白卓〜Re:maystar〜   作:黒影時空

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GAME4『はじめまして!』

 

 白卓、それが自分達の新しい名前。

 コレから自分はのとさんと一緒にゲームを作る……自分の中で人生が何か大きく変わる。

 なんてことは早々なく、学校ではいつものようにパシリとしてコキ使われていた。

 立場は全く変わらない……当然だ、周りにはゲームを作ってることは言ってない……というよりはあまり大っぴらにゲームを作ってることを言ってはならない。

 

「いいかい、SNSで一仕事終えましたって言うのもダメ、ゲーム会社はそれくらい口を固くしてるんだ……ネットって簡単に漏洩して流れていくからね、たった5分の間で消したとしてもそれを保存してる奴はいるんだよ!!実際に!!だからむしろ呟くこととかやんないほうが精神的には楽ではあるんだけどね!!」

 

 お面越しでも鬼気迫る様子が感じられるほどの琥珀の言い方によって日隈も秘密を貫き通している、プロモーターだとそう言った苦労もあるのだろうかゲームを作ったりした時よりもリアリティを感じていた。

 その一方で、自分達の作ったゲームをクラスの皆は楽しんでくれるだろうか?という期待も渦巻いてゲームのネタを考える機会も増えた。

 

「じゃあオレ先帰るから」

 

「あっお疲れさまですのとさん」

 

――

 

 そして、一足先に帰って能登酒屋で迎えに来てた琥珀だが例のごとく客に詰められていた。

 

「うちの來暇のこともようやく分かってるやつが来たがなぁ、もしなんかあったらオレたちたじゃすまさねえからなあおお?」

 

「酒飲みオッサン共はオレのなんなんだよ」

 

 能登はめんどくさそうに琥珀を引っ張り出して目的の場所まで向かおうとするが、出る直前に母親がぽつりと聞いてくる。

 

「そういえば來暇、この間同じ年くらいの男の子を連れてきたけどどういう関係なの?」

 

「そんな期待してるほどのもんじゃない、オレがゲームを作るうえでいいやつを見つけた、それだけだ」

 

「ふーん、そっかぁ」

 

――

  

「え!?日隈くんまだ学校にいるの!?」

 

「そうだ、2人合わせて仕事場に案内したいつもりだったかもしれないが残念だったな」

 

 白卓の仕事場デビューといきたいところだったが、能登が前もって日隈を案内してるものだと思っていた琥珀の思惑は外れ、1人残されたというかわいそうなことになっていたがおかしい、時間的には普通に下校していそうな時間だ……とはいえ、思い返してみると初めて体育倉庫でゲームを考えてもらった際も相当時間がかかったように思えるが……サプライズしたいので一旦日隈にメールを送った後、ベンチで待機する。

 

「日隈くんって勉強出来ない系なの?あんな浮かぶなら計算式とか得意そうだけど……あっもしかしてゲーム考えるの夢中になって、授業に手がつかないとか?」

 

「あいつが頭いいかどうかまではオレは知らんが、まあ色々押し付けられてたからな……」

 

「ああなるほど慕われてるのね、色んなこと頼まれちゃっておろそかに……人たらしっていうのは意図的に作れない才能だから相当凄いことだよ」

 

「ああ……そんなポジティブなものじゃねえと思うぞ」

 

「え?」

 

――

 

「や……やっと終わった!すみません今日はちょっと10秒もロスしちゃって、あと休んでる先生も居たから急遽ルート変更しないといけなくて」

 

 大急ぎで走って目的の場所に来た日隈、自分でもかなり遅刻していら自覚はあったのか猛ダッシュで駆けてくるが……綺麗にキャッチしてそのまま慰めるかのように肩を叩く、お面をつけているはずなのに妙に表情豊かなのが感じられる。

 

「日隈くん……なんか大人として気付けなくてごめん!普段明るいから我慢してることも分かってやれなくて……」

 

「えっ何どうしたんですか急に!?琥珀さんがちょっと変なのは今に始まったことじゃありませんが……」

 

「慰めたのに酷くない!?」

 

「変なことに文句言える設定してねえだろ」

 

「そりゃまあね!奇抜にしないとこの業界目立たないし!?……ってそういうことじゃなくて!君イジメられてるの!?」

 

「え!?誰がそんなこと」

 

「オレが言った」

 

 つい最近まで引きこもっていて日隈と出会ったのもつい最近の能登でもなんとなく感じていたが、学校来てすぐに教師や他の生徒に頼まれてパシリで学校中飛び出したり、運動部の準備したり、自分で渡せばいい学級日誌を頼ませたり……頼まれているというか、普通に自分でやっておけばいいものを押し付けられている。

 学校に来ていない奴でも分かる違和感に琥珀が気づかなかったのは、日隈があまりそのせいで苦しんでいるように見えなかったからそれだけ頼りにされていると勘違いしていたのだ。

 実際は頼んでいる相手は日隈とそれほど仲良くもないし、それどころか能登以外に……あるいは能登すら友人と呼べるかも怪しいという。

 だが琥珀が気付かなかったことは悪いことではない。

 

「えっ嘘……僕っていじめられてたの?」

 

 当の本人が言われて初めてそんな気がしてきたと振り返って落ち込んでいる、全くの無自覚だったのだから赤の他人が分からなくて無理はない。

 というよりは、被害者が自覚していないものはイジメと呼べるのだろうか?と後から一緒に来ていた彩月は首をかしげる。

 

「私あまりそういうのに口出せる立場じゃないのはわかってるけどなんで気付かなかったの?そんなの毎日押し付けられたら嫌になったりしそうだけど」

 

「いや……全然そう思わなかったです、今日の分も含めて全部ゲーム感覚でやっていたから」

 

「は!?」

 

 改めて全貌を知ることになる3人。

 日隈橙は長年一人遊びを繰り返してきたことで、あらゆる出来事をゲーム的解釈で実行して効率的に……その上でより楽しく過ごしてきたのでパシリもゲームのクエストのような形で遊んでいた……この無意識下による遊びへの開花能力、アイデアマンとしての才能はこういう道筋で生まれていたのかと納得したのと同時に恐ろしさを感じた、下手したら遊びによって身を滅ぼしてしまうのでは……?

 この恐ろしさに琥珀は覚えがある……この場所に連れて行く前の、彩月に出会った時……あまりにも異常すぎるプログラマーの才能を垣間見た時だ。

 だが寒いこの季節にそんなこと話してもしょうがないと、琥珀の作業場へと入っていくが……。

 

「ようこそ!!ここが君たち白卓のデスクだ!!」

 

「すっ……すごい!!びっくりするくらいなにもない!!」

 

 中に入って特別に用意してもらった「白卓」、特徴というものが何もなくデスクとノートパソコンが置いてあるだけ、何よりも洗濯のCMでも観ないレベルの驚きの白さ!ここで飲食とかしたくないぐらいにはとても白くて足を踏み入れるのにも若干抵抗があるが、能登はそんなことお構いなしにヅカヅカと入る。

 

「のとさんの頭が保護色みたいになってる……」

 

「そんでこの真っ白ハウスの意図はなんだ琥珀」

 

「箔をつけてもらいたいんだ、その証明」

 

 そういえばその時には語っていなかった白卓の由来、琥珀は彩月をクリエイターにする上で……更に二人を連れてきた上で『箔をつける』事に意義と喜びを感じている。

 まだ始めたてで全くの箔をつけてない純白の素質がある二人、それ故に『白卓』という意味合いが込められているとか。

 だからって作業部屋まで真っ白にする必要はありますか?と言いたくなったが仕事場を与えてくれただけでもありがたいのでぎゅっと口を塞ぐ日隈。

 箔をつけていけば更に綺麗な場所になる、自分と能登がそうしていく……というところでさっそくゲーム作りの話。

 

「前もって君らに聞いてみるが、何かゲームを作る予定ってあったりする?」

 

「あっ……はいあります!実は学校で……」

 

 実は学校で祭があるのだが出し物として班に分かれてミニゲームを作ることになっている、ちなみに日隈と能登も同じ班だが案の定めんどくさい所は全部日隈に押し付けられている状況らしい。

 なので大半ゲーム作ってたのはこの二人らしい。

 

「ナメられてる……野郎ぉ゙〜ゲーム作りという青春のタネになりそうなものを真面目に取り組まねえとは何事か〜」

 

「琥珀、適当にお題考えてそれをAIで作る私たちがそれ言ったら多分殺されるから」

 

「ま、まあ……今までの件もありますし作れる気はするっちゃするんですが何を作ろうかって感じで……」

 

「うーん……まあ自分から言えるアドバイスとしては被りやすいものは避けることだ、パクリパクってないは結構あやふやだしトラブルのもとになる」

 

「そんな誰でも言えるような事は聞いてねえだろこいつも、桜井は?」

 

「学校規模で見せるミニゲームなら無理してデカいの作らなくてもいい……ウディタとかティラノビルダーとか無料で簡単にゲーム作れるし……というのは冗談、そのレベルじゃ満足できないって顔してる」

 

 ツールを使うこと自体は悪ではない、誰でも理想を実現するためにソフトがある……デザンスXだってそうだ。

 デザンスXといえば結局例のシューティング対決はお互いに「まあ良かったところはあるよ!アイデアは上手く落とし込めてる!でも気に入らない所が目立つからクソ」とバチバチなのは変わらない。

 改めてどんなゲームを作るかだが……。

 

「ミニゲームで凝ったものを作りたいなら私は『ワンマップ』をオススメするよ」

 

「ワンマップ?地図が1個だけ?」

 

「別エリアへの移動がない……つまり全部1つの画面だけで成立するゲームのことだな」

 

 日隈が検索してみると確かにワンマップ形式のフリーなゲームは沢山ある。

 主に見かけるタイプは自室や教室を舞台にしたものなので、確かにこれなら何ができるかもしれない。

 ……だが、彩月もこれを2人が焚き付けるためのものであることは分かっている。

 簡単なツールでいい、マップを1個にすればいい……そんな妥協のような言葉をしっかり聞き入れるようなクリエイターとアイデアマンじゃない。

 しかし、日隈はそれをただ無下にするわけもない……ワンマップを何か使えないだろうか。

 

「今、軸を教室にして作ってるんですが……条件を満たすと何かしら出来ることが増えていくって感じで、あっそうだ!生徒!うちのクラスメイトを増やして!」

 

「いいじゃんかそれ!内輪ネタにしても個性が出るし生徒達を何かと活躍させられる!」

 

「それはいいが集めて何をするかだろ、ここでしくじったら大したもんにもならねぇ」

 

「うーん……」

 

 クラスメイト一丸になれるようなゲーム、そもそも出していいのかに関してだが特別グロテスクだったり虐げるような内容にはしないようにする、あんなことをしてしまえば自分は最適なやつになる、繋げる……コンボ、そういえばゲームを始めようと思ったのは、あのゲーム……。

 

「琥珀さん!お願いがあります!……巨獣バルディスの設定、ちょっと借りていいですか!?」

 

「何、ここで怪獣映画をブレンド!?」

 

「いえ!映画の方を加えるんです!」

 

「あ、ああ……うーん……まぁ、いわゆる『マガイモノ』みたいなものか……?彩月は?」

 

「私絶対あのゲーム作りたくないし許可する」

 

「おもしれーもん思いついたか?」

 

 かくして、日隈はゲームのネタを思いついてノートに書き記して、能登は事前に簡単に組める方のプログラムを事前に用意する。

 後はぶっ通しでここでゲームを作るだけ、琥珀も彩月も入れず徹夜でゲームを作るだけだ。

 二人だけでゲームを作って班としてそれはいいのかと琥珀も思ったが、元々日隈に押し付けていたのは向こうだから文句は言えるはずないと彩月の言葉で労いと応援はするくらいにとどめた……が。

 

 

「さすがに5日間ぶっ通しで徹夜作業は止めるからなァ!!いいから寝てよ!!僕が君のお客さんに殺されるんだよ能登ちゃあん!!!!」

 

 課題のミニゲーム作りから5日、白卓は学校以外では寝袋や間食で食いつなぎながら本当にぶっ通しで作業を行い、琥珀がなんとか両親に説明したり説得してきたが 能登酒場の例の親父達は厳つい雰囲気で多分猟銃とか持ち出してきそうなくらいだったが……恐らく部屋の向こうもピリピリムード、あまり過激なことは言えない。

 

「……い、一応言っておくけど大丈夫だろうね!?ゲームより先に君らの人生が壊れたら元も子もないよ!?」 

 

「言っても無駄だよ琥珀……日隈さん、本当に言っても止まらない……けど、目と体を休ませるために息抜きは必要」

 

 彩月が強引にプログラム弄ってドアを開けて侵入、ドアの向こうでドタンバタン大騒ぎしているがそんなことより今さりげなくこの子電子ロックにハッカーみたいなことしなかった?え?そういう世界観?プログラム極めるとハッカーになれるの?

 なんてツッコミしたくなるが琥珀は冷静に眺める、あーまたやったかみたいなノリで。

 

「進捗どうですか」

 

「グハァァ!!」

 

 呪いの言葉でノックアウトさせて強引に白卓の二人を連れてくる、小学生なのに変な所でタフネスだ。

 

 「琥珀、今すぐ出前とってスタミナ付く奴」

 

 「いやそんなんだったら自分が適当に作るから!!」

 

 ――

 

 まだまだ成長盛りな年頃の二人は無我夢中でがっついていた、ずっと質素ばビスコで食事を満たしたつもりが体調と腹は正直であり、がっつりしたものを中に入れるだけで気分も体も大きく変化したことが感じられる。

 というか、琥珀がこんな料理作れるとは思わなかった、和食とかではないのかと偏見を交えながらもありがたくいただいてさりげなく彩月も食っていた。

 

 「琥珀のベトコンライスはマジでエリクサーみたいなものだから遠慮なくこういう所で頼っていい、普段が普段だし」

 

 「大事なクリエイター守るのも仕事なのでね!おかわりもあるからどんどん食っといて」

 

 「ど……どうも。」

 

 ベトコンライスと呼ばれるそれはキャベツににんにくやレバー肉などとにかくがっつり詰めて濃い味で米と食えといった感じで、確かに栄養は得られるが若いうちにしかこういうのは食べれなさそうだな……と思った。

 だが、見ていて異変が起きる。

 

「ゥ゙ッ!!」

 

「のとさん!?」

 

「腹ん中ギトギトする……やべぇ、2年間ずっと適当なもんで済ませてたから急な栄養過多で逆にキツくなってきた」

 

「何してんのキミィ!!わかったよ次はカレーにしておくから!」

 

 引き篭もりに急激に抜群の栄養が入ってきたことで免疫が薄い能登はノックアウトしたので横にして休ませつつ一旦休憩を取ることにして……彩月がゲームのネタバレにならない範囲で雑談をする。

 

「クラスごとに班ということはライバルが出来るけど……各地でパシリして色々把握してる日隈さんから見て厄介な人は誰?」

 

「うーん……ライバルと言われても学祭の出し物で競うわけじゃないから……あっでも今考えると浦嶋くんは欲しかったなぁ」

 

「浦嶋?どんな人?」

 

「浦嶋蒼都くん、結構イケメン系で明るい系のいかにも成功しそうなオーラ放ってて……しかも凄く絵が上手くてアニメやゲームが好きなオタクっぽいところもあって」

 

「……なーるほどね、典型的にベタベタだがいかにもクラス皆から好かれてますよ感のイラストレーター、そりゃ欲しいわ、能登ちゃんが強引にでも雇いそうだったが」

 

「実際オレも何かに特化した奴は日隈以外にも欲しいから検討はした、だがダメだった」

 

 浦嶋はもう誰かと組んでいたわけではない……なんと助っ人を用意したので単独でゲームを作りたいと言い出して、普段の人徳や創作スキルを見てきた教師たちも通してしまった。

 ただしその助っ人とは外部の人間らしいのだが、詳しい詳細に関してはよく分かっていない。

 

「誰かと組む?まあ、君らも自分達のデスク借りてるわけだしありっちゃありなのか……?」

 

「でも正直楽しみだなぁ、浦嶋くんのイラストは僕もよく見てたけど本当に楽しそうに描くしアニメやゲーム大好きだったから、凄いの出してくるはずだよ!」

 

「……だといいがな」

 

 しかし、浦嶋側が何かおかしいと日隈でも分かるようになるのはその翌日のこと。

 ベトコンライスを食べたとはいえ、長い徹夜と過酷なPC作業でコンディション維持は厳しく身体はボロボロ、とてもパシリ行為なんて出来ないと周囲も察したが、すると途端に人が来なくなるのだから本当にそれだけの存在でしかなかったと答え合わせされたようでちょっと傷ついたがゲームにしこりを残してはいけない。

 能登は最初から出席日数ギリギリをキープするつもりなので休む日もあるので、今回は日隈だけ……そんな中、同じくボロボロの浦嶋と会う。

 

「あっ……もしかして日隈くん?」

 

「浦嶋くん凄いことになってる!?」

 

「君だってわりと……普段からあんな風になってるのにゲーム作りなんてするから」

 

「いや〜……それがその、僕も結構作ってて楽しくなってきたんだよね、浦嶋くんこそ大丈夫なの?助っ人がいるとはいえ誰とも組まなくて……」

 

「え?うん俺は全然だよ、『せんせー』はとても凄い人だからさ」

 

「せんせー?ここの教師じゃないんだよね?」

 

「いや……うん、昨日まではね?」

 

「え?」

 

 授業が始まるその時……教壇に近付いてきたのは、黒い髪で異質な雰囲気を放つ奇妙な男性。

 この雰囲気は……そうだ、琥珀と同じだ。

 同じ人間のはずなのに全く別の存在みたいに見えてくる、ましてやこの人はお面もつけていないのに……その笑みが人間みたいに思えない。

 だが浦嶋は彼の顔を見ると疲れが吹き飛んだように笑顔になる。

 

「せんせー!」

 

「おっと浦嶋、君のクラスだったとは面白い……それに君が、例の日隈橙か……」

 

「え?えっと貴方は一体?」

 

「はい!それじゃあ授業の前に……俺の自己紹介から始めます!俺の名前は……不動遊星の『不』、言峰綺礼の『礼』、火鳥勇太郎の『勇』……不礼勇(ふれいいさむ)だ!!」

 

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