東方地月譚 ~ New Age of Lotus Land.   作:SUN_RISE

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どうも、SUN_RISEです。
初めての方は初めまして、そうでない方はこんにちは。

本小説『東方地月譚 ~ New Age of Lotus Land』は元々私の処女作だったのですが、途中まで投稿した後その出来に納得できなくなり、大幅な加筆修正をするべきという結論に至りました。
そして書き直しを重ねた結果、この度装いも新たに再出発する事となりました。

初見の方はもちろん、改修前の作品を見て頂いた方にも楽しんで頂けるように様々な内容を加えてありますので、気持ちも新たに読み進めて頂けたらと思います。

それでは、始めていきましょう。
原作東方とは雰囲気の違う、ある意味でifな東方の世界をどうぞお楽しみ下さい。



第一章:過去編 ~地月戦争最終決戦~
第1話:黄昏、空に始まる終わり


 

【三人称視点】

 

幻想郷、それは東の果てに在ると言われる桃源郷の名。世界に忘れ去られしモノ達が集い栄える、楽園の名。

母なる海の化身たる『龍神』が礎を作り、境界の妖怪『八雲』が生み出した結界により隔絶された地の名である。

 

()()()()を人の世と称するならば、ここ幻想郷は裏の世界・人外の世と称するに相応しい。

なぜならば、幻想郷では大地も、大空も、地底でさえも人外が跋扈し、支配しているからだ。ここに『人間』と呼ばれる種族は、ごく僅かしか存在しない。

 

そして、自然そのものである『神』が支配するこの地には、溢れんばかりの自然の恩恵が宿る。

僅かに住む人間は神の恵みに感謝し、自然の恩恵を受け取り自らの生を繋ぐ。

かつて日出ずる(ところ)の国が持っていた古き良き穏やかな雰囲気そのままに、緩やかに流れる時は永遠に続くかと思われた………。

 

 

 

 

 

………だが、ある時。

亡郷者の楽園たる幻想郷に、突如として戦乱の嵐が吹き荒れる事となる。

 

安らぎを乱し、幻想郷に恐怖をもたらす事となる()()は、遥かなる遠き(そら)からやってきたのだった―――。

 

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◇         ~SUN_RISE PRESENTS~          ◇

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その船は、突如として月より現れた。

 

その船に、比類無き強さを誇る四人の傑物、『月の四傑』がいた。

 

月の四傑は『魔』、『智』、『武』、『技』を司る者だった。

 

月の四傑は軍勢を伴い、幻想郷に戦いを挑んだ。

 

戦乱の時代が始まった。

 

幻想郷各地から力ある者が集まり、月の四傑に相対した。

 

しかし、月の四傑の強さは圧倒的であった。

 

幻想郷の人妖は、月の四傑の打倒を和葉、御代、文、紫の四人に託す。

 

そして今、最後の決戦の火蓋が切って落とされる。

 

 

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【三人称視点】

 

周囲をぐるりと白い布で囲まれた、簡素ながらもしっかりとした造りの陣。整然と並べられた松明には夕陽色の炎が揺らめき、戦国時代を彷彿(ほうふつ)とさせる陣内を穏やかに照らす。

夕暮れ時の陣には、不思議なほどに落ち着いた雰囲気が漂っていた。

 

「……幻想郷の人妖が待ち望んだ時が、ついに訪れようとしている、か」

 

その中央に置かれた椅子に座るのは、一人の老齢の鴉天狗。檜材の椅子に腰掛け両の拳をそれぞれの膝に重ねた彼は、徐々に沈みゆく夕陽を眺めながら誰ともなく呟いた。

 

「たった二年と半分……我ら鴉天狗にとっては急流の如く過ぎ去っていく筈の年月が、こうも永く感じようとはな……」

 

他の若き鴉天狗と比べても一際大きな黒い翼、筋骨隆々な肉体、深く刻まれた皺と傷跡、内に渦巻く強烈な妖力……見る者を圧倒するその風貌は、重ねた年月に裏打ちされた実力をまざまざと感じさせる立派なものだ。

 

彼は妖怪の山に住む全ての天狗の頂点であり、天狗衆からは畏敬の念をもって『天魔様』と呼ばれる存在である。

 

「………」

 

……しかし長きに渡って一族を率い、数々の武勲を立て、幻想郷の一大勢力を築き上げた豪傑の面影は、今の彼からは全くと言って良いほど感じられない。

より正確には、往年の彼が常に浮かべ全ての存在を委縮させたほどの鋭い眼光が、今の彼からは完全に消え去っているのだ。まるで己が果たすべき役割を全てやり切り、今にも表舞台から姿を消そうとしている老兵のそれのように……。

 

「……天魔様、失礼致します。まもなく作戦開始時刻となります」

迦楼羅(かるら)か、報告は確かに受け取った。皆の準備は?」

「全て完了しております。あとは、天魔様の号令を待つだけとなっております」

「そうか……」

 

『迦楼羅』と呼ばれた若い鴉天狗が、険しい表情で天魔に『(とき)』が来た事を伝える。しかしそれを受け取った天魔はというと、変わらずゆったりと空を眺めたまま言葉を返すのみ。

それでも迦楼羅はそんな天魔を見慣れているのか、報告を終えると天魔の隣で同じように空を眺め始めた。

 

「……()()()が始まるか」

「………」

 

誰ともなく言った、天魔の言葉。そこに込められた意味は、決して一つではない。

 

力は今でも充分に漲っている。全盛期に比べれば流石に落ちたものの、膂力でも妖力でも若い天狗衆に負けるほど弱っている訳では無い。事実、今でもそこらの若い鴉天狗10人がかりでさえ天魔には全く歯が立たないのだ。

だが『()()()』の衰えだけは、天魔でさえもどうしようも無かった。

 

この年老いた身で、これ以上天狗衆を引っ張っていく事が果たして正しいのか。

もしかしたら、今度は若い衆に負けるかもしれない。

もしかしたら……。

 

間が空くと、天魔の脳裏にそんな考えが(よぎ)るようになっていた。

……それは、妖怪という存在の核がその自己中心的なまでの自身に対する自信である以上、致命的といっても過言では無かった。

 

そんな悩みを抱えていた矢先に訪れた、かつてないほどの幻想郷の危機。遥か月より訪れた破滅の使者達は、例外無く天狗達にも襲い掛かった。

 

多くの天狗達が、激しい戦いの中で命を落とした。特に戦争初期、月の軍勢が妖怪の山に奇襲を仕掛けてきた際には多くの命が一度に失われた。

そんな混乱を極めた緒戦において、天魔の目の前にいる迦楼羅は天魔と同等以上に大きな役割を果たした。天狗の若衆でも一、二を争う高い実力だけに留まらない、確かな指導力と先見の明。旧来の因習に囚われ過ぎず、かといって疎かにせず行動した結果が若衆の強い結束を生み出し、月の軍勢を前に滅びの危機に瀕した幻想郷が持ち直すきっかけの一つとなった。

 

そして、彼だけではない。迦楼羅ともう一人、彼に匹敵するほどの実力を持つに至った鴉天狗の存在があった。

 

「……はい」

 

寂しそうにも、なぜだか嬉しそうにも聞こえた天魔の一言に、ただ短くそう返す迦楼羅。変わらず空を見つめ続ける天魔に倣ってか、迦楼羅も空を眺め続ける。

 

そして二人の目線は、徐々に()()()()へと固定されていく。

 

「……迦楼羅よ」

「はい天魔様、何でしょうか?」

「お前は、この戦いをどう見る?」

 

ゆったりと空を見つめていた天魔の目に、にわかに往年の鋭い眼光が戻る。変わらず目線は一点に釘付けのまま、その表情に少しずつ険しさが増していく。

 

彼は目に留まった相手を試す為に、このような形で問答をかける事がある。意図的に威圧感を高めて思考に集中しにくい環境を作り出し、それでも心の動揺を見せる事無く対応できたかを見るのだ。

そして、そんな天魔の問い掛けに()()()は落ち着いた様子を見せる迦楼羅。長く天魔の近衛兵を務めた彼にとって問答自体は日常茶飯事の事であり、それに答えるのもいつもの事であった。

……しかし、彼の心はざわめいていた。それは、いつもと()()()()()問答であったからだ。

 

ゆえに、迦楼羅はじっくり考える。自身の内面を探り、考えを、そして感情を拾い上げていく。最適と思われる言葉を、紡いでいく。

 

 

 

そのままゆっくり15秒ほど考えた後、おもむろに迦楼羅の口が開く。

 

「我々の勝ちは揺るがないでしょう……しかし、何かが引っ掛かります」

「ほう、その何かとは?」

()()()の事ですから、何かしらの奥の手を用意しているかと。例えば()()ごと自爆する可能性などは、十分に考えられます」

「ならば、どうする?」

 

ニヤリと、意地悪そうな表情を天魔が浮かべる。見れば、威圧感はいつの間にかすっかりと消え去っていた。

 

「相手が策を弄するのであれば、それを上回るスピードで一気に飛び越えるだけです。足を止めて考えた時間の分だけ、命は危険に晒されているのですから」

 

そうはっきりと答える迦楼羅の顔は、どこか呆れ顔だった。威圧感が消えた事で、天魔が既に前半の答えのみで満足していた事は迦楼羅には分かっていたからだ。

……それでも天魔が問いを重ねたのは、ただの(たわむ)れが目的……というではない。決戦を目前にして固い表情を浮かべる迦楼羅の緊張を、少しでもほぐしてやろうという彼なりの優しさの表れであったのだ。

もちろん、迦楼羅はその事には全く気付いていない。

 

「そうか」

 

鋭い眼光を目の奥にしまい、どこか満足気に頷く天魔。呆れ顔で眺めてくる迦楼羅の視線をかわすように、空に向けていた顔をゆっくりと下げていく。

 

 

……今更ではあるが、この陣内に居るのは何も天狗だけでは無い。ここは()()()()()に赴く者だけでなく、彼ら・彼女らに関係のある者が集う場所となっている。

 

―――全てを託した者達が勝利する事を、手を組んで祈るように待ち続ける半妖の娘。

―――座して、ただひたすらに無心を貫く半幽の老剣士。

―――巻物を広げ、それを読み(ふけ)る巫女服の小さな少女。

 

もちろん、これだけではない。戦いを援護してくれる八百万の神々、妖精、果ては元人里の警備兵など……老若男女人妖問わず、多くの生ある者達がこの陣に集っていた。

 

そして、その殆どの視線が橙色の夕陽を背に空に浮かび上がる、巨大な(シルエット)へと向けられている。先ほどまで天魔や迦楼羅が見ていたのも、この(シルエット)であった。

 

「忌々しき、月人の本拠地……。手筈通りなら、そろそろ合図があるはずですが……」

 

この(シルエット)こそ、二年間続いた『地月戦争』その最終決戦の舞台となる場所。月人達が駆り、幻想郷を火の海へと変え、結界や宇宙空間などのあらゆる障壁を飛び越える力を()()()()()恐怖の象徴。

かつて幻想郷の大妖達を恐怖に(おのの)かせたそれは賢者の策略により、今は宙に浮かぶだけの箱と化した。それでもなお、異様なまでの存在感はまるで衰える事を知らない。

 

「……!! 天魔様、上部から閃光が走りました」

 

その(シルエット)の上部から逆光を切り裂き、強烈な閃光と爆発音が轟いた。それを合図に、陣内が一斉に色めき立つ。

 

閃光を見て、我先にと楽しげな様子で妖精たちが突貫していくのが迦楼羅には見えた。

それでも微動だにしない、老剣士と小さな巫女の姿も彼の目に映った。

 

「迦楼羅、幕を上げよ」

「はっ、承知致しました」

 

椅子から立ち上がった天魔がちょうど真後ろの方向へと振り向き、目を閉じる。その前にある幕へ迦楼羅が歩み寄り、上げる。

そこには、各々の武器を手に取った鴉天狗500人が整然と並んでいた。皆がじっと天魔を見つめ、号令がかかるのを待っている。

 

「天魔様、号令を」

 

迦楼羅に促された天魔が、徐々に目を開いていく。

 

「うむ。……皆の者、遂にこの時が来た。我らの住まう幻想郷を侵略し、我々に散々苦汁を舐めさせてきた月人どもを完全に滅する時が」

 

そこにあったのは、相手を射殺すような鋭い目つきを浮かべた強者『天魔』の姿。天狗一人ひとりをまるで睨むように見つめていくその姿に、先ほどまでの弱々しい老天狗の姿は欠片も感じられなかった。

 

静かに、しかし厳かに、天魔の言葉は天狗達へと届いていく。

 

「さあ、この天魔に続け!! 我ら天狗の底力、今こそ月人どもに見せつけてやろうぞ!!」

 

天魔が一際大きな声で号令をかけ、そのまま力強く飛び立つ。その後ろに迦楼羅、更に後ろに500人もの天狗達が続く。

天狗500人以上の大合唱は、暴風という形で陣の中にその足跡を残していく。

 

先頭の天魔が一気に速度を上げる。後に続く天狗達も、天魔に合わせてそのスピードを増していく。あっという間に先発した妖精を追い抜き、陣からはその姿が微かにしか見えなくなっていく。戦争で多くの者が斃れ散って逝った今でも、幻想郷最速の集団の名は伊達ではない。

 

 

 

統率がとれなかった幻想郷の妖怪達を相手に、一時は圧倒的優勢に立つも今は完全に追い詰められてしまった月人(月より現れし者達)の軍勢。そして、それを統率する『月の四傑』。

壊滅寸前まで追い詰められた程の劣勢を跳ね返し、逆に月人の軍勢を追い詰めた幻想郷の妖怪達。そして、その快進撃を支えた()()()()

 

その両者が、間もなく最後の激突を迎える。果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか……。

 





読んで頂き、ありがとうございます。
……初話ですので、説明成分多めな代わりにかなり短くしてあります。次話にもこれが多少続きますが、無駄に説明臭い点はどうかご勘弁頂ければ幸いです。


……それにしても、主人公が出ない初話というのも妙な感じですね……。


さて、最後になりますが、意見、感想etc..絶賛募集中です。是非、忌憚無き意見をよろしくお願い致します。
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