白卓〜Re:maystar〜   作:黒影時空

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GAME18『温泉旅館だよ!全員クリエイター!』

一方、ゲーム作りの方を進行している能登、瀬尾、サフィーナの方だがやはり格ゲーは作るのに時間がかかる、グラフィックよりもキャラ性能の差別化で苦労しており、その合間として気休めの為に簡潔なミニゲームを作って投稿したりもする。

 そんな事を繰り返していると、不礼からメールが届く、どうやら不礼がゲームを完成させたようだ。

 更にそのまま当たり前のようにリモート通話が始まる。

 

「やっ、そっち出来てる?」

 

「むしろオレ達はそっちを待ってた所だ」

 

「ああそっか!それは悪かったね!こっちは一人で頑張ったんだから大目に見てもらいたいけど」

 

 約束通り白卓のサイトに特設ページを立てて2つのRPGを記載、これを少し待ってダウンロード数、評価、コメントで判定して勝負するわけだが試しに能登もダウンロード、タイトルは今となってはとても古いRPGツクールVXACEを使用した簡潔なデフォ素材で出来ている、『時空の塔』だという。

 

「お前、VX何年前だと思ってるんだよ」

 

「RPGのフリゲと言ったらVX世代なの俺は!MVも悪くないんだけど、こういうのが一番面白いんだから」

 

 『時空の塔』を起動してみると、典型的なタイトルとフリー素材を使っているだけはあり一見するとシンプルな内容、塔の入り口にショップと宿屋があるのですぐに内容が『ハクスラ』であることかわかる。

 ハクスラとはハック&スラッシュの略称であり、ダンジョンの攻略や敵を武器で倒しランダムに現れる宝箱を拾いながら敵を倒して上に目指すことを目的とするシンプルな

 不礼の言うVX時代のRPG系では多くフリーゲームとして作られた系統だ。

 銀や木の宝箱で装備品やアイテムのレア度を表すのもありふれたシステムだ。

 有名どころで言うと『らんだむダンジョン』とか『Hero_and_Daughter』だろうか。

 確かに一人でやる分にはこれくらいの内容でいいのかもしれないが……気になるところがある。

 不礼はコミケ界隈で二次創作をこよなく愛しているのだから設定にはこだわるはず、ゲームだけを楽しむような作品は特別自分から作ろうとしないはずだ。

 

「って顔してるね、俺もさぁ本当はそういうゲーム作りたかったんだけど君らも知っての通り一人じゃ出来ることは限られる……けどもちろんこだわったよ、俺らしさを」

 

 しばらく能登が適当にモンスターを倒してレベルを上げて、お宝を回収して装備を整えていると石板のようなものがある。

 40とあったので少なくともあと残り39個はある収集要素のようだ。

 

「こだわったのはここか」

 

「うん、ストーリーは年表にしてここに記したんだ、時空の塔は1層ごとに別次元に繋がっているから同じ階でも繰り返し楽しめるように作ってあるんだよ」

 

 そうして1層の中にアイテムを回収していくと、年表を通り越して一種の世紀。

 たった1枚の石板でも重厚な歴史がバーっと広がっているのだが、そのうち1枚の石板、一番最初の番号に違和感がある……この名前に覚えがある。

 そう、鈴蘭音牟の描いた7人姉妹物語だ。

 

「7人姉妹物語、お前も持ってたのか?……まあ、絵本でも二次創作は出来るか」

 

「絵本?……あー、そういうことになってるのか、この世界って存在しないのね【アレ】が……ま、そういう感じだから勝負楽しみにしててね……と、最後に一つだけ、物語はなんで『結末』なんてあるんだろうね?永遠に終わらなければそれだけ楽しめるのに」

 

「終わらなければ、お前は新しい作品も書けないぞ」

 

「それもそうだけどさ……物語が突然終わらなければ、俺達は幸せだったのにな」

 

 意味深なことを言い残してリモートが終わり、ゲームを切って続きを始める。

 自分はとりあえずやってみたが大方向こうは自分たちのゲームをやっていないのだろう、日隈や琥珀から聞いたが彼は自分が二次創作出来るゲームしかやらない、『魔女の家』はやったこともないと学校で言ってたぐらいだから相当なものである。

 

「で、そんなことよりだ……コミケは次やるとしたら時期的に夏、参加するまでにストアに何個か出品したいが……ようやくそのレベルって段階だ」

 

「一応日隈のやつがゲームブック作ってるからそれをどうするかって感じだよな……この格ゲーを完成させるとして他に作りたいゲームはあるのか?」

 

「あるにはある、全員の技術を結集出来るもの……サウンドノベルの推理ゲーだ」

 

 サウンドノベル、ほぼ文字で表現するスーパーファミコン時代に流行ったアドベンチャーゲーム、作っているものとしては日隈達のゲームブックに近いがサフィーナの3D技術を存分に使うことが出来る。

 これを第2目標、第1目標を格ゲーだが一旦ポリゴン式で全キャラの仕組みはできているので後は音牟に描いてもらえばほぼ完成、そして第3目標……ほぼ後回しでもいいちょっとずつ完成させるくらいでいい、しかしコミケには間に合わせたいくらいの作品。

 しかしそれの内容を聞いてサフィーナは大きく驚く。

 

「な、何!?ポケモンを作るだと!?いいのかアルタイルみたいなものはもうまずいんだろ!?」

 

「話を聞け!ポケモンそのものを作るんじゃねえ、『それっぽい形にシステムを参考にした収集系』を作るんだよ」

 

 つまりゲームボーイ時代からたまにインディー正規問わず作られてきたポケモン参考系ゲーム、いつの時代もこの手のやつは面白いしサフィーナが好きなのはこういう作品だ、モンスターデザインを日隈とサフィーナに一任して少しずつ瀬尾と自分がプログラムを組むわけだがここに来て瀬尾も何も言わないわけじゃない。

 

「いくらなんでも3プログラム同時は負担が強すぎるぞ、俺だって過労で死にたくないんだ少しずつにしてくれ」

 

「ああ、だからこいつはあくまで願望みたいなものだ……万が一負けるようなことがあれば、またあいつの別の作品を作らされることになるんだからな……」

 

 しばらく日隈達抜きでゲームを作る日々が続いており、デスクやパソコンにのみ目を合わせる、瀬尾が時々話したりはするが正直空気が重くてキツい。

 ただでさえほうれん草生活が続いて限界来てそうなところに……。

 

「あっ、らいかさん戻りました」

 

「おう完成したか」

 

「ページの内容と仕組みだけで、後は絵を描くだけなんだけど……」

 

 

 (た……助かった)

 

 ゲームブックの内自分たちでできる範囲が完成した日隈達が帰還、これで6人揃い改めて能登が作りたいゲームの予定を言うと日隈がノートを用意して使えそうなネタを探す。

 

「これ全部作りたいネタなの!?」

 

「そうだよ、日隈くんにはこれだけのアイデアの才能があるから自分は選んだんだよ」

 

「えーと……収集系なんですけど、今って平成レトロって言葉が流行ってるし、昔ながらをアイテムをモンスター化させるというのは?」

 

「なるほど、ガラクタが別世界で武器やモンスターになる『ぐるぐるガラクターズ』なんてゲームもあるしな……そこを上手く弄っていけばそれっぽいのにはなるか」

 

「しかしサウンドノベルに格ゲーに収集系ゲームとは随分色々やってるよなぁ……この間はRPGだろ?その前にはパズルゲームに、シューティングゲーム、あとシミュレーションもやったっけ」

 

 これまで日隈のアイデアで作ったゲームをしみじみと眺める琥珀だが、そこに音牟が挙手して応える。

 

「えっと……来て間もないボクがこんなこと言うのもなんだけどさ、サークルとしてなんかコンセプトがブレブレじゃない?ここはこういうゲーム作ってるんだってファンに認識させるというかこういうのが得意なんだってのが見えてくるべきだと思うんだ」

 

 音牟の言うとおり有名企業の代表するゲームを振り返ってみるとどれも特徴があり、この会社といえばこういう作品みたいなものがある、無論それはインディー業界も例外ではない。

 白卓の目的はインディー業界でイヤーの大賞になること、しかし1回頂点に立ってしまえばそれでいいなんてことがあるわけがない、サークルとしてこういうゲームを作っていると認識されるには……白卓のポジションを固めなくてはならない、しかし能登は安易に決められない。

 

「そんなことは百も承知だがオレ達の方からそんなものを決めたら内容が縛られる、このサークルが成り立ってるのは橙の発想力から始まるところがあるからな……」

 

「ゲームの内容に限界が来るということですか?でも確かに僕としても真剣にやるなら方向性は多少決めないと……というところはあるかもです、ああでも可愛い女の子作ってとも言われて……」

 

 始まったそばからゲーム作り……このままでは身体もダメになってしまう、ここにきて琥珀は久しぶりにプロモーターっぽいことをやりだす、ポケットからパンフレットを取り出す。

 そこには温泉旅館のチラシがあった。

 

「まだ育ち盛りなんだからちゃんと休みなさい!たまには大人らしいことしないと!」

 

「温泉ですか……いやでも僕ら親の許可ないと」

 

「大体俺、まだ育ち盛りの妹いるんスよ……勝手に抜けられないっての」

 

「じゃあ全員連れていけばいいだろ」

 

「強引すぎますってらいかさん、いくらなんでも」

 

「いいよ家族全員!!どうせなら大盤振る舞いだ!!」

 

「嘘でしょ!?」

 

――

 

「ふふふっふ……見ろ、ここの旅館はホタテをはじめとして貝の料理が目白押しか!」

 

「アンタもう既に料理のこと考えてるのか……」

 

「当たり前だ!お前達がとんでもないゲームを作ったせいでしばらくほうれん草生活だったんだからな!?反省しろ!」

 

 時が経ち旅行の時、相当遠くなので電車に乗って旅館まで向かう白卓と家族一行。

 日隈達の家族に関してはなんと琥珀一人で別ルートで別の旅行に行くから安心しておけというあまりにも強引すぎる手段で学生サークルたちの温泉旅館を成立させた。

 一応休むための慰安旅行ではあるのだが、日隈と能登はここでもゲーム制作の話をしてる。

 

「お前ら一応休むための旅行なんだからこんな時くらいゲームのこと忘れたらどうだ」

 

「逆に聞くがオレ達からゲームを抜いたら何が残るんだ?」

 

「せっかくの体験なんですから参考にしないとダメじゃないですか」

 

「ダメだ筋金入りすぎて通用しない!」

 

 こんな時でもゲーム作りが止まらないのはクリエイター様々というべきか……というところで、自分たちの座席に近づく足音がするのが分かり眠っていた音牟も目を覚ますと……。

 

「なんやあれからそんな立ってないのに随分賑やかになったもんやな」

 

「えっ……星谷さん!?」

 

 なんと乗り合わせていたのは『Bの魔術師』星谷ピッフィー、指先一つでどんな音楽でも作りBGMに関しては右に出るものがないとされたゲームジャムで激突した専門学生であり大手アクション企業マスクウェアにも内定を得ている。

 そして星谷がいるということはつまり……。

 

「ごきげんよういつぞやの思い出」

 

「ギャッ」

 

 当然この女もいる、同じくマスクウェア確定の天才奇人デバッガー兼クリエイター。

 街が産んだ思考実験と検証の化け物、その名も北宮。

 それだけではない、北宮が肩車している男だって日隈には覚えがある。

 そう、ついこの間格ゲー対決で能登をかけて競い合ったたった一人の格ゲーマニア、立崎学園の三波七夜だ。

 

「えっしかも七夜さんまで!?」

 

「なんだ、この綺麗な姉ちゃんお前の知り合いだったのか」

 

「なんや?あの例の格ゲーサークルの奴、白卓ともやってたんか?」

 

「ええちょっとワケありで……というか貴方、綺麗な人だったらなんでもいいんじゃ」

 

「おいお前人を見境ないみたいに言うな!言っとくが俺は未だに能登一筋だからな」

 

「いい年した人がJKに色目使うのキモいよ三波さん」

 

「うるせえサークルに花が必要なんだよ事務役じゃなくて」

 

「えっ……さっちゃん!?」

 

「あっ、能登さんやっとねむ兄ちゃん雇ったんだ」

 

 そして……七夜がいるということは、桜井彩月もいる、あれから日隈を倒すために七夜と組んだ超天才ハッカー兼AIクリエイター、既に彼らは『黒卓』と名乗ってシミュレーションゲームを作っている。

 

「うちらをパクったようなサークル組んで暇なんだな」

 

「見境なく変なゲーム作る人に言われたくないんだけど」

 

「はいはい!うちのかわいい教え子をいじめないで欲しいな……というわけでごきげんよう」

 

「うわっ出た!」

 

「不謹慎ゲーム野郎やないか!」

 

「こいつが能登が言ってたやつか……」

 

「なんか俺の評価おかしくない?」

 

 なんとトドメとばかりに乗り合わせていたのは二次創作のスペシャリスト、琥珀の師匠不礼勇。

 なんということでしょう、同じ電車に北宮組、黒卓、不礼が同時にいるという奇跡の合流。

 能登もこれを見てつっこむのを放棄して心のなかで呟いた。

 『え?もしかして今から大会編始まる?』と。

 

「なんで皆さん同じ電車に……僕ら今から琥珀さんに誘ってくれて温泉旅館に行くところなんですけど」

 

「えっその旅行相席していい?」

 

「何自然な流れでダブルブッキングしようとしてんねん……いやまあ、あのお面野郎のことやから分かっててそこ連れてったな、多分そこって〜〜やろ?」

 

「え?お前らもか?俺も彩月に誘われて同じところ行くんだけど」

 

「え?いいなあ仲良しで……だったら俺も参加しちゃう!!」

 

「え?え?えええ!?」

 

 更に琥珀が意図的にやったことなのかはわからないが、同じ温泉旅館に向かってるクリエイターがこんなに、不礼に関しては完全に貰い事故みたいなところはあるが……。

 事情を聞いてみると、なんとその旅館はクリエイター御用達の聖地だという。

 

「なんかその近く、あの赤嶺クリエイターがよくここでネタ考えたりするのに使うんだってよ」

 

「赤嶺!?この世に売れてる名作のスタッフロールに大体名前あるやつやないか!」

 

「へー、この世界にも檀黎斗みたいなのいるんだ……性格がいい人だといいけど」

 

 実の所クリエイターの名前を出されても瀬尾は反応しているが日隈や音牟のようにピンと来ない人もいる。

 それはまあ、ネットでめちゃくちゃ色んな意味で話題になってる人とかでもないかぎり誰がどんな物を作ったのかを把握なんてできない、漫画の作者でも覚えられないのにゲームになると数十人、数百人規模の名前が流れてくるのだからピンポイントで一人なんて見れない。

 

 しかしそんな素人の日隈でもすぐに分かる。

 電車を降りて旅館に辿り着いてすぐ……また別のバスなどを用いて辿り着いたであろう3つのグループが来ていたことも、更に琥珀がそれらとは別に手を振ってきたことも。

 

「琥珀さん!?これは一体……」

 

「いやなんというかね……落ち着いて聞いてくれ……偶然♡」

 

「こんな偶然がありえるのか!?」

 

 瀬尾が琥珀に詰め寄っている間、能登は冷静に残り3グループを確認する、ネットで見たことある相当な名門であり分からない日隈の為にメモを見せる。

 まず真っ先に目を引かれるのがこの時代この現代で金髪縦ロールのド派手衣装の女とその取り巻き女達。

 

「まずあそこにいるのが『金薔薇★倶楽部』だ、乙女ゲー作らせたら右に出るものがないと言われるインディーの姫とかいわれるやつら……リアルでもあんな格好してたとか関わりたくね〜な」

 

「あそこのは?」

 

 次に日隈が指さしたのはいかにも大人たちがやっているようなサークルであり、何やら大きなボードを持っている。

 どうやらゲームはゲームでもTRPGを制作しているサークルのようだ。

 

「あれは確か『もんどこーろ』だな……同人のTRPGは時にページ数を見ると企業で売ってるものに比べて値が張るが、あそこのはそれを感じさせないクオリティがあるな、オレもルルブ買ったぞ」

 

 そして最後……能登に行く前に日隈の思考が止まる。

 間違えるはずがない……まさか、こんなところで彼にも会うとは思わなかった、3つ目のサークル、そこに確かに彼はいた……かつて不礼勇を強く慕い、クラス内でも優れた絵師の技術を持っていた男、不礼が言うには行方知れずとなっていたあの男、浦嶋の姿が。

 

「浦嶋くん!?なんであそこに……」

 

「待てよ、あまり正面から話しかけようとするな……この手のやつは迂闊に関わったら面倒になるし、オレ達はこの為に来たわけじゃないだろ……ただ、今回の慰安旅行、ただ一休みして終わりそうにねえな」

 

 こうして、なんとも奇妙なお客様御一行ツアーが勢揃いしたクリエイター達による温泉旅館ぶらりご休憩が始まろうとしていたが……。

 

 

「赤嶺!お前どこにいるんだ!」

 

「いつもの所……って答えるのダメですかね、相変わらず色んな人がここに来るから面白くて」

 

「お前自分のネームバリューを考えろ!存在しているだけでどれだけの人間が集まってくるか……」

 

「だからこそ……この目で見てみたいんだ、どんな気持ちを込めて、どんな夢を形にしてゲーム作ってるのか、どんな顔して自分たちの作品を作っているのか」

 

 この男、赤嶺央。

 この世界において絶対的な名作を作り神のようにもてはやされ……現在は、わざと情報を流して自身に食いつくようなクリエイター達の様子を観察することをネタにする、天才と奇人は紙一重を往く男。

 この日もまた、自分から虫食い植物が獲物を誘うかのように……存在することで人間観察を行い、その暇つぶしがてら、電話を切って動物達と戯れる。

 しかし、その目線に不礼の姿を向けると表情を変える。

 

 

「しかし……今回は厄介な客まで招いてしまったみたいだ、不礼勇……まさか彼までここに来るとは……」

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