ってみただけだけど。

 神界にいたやつが持っている本物の神力には、体に流すと自然治癒力を高め、更には消毒の効果を得られるという万能な力がある。その他にも色々出来るまさにチート能力だ。例えば別の力を感知したりとか。

 その神力を怪我人へゆっくりと全体へ行き渡らせるように流していく。今まで辛そうだった表情が和らいでいった。

 

「今ここでやったことは他言無用にしてくれないか?」

「? どうしてです? 別に広まったところで害はないと思いますが……」

「まあ、色々事情があるんだ。気にしないでくれ」

「分かりました」

 

 なんでこんなことを言ったかというと、ツクヨミにばれたら面倒だからだ。一般人には神力の違いなどわからない、使っている者にしかわからない違いなのだ。つまりこれをツクヨミの関係者に話されると、ツクヨミと同じ力を俺は使ったと思われて、お前なにもんだ → 過去の経歴不明 → 怪しまれる、という具合に俺の立場がなくなっていく。

 まあ、そんなことはほとんど無いと思うが万が一に越したことはない。

 そうして色々話しつつ、都市への道を歩んでいた。

 

 ……しかし、この時俺は気づいていなかった。すでに戦闘開始から数時間が経過していたのに、陸将たちが来ていないという事実に。

 そして最悪の事態になっているという可能性に……。

 

 ◇◆◇

 

「くそっ! なんなんだこやつらは!」

 

 陸将の怒号が森の中で響き渡る。今彼らは数十匹と思われる妖怪の大群に襲われていた。自分達が円形に陣を組んでいるのに対し相手は回りを覆うように、そしてそのほとんどが無傷でピンピンしているやつばかり。なのだがこちらは脱落者こそ出ていないものの皆手負いの状態。優劣の見分けなど簡単だった。

 それでも立ち向かう。仲間を率いる者として、都市の三柱の一人として、諦めることは許されない。

 基本的に指示を出す者は戦闘には参加しない。参加すると周りが見えなくなり的確な指示が出せなくなるからだ。仲間たちもそれを分かっているからなのか、陸将の方へは一匹たりとも来ない。

 それを嬉しく思うと同時にプレッシャーがかかる。仲間たちを生きさせなければ……そのためにはどうすれば……。思考が戦闘からどんどん逸れていく。

 

 ──こんなとき白神がいてくれたらな……。

 

 白神は参謀兼底の見えない体力を活かした特攻隊長。彼はそのどちらをも一緒に全うすることはできないが、逆に言えばそのどちらかならば全うすることができるのだ。

 自分にいい考えがあるのなら特攻隊長に、万策つきたのなら白神と一緒に考えをまとめる。優陽が軍に入ってから数十年ほどしか経っていないが、すでにその立場は確固たるものになっていた。

 しかしそんな彼は、いない。いわば軍の大黒柱を支える石の土台を失っている状態に他ならない。不安定な状態からどう立ち続ければいいのだろうか。傾き次第によっては倒壊してしまうのではないだろうか。

 ……そんな状況もまた面白い。軋み始めた老体を引きずりどう戦ってやろうか。

 無理矢理鼓舞することで自身の士気を上げる。

 

「お前らよく聞けぇ! 今ここでこの大群! 儂らが助けなければいかんやつらは白神により救助されてるはずじゃ! 残るは儂らのみ、生きれば、生き残るだけで勝ちじゃあ!!」

 

 隊員全員に声が響き渡る。

 

「あそこを狙え! 歪みを作るんじゃ!」

 

 その言葉を聞き、今まで討伐を前提にした無差別に打ち続けるものだったが、妖怪たちの円形の陣を壊すため一点に対しての集中砲火へと変わった。

 そして怯んだ妖怪たちが道を開けた瞬間を陸将は見逃さなかった。

 

「今じゃ! 全力で駆けろ! 儂が殿(しんがり)を務める! 気にするな」

 

 そう言葉をかけ、しわくちゃな顔をよりいっそうくしゃっとして微笑んだ。その微笑みは信頼できるものではない。しかし多大なる海のような安心感を持っていた。

 その言葉を信じ一直線で、できた歪みへと向かい抜ける。最後尾には陸将がついてきておりレーザーを使って凪ぎ払っていた。

 だがここで陸将は大きなミスを犯した。それは相手側の指揮官が白神と頭脳戦を繰り広げられるほどの才を持っていたこと。絶望的な状況へ繋がることを予知できなかったことだ。

 今まっすぐ一本道を走っている。当然だろう、逃げるための道がそこしかないのだから。だが出した指示を聞かれていたため相手の術中に入り込んでしまった。袋のネズミに逃げ場を与えるとそこから逃げ出すのは当然。ならばそこで待ち構えていれば一気に叩けるのだ。

 待ち構えていたのは人型であるものの数倍は大きい巨人と呼ばれる類いの妖怪だった。その妖怪はもともと溜めていたのか直径五メートルほどにも及ぶ特大の妖力弾を作っており、それを今にも……否、現在進行形で叩きつけている途中だった。

 妖しい色を秘めたその弾が隊員たちを包み込み、()()()()()()()に爆散した。

 

 ◇◆◇

 

 くそっ! 間に合わなかったか!? ヤバそうだったからとりあえず神力で妖力弾をコーティングしたんだが……大丈夫だろうか。

 光が集束していき視界がもとに戻ると、そこには片足を持っていかれたのかなくなっている陸将と無傷の仲間たちがいた。おそらくだが、陸将が自らの体を使ってかばったのだろう。その結果が足一本なのは不幸中の幸いだ。

 放った相手もピンピンしておりこの場での損失は足一本というところだろう。

 ……仕方ないがもうひとつの能力を使って戦うしかないな。一晩都市の外で過ごさないといけないが……守れるなら十分すぎる犠牲だ。

 先ほどの光により一時的に場がフリーズしているためさっさと能力を使う。

 

 ──俺に【力を質量に変える程度の能力】という概念を付与。

 

 比較的この世界に危害を加える使い方をしたため、頭の中をぐるぐるとかき回すような目眩と頭痛が伴うが、木に寄りかかるようにして耐える。

 この能力はその名の通り世界を崩壊させてもおかしくない力を持っているが、世界に影響を与えるほどのものを使うと使用者に負担がかかる。簡単に言えばこの世界から【死】という概念を消去したときは、多分俺が死ぬか昏睡状態になり自動的に能力が解除される、といった具合にストッパーがかかっているのだ。

 安易に使いたくないため日常で使うことなんてほとんどないが今回は緊急事態なので気にしていられない。

 だんだんと痛みが引いてきたため自分の足で立つ。すると周りにはすでに飛び掛かってきている妖怪どもがいた。俺は新しく付与した能力を使い、妖力を質量に変えると、すごい勢いで全員墜落した。

 あちらこちらから上がる呻き声を聞きつつ、唖然としている隊員に怒号を飛ばす。

 

「やることは終わったし、あとはここだけなので任せてください! 戻るのは明日になりますが、気にしないで!」

 

 その言葉を聞き、陸将を抱えた隊員たちは都市の方へ駆けていく。恐らく陸将が軍に復帰することは無いだろうが、生きることよりも幸福なことなどない。

 俺は皆の後ろ姿が見えなくなるまで眺めていたが、妖怪たちが怪力で立ち上がろうとしているのを見て戦闘へ意識を変える。

 ずっと抵抗しているやつを無理やり能力で押さえているのも疲れるので解除すると、今まで重りをつけていたものがなくなったためからだの動きが良くなったようで、先ほどよりも動きが軽快になっていた。

 失策だったかな? と考えるも後戻りはできないので気にしない。

 まだ追いかけようとするやつらを重点的に潰していく。その際にめんどくさくなったので一度能力を使って敵を押さえつける。

 一番近くにいたしゃべれそうな人型妖怪の首筋へ手を持っていき、尋問する。

 

「首謀者は誰だ。今言えば楽になるぞ?」

 

 そう脅しをかけるとビビったのかすぐに視線をとある方向に向ける。その先をよく見ると、人一倍苦しそうにしているやつが一人いた。

 俺は教えてくれたやつの首筋にストンっと手刀を落とし気絶させてやる。……別に俺は解放してやるなんて言ってない。楽にしてやるって言っただけなので何も感じれなくさせてやっただけだ。

 俺のやったことに怖じ気づいたのか抵抗するやつがいなくなったのはいいことだ。すたすたと森の中を歩き、首謀者の前へ着く。

 長身痩躯な男である首謀者の頭には立派な角がそびえており、強引に動こうとして動けるほどの怪力を見て一目でわかった。

 こいつは“鬼”だ。それもかなり強力なやつ。俺が真正面から戦っても勝てる相手じゃないのでここは話術でけりをつける。

 

「なあ鬼さん、今すぐここいらにいる妖怪どもを引き連れて帰ってくれないか? もちろんただでとは言わない。明日、もう一度ここに来れば食糧を用意してやる。条件を飲まないならここで切り捨てるがな」

 

 もちろん本当に切り捨てるなんてことはしないが、さっきみたいに気絶はしてもらうつもりではある。その方がビビらせれるし、変に攻撃して反撃されるよりはましだからだ。

 しかし相手は俺の予想の斜め上をいく答えで返してきた。

 

「……いや、なんもいらん。お前さんにここまでやられた挙げ句、情けまでかけられたら部下に顔向けできんからな。いいな!? お前ら!」

 

 すると、力のない賛同の意が込められた呻き声が返ってきた。

 その様子に鬼は苦笑いしながら言ってきた。

 

「ま、そういうこった。オレたちゃこのまま帰るからこれを解いてくれ」

 

 鬼は嘘をつかない、とアテナに教えられている──筋トレしてる間この世界の知識を叩き込まれた──ので言葉自体は疑わないが、本当にこいつが鬼かは信じきれない。だからと言って疑う理由もないが。

 

「……分かった」

 

 とりあえず俺はそう言って能力を解除すると妖怪たちが一目散に逃げていき、最後に残った鬼が歩きつつ首だけ振り返ってきた。

 

「それにしても、お前さん頭いいなぁ。オレたちが何十年も考えて編み出したいくつもの戦法が意図も簡単に破られちまったのはさすがに悔しいわ」

 

 そこまで言った時点で完全にこちらに体を向けた。

 

「──だから、いつか再会できたときのために名前を聞いておきたい。名はなんと言う?」

「白神 優陽だ。あんたは?」

嶽人(がくと)だ。忘れるなよ?」

 

 ああ、その一言だけを告げると俺と嶽人は同時に振り返りそれぞれの帰路へとついていった。

 お? これって胸アツな感じじゃね? なんて考えながら。

 

 

 ──そういえば俺さっき陸将の前で神力使ったよなあ……。どう言い訳しようか……ハハッめんどくせぇ。

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました。


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