強くてネフェルピトー(人間)   作:ナチュラル7l72

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点で定めた目標を口にする。思考とは声に出すことで初めて妄想から現実へと昇華されるのだ。


幼少期:舌

二年の歳月が流れた。

5歳の夜半にてピトーは目標を立て、自身の欲求の源流を知るべく生きてみようと決意した。しかし残念ながらピトーは弱かった。自覚していないがピトーは幼子にしては驚異的な速度で精神的な成長を遂げたものの、その肉体は依然として小さく、不健康で、精孔は閉じ、オーラが流れない状態であった。そんな身体で毎日毎日肉体労働に駆り出され仕事が終わるころには肉体的にも精神的にも疲労は溜まりとてもじゃないがピトーは己の未来について考えていられる暇は存在しなかった。

 

二年の間、ピトーは仕事に肉体を追いつかせるためタンパク質や炭水化物を摂取すべく小川で魚をつかみ取りしたり小さな畑を作りそこにジャガイモを植えて継続的な栄養の摂取を図ったりゴミ箱から残飯を盗み釣り餌や肥料にできないか試したりし、大変ながらも元々何かに没頭するのが好きだったピトーは貧しいながらも試行錯誤を楽しみながらそこそこ身体に栄養を回せるようになっていた。その結果、ピトーは幼いながらも労働を過不足なくこなせるよう筋肉が全身に張り巡らされ、しかし柔軟でしなやかな肉体に仕上がっていた。仕事にも慣れ一日の終わりにクタクタになり倒れてしまうようなこともなくなり日常に余裕が生まれ始めていた。

 

「二年って、結構あっという間だった気がする…ニャ」

 

日常の余裕は思考・精神の余裕を生み出す。経済的余裕のないものが募金や人助けに興味が持てないように二年前のピトーも自分が生き残るためなら他者を踏みつけることを厭わなかったが、ピトーはその状態を脱していた。その証拠に、最近は後輩である5~6歳の少年少女に作業のコツや大人の機嫌の取り方を教え自身の余ったご飯を捨てる代わりにあげていた。2年前であれば考えさえしない行動であることは言うまでもない。

その行為は、傍からは見れば慈愛あふれる行動のように思えるが、ピトーは元蟻だったこともあり特段その少年少女らが可哀そうだとか辛そうだとかそんな人情を持ち合わせた思考をしていたわけではなかった。が、子供たちから「ありがとーピトーの姉ちゃん!」と呼ばれることに悪い気はしていなかった。

 

 

 

 

「作業終了ーー!!全員待機所に集合しろーー…!!」

 

鉱山の入り口から鉱山長であるトミーが号令をしピトーを含めた作業員全員がツルハシやシャベルを持って入り口に向かう。ピトーはツルハシを片手に、共に作業をしていた後輩である少年の手をもう片方の手で引き入り口へと促す。

 

「おいピトー!お前のおやじさんにこいつを渡してくれ」

 

給与を貰いさて帰るかと思ったところで、だみ声にてトミーから呼び止められ。ヒョイと軽い動作で投げ渡されたのは濁りのある赤い飲み物、トマトジュースだった。

 

「どうせあのロクデナシ、ああお前ん父親な…今日も酒飲んでんだろ。これを届けてやってくれ。それとたまには鉱山に顔を出しに来いってな、言っといてくれ。」

 

あとついでに駄賃もやると言われ日給の1.5倍程の金額を渡されたピトーは了承の意を込めて頷き、一人旅路につく。二年前の弱弱しいピトーであったならすぐさま渡された飲み物を飲み干し残ったボトルはその辺に捨てているところだが、余裕のある現在は舌を楽しませるものでもないトマトジュースを飲む理由は特になかった。

 

(けど別に、わざわざボクがあの父親にコレを渡す理由も特に無いけどね)

 

捨てようかとも一瞬考えたが、その考えを見透かされていたのか駄賃も同時に貰ったことを思い出す。

しょうがないニャあと呟きつつ家の玄関を開けるとピトーは相変わらず酒瓶を床に転がしている父親と目が合う。が、すぐに逸らされ、その視線の先には二つパンがあった。

 

「一つは朝飯用だ。片方を食ったら寝ろ。」

 

2年前と比べ山積みだったゴミはある程度捨てられ埃は隅にこそ溜まっているが中央付近には見つからず、一応掃き掃除はされていることが窺えた。酒瓶が転がっていると言ってもその日の分だけであり毎日ちゃんとゴミが捨てられていることが見て取れた。

ピトーが働き父親は酒に溺れる。ピトーの意思が強靭かつしなやかであったために劣悪な家庭環境は崩壊することなく維持されてきたが、半年程前からピトーは父親による暴力を受けなくなっていた。

何一つ文句を言わずあるがままの環境を受け入れ、酒で目がくらんでいた父親でさえも目を見張る成長をし続けていたピトー。その姿を毎日目にしながら停滞し続け堕落できるほど男の精神は強くなかった。自身の醜すぎる姿を直視してまで五枚目を演じることはできなかった。

 

「おとーさん」

 

のそりと床に就こうとしている父親の背中に声をかけ、トマトジュースを転がした。

 

「トミーさんがボクに、たまには炭鉱に顔を出せだってさ」

 

「…そうかよ」

 

ボトルを開け一口だけトマトジュースを飲んだ父親はそれ以降何も言わず毛布を被りいびきをかき始めた。それを尻目に、ピトーもまた横になり目を閉じて今夜を大股で跨ぎ始める。

瞳の裏では二年前の決意が再生していた。身体は成長し生活環境も改善している。二年前と比べてピトーは満たされた日常を送れている。だからこそピトーは体を鍛え、備蓄を貯め、日常を脱却する準備をし続けていた。

 

この二年でピトーは身体能力を向上させ、へそくりを貯め、方角を定めておいていた。残り足りないものはピトーの明確な意思だけだった。

 

 

 

 

 

「お前ら!!準備できたか!!」

 

『はい!!!』

 

鉱山の入り口にて、各々登山に適した靴や服を着た全従業員が集合しトミーの声に肯定を返す。

多くの従業員が働くこの鉱山ではほとんど顔を合わせない従業員がいることは珍しくない。毎年恒例のこのイベントは従業員同士の親睦を深めるという趣旨の下行われる。

 

「ねーねーお姉ちゃん、今日って何するの?」

 

ピトーの背丈より一回り程小さな背丈の後輩が荷物を背負って聞いてくる。ピトーと同じ区画で作業するその後輩鉱員は主に採掘により蓄積する砕かれた岩盤や土の塊を搬出する任を背負っているうちの一人である。一年前から掘削を任されるようになっていたピトーとはよく顔を合わせ上司から気にかけておくようにと言われていたこともありピトーは時々仕事の効率的なやり方を教えたりやけがの処置を施したりと世話をしていた。

 

(めんどくさいニャー…)

 

「あっ!まためんどくさーって顔してる!」

 

(子供って意外と敏感だニャ)

 

勿論、それは本人にとってはまったくもって不本意な行動だった。

 

「そんなまさか。ボクからのいままでの恩を忘れたの?めんどくさいならやってないよ」

 

「でもでも、いつも嫌々って感じじゃない?そうじゃない?」

 

「ソンナコトニャイヨー」

 

そこまで話したところで、先頭に立つトミーが鉱山の外へと歩み出し作業員全体がその背中を追って動き出す。ピトーたちもそれに続き歩き始めた。

先頭は徐々に山道へと入り始めピトーは階段のない急な傾斜を踏みつける。遅れがちな後輩の少女の手を引きつつ、二人は暇潰しに雑談をし始めた。

 

「そういえば、君がここに来てからまだ一年経ってないっけ。じゃあこの行事もまだ参加したことないんだね」

 

「そうだよ!まだ私が来て4か月くらいだよ!」

 

(そんなもんだったっけ?最近月日がめちゃ速いように感じる気がするニャー。蟻の頃の何倍も生きてるし、もしかしてこれが歳って奴かな)

 

「今日はトミーのおじさんの誕生日らしくてさ、毎年3月29日はこうして鉱員全員を連れて親睦会をするんだ」

 

「今、私たちってどこに向かって歩いているの?」

 

「さあ?去年はこの町一番のレストランだったけど、毎年会場は変わるらしいよ。変わらないのは毎回食事会が開かれることぐらいかな」

 

「食事!楽しみ~…」

 

長閑に雑談を楽しむピトーたちだが、決して緩やかに歩いているわけではない。二人とも大人に比べ足りない歩幅を補おうと懸命に足を動かしている。

ある程度切り開かれているとはいえ、左右に広がる森林は太陽光を遮り景色を遮断する。もしここで前を歩く大人の集団から千切れて迷子になってしまえば目的地もわからないピトーたちは遭難必至となってしまうだろう。しかしピトーたちも鉱員の端くれ。日々の労働によりこの程度の行脚で疲れる体力ではなくなっていた。

 

右を曲がり、左に抜け、時にはロープウェイを使い、2時間の登山の末ついに傾斜の大地を抜ける。そこはこの町どころかこの国一の高度を誇る山の山頂だった。

 

「よし!お前ら!!バーベキューの準備をするぞ!!今年は山のてっぺんで宴会だ!!」

 

男たちの怒号は大量の荷物を背中に背負い二時間もの間登山をしていたことを感じさせない気迫と声量で鳴り響く。ピトーは鬱陶しそうに手の平で耳を塞ぎつつ、あー長かったと呟き切り株の上に座った。炭鉱内の粉塵まみれの空気と違い、下界から切り離された聖域の空気は本来当たり前にしていたはずの呼吸に付加価値を生む。ピトーは地面を見ながらぼんやりと呼吸を繰り返していた。

 

「随分と退屈そうじゃねえか」

 

ふと影が差し視線をあげると先端から煙をあげる煙草を片手に持ったトミーが太陽を背に立っていた。ピトーは鋭い嗅覚で煙草の匂いが綺麗な空気に混ざり始めていることに気づき、少し機嫌が下がる。それと同時に自分は森林浴が好きなことを感じ、ピトーは自分のことながら意外だと思った。

 

「その煙草、消してくれない?せっかくのおいしい空気が台無しだニャ。トミーのおじさんもわざわざ山に来たんだから山の空気を味わわなくちゃ」

 

「バカ野郎こうして煙草越しに吸ってんじゃねえか。うめえもんが重なってさらに旨くなってんのさ」

 

ピトーは演奏や卓上遊戯に興味は示さなかったものの、人によっては夢中になれるものであることは理解していた。がしかし煙草はその範疇に入るものだとは到底思えなかった。なぜ臭いし健康に悪いものを吸うのだろうか。ピトーは酷く不思議に感じていた。

 

「つっても、ガキに嗅がせるもんじゃねえか」

 

そうつぶやきトミーは火のつく先端をぐしゃりと握りつぶしポケットに放り込み、ドカリと隣の切り株に腰を下ろす。

 

「それよりピトー、おめえ登山もバーベキューもあんま興味ねえだろ。目がぜんぜん楽しそうじゃねえぜ」

 

「そうかもしれないニャ。食事は嫌いじゃないけど、ボクって肉が特段好みってわけじゃないし」

 

そこで一度言葉を切り、澄み渡るような青空を見上げて、100%自然由来の空気を吸って言葉を吐く。

 

「ボク、自分が何に興味を持てるのかよくわかんないニャ」

 

決意を固めて早二年。ピトーは暇さえあれば自分の興味について自己理解を深めようと考え続け、今に至るまで答えを出せずにいた。あるのはやはり、停滞に対する強い忌避感だけであった。

人間は誰しも己の幸福のために邁進し続ける。己の能力を高めるため勉学や運動をし、時には痛みを乗り越え目標に手を伸ばす。努力が目標を先行することはありえない。

だが、ピトーは向かうべき道もわからぬまま努力を続けていた。労働に耐え賃金を父親にバレぬよう中抜きしへそくりを貯め体を成長させるために様々な工夫を凝らす。周辺の地理を調べるために貴重な休みを消費して実地調査をしたこともあった。

もしピトーが稀代の芸術家になりたいのであれば貯めた資金は画材を買うために使えるだろう。もし世界的なアスリートになりたければ耐えた労働で得た筋力が力を貸してくれるだろう。もし世界中を旅してまわりたいのであれば記録した地理の情報が役に立つだろう。

しかし、その努力が実ることはありえない。ネフェルピトーが己の目的を定めない限りは。

 

「ああでも賭け事は少し楽しかったかな?」

 

「俺ぁお前の将来が心配だよ」

 

呆れた表情を浮かべるトミーは、退屈そうなピトー表情を見てすぐににやりと笑う。

 

「じゃあ、そんなお前にいいもん見せてやるよ」

 

「いいもの?」

 

得意げに語るその口調は自信があるのか、ピトーの退屈を裏返す確信を持っているかのようだった。

 

「ああ。俺と俺の親父で見つけた宝物さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

木々から伸びる枝や葉を掻き分け巨大な根を乗り越え沢を跨いでいるともはや森林は人間の手に余る環境なんだということを思い知る。少なくとも凡百の人間らでは太刀打ちできない広大で複雑な自然のネットワークが広がっているのは都会に長く住んでいる程忘れやすい事実である。常識を知っている大人からすればまさに暗黒大陸を思い浮かべるかもしれないがその環境が形成されているのは暗黒大陸に限らず人類の文明圏にも存在する。詐欺師の塒と呼ばれることもあるヌメーレ湿原がいい例だろう。ハンターを目指す様々な達人でさえも大自然の過酷な環境に飲まれてしまう。

 

「今のところ木と虫しかないんだけど。ほんとにこんなところに宝物なんてあるの?見栄張りたくて大口叩いちゃったなら撤回してもいいけどニャ?」

 

「おめえの疑う気持ちはわからなくもないが、もう少しの辛抱だから今はとにかく足を動かすんだな」

 

「しょうがないニャあ…」

 

肩をすくめて渋々といった態度を見せるピトーに発汗や息の乱れはない。ただの人間に成り上がった、あるいは成り下がったピトーだが既にその肉体は凡百のそれとは乖離している。もはや登山の一つや二つで息が上がるスタミナではなくなっていた。

 

「!」

 

数分の雑談の後、空気がふっと軽くなるのをピトーは感じる。それまで頭上を覆っていた木々の天井が途切れ、視界が一気に開けた。

 

「ついたな」

 

「ここは…」

 

最後の木立をくぐり抜けた瞬間、そこには山頂の広い空間が広がっていた。足元には柔らかな草が風に揺れ静かなざわめきが耳をくすぐる。

 

「根差し草っつう雑草の一種でな、根が普通の植物の何倍も多く長く生えて土壌の栄養を全部吸い取っちまうんだ。ここら一帯木が生えてないだろ?そのおかげで見晴らしがいい場所になってんだよ」

 

「…これが宝物?」

 

「いいや?この先の崖の方に行ってみな。きっと、俺の言ってることがわかるはずだぜ」

 

空はどこまでも高く、雲はすぐ近くでゆっくりと流れている。その下でピトーは雑草を踏みつつ崖の縁に足を掛けた。もちろん、疑念を携えながら。

 

ピトーは己の前世、今世含めた生の中で感動を覚えたことは一度としてなかった。しいて言うならば王の優れた知能、力、能力を前に改めて忠誠を誓った時以来だろうか。

 

目に見える物体、美術、食事は全て灰色に染まり思い返したい記憶は常に前世のことばかり。

 

(山頂、高い所からの景色…ね。高い所は好きだけど、ずっと肉樹園の塔の上で見張ってたし今更面白いモノでも――)

 

ピトーの内にあったそんな矮小でつまらない閉じた世界は、急激に広がる。

無意識に瞳が大きく見開かれ、プツリと思考が途切れる。

 

目の前には絶景が広がっていた。

 

 

 

遠くまで連なる山々は、薄い青の層を幾重にも重ねるように地平線へ溶けていく。その森の間を淡く光る川がかすかな光の粒の反射とともに流れ、まるで天の川のように静かに輝いていた。遠くの谷間にはところどころに小さな町の屋根があり陽の光を受けてきらめいている。昼間の景色でありながらまるで満天の星を地上に散りばめたかのようだった。

 

その光景はあまりにも遠くあまりにも広い。目に映るすべてが視界に収まらずどこまでも続いている。

 

少し上を見ると蒼色の鱗を身に纏った巨大な龍が雲を掴むようにして悠々と空を泳いでいる。その大きな影は地表に静かな闇を落とすが、しかし当の本人は地上の蟻のごとき小さな生き物など気に留める様子もない。

 

ただ自由に空を行く。その姿はこの広大な世界そのものを象徴しているかのようだった。美しく、そして果てしなく自由だった。

 

 

 

「どうだ、すごい景色だろ?バーベキューするあの場所も悪くはないんだが、周辺の高度の関係で山の尾根が景色の大部分を占めちまうから、落ち着いて風景を眺めるんならここが一番なんだよ」

 

「…」

 

「あの遠くに見える奴、ありゃ成蒼龍だな。ほとんどを雲より上で生活しているが正月だけ地表近くに降りてくるって聞いたことがある。すぐに人間の目の届かない場所まで飛び立っちまうらしいから俺らは運が良い…、

っておめえ、そいつぁ…」

 

脳内にドーパミンが大量に生産されるような頭が痛くなるほどの激しい感動、感涙ではない。呆然と立ち尽くすピトーの頬には一筋の涙が彗星のように流れ落ちていく。

静かな感動はピトーに大きな影響を与えていた。

 

「…すごいね、コレ」

 

「…おうよ。まあ確かに俺もこの景色は見る度魅入っちまうが、ガキにしては達観してるおめえがまさか泣くとはな」

 

「そうじゃなくてさ、確かに美しい景色だけど」

 

ピトーは絶景に魅了されながらも自身の内に発生した感動の理由を冷静に分析していた。

ピトーは密に考えていた。もしかしたらこの世に、自分が感動できる、本気になれる、大好きになれるようなものは何一つとして存在しないのではないかと。蟻の生にて過ごした期間、その何倍もの人の生を過ごしてきたが、ピトーの琴線に触れる物事は存在せずただただ慣れないストイックさを発揮して楽しさの無い努力をする日々。いつしかピトーは、己の人生とは生存するためにつまらない努力を続けるものだという認識になっていた。

少なくとも蟻のときは違った。人間と触れ、念を知り、戦闘を通して意地の悪い己の快楽を知り、死体を生き返らせようと試行錯誤する中で未知への探求心を育んだ。二ヶ月足らずではあったがとても楽しい時間だった。

 

ふと思う。思えば自分は、未知への冒険に憧れていたのかもしれない。

 

見たことのない武器を片手に己と対峙する人間、こいつをどう倒すか考えたあの時間。

論文も資料も無しに成功するかもわからないまま、トライアンドエラーを繰り返し死体を研究する日々。

潜んでいた人間の脳を弄って得た念の無限の可能性に心を躍らされ自身の能力を夢想をしたあの夜。

様々な能力で東ゴルトー国民を解放してまわる念能力者とどう戦うか妄想したあの明け方。

 

それら全ては先が見えずとも、いや見えないからこそピトーは楽しみながらそれに打ち込んでいたのだ。人間も、念も、それらの未知は世界が広がったからこそピトーの手のひらにやってきたもの。

 

「世界って、こんなに広いんだね」

 

ピトーはまだ、自分が何も知らないことに気づく。己がつまらないと断じた世界は極々小さな視点から見たものだという事に気がついたのだ。

 

「ボク、この世界を旅したいんだ」

 

ピトーの意思は形を成す。

二年もの間、悩みに悩んだ己の欲求は驚くほど簡単に零れ出た。




どういう流れにしようかは決まってるんです。でも編入試験でめっちゃ忙しいので更新は期待しないでください。あと推敲する時間もなかったので結構文章散らかってると思います。orz
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