東方地月譚 ~ New Age of Lotus Land.   作:SUN_RISE

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どうも、SUN_RISEです。

さて、過去編もここからが本番です。
ここまではずっと三人称視点でしたが、本話以降は一部で各キャラ視点の話も入ってきます。

では、本編を始めさせて頂きます。どうぞ、お楽しみ下さいませ。



第3話:進撃、幻想郷の四英雄

 

【???】

 

……月面戦争は、賢者を自称する妖怪『八雲紫』を中心とする幻想郷の名だたる大妖達が月へ侵攻した事で発生した、妖怪と月の民との戦いだ。

 

その発端は、八雲紫が己の能力を駆使し月への道を開いた事。

彼奴の能力『境界を操る程度の能力』によって実と虚の境界を弄り、水面に映った『虚ろ』なる白き満月と『実物』の月との線引きを曖昧にし、水に飛び込むだけで月への移動を可能とする事に成功したのだ。

そして、彼奴はその道を幻想郷で最も大きな湖……すなわち『霧の湖』の中央に開いたのだ―――

 

 

 

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【和葉視点】

 

いけない、熱くなり過ぎたわ。落ち着いて深呼吸、深呼吸と……。

 

「……スー、ハー……」

 

……()()からもう、二年も経ったというのにね。今でも天音の声を聞くと、余計な力が入ってしまうのよね……。

自分では吹っ切れたと思ってたけど、やっぱり忘れるなんてできないみたい。

 

「和葉、どうだ? 落ち着いたか?」

「……ええ、もう大丈夫よ。先に進みましょう?」

「ああ、そうだな」

 

にかっと、御代がまぶしいぐらいの笑顔をこちらに向けてくる。

 

普段と変わらない笑顔……何だか見ると安心できるのよね、御代の笑顔って。

昔からそう、不安な時、落ち込んだ時、悲しい時、辛い時……気付いたら御代は隣にいて、さりげなく支えてくれた。

自分だって辛いはずなのに、それをおくびにも出さずに……。

 

この戦争でも、御代は最初から私と一緒にずっと戦ってくれた。たくさんの死線を、いつだって一緒に乗り越えてきた。

私にとって一番の相棒であり……一番の親友。

だから、この最後の戦いも絶対に乗り越えてみせる。

 

……御代と、一緒に。

 

「聞くまでもないとは思うけど、文はどう?」

「いつでも行けますよ」

 

続けて、文の横顔を眺める。

 

文は旅を始めたばかりの頃からの仲間で、御代ほどではないけど戦争の中でずっと苦楽を共にしてきた。

今なら、人間と妖怪という垣根を超えて本音を晒し合えるくらいにはなっている……と思う。

天狗の性質なのか、はたまた文の元来の性格なのかは分からないけど、会話()()はどうにも雲を掴むようでイマイチ手応えが無いからちょっとだけ不安。

 

「ふーん、文らしくないのね」

「何がですか?」

「緊張してる?」

「あやや、まさかそんな訳がないでしょう」

 

……そうは言うものの、流石の文も今は緊張してるみたい。

 

だって、若干強張った笑顔で言葉を返しながら、ペンを手の上で落ち着き無く揺らしてるもの。

文は、内心が大なり小なりすぐ行動に出てくるから、見る人が見れば物凄く分かりやすいのよね。

 

……そういえば、文が動揺した場面を見た事があまり無いわね。

いつもどこか楽しげで飄々としてて……二回だけ文が()()で怒っている姿を見た事はあるけど、その時以外に文が大きく感情が乱している所を見た事が無い。

ましてや緊張で落ち着きが無くなってる所なんて、今になって初めて見た。

 

……なんというか、珍しいわね。文は緊張とは無縁の存在だと思ってたけど、する時はするのね。

 

「……全く、和葉は私をなんだと思っているのですか?」

「え、何の事?」

「とぼけても無駄ですよ? 顔に書いてあります」

 

一転して、若干不機嫌そうな表情で私を見つめてきた。

……目線を合わせ続けるのは、正直なところちょっとだけ辛い。普段は実力をひけらかす事が無いけど、文は実力からして間違い無く大妖怪の部類に入るし、少し本気になれば並の妖怪を(すく)ませるぐらいの迫力を簡単に出せるから。

 

「さ、さあどうかしらね~~」

「……まあ、いいですけど」

 

ちょっと無理矢理だったけど、どうにか話題を逸らす事に成功した……のかしら?

まあ、文はなんだかんだで私の事よく分かってるし大丈夫でしょ……多分。

 

「……さてと、どうするのかしら?」

 

一歩前に出た紫と目が合う。

 

紫は『妖怪の賢者』として、幻想郷で一番有名な大妖怪。優れた頭脳で先を制し、二重三重に策謀を巡らし、相手に煙に巻くのが得意……。

……最初はそう聞いていたのだけれど、いざ会って話してみると意外と温厚でびっくりしたわね。策略家にありがちな妙な頑固さも無かったし、すごく話をしやすそうだと感じたのは覚えてる。

そして、紫の指揮は困難な作戦をいくつも成功に導き、幻想郷の劣勢をひっくり返すきっかけにもなった。一緒にいた時間は三人の中で一番短いけれど、仲間としての信頼は決して二人に劣るものじゃない。

 

……そういえば、通信用の札がいつの間にか枝垂(しだれ)桜のあしらわれた藍色の扇子に変わってる……いつ持ち替えたのかしら?

 

「……さて、どうしようかしら」

「決断はリーダーの役目ですわよ?」

「なんで私がリーダーなのよ、どう考えても紫の方が適任でしょ?」

「貴女が決めた方が、圧倒的に正解を引く確率が高そうですから」

 

……笑顔を浮かべてるようでいて、よく見ると目が全くと言っていいほど笑ってない。札を通じて藍と話していた時の、若干苛立ちが籠った声はどうやら私の聞き間違いじゃなかったみたいね。

 

……大妖怪どころか、妖怪の頂点と言って差し支えない存在の怒気……考えただけでも寒気がするわね。矛先を向けられたら、今の私でもきついかもしれない。

で、おそらくそれを向けられているであろう天音も平然としていられるあたり、只者じゃないのよね……決して、絶対に認めたくはないけれども。

 

 

……余計な事を考えてる場合じゃなかったわね、いい加減先に進まないと。

天音に余計な時間を与えたら(ろく)な事が無いのは、今までの戦いで嫌というほど分かり切ってるし。

 

ただ、それには早速の問題が。

 

「………」

 

目の前にはいきなりの分かれ道、しかも十字路。入り口から数歩で行く手が三つに分かれるって、もう嫌がらせか何かでしょコレ。

しかも、なんとなく正解(上層階に繋がる道)は一つだけで、残り二つの道はハズレの道に繋がってる気がする。

 

……面倒な事になったわね、ここまで来て時間を失う訳にはいかないのに。

 

「和葉、どっちに進めばいい?」

「和葉にお任せしますよ」

「さあリーダー、決断を」

「……分かったわよ。私が決めるけど、恨みっこ無しでお願いね?」

 

御代も、文も、紫でさえも大きく頷く。

 

 

とりあえず、十字路の真ん中まで来てみる。

……立ってみて、雰囲気と()()からすぐに正解の道に見当は付いた。

 

「正面の道ね、行きましょう」

「あやや、奇遇ですね、私も同じ事を考えてました」

 

文と私が選んだのは、入り口から見て正面の道。

 

左の道が右に、右の道が左に緩やかな曲線を描いているのに対して、正面の道はひたすらに真っ直ぐ……そして少しだけど上り勾配になっていた。しかも正面の道幅だけが、四人が横一直線に並んで手を広げて飛んだとしても、なお余裕があるぐらい広い。

……それこそ、とても構造物の中にあるただの廊下だとは思えないくらいにね。

 

ダメ押しに、その奥から()()()()()がした。

幾度も顔を合わせ、戦い、それでも結局倒すには至らなかった強者の気配が。

……天音のものではない、別の強者の気配が。

 

「……よし、行くわよ?」

「腕が鳴りますね」

「………」

 

両足に霊力を込める。体が徐々に、重力の縛りを失って浮いていく。

私に続いて、他の三人も同じように宙に浮く。これだけ廊下が広ければ、空を飛んだ方が確実に早い。

ただ周りが異様なくらいに……それこそ『病的』とでも形容した方がいいくらいに真っ白なので、方向感覚だけは失わないようにしないと。

 

「まあ、どうせ最初(はな)からコソコソする気なんて無かったしな。堂々と正面突破してやろうぜ?」

 

そのまま、強者の気配を辿って正面の道へと進む。これを追えば、天音のもとに必ず辿り着ける。

……そしてその道中では、確実に他の四傑も立ち塞がってくるはず。

 

それでも今日は、今日だけは是が非でも負けられない。

今日この日を迎える為に私は……ううん、私達は長く辛い戦いを生き抜いてきたのだもの。

 

 

どれだけ相手が強くとも、絶対に……。

 

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【三人称視点】

 

どこまでも、どこまでも変わり映えのしない道が続く。

 

それは雪の白とも、雲の白とも決して似つかない『白』。

まるで『穢れ』を恐れる月の民の心を表しているかのような、一点の曇りも無い『白』。

……異物を拒むように果てしなく白く、そして不気味な音が鳴り響くその廊下を。

 

一筋の黒線が真っ直ぐに走り抜けていく。

 

「付いて来ていますか?」

「ええ、大丈夫よ」

「まだまだ、これくらいならどうって事ないぜ!」

「あら、妖怪の賢者を甘く見ないで欲しいわね」

「了解、ではこのまま行きますよ!」

 

先頭を走るのは幻想郷最速の種族・鴉天狗であり、その中でも最高の速さを誇る射命丸文。弾丸のように飛ぶ彼女が通り過ぎる度に、周囲には衝撃波が巻き起こり、白く(いびつ)な空間を叩いては揺らしていく。

 

そして、文の後ろに和葉、紫、御代の三人が続く。文の巻き起こした風によって気圧が下がり、ちょうど『スリップストリーム』のように空気抵抗が下がった事で三人も順調に歩を進めていく。

廊下に適度な広さがあるので、生み出された乱気流に三人が巻き込まれる事はない。更に言えば、彼女達は各々の方法で低気圧から身を守っているので、体に過度の負担がかかる事もない。

 

「それにしても、流石にコレどうにかならないのか? いい加減、嫌になってきたよ」

「……目が疲れてきそう」

「その前に、気がどうにかなってしまいそうですわ」

 

それでも、四人にとってこの『徹底的なまでの純白』の中を飛び続けるのは精神的に辛いようだ。

 

……だが、それも無理はない。

彼女達にとって、目の前の光景は『穢れ』、ひいては幻想郷そのものの存在を根本から否定し拒絶しているものに映るのだから。

どれほど彼女達が強い心を持っていようとも、それは精神を蝕む毒に他ならないのだから。

 

「外観は割と普通なのですが……月の民は、ずっとこんな場所を本拠地にしてたのですか?」

「多分、月の民の色彩感覚が私達とは違うのよ。ちょうど、妖怪と人間の時間に対する感覚が違うように……ね」

「……なるほどな。ま、どちらにせよこんな所は早いとこ抜けようぜ」

 

月の民と、幻想の民。その違いを究極まで突き詰めれば、ただ一点『穢れ』に対する考え方が違うだけなのだ。

しかしその違いが両者が決して相容れない存在、もっと言えば互いを排除すべき対象だと認識させるのに、十分な根拠となってしまっているのである。

 

 

 

……さて、白い廊下を彼女達が進み始めてから、そろそろ5分が経過しようとしていた。

しかし、行けども行けども見えてくるのは変わらぬ真っ白な風景ばかり。たとえ月で最大の構造物といえど、ほぼ全速力で5分も飛び続けられるような直線廊下など()()()あり得ない。

 

「それにしても、先ほどから風景が全く変わりませんね。これはやはり……」

「……間違いないわ、これは()()()と同じ仕掛けね」

「あの解くのが面倒臭かった奴か」

 

紫を除く三人は、以前にも同じような経験をした事があった。

 

月の軍勢が湖のほとりに作り上げた砦を強襲し、攻略した時だ。その時は廊下ではなく階段だったのだが、延々と終わらぬ階段を20分近く上らされた挙句、原因となっていた術の解除と突破に3時間以上を費やす羽目になってしまった。

挙句、それが天音の仕業だと術を仕掛けた()()()から知らされたのだった。

 

その時の事を思い出し、文が飛ぶ速度をスッと緩めた所で……。

 

 

……紫が扇子を片手に、動き出す。

 

「ふふふ、天音もなかなか粋なパーティを催してくれたものね」

「……紫?」

 

紫に浮かぶ表情は……まるで仮面のように不自然に貼り付いた、微笑。

その双眸(そうぼう)に、当然温かさなど粉微塵も無く……苛烈なまでに凍てつく視線が、白く続く道の先を見据える。

 

「……でも、この程度の催し物で私を満足させられるとでも? いくらなんでも『妖怪の賢者』を安く見過ぎではなくて?」

 

扇子を開き、前に向けて大きく突き出す。

右、下、左、上……と、ちょうど廊下の天井と壁と床とを四角くなぞるように開いた扇子をゆっくりと振り出した。

 

 

――パリーン

 

 

なんとも間抜けた、まるで薄いガラスが軽く割れてしまった時のような音が辺りに響き渡り……。

やがて、廊下の両奥へと流れ消えていった。

 

 

……そして、ゆっくりと辺りの風景に変化が起き始める。

 

「ふふふ、向こうから赤色の広間みたいなのが近付いてきましたわね」

「……やっぱり、あの時と同じ仕掛けだったのね」

「へっ、流石は妖怪の賢者だな。私があの時必死になって解いた術を、こんなあっさりと突破するなんてな」

「あら、こんなのただの力技ですわ。向こうがお相手を求めたから応じたまでですわよ?」

「それ、『ぶとう』違いじゃないのか?」

「ご想像にお任せしますわ」

「………」

 

扇子を翻すと、ここにきてようやく紫が普段通りの胡散臭い笑顔を浮かべる。罠を一つ突破して少し余裕が出てきたのか、口数も多くなっていた。

 

 

 

……ただしその目線だけは、決して広間の方から逸らそうとはしないが。

 

そしてそれは、紫だけではない。

和葉も、御代も、文も……その場にいる全員が、赤く彩られた広間へとその目線を投げかける。

 

床の形は円状で、高さは10メートル、広さはおおよそ半径30メートル。【真月】自体の大きさを考えると、相当な広さを持っている。

遠目に赤く見えたのは、床へ綺麗に敷き詰められた絨毯。紅を基調に大きな白い三日月が中央に描かれ、シンプルなデザインながらも丁寧に作られた事が見て取れる、高級感あふれる一品だ。白一色だった空間の中では間違いなく浮いているが、それはこの広間が特別な場所である事を意味しているのだろう。

また広間の壁には電灯のようなものがいくつも付いており、その全てから強い光が放たれている。御代の陽光(シャイン)が無くとも、十分に広間全体を見通せるだけの光量が確保されていた。

 

「……なんというか、分かりやすいわね」

「ああ、強者が出てきますよと言わんばかりの面構えだな」

「さあ、最初の相手は誰かしらね?」

「………」

 

そして、その広間の奥には更に上層へと続く階段と。

 

 

……一人の人影があった。

 

「……とうとう、ここまで来おったか。幻想の者達よ」

 

そう言いながら、人影は部屋の奥から中央に向けてゆっくりと歩く。

……足音は全く無い。まるで立てないのが当然だと言わんばかりに、その人影は静寂を横切っていく。

 

「………なるほど、あなたが最初の相手という訳ですか」

「いかにも」

 

部屋の中央で立ち止まった人影に向け、文が言葉を投げ掛ける。

 

……後ろの御代が思わず怯んでしまうほどの強烈な殺気を乗せて。

彼女らしくもない、殺気立った表情で強く睨みつけながら。

 

だが、その人影は微動だにしない。

まるで風に吹かれる柳のように、その殺意を流していく。

 

「……なるほど、良い目になったものだ」

 

白髪が混じった黒髪に、深い皺の刻まれた顔。その奥では黒色の鋭い眼差しが光り、和葉達四人を射抜くように見つめる。

武芸者がよく着る、白の道着に茶色の武道袴。ピンと伸ばされた背筋は、この場にいる五人の中で最も長い影を床に作り出す。

そして腰に差す刀 ―――武芸者本人は「宗近(むねちか)」と呼んでいた――― はかなり長く、床から武芸者の胸辺りまでの長さがある。やや反りのある形から、典型的な太刀である事は間違いない。

 

「お褒めに(あずか)り光栄ですわね、月舟殿?」

 

その武芸者の名は、浅倉(あさくら) 月舟(つきふね)

月の四傑、『技』を司る男であり、武芸者らしい高潔な精神に高い技量、そして優れた身体能力をも兼ね備えた強者の一人である。

 

和葉達四人にとっては倒すべき敵の一人であり……。

 

「残念だが、お主ではない。そこにおる鴉天狗、名は射め―――」

「射命丸文」

「……かつて(わし)に手傷を負わせた者の名を、まさか忘れるわけがなかろう」

「嬉しいですね、貴方に名前を覚えて頂けるとは」

 

特に文にとっては、最も因縁深き相手でもある。

 

「………」

「………」

 

文と月舟、二人の視線が鋭く交差する。

その目に、全く異なる色を宿しながら。

 

片や憤怒、怨嗟、殺意……暴風の如く激しき負の感情が渦巻き。

片や静寂、不動、覚悟……玉鋼の如く冷たく固い意志を秘めて。

 

文と月舟、二人の視線が鋭く交差する。

 

 

……月舟が無言で刀の鯉口を切る。

キン、という小気味良い金属音が、広間に反響する。

その目は変わらず四人を、特に文を射殺さんばかりに見つめる。

 

……静かな殺気が、広間に少しずつ満たされていく。戦いに余計な言葉はいらないと言外に語るかのように、その威圧感を徐々に強めていく。

 

「………」

 

応じるように、文も腰に下げた刀の鯉口を切る。

月舟の殺気を押し返すように、うねる様に強い妖気が辺りに満ち溢れていく。

 

その文の後ろで和葉が大幣を構え、紫が閉じていた扇子を開き、御代が目を瞑り呪を唱え始める。

 

「……先に進みたくば、儂を打ち倒してみせよ」

 

言葉と共に、月舟が『宗近』を抜き放つ。

そのまま流れるように『八相の構え』をとり、鈍く輝く刀身を明かりに(ひらめ)かせながら四人に相対する。

 

「……言われなくとも、そうしますよ」

 

今度は文が、腰に差した妖刀―――『小烏丸』を鞘から抜き放つ。

妖力を吸い、葉団扇を遥かに超える暴風を巻き起こす妖刀。その刀身は既に淡く翡翠色に輝き、激しい風を纏っていた。

既に相当な量の妖力が込められているのは、誰の目からも明らかであった。

 

……文の顔に、微笑が浮かぶ。しかしそれは、見つめる相手を威圧する、怒気が含まれた獰猛な笑み。

それを見たためか、はたまた別の理由があるのか……文と同じような質の笑みが、不動だった月舟の表情にも一瞬だけ浮かんでは消える。

 

「……その目だ。それでこそ、最後の一戦に相応しい」

「……貴方にとっての、ですがね!!」

 

文の言葉と共に、最初の月の四傑との戦いが幕を開ける。

 





読んで頂き、ありがとうございます。

さて、次回は一人目の月の四傑、『技』の月舟戦です。
まだスペルカードルールが無く、純粋な戦いで勝敗を決めていた時代。強者の、強者による、強者の為の幻想郷。

だからこそ、次回以降は東方projectらしくないシリアスな展開が盛り沢山ですよ?
あのゆる~い感触を求める方は、申し訳ありませんが次章までお待ち下さい。

それでは、次話をお楽しみに。
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