「なるほど、情報を聞いた時にもしやと思ったが『サテラビュー』を作ろうとしてたとはな」
改めて白卓デスクに戻り作戦会議、見てきたもの話したものを改めて共有すると、能登は資料を見せてくる、Webサイトからそのまま印刷してきたような内容をしていた。
サテラビュー、それは1995年に開発されたスーパーファミコン時代の……サフィーナが言うように革新的な周辺機器、衛星からデータ放送が送られて無料でテレビやラジオのように配信されるゲームを楽しむことができるという、時代を先取りしたような凄い技術だが当然ながらファミコン時代の製品がニンテンドーSwitchすら世代交代するような時代で稼働しているわけもない。
だから3Dプリンターなんてものを使用してまで開発しているわけだ、人工衛星を……。
「そんな凄いものがあったなら有名になってそうだけど、聞いたことなかったな……」
「俺も生まれてなかった頃だけに正確な事は言えんが革新的な要素なだけに浸透してなかったらしいぞ、BS放送を導入した家庭がまだ少ない上に18000円もしたらしいからな」
「衛星からゲーム情報を放送するというラジオみたいな仕組みだけに保存も困難だからな、オレもようつべで有志が残した数少ない映像を見たぐらいしか知識がない」
能登がYouTubeで実際に残っているサテラビューの映像を流すと、クイズ企画や先行体験版の他、BS放送を利用した臨場感あふれるファミコンプレイが出来る……確かに凄い技術を持っているが……これを作り直すとして無視できない問題がある。
動いていないから新しい人工衛星を飛ばして放送する……という手段は分かったが、肝心な放送する内容はどこにもない。
「サテラビューのコンテンツを配信していた会社ってどうなったの?」
「とっくの昔に倒産してるようだな……作った衛星をどう飛ばすかとか、3Dプリンターでそんなもの作れるのかもあるが、受信する内容が無ければただの箱だからな」
「でもゲームを作っているつもりだったし、前もってゲームは作っているんじゃ」
「日隈、少し勘違いしているかもしれないが『普通のゲーム』と『サテラビューの配信作品』は違うぞ、すでに発売されているゲームに特殊なトークやバックストーリーを交えて盛り上げるって代物だ」
荒いドット絵と電子音で構成される解像度の低い世界を妄想で補う時代だった、そこにリアルタイムで読み上げられるバックストーリー、特別な音楽、ラジオ感覚でマリオが実際にトークしてくれる空気感……現代の高スペックなソフトでやっても当時のような感覚は得られないだろう、それに今ではゲーム実況という手段で同じことが出来る……が、それで終わらせたら野暮というものであり、日隈は何か思いつくが今回ばかりは現実的ではない。
「僕らでその……サテラビュー用のゲームを作るっていうのはどうかな」
「無理だ無理、1からゲーム作るんじゃなくて既存のゲームを許可も得ず配信する上に後付けで音楽とかを加えるんだろ?」
二次創作……にしてもリスクがデカすぎる、内輪ネタでやるにしても大惨事を招きかねない結果だがここでまた気付いたことがある、廃園した幼稚園を利用して秘密基地に変え、極端なジオラマを作成して人を寄せ付けない雰囲気にしたのは邪魔されずに衛星を作りゲームを配信するところまで通すためだったのか?
真相を解明するためにはまた会いに行くしかない……。
今度は能登、瀬尾も連れてあの基地へ向かうことに……出発の最中、彩月が引き止める。
「軽く聞くんだけど琥珀見てない?」
「え?そういえばゲームジャム終わってから見てないな……」
「会ったら一応いい大人なんだからフラフラするなって言っといて」
「アレじゃどっちが保護者か分かったものじゃないな……」
「アイツ別に保護者でもないぞ、彩月雇ってるだけだ」
「は!?親戚とかでもないのか!?……こっちの方まで考えたらややこしいことになる!今はサフィーナ・ブルーだ」
――
「げっ……本当にやべぇデザインしているな、よく堂々と会いに行けたな日隈」
「うん……まあ、僕の街にこんなのがあったことの方が驚きだし……」
「熱意だけは凄いものだ、浦嶋と2択1だと悩むラインだが……」
一度通った道だけに何の苦もなく目的地まで辿り着くと、サフィーナはまた3Dプリンターで何か小さな部品を印刷している最中であった。
改めて白卓とサフィーナが邂逅する……。
「来たな日隈橙……まあ、2度目は仲間を連れてくるなとは言ってないからな」
「聞いたぞ、サテラビューを復活させようと手段問わず色々やってるとな……確認だがサウンドリンクゲームは用意してあるのか」
「この辺りにファミコンってあったか?」
「見てないかも……」
「私とて今の時代にファミコンが通用しないことはわかっている、現代の技術とレトロの性質を兼ね備えた調度いい作品が生まれた時代がある」
更に奥に進み、かつて遊戯室だった場所には丁寧にゲームカセットが寄贈されていた。
しかしよく見ると『改良済』と書かれた紙がタイトルと共に貼り付けられており、もう既にサテラビューに仕込む用意が出来ていると見た。
「ゲームの歴史は瞬間的な進化の連続、家庭的なゲーム作品として作られたファミリーコンピュータが1983年、1990年に急速なスペック進化を得たスーパーファミコン……この頃にもサテラビュー以外にもスペックを強化する周辺機器が大量に作られた……ゲームは持つ時代へ、ゲームボーイ……そこからさらに進化した!」
「ゲームボーイアドバンス、私はこれをサウンドリンクさせて銀河に打ち出しBSアドバンスをサテラビューで放映する!」
ゲームボーイアドバンスが作られたのは2000年代、サテラビューと時代は近い。
携帯機でさえも爆発的な進化を遂げて……白黒からカラー、更にはビット増加による出来ることの増加へ……更に進化するのはゲームソフトもそうだ。
「アドバンスは凄いぞ……『スーパーロボット大戦』は後期になって据置機並みに動けるようになったのもここからだ、DS時代まで続く挑戦的なソフトも数多くあり、更に移植作の『スーパーマリオアドバンスシリーズ』と『ファミコンミニ』があるから過去のBS配信も一部可能!!」
つまりはサフィーナは事前に作っておいた『サウンドリンク用アドバンスソフト』を接続して人工衛星でまとめて飛ばし、BS音声連動でゲームを楽しめるというムチャクチャすぎる代物だ。
「な、なるほど……アドバンスのソフト初めて見た、ギリギリ僕らが生まれるちょっと前くらいのハードだよねコレ」
「日隈、その発言は何かしらを致命傷に刺せるから思っても口に出すな……だがサテラビューはスーパーファミコンの機械だぞ、アドバンスのソフトが動かせるのか?」
「それは古い時代のサテラビューの話だ、エミュレータを買って改造してFCとGBを同時に扱える互換機にしてあるに決まっているだろう」
「なるほどとことん手段を選ばねえって感じが」
「感心しないでくださいのとさん……コレ多分、星谷さんも厄介になって僕たちに押し付けてきたんだろうなぁ」
ただ1人のCGデザイナーがこれだけの物を作ってしまうとは……と思ったが、もしかしなくても人工衛星自体は全然作成できてないのではないか?と思い至った。
だからこそ……日隈は考えた、でっかい夢のダブルブッキングくらい自分にとってはそんなに重荷ではないのではと瀬尾もちょっと説得せざるを得ない。
今自分がやるべきことはもっとサフィーナを知ることだ。
「今更ながら質問があるんですが、どうしてサテラビューを復活させようと思ったんですか?」
「言うならば銀河に夢を託したかったからだ、私がシン・サテラビューを作り始めたのは高校生の頃だが夢を得たのは10歳の頃だ」
自然な流れで回想に入る、サフィーナ・ブルー当時10歳にとって好きなゲームは近所のある人物がコレクションしていたゲームボーイアドバンスのソフトだった。
色んなゲームを特別に遊ばせてもらったが、中でも特別ハマったのがその人のお気に入りのポケモン作品、やりごたえがあって難しく最後までクリアすることは出来なかった。
ある時、近所のその人は突然離れなくてはいけないと別れを告げることになるが、最後に思い出のゲームと当時の最新作を残してくれた。
そして約束した……「ゲームが好きならずっと繋がってる、星を超えて」
「今では私があの人と同じくらいの年になってしまったが……ゲームを通して繋がる思い、ポケモンのモデルを作っていくうちにCGデザイナーというものになり……高校生の頃、サテラビューというものを知った……あのゲームのように銀河を超えた出会いを感じてな」
「なるほど……まあいい思い出ではあるのか?ポケモンと銀河もまあ合ってるっちゃあってるし」
「えーとせお君、この頃のポケモンシリーズってアドバンスだからルビーサファイアでいいんだよね?」
「まあそうだな、ファイアレッド・リーフグリーンとかもあるし不思議のダンジョンとかピンボールもあったが」
「……確かにそんなゲームもあったがあの人が与えてくれたものはそれではないぞ?」
「え?他にポケモンのゲームってある?」
「いや……俺もよく知らないな、兄貴がダイパってやつとルビー刺して連動して遊べるんだぞとか言ってた思い出はあるが……」
瀬尾と日隈はギリ世代じゃないこともありサフィーナの言っていることの辻褄に合わなさに疑問を感じていたのだが、話を聞いていた能登だけが真相を知っているように頭を抱えていた。
「……お前さ、もしかしなくてもその思い出のタイトルは『ポケットモンスターアルタイル・シリウス』だったりしないか?」
「おおそれだ!あの人はアルタイルで私はシリウスをやらせてもらっていたな」
「ああ……あークソッ、ポケモンで銀河って時点で嫌な予感はしてたが……いや、当時はそういうのがまだグレーとも言われてなかった時代か……?」
「あ……アルタイル?ポケモンにそんなのなかったような」
「あるにはあるが無いのも事実だ、アルタイルとシリウスは
「……は?改造ソフト?」
「そこにあるサウンドリンクソフトみたいなものだ、いやアレはクオリティ自体は高かったが……専門的用語を軽く使うなら『ロムハック』ってやつだな」
マリオやポケモン、ロックマン……その他時代を彩る名作は、それを軸にして改造し全く別の作品を作り出してしまう事例は多い、特にポケモンはゲームボーイ時代からそういったものも多い、そんな中日本でも大手ネット掲示板から作られたものがエメラルドを軸にしたサフィーナの持つ『ポケットモンスターアルタイル・シリウス』ということだ。
「そ……それって大丈夫な代物なんですか?」
「別に遊ぶ分には問題ないぞ、元であるエメラルドを用意すればいいだけでそこまでの手段に問題がなければな……そういえばあの頃は擬人化した萌えもんとか、東方人形劇とかいうやつも流行ってたか……」
引きこもり生活中パソコンにずっと触れながら知識を持っていただけにサブカル知識もあるが……自分の思い出の品がほぼ非公式であることを知らなかったのかまるで隕石が落ちてきたかのように衝撃的な顔をしていた。
「なっ……なななな、何ィーーーッ!!?つまりあれは(ポケモン世界で)本当にあった出来事ではないのか!?」
「映画ネタをストーリーに逆輸入とかするわけないだろ、ミュウツーがジムリーダーになったりとか……」
「アレからポケモン図鑑は1000種類も出てきたのに、何故ドククラゲが進化してヤミクラゲにならなかったりノコッチの進化がノコウテイではなくノココッチになってたりしたのもそういうことか!?」
「ポケモン図鑑が一番非現実的だろ、小学生でゴリチュウ見て公式と勘違いする感性のほうがビックリだわ」
「私は動画でほのおのいしを与えたフシギバナがフレイバナに進化するのも見たぞ!?」
「動画であったことを実際にあると思い込むな、今の時代生成AIで何でも作れるからマジで危険だぞ、最近は悪意のある中国産アプリゲーとか蔓延してるしな」
聞けば聞くほどネットリテラシーがないというか、本気になって3Dプリンター手を出す時点で今更というか良くも悪くも純粋すぎたというか……能登とサフィーナの問答を聞くだけで開いた口も塞がらない瀬尾と困惑しか出来ない日隈……とりあえず結論を聞いてみることにする。
「えーーっと、せお君……多分サフィーナさんは、そのアルタイルというものを衛星から全世界に放送しそうになってたんだよね?」
「もしそんなことになったらしばらくニュース番組のトレンドになるな……悪い意味でな」
「あのエセ関西弁が……確かに優秀な技術者かもしれんが、厄介なもの押し付けてくれたな……」
――
「……なんか聞いた限りだと文字通りとんでもない地雷を拾わされたことにならない?それ」
改めて仕方ないので連れて帰ってきたのだが事の顛末を聞いて彩月も苦い顔しかしない。
それはまあ、アルタイルがどうとかよりもこの年になって見たものがそっくりそのまま本物だと信じているような人、危なっかしくて仕方ないだろう、彩月は家に返してやれよとハンドサイン送るが瀬尾が首を振る、このチームで一番常識人である瀬尾が否定するのだからとんでもないことが起きていると気付かされるのだから凄い。
「……じ、実はこの人、家が無いんだよ」
「この現代でホームレスとかありえる?????」
「いや……昔は住んでいたのだ昔は……だが人工衛星に3Dプリンターの代金を回していくうちに昨晩アパートを追い出されてしまって……白卓に会う直前まで秘密基地としていたあの場所で細苦しく過ごしていたんだ……」
「住所不定無職3Dプリンター幼稚園魔改造おばさん(改造ポケモン持ち)……」
「勘弁してくれ俺達のサークルは問題人間矯正施設じゃないんだよ人付き合いに困難があるくらいであってくれ」
「今お前オレのことアレの同類扱いしたか?」
「引きこもり歴8年は充分アレの進化前だよ!!あの厄介なギャラドスの素質があるコイキングだよお前は!!」
「け……喧嘩しちゃダメだよ星谷さんも本当にCGデザイナーとして見込みがあると思ったんだし……それにほら、星谷さんの相方だって……」
「もしかしてその人問題児を惹きつける素質があるんじゃないの……?」
「……そ、それで私は白卓で何をすればいいのだ?星谷からは仕事をくれると聞いたのだが」
「ゲーム制作は間に合ってるんじゃないのかよ」
「私がゲーム作りに忙しくて指揮を取れないというだけで、何かしら造形を作るくらいなら可能だ……と、というかお金をくれ!!私ここしか家が無いんだ」
「ルームメイトこんなのとか私嫌なんだけど……あれどうしたその顔、言ってなかったっけ私は今この事務所で暮らしてるって」
「ただいマ‘ッ!!」
琥珀が帰ってきて早々に瀬尾の容赦ない背負い投げ、妹と同じ年くらいの娘がこんなにしっかりしてるのになんだこのお面野郎と能登がやれと言う前に行動に移した男、よくこれで自分はチーム唯一の常識人みたいに振る舞ってるものだと彩月は思う。
――
「いやあのごめんて、急にフラフラいなくなったことは悪いと思ってるけど彩月は凄いやつだからさ」
「だからって限度があるだろ!いい大人どころか親代わりの自覚もないのか!?」
「いや私別に親がいないわけじゃないし実家もあるけど」
「ちょっとお前は黙ってろややこしくなるから」
「とりあえず琥珀さんどこで何してたんですか?」
「彩月のゲームのネタを考えてたのは自分なんだからさ……ゲームジャムの時自分1人輪にも入れずポツンとしてた虚しさ分かる?」
「ネタを深く考えてるのはGeminiやGlokで貴方は小学生でも思いつくようなことしか言ってなかったけど」
「こいつの役割なんだって言いかけたが若干オレもその立場だったわ」
考えてみれば困った時に栄養は与えてくれるのだが、プロモーターの仕事ではない、特に星谷ピッフィーにはゲームを作ることが目的ではないと見透かされているし実際そうなのだろう、彼の目線はサフィーナ・ブルーの方を見ている。
「……そうなんだ、そろそろはっきりさせておきたいんだけど私、星谷ピッフィーさんとやら、そしてこの人サフィーナ・ブルーは琥珀にとってなんなの?」
「なんなのって……そうだな、むしろこっちとしては……覚えてないんだな」
「覚えてない?あの時に初めて会ったのに?」
「…………それより、私としてはそろそろ白卓で飯をもらいたいのだが」
「サフィーナさんなんか自分の知ってる方とキャラ違うな……とりあえずコミケに向けて作戦会議がてら何か適当に」
コミケで何か琥珀や不礼の謎が何か分かるかもしれないが、とにかくこの4人体制で白卓はコミケに提出する枠のゲームを制作することが決まった。
アイデアと細かい調整を日隈、宣伝と音楽面を能登、全体的なプログラムを瀬尾、そして3Dを軸にデザイン面をサフィーナがやる。
それぞれ目的は不礼と琥珀のことが気になる、大成するための足がかり、金が欲しいとバラバラなので瀬尾が上手く引っ張る必要がある、まだ加入して間もないのにやることが多い。
もちろん琥珀も何もしないわけではないが彩月はやる気がない。
「コミケに私来るのお門違いでしょ……本当にやるなら琥珀1人でやって」
「桜井は暇なら仕事あるぞ、オレに協力しろ」
「何すればいいの?言っておくけど瀬尾お兄さんがいるからプログラムはやらないしAIも貸さないけど」
「大したことじゃない、ちょっとな……」