白卓〜Re:maystar〜   作:黒影時空

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GAME20「世界ができるまで」

 

「ちょ……ちょっと待ってください、えっと……知らないんですか!?マリオを!?」

 

「うん、君からすれば変な話かもしれないけどやったことないというよりは、あったんだなぁって感覚、好き嫌いの話じゃないよ」

 

 信じられない、100人に聞けば99人が知っていると言うレベルの奇跡の一人としか言いようがない、それだけあの赤い配管工の知名度というものは並外れているものだ。

 それだけに日隈でも衝撃は隠せないし琥珀も偶然通りかかって膝から崩れ落ちるほどの衝撃。

 

「大丈夫よ少年、私も目はちゃんとしてるけど今のはめっちゃビビったわ」

 

「ワイもや……マリオ知らん人がこの時代におるとはなぁ、じゃあアンちゃん、ゼル伝も知らへんのか?えーと今だとアレか、ブレワイやな」

 

「うーん……想像に任せる」

 

「その反応は間違いなく知らへんやつやん……じゃあアレか!?モンハン派か?」

 

「…………」

 

 赤嶺はこれ以上は話しても無限ループになるだけだと、話の結論を一気に話そうとするが……その前に手を伸ばしてきたのは不礼の影だったが琥珀は引き戸を勢いよく閉めて手を挟む。

 

「ぐえー」

 

 「悪いなアンタの空気の読めなさは散々味わってるんだ!今大事なところ!」

 

「ありがとう、やっぱり不礼にとっては都合の悪いことかな?神様だったから」

 

「え?赤嶺さん、不礼先生のこと知ってるんですか?」

 

「先生か……まさかそんな風に言われているんだ、彼……じゃあせっかくだから答えを言うけど……さっきから言っているマリオやらのゲーム、本当に存在してるの?」

 

「え?」

 

 赤嶺は何を言った?ゲームの存在の完全否定、いや……この場合はまるで最初からそんなものなかったと言っているようだ。

 理解が追いつかないと思わせるまもなく、続けざまに赤嶺は語る、まるでプログラムを打ちこむかのように……。

 そして……能登はずっとそばで黙々と聞いていたが、ようやく口を開いた。

 

「つまり……本当はないんだな?ゲームなんて単純な話じゃねえ、()()()()()()()()()()()()……」

 

「ううん、それもまた違う……その規模じゃない」

 

「その規模じゃない……そこまで小さいことじゃないって、でも……いや違う!!逆、大きすぎる規模!?」

 

 日隈はこういう時、察しが良すぎる。

 アイデアが閃きやすい分……ヒントを与えられたら時に余計なことまで知ってしまう、能登も日隈の反応で気付いたようだ、そして……不礼のこともあれば答えもすぐに導かれる。

 

「ゲームだけじゃねえ、この世界にはまだ存在してないもの山ほどあるんだろ……例えば、マンガとか、アニメとか!!……言い方を変えたら、()()()()()使()()()()()が実際はここにはない!」

 

「御名答、変なことを言うけど……例えるならマンガは、作者はいないのに作品がある、放送されたこともないのにDVDが出たアニメがある、そんな状態みたい……もちろん全部のゲームがそうじゃないけどね」

 

 この人は一体何を言っているのか?という余裕がようやくできたが、赤嶺が言っているだけにあまり言い返せない、大物オーラを存分に使ってきている。

 それでも日隈は一つ反論をした。

 

「どうして赤嶺さんがそれを言い切れるんですか?全部調べないとそんなこと分からないはずじゃ……」

 

「その通り、普通じゃわかんないね……つまり結果は2通り、僕がおかしいか世界がおかしいか」

 

「オレは贔屓目抜きで、アンタが出任せを言ってるように見えない……というよりは違和感があった、サテラビューってゲーム機についてだが」

 

「サテラビュー……ああ、1995年頃の大昔に出たらしいね、それが何か?」

 

「もう一つ、ゲームボーイアドバンスというハードについて」

 

「そっちは確か2000年代に発売……らしいけど、カタログ見た限りでは」

 

 赤嶺はスマホを見て情報を確認しながら能登と話をする、日隈も話していくうちに……違和感に気付く。

 刹那、違和感を感じているのは日隈だけではない……琥珀だ、琥珀も突如頭痛を感じる、これはいわゆる封印されていた記憶が一気に解き放たれそうな、例えるならラムネ瓶のラムネを強引に爪楊枝で引っこ抜こうとしているような感覚……しかし自分にとって大事なことを思い出せそうな気がする。

 琥珀は喋った、運命の一言を。

 

「能登ちゃん……ずっと聞けなかったんだけどさあ!質問していいかな……今って2026年!?」

 

全員が瞬時に時計を見た途端、違和感が全て晴れた……なぜこんな簡単なことにも気付かなかったのか?あるいは気付けなくされた?時の流れをこれまで実感しなかったのはなんだ?……琥珀もそうだ、自分はずっと2020年代だと思っていた、だってそうだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「今は……西暦2046年、令和18年だ」

 

「そう、2023年発売のスーパーマリオブラザーズワンダーは凄いレトロゲームなんだよ……本来ならね」

 

「何を言うとんのや……気付かんかったワイらもアレやけど、マリオワンダーやったら生きてる間に遊んどる!!それも中古屋やない、新品や!」

 

「いえ、それは成立するわよ……私たちの認識からして2043年にマリオワンダーが発売され、ニンテンドースイッチが2037年に発売されればいいんだから」

 

「な……なんてこった、ズレてる!!僕の知ってるゲームの歴史から、ゲームやアニメが出来るのが20年ぐらい遅くなってないか!?」

 

 なんてことだ……能登酒屋に置いてあったアーケードゲームも実際は平成中期の代物。

 サテラビューが1995年だとしても20年ズレれば2015年、ゲームボーイアドバンスを追い越すどころか3DSまで古い時代に突入する。

 にわかには信じがたいが、実際に今ここで現実に起きている……だが、琥珀の中で納得できるものもあった。

 彩月のAI技術だ、AI生成でなんでも出来る時代が近づいてきたとはいえいくらなんでも彩月の作るものはなんでもありすぎた、しかしそれは琥珀の無意識な脳内基準が2026年として動いていたから……だがこれが2040年となると今の時点でレベルが凄いんだからそりゃ一から組もうと思えば組めるだろとなる。

 だが問題は……。

 

「琥珀さん、記憶が戻ったんですか?」

 

「も……戻ったというか、なんというか必要な情報を取り戻したって感じだな……その、君等の役に立てる話は出せないんだ、でも言いたいことはわかる、自分も日隈くん達も認識としては2026年だったわけだろ?じゃあ実際の1990〜2020年代はどうなっていたんだ、そしてその異常に気づけたオタクは何者って感じで」

 

「僕は別に特別でもないよ、普通にゲーム作って普通にそれを世界に流してるってだけ、普通に存在しているものを普通に売っていた……そういう連中だっただけ」

 

 つまり赤嶺は逆に何の問題も異常もなくゲームをあるべき場所に普通に作っていたからこそ、『マリオなどこれら全て本当は存在しない』という認識を維持していた。

 本当にこの口ぶりだと最初からこれらの版権作品などなかったことが当たり前なのかもしれない、本来この世界で覇権を握っていたのはマリオやソニックではなく『ティティオ』という彼の作ったゲームだったのだろう。

 だが何故そんなことになったのか……よりも、今大事なのは過去のことだと北宮と能登は立ち上がる。

 

「おい何してる日隈……明日から作業開始だぞ」

 

「さ……作業ってゲーム作る気なの!?」

 

「当然じゃない?私たちの間でこんな非現実的な事が起きているならネタにしないともったいないじゃない!」

 

「……へっ、なんやこんなこと聞かされても北宮いつものノリやないか、おおきに!」

 

 だがこれだけの真実を知っても北宮達も白卓もノーダメージ、それはそうだ。

 意識を向き替えたら世界がおかしいよりも、これをゲームに使えそうって考えたほうがよほど為になる。

 今の体験を夢じゃないなら是非とも創作にしたい、北宮も能登もそれで頭がいっばいだった……しかし、『本来の』記憶を取り戻した琥珀としてはあまり笑えない状況だった。

 

「赤嶺さんは『なんで2026年が普通なの?』って思ってそうだが、まあその……自分とアイツにとっての現代といえばこの時代なんだよ、能登ちゃん達は巻き込みたくないから二人きりで話すし、貴方にも迷惑かけますが聞かせてください、貴方とアイツはどこで知り合ったんです?」

 

「名乗りを上げてきたって感じかな、動画内で最初は細々と……しかし最後には大胆に、だから僕というか僕の周囲のゲームを作る人に目をつけられた感じかな、僕としてはゲームを作れたらなんでもいいけど」

 

「……ありがとう、とすると今僕がついていくべきなのは日隈くんじゃなくて……」

 

 

 

「浦島くんとやらだな」

 

――

 

「せんせー」

 

 そして浦嶋は、決心したかのように不礼のところに。

 再開を喜ぶ様子はないが、目の前の不礼は警戒を解いているようにも感じるが、それよりも前に言うことがある。

 

「一応せんせーとして以前に、教育者として……後一応大人として言っとくけど、なんで失踪したの?というかよく出来たね?」

 

「それに関してはすみません、ですがどうしても調べたかったんです……せんせー、貴方が家においていたあのアニメやゲーム……本物か偽物かはともかくとしてどこから持ってきたんですか?」

 

「疑う……というのは違う感じだな、結論を言うと別に悪意はないというかさ、君も俺を慕ってたなら分かるだろ?俺は二次創作を作ることは好きだ、その為にアニメやゲームを見ている……それでもね、さすがの俺でもね、ドラゴンボールやワンピースその他諸々、どんな作品でも自分が作ったことにするほど面の皮が厚いわけでもない」

 

 自分が二次創作をするためには、その作品が存在しないといけない、二次なのだから設定を借りないと成立しない。

 だがなかった、だからしばらくは頑張って広めるしかなかった……苦労の日々だった。

 アニメはこの世に数千種類、マンガやゲームなんてもう口に出して数えられない規模、それら全てをあったこたに……もちろんできなかった。

 

「いくら俺でも触れられない作品はある、ロストメディアなんて用語もあるし、大昔に廃刊になった漫画雑誌まであるんだぜ?自分で調べなきゃ存在を確認出来なかった本もあるから、それをちょっとずつ今でも……その方法はわかるよね?君なら」

 

「コミケですね……」

 

 だが運がいいことに、この世界にはコミックマーケットがあった。

 youtubeでアニメやゲームの解説を作る以外にも、コミケで一気にその存在をしらしめた、だがそれをやるために相当時間がかかった為に……問題が起きた。

 

「実は俺も把握してなかったんだよね、2046年だったんだ今」

 

「なっ……じゃあせんせーがそんなことしたわけじゃないんですか!?」

 

「まあその、ズレ自体は起きてるだろうなと思ったけど3年ぐらいをキープしていたつもりが……20年か、そりゃ違和感も出るわな」

 

 不礼はまるで自分が大きなことをしたようには感じられない、この違和感を引き起こしたのは間違いなく彼なのだがこれではお互いに大事だと感じられない。

 自分一人に抑えられるものでもないから、別の視点から話を切り出すことにした。

 

「せんせーは何をしたのか、何をしたかったのかまで……俺じゃなくて日隈くんに伝えてください」

 

「君は聞かなくていいの?あんなに俺を慕っていたのに」

 

「だからこそです、貴方の作品を愛して存在したからこそ……失望するようなものは見たくない、二次創作をする上で必要なのは原作の欲しいところだけ、外食でステーキを食べて……わざわざブロッコリーに手を出すこともない、貴方が創作するうえで教えてくれたことじゃないですか」

 

「そういえばそっか、君は逸材だからね……じゃあやっぱり聞け、逸材だからこそ聞け……といっても、やっぱ創作家は違うね、面白いネタがありそうとなれば我先にと目を光らせている、ホラー映画みたいだ」

 

「えっ!?」

 

 浦嶋が辺りを見渡すと確かに客室のあちこちから覗かれている気がする……一人や二人じゃない、明らかに自分が入ったサークル以外にも覗き目が沢山ある。

 なおそのうちの半分が北宮と彩月である。

 

「お前気合い入れすぎやろ」

 

「目はいくらでもあってもいいから」

 

「普通の人間は2個だけなんや、それどうやって鏡反射させとんねん怖いわ」

 

「あ、あのらいかさん……盗聴しなくても……」

 

「あのクソ怪しい先生が何言うか分かんねえだろ、しっかりボイレコしておけ」

 

 そうして周りが聞いている中、役者は揃ったとでも言いたげに不礼は中心でくるくる回って大舞台のように語りかける。

 

「何をしたのかで言えば俺はもう済ませているよ!うーん……でも琥珀が空気読んでるんだからこっちもこっちの事情を語るべきではないのよな……ちょっとボカす言い方をするとね、横軸だったものを縦軸にやってみたって感じかな……ほら、転車台って言うんだっけ?あんな感じで横につながっていたのを……連結!一気に縦に変えるみたいな、この例え伝わる?」

 

 各自は一斉に考察、横軸だったものを縦軸……つまりは別々ではなく1列に繋げた、結論から言えばこの答えには絶対に能登たちでは辿り着けることはなかったが、なんとなく覚えがあった。

 

「時空の塔……」

 

 不礼が作ったあのフリーゲーム、あれも例えとしては類似している、あれを自分が作りたいものだとしたらおぼろげながらシンボルが見えてくる。

 そして話を続ける。

 

「20年前のズレに関しては……ああなるほど、ちょうど少し前の過去で()()()()()()()()()()()()みたいだな、俺のせいじゃないから見逃してよそこは」

 

 つまり今能登や北宮達も必死に調べている実際の過去で、なんというか時間の流れがメチャクチャになるような大きな事件があり、能登達はそれを覚えてないかもしれないという、そして能登達のことも少し先の時代ではこの思い出も忘れられることになるかもしれない。

 

「そこはまあいい、それで俺の目的……変わらずだよ、何度も言うように俺は二次創作を作りたくてそれを楽しんで……まあでもさ、一人で書くには名作や面白い設定の作品というものはあまりにも多すぎるんだ」

 

「でもせんせーはAIを使って書くこともあるじゃないですか」

 

「でもそれだって書くのがめんどくさいところとか思いつかないところを処理してもらってるだけだし、結局自分が考えてるんだから時間効率は変わらないんだよね……ま、1000文字を3000文字にしてくれるのは凄い錬金術とは思う」

 

 出来がいいからAIを使うんじゃない、代わりに消化してくれるからAIを使う、手間がかからないに越したことはないしエピソードを組むならアニメ2クール分がちょうどいい。

 不礼はこれまで色々書いてきたが全く原作の消費が追いつかない。

 

「だからさ、せっかくだからクリエイター達が欲しいんだよね、俺の考えてる分、代わりに書いてくれる人が欲しいんだ、それも山ほどね」

 

「や……山ほど……そうか、だから俺に声をかけたんですね、見ず知らずの絵が上手いだけの俺を!」

 

「おかげで君はサークルにも選ばれた一流イラストレーターじゃないか……まあいずれ迫りくる課題だったし、やっておきたかったんだ」

 

「えっ……」

 

 

――

 

 視点を日隈達に戻す、思い返してみれば自分達は勝負を受けた、勝負に勝てば二次創作を代わりに書いて欲しいというもの。

 しかしこれだけの裏工作を見ていると……白卓としては危ないのではないのか?

 まさか本当に二次創作を……。

 

「口約束はした以上あいつはどうでもいいと言えない空気だな」

 

「なんか慰安のはずなのにとんでもない空気になってしまったな……」

 

「なあ私は今何歳だったっけ?」

 

「ボクちょっと混乱してきたよ〜……なんでこんなおかしなことになってるわけ?」

 

「それを調べてゲームにしようってわけなんだよな……相変わらずめちゃくちゃとんでもないこと考えるものだ」

 

 まさかゲーム作っているだけで間に挟まれた謎の歴史というロマンがあるとは思わなかったが、能登と北宮は肝心なことを言う。

 

「いいか橙、頭に叩き込むべきなのは結果がどうであれ、あの二人が言ってたことが事実であれ、オレ達クリエイターからすればそんなのどうでもいいってことだ」

 

 二次創作を作ってほしい?各作品を広めた?頑張りはいいものだが、安直な理由や手段で他人に手を借りたりする時点で自作品に誇りはない、ただ作りたいだけなのだろう。

 マリオと名のつくゲームはおよそ80種類以上あるが、それはつまり彼はマリオだけで80の二次創作を作りたいわけだが……。

 

「時間をかけたくねえ上にクオリティも特に気にしてねえって、口を利くのもめんどくさいみたいなもんだろ、使命感だけで書いてやがる」

 

「2010年……あっ、もしかして!!」

 

 ここで何か音牟が閃き、取り出して見せたのは自分が神の思し召しのように描いた七姉妹物語。

 それに真っ先に反応したのは情報を取り戻した琥珀、絵本を見て今まで感じなかったものが一気に冴えわたる、ゲームで出来ることが増えた後に戻る序盤ダンジョンのように。

 

「あいつら……覚えてるぞ、こっちは朧気だが、僕はこいつらに会ったことがある!」

 

「え!?でもこれって絵本の……」

 

「いや、案外ありえるぞ、時空の塔とその絵本とお前の話……照らし合わせてゲームを」

 

「私も作りたいんだけど」

 

「ならジャンケンで決めるぞ」

 

 

「今なんか面白いゲームの話したか!?」

 

 

「……ははは、なんだこいつら!下手したら世界の根底が否定されるってのに能天気だな!クリエイターはこうでなくっちゃ!」

 

 たとえ世界観がおかしくても、とんでもない前提が隠されていてもやることが変わんなければ特に問題はない。

 琥珀はいつも通りの白卓で安心を覚えたのだった。

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