東方照歩記   作:たま紺

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どうもたま紺です。
体のうちから湧き出てくる欲求に任せてたら一気に書き上げてしまいました。
今回は少し長めの9,000文字程度です。

ではどうぞ。


第八話 赤い鮮血は心をも染める

 

 

 大きく息を吐き、限界まで空気を吸い込んだあと声を張り上げた。声に神力が乗り、周囲の空気がビリビリと震える。

 

「聞けェ! 今から俺はここにいるやつすべてを殺す! どんなやつであってもだ!」

 

 そこで一度酸素が枯渇したので、大きく深呼吸をする。俺はとめどなく溢れる神力を留めようともせず、目一杯周囲を威圧した。

 っていうかこれ、聞こえてんのかな……。反対派も止まっているし、妖怪たちも行動を停止させているから聞こえてるはずだとは思うが。

 そんな中、俺はもう一度口を開く。

 

「ただし、チャンスをやろう。今から逃げれば助けてやる。もちろん後ろから不意討ちなんかはしない」

 

 その言葉を聞いた妖怪たちは神力に当てられたのか、いくらかが森の方へと帰っていく。おそらくもともとあまり乗り気ではなかった面々か、死にたくない理由のあるやつらだと思われる。しかしまだまだ残っているのは変わらない。減ったのも百に届くかどうかである。

 それにしても……ああ、最低だ。吐き気がする。

 こんなことを言っている自分に嫌悪感しか抱けない。

 それでもこの策を始めてしまったからには、もう後戻りはできない。

 俺の……いや、最高神の慈悲によってロケットは助けられた。一方最高神の平穏を奪った罰として神の裁きをこいつら(妖怪と人間)に与える。

 ただの傲慢で驕傲だ。なぜこんなことをしたと、問い詰められたらなにも言えない、ただの自己中心的な考え。欺瞞によって作り上げられた俺じゃないナニかが導きだした答え。

 自分を殺さないとこんなことはできない。でも、やるしかない。

 ふう、と一つため息を吐く。すると意識が遠くなったような気がした。

 ……オレは、近くにいた人型妖怪の首を右手だけで掴みあげる。そのまま空中へと飛び、身体の自由を奪ってから力を込めた。

 妖怪は必死で抗おうとしているが、呼吸できないことによりだんだんとその力が弱まってきている。

 妖怪の首からはギチギチと嫌な音が聞こえてくる。本当ならぶちっと握りつぶしたいのだが、あいにくそこまで力がないので神力を腕から妖怪へ、過剰に流す。

 この世界の生きとし生けるものは体に、霊力や妖力、魔力に神力のどれかを必ず持っていて循環させている。それはまるで血液のようだが、外部から触れるだけで干渉できる。扱えるようになるには相応の時間がかかるが、扱えれば人が妖怪にだって対抗できるようになる。

 ちなみに相手の力に干渉すると、自分の霊力などを分け与えたりできたり、過剰に流し込むことによって溢れさせることだってできるのだ。

 溢れさせればどうなるか。簡単だ。体が許容できなくなり破裂する。

 現におれの右手の先の妖怪は身体中パンパンに浮腫(むく)んでいて、見るからにつらそうだ。多分動かすのがかったるい程度には浮腫んできている。

 ただ、こんなスピードで流し込んでいたら冗談じゃなく本当に日が暮れるので、より大量に流す。

 すると、体重が二百キロを越えた人みたいな形になる。それでも流し続けていると、どこかの皮膚が裂けたのかピュッと生温いものが頬に付いた。

 垂れてくるものを舐めてみると、鉄のような味がする。おそらく血だ。そろそろ破裂する予兆といったところかな。

 その予想は間違ってなかったようで、奇妙な形の妖怪はブチュリというトマトを潰したような音とともに四散した。

 血飛沫が周りに飛び散る。半径五メートルに血の雨が降り注いだ。

 もちろん間近にいた俺は血まみれである。あーあ、せっかくの軍服が汚れちゃった。意外と気に入ってたのに。

 そして血の雨を皮切りとして、人vs妖怪vs最高神の戦いが始まった。

 ……とはいっても、数百対数十は可哀想なので最初は妖怪を中心に狩っていこうと思う。

 まずは手始めに、

 

 ──俺に【神力を刀に変える程度の能力】を付与。

 

 この能力は用途をより具体的にして、使用範囲を極限まで狭めることで俺の負担を軽減できる。

 もしこれを【神力を万物に変換できる程度の能力】なんてものにしたら、激しい頭痛に襲われていたことだろう。しかし、ちょこっと頭を使っただけで軽い倦怠感で済ますことができた。

 僕は神力を体の外へ出してある程度寄せておく。それを新たに付与した能力で体外に出した神力を刀に変換させると、地面へ落ちていきそうになったがすぐに掴む。

 刀は俗に日本刀と呼ばれているもので、めちゃくちゃ斬れそう。自分でもうっかり触れると斬れそうだもんなぁ。……あ、やべぇ。オレ刀使ったことねぇや。

 とりあえず漫画のイメージで持ってみる。……一応剣道は体育の授業でやったことあるので何となくはできるはずだ。……はずだ。

 ためし振りということで、おもっきし上から降り下ろしてみる。

 するとさっきの血のせいで手が滑って、とんでもないスピードで滑空していった。しかも超まっすぐに飛んでいったので眼下で戦っていた妖怪の背中に突き刺さる。かなりの勢いがあったようで妖怪は刀によって地面に縫い付けられた。

 おぉう。斬るより投げた方がいいんじゃないか? これ。神力はまだまだ残ってるしな……でもやっぱ斬ってみたい。

 というわけで、刀をもう一回創ってからちょっとだけ神聖に、具体的に言うとゆっくり髪と服ををはためかせながら地面へと降り立つ。その様はまさに天! 孫! 降! 臨 ! なんて言ってみるが、虚しさが体を包み込むだけだった。

 そして俺はちょっと厨二病っぽくひとつのセリフを吐いた。

 

「さあ、血を血で洗う覚悟はできたか? 今からこそが戦いの始まりだ……!」

 

 私は慣れない刀を突きの姿勢で構え、近くの妖怪の塊へと突貫する。

 刀の扱いに慣れていなくとも、どこが急所なのかは大体わかる。心臓、脳髄、あとは首筋だ。

 タタタっと足音をたてながら一番近くで後ろを向いていた妖怪の脳髄を一突き。刀はいとも簡単に刺さり、妖怪は絶命した。

 その刀を抜き、後ろから迫ってきていた妖怪へ刀を横に一閃。腹部を狙ってみたが、ちょっと浅いかな。そう思っていたが、ちょうど内臓の手前までは斬れたらしく腸があふれでてきた。うへぇ、気持ちわりぃ。

 うずくまって首が露になったのでそこを突き刺す。二体目。

 んー……。このペースでやってたら終わんないよね。だって数百体レベルだよ? 無理だ。

 よし、実験をしてより多く殺せる方法を探そう。まずは第一回、この刀はどこまで大きくできるのか。

 というわけで、一度空中に飛び上がり神力を縦長に大きく広げる。俺の神力は特訓のお陰で実質無限にあるので、気にしない。

 そのときに戦場の全体像を見てみたのだが、動いているところが少なすぎる。まあそれもそうか。人は固まって動いているため、近くにいるのは戦えるが、遠くにいると何してるのかわからん状況になっているように見受けられる。

 一度思考を中断させ、神力が五十メートルほどまで伸びただろうか……ってところでストップ。それを一気に刀にする。

 こちら側から順に刀に変換されていくようすはとても綺麗である。刀が落下する前に柄の部分を握ろうとするが、太い。握るとか言うレベルじゃない。大木だわ、これ。でも頑張って抱える。

 

「おっとっと。あちゃー……」

 

 そして全てが刀へと変換され…………落下した。それも俺が抱えていたところを基点に、半円を描きながらだ。……ただ落ちるよりたち悪いな。

 なぜなら剣先が地面に少し触れる程度で抉るようにしたため大きな亀裂が走り、そこにいた全員を真っ二つにしたからだ。目測ではあるが百体ぐらいは持ってけたぜ。

 それから実験結果の発表だったな。あと考察。

 おそらくどれだけでも大きくできると思われる。しかし刃の部分が伸びるわけではなく、刀自体がその大きさにあわせるらしくて柄がぶっとくなったし重くなるので地上で使うのは厳しい。故に使用禁止。

 続いてー、第二回! 大量に小分けした神力をばらまいて刀にしたらそれだけの分を創れるのだろうか。いっくよー。

 おれはいくつかの塊にした神力を広範囲にばらまく。その一つ一つが引っ付いて大きくなってしまわないように、慎重に慎重に。

 どれぐらい広がっただろうか。……半径五十メートル位? 目視できるわけじゃないから、感覚でやんないといけないのがめんどい。

 そうだ、実験なんだからもう一個追加でやってみよう。神力は相手をすり抜けられるのか。これができたら刀にしたとき強いな。

 二十秒位経った。そろそろいいだろう。俺はフィンガースナップ、いわゆる指パッチンを頭上で鳴らす。もともとはなにもしなくていいのだが、見た目が映えないので追加してみた。

 その音を合図に神力を変換する。先ほどと同じように順に変わっていくのではなく、今回は短いので一瞬で変わった。

 上空に数十本、地上──妖怪の身体を貫通した状態を含む──に数百本現れた。上で刀になったものはそのまま雨として攻撃をし、地上に現れたものはもともと刺さった状態だったので攻撃できている。

 刀は外から刺した訳じゃなく、身体を貫通した状態で現れたのでそこかしこで血飛沫がー、なんてことにはならなかった。しかし身体に穴を開けてすぐに塞いだ、みたいな感じになっているため殺すことはできたようだ。

 いいねえ。一気に殺せるから、対大勢の時はだいぶ使える。……んだけど、これじゃ無差別殺人ってやつになるか。味方がいたら困る。

 それはそうと、結果発表に移ろう。この攻撃は敵を大量に屠ることができるが、無差別に攻撃するため仲間がいるときは基本的に使えない。攻撃力は、妖怪七百体ぐらい? かな。何にしてもこれは奥の手だ。

 次は何をしよ────

 

「──イテッ」

 

 何か鋭利なものが飛んできて、頬をかすめた。俺は上空の比較的高い位置にいたので、地上から狙撃したのならば相手はなかなかの射手だ。気をつけねば。

 垂れてくる血を舐めながら、飛んできたと思われる方向を睨めつける。

 すると、またどこからともなく鋭利なものが飛んできた。今度はかなり下から真上にきたので、身体をのけぞらせる。

 すると俺の髪の毛が少しだけ持っていかれ、()()()()が散った。

 ……ん? オレの髪の毛って黒かったよな。

 そう思い一本だけ髪の毛を抜いてみると、やっぱり紅かった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「では、今から“覚醒”というものについて十年ほどトレーニングをしてもらいます」

 

 なんだその超厨二的ネーミングは。そしてそれを熱心に十年間も続けろと。…………いいだろう、ならば戦争だ。

 そんなことを心の中でつぶやいていると、アテナが呆れた様子で告げてきた。

 

「できないことをやるわけないじゃないですか。しっかりと知識を身につけて、コントロールしてください」

 

 俺の心を読んだようで、釘を刺してきた。

 ……しっかしなぁ、どうも実感がわかないんだよな。

 そもそも覚醒ってなんだよ。なに、力がドーンと湧いてきて無双できちゃう的な感じ? ああダメだ、余計わからん。

 なんにせよ、アテナがやれってんだからやるしかない。今まで嘘ついたことないし、信用はしてるんだが些か現実味がないというかなんというか。

 

「何言ってるんですか……。ここに居る時点で現実味がないハズなんですけど。……まあいいです。では、今から講義を始めたいと思います」

 

 そう言ってアテナは何もない真っ白な空間から、教壇と机、いす、ホワイトボードとその付属品を取り出した。ついでに俺の筆記具とノートも一緒だ。

 俺は早速いすに座ってノートを開く。このノートには今まで神界で勉強してきたことが書き連ねてあり、その冊数はそろそろ5冊目に突入しそうなほどだ。

 少ないように思うが、戦闘についてだけでここまで書けたのは我ながら褒め称えてもいいレベルである。

 ちなみに能力については別冊をチェックしよう。

 

「では、まず覚醒というものについて詳しく説明します。変なイメージを持たれるとこまるのであらかじめ言っておくと、これはゲームのように爆発的に強くなる、ということはありません」

 

 ええー、強くなれないのかよー。だったらどうすんのよー。

 と、超やる気なさげな声を心の中へと撒き散らしていると、むすっとした顔でアテナに睨まれた。そんな綺麗な顔で睨まれても……。

 美少女は何させても様になるのが憎い。憎すぎる。

 

「まず覚醒する条件、というものを覚えてもらいます」

 

 それを聞き、俺はペン回しに徹していた手を止めて真面目モードへと切り替える。

 アテナが華奢な手でホワイトボードへと書いていく。凛とした字はいつ見ても見惚れてしまう。

 ある程度進み、アテナがずれて文が見えるようになると俺も全力で書き写す。

 それが終わると、目だけで合図を送り続きを促した。

 

「書けました? 行きますよ。覚醒する条件というのは、感情の爆発です。基本的には“怒り”で覚醒します。……というよりは、しやすいという方が正しいですね。他にはここに書いたように、護りたいや救いたい、ちょっと変わったものでいうと殺したい、というのもあります」

 

 ふむふむ、何かの感情が昂ぶって覚醒するということか。

 ということは、この覚醒っていうのは自我に関係なくするものか。なんか暴走するみたいだな。

 その予想は的中したようで───

 

「ええ、いわば暴走です。覚醒した時のほとんどで理性を失います」

 

 そうか、理性を失う、か。

 どう覚醒するのかは聞いてないので、被害がどれだけになるかは皆目見当がつかないものの嫌な予感だけはする。

 

「このために、優陽にはキツイ筋トレをしてもらってたんです。少しでも理性を保てるように身体と心を鍛えてたんです」

 

 なるほどあの筋トレにはそんな意味があったのか。確かに身体はすぐ回復するし、別にしんどいわけでは無かったが、それでもキツかった。

 それは精神が関わってくるんだろう。

 ──キツイ

 ────がんばれ

 ──キツイ

 ────がんばれ

 ──キツイ

 ────────もう無理。

 の繰り返し。もうやりたくないと思ったが、それでもやらなくちゃいけない。なのに、もうちょっと頑張れるけど別にいいや、なんて思ってやめてしまう。これの無限ループ。

 それを乗り越えることができて、やっと一段階強くなったような気がしていた。

 それは間違いじゃ無かったようだ。

 

「話を戻しますよ。で、覚醒した時の効果ですが、優陽の能力が無限に使えるようになります」

「なッ⁉︎」

 

 俺の能力が無限に使えるようになる⁉︎ 理性がないのにそんなことしたら世界がなくなるぞ。

 

「もちろん制限は今のままです。回数の制限がなくなっただけですので」

 

 それを聞いて安心する。それなら世界が崩壊するーなんてコトにはならなさそうだし。

 

「あ、あと覚醒するとその感情に合わせて髪の毛の色が変わります。怒っているなら赤、みたいな感じで」

 

 なにそれちょーかっこいいじゃないですか! くっ……俺の厨二心がくすぐられてしまう。今にも心の闇が、うぐっ! 溢れ、そうだ……!

 なんて茶番をやっているとアテナにゴミでも見るかのような視線を向けられた。あの、俺が悪かったです。悪かったですからその視線はやめてください心が折れる……!

 

「はあ……。今から実際に特訓をしていきますので、しっかりとコントロールできるようにしてくださいね」

 

 そう言ってパチンとアテナが指を鳴らすと、次の瞬間には机とかが全て無くなっていた。

 ふう、と深呼吸をする。あのふざけていた気持ちを吹っ飛ばすには深呼吸が一番だと俺は思う。

 

「よし」

 

 静かに気合を入れた。

 

「では始めますよ」

 

 そうしてアテナは俺の頭に手をかざしていた。するとだんだん何に向けてなのかわからない怒りが込み上げてくる。ただ怒りがこみ上げるだけ。怒る対象はいないはずなのに感情だけが昂ぶって、意識が飛びかける。

 それをなんとかして押さえ込み、意識をしっかり保つ。

 負けない、俺は負けちゃいけない。

 そんな自分との戦いをすること数秒、不意に意識が浮かび上がってくるようにしっかりとしてきた。それに甘えたのが悪かった。

 油断をしたところへつけ込まれ、視界が白く染まり身体が浮くような感覚。

 ────そして理性がぶっ飛んだ。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ──長い夢を見ている。

 これは……神界にいる時のことだったか。何度も何度も意識がぶっ飛んで、その度にアテナがなぜか持っている竹刀で叩き起こされてたっけ。いくら竹刀とはいえ本気で振るえば痛いものは痛いのだ。

 それで……そうだ。確かこんな感じでちょっと前のことを思い出して目が醒めるんだ。ということは、また俺は理性が無くなってんのかな。

 

「───!」

 

 唐突にズキリと頭が痛んだ。

 頭の奥から殴ってくるようなその痛みは治ることを知らず、ましてや痛みが増す始末。

 その度に何かが脳裏をよぎる。さっきはどこかの平野の映像。今は日本刀。

 

「ぅぁ──!」

 

 今までの痛みの中でおそらく一番強い痛みが来た。そしてまた、脳裏に映像が浮かび上がる。

 さっきまではただ映像がよぎるだけだったが、今回のは違う。ぼやけていた映像がどんどん鮮明になり、映像が頭から離れないのだ。

 これは……………なんだ? あのさっき見た平野が、近くに森があった平野がただの荒野になっている。

 周りには大量の血液と死体。荒れた野原で横たわる死体たちを見ると、大きな戦乱でもあったのだろうか。

 

「ぐぁ──!」

 

 また同じ痛みが襲ってくる。

 その痛みで頭の中の何かに気がついた。……あの、何かを忘れているような感覚。思い出せそうで、思い出せないもどかしい感覚に苛立つ。

 なんなんだこれは。どうすれば思い出せるんだ。そういや、俺はこの夢を見る前って何してたっけ?

 その時だ。不意に記憶が蘇る。

 ──俺は何をしていたんだ?

 ──俺は何処にいたんだ?

 ──俺は何故彼処にいたんだ?

 俺がその答えにたどり着いた時、より深く眠りに落ちるような感じがした。多分これから目を覚ますのだろう。

 俺はゆっくりと沈みゆく意識に抗うことはせず、その身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

「──嘘だろ」

 

 目の前の光景に唖然とする。なんなんだ、これは。

 呆然と見つめる俺の視線の先には、夢で見た荒野と死体が広がっていた。地面からは煙がたなびいており、大量の刀が刺さっていた。

 全く状況が掴めない。

 

「どういうことだ……?」

 

 思い当たる節がないままなんとなく視線を下げてみる。

 俺の身体は傷だらけであり、右手には日本刀が握られていた。

 その日本刀から滴る血を見て、全身から血の気が引いていく。

 

「これは……俺がやったのか?」

 

 刀が手から滑り落ち、カシャンという音を立てた。そして俺はうなだれ、ペタリと座り込んだ。

 この状態で俺が犯人じゃないという理由なんざどこを探してもないだろう。何故ならこの場には、生き物の気配が全くとしてないのだ。

 死体がゴロゴロと転がる荒野の中で、俺一人だけが生きている事実に腹がたつ。

 どうして、こうなったんだ。俺は最高神としての役割を果たそうとして生き物を殺めただけだ。それなのに何故、覚醒なんかするほど感情が昂ったんだ。

 何故? 何故? 何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故。

 

「クソッ………!」

 

 おもいっきし地面を殴りつける。

 俺はこの世界を見守るだけだってのに、なんで逆にこの世界を壊すようなことをしたんだ。

 

「チクショウッ……!」

 

 もう一度地面を殴る。

 殴っても殴っても殴り足りない。俺が与えた痛みはこんなの比じゃないはずだ。

 身体中から後悔の念が溢れ出る。俺はただロケットを助けたかっただけなのに───

 

「そうだ、都市は⁉︎」

 

 振り向いて都市があったと思われる方向を見てみると、何もなかった。

 そう、俺の周りは焼け野原のようになっており周囲何キロかは何もない。あの鬱蒼と生い茂っていたジャングルも、俺が過ごしていた都市さえも、全てが跡形もなく消えていた。

 永琳が言っていた爆弾の仕業だろう。そんな中で俺が生きているのは、理性を失った中で自分の身を守ったのだと思う。

 これからどうすれば……。

 もういっそのこと死んで神界に戻ってやり直した方がいいんじゃないか。……いや、ダメだ。俺は罪を背負って生きないと。一生を使ってでも償わなくてはいけない。

 もう俺は死ぬことは許されないんだ。できるだけ善行を積んで、殺してしまった者たちの分も生きないと。

 

「ああッ、もう‼︎」

 

 頭の中がぐっちゃぐちゃになっていく。生きなきゃ、善行を積まなきゃ、罪を償わきゃ。いやでもやっぱり、エグい死に方でもして無様にいなくなった方がいいか………。

 そう思って落とした刀を拾い上げ、とりあえずは四肢をなくそうと左肩を突き刺そうとした瞬間にその声は聞こえた。

 

『やめなさい!』

 

 その頭に響く言葉で俺は行動を止めた。

 何も言わせぬ迫力のある一声によって我に返った。

 ドキリとする。いけないことを見られたような感覚に襲われる。それも一瞬のことで、すぐに元に戻ったが。

 言葉の主は…………キョロキョロ周りを見渡してみるも、いないみたいだ。声質から言ってアテナだとは思うんだが、姿が見えないからわからない。おそらくテレパシーかなんかで話してるんだろう。

 そんな俺の様子を気にせず、アテナは告げた。

 

『優陽が気に病むことはないのです』

 

 じわりと心に沁み渡った。

 たった一文。

 なのにその優しく、(いつく)しむような声は、背中をさすりながら抱きしめられるような安心感を与えてくれた。

 俺はそんな声をかけられて不意に涙が出そうになってしまった。

 

『今回のは、初めからこうなる運命だった。そういうことです。だから仕方ないんです』

 

 ──仕方がない。

 そう言ってくれてとても心が救われた。これが一般人ならそうはならなかっただろう。絶対の信頼を置けるアテナだから救ってくれたのだ。

 アテナに唐突に喋りかけられて、俺は悪くないと言われた。それだけなのに何故かとても安堵する。

 俺は刀を手放して、地面へと転がった。土の匂いと焦げた匂いが鼻に付く。

 そのままどこから見ているのかわからない相手に向けて喋りかけた。

 

「アテナ、ありがとな。なんか安心したよ。このまま頑張る」

『どういたしまして。これからも引き続き頑張ってください。心が折れそうになったら、多分私が声をかけますよ』

「はは、そこは絶対って言って欲しかったな」

 

 そこで会話が途切れた。

 俺が声をかけた後返答が無かったので、もうこっちのことを見ていないのだろう。

 蒼く広大な大空を見上げる。雲が太陽を隠していて空が見やすい。

 ……眠いな。

 いつの間にかだんだんとまぶたが重くなっていた。

 その重さに逆らうことなく俺は目を閉じて、波乱万丈だった一日の幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 




1対大勢って書くの難しすぎwww
いやあ、せめてベン・トーみたいな乱戦だったら書きやすいし、そもそも書いたことあるんで楽なんですけどねぇ。

閲覧ありがとうございました。
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