ダブルな天職で世界最強   作:お粥のぶぶ漬け

8 / 8
第8話:秘匿される力 ―規格外の証明と、静かなる拒絶―

銀色のプレートに指が触れた瞬間、脳内に情報が直接流れ込んでくるような錯覚を覚えた。視界の端で光が収まると、そこには俺という存在を定義した「数値」が並んでいた。

 

「……なるほどな。出来すぎだろ」

 

思わず口角が上がるのを、俺は必死に抑え込んだ。

そこに刻まれていたのは、到底レベル1のものとは思えないスタッツの暴力。そして、本来一つであるはずの項目に並ぶ、二つの『天職』。

【天職:重戦士/魔導師】

中学から積み上げてきた肉体の研鑽が『重戦士』として。そして、前世の知識とこの世界への適応が生んだ膨大な魔力適性が『魔導師』として、互いを補完するように結実していた。数値を見れば、HP、筋力、体力、耐性の項目は、召喚直後の勇者光輝をすら優位に超えている。

周囲では、次々と驚愕と歓喜の声が上がっていた。

 

「すごい! 筋力が100を超えてるわ! さすが光輝くん、天職『勇者』ですって!」

「香織さんも『癒術師』!? 恵里さんは……『降霊術師』? すごい、みんなレア職だよ!」

 

光輝が、眩いばかりの光を放つプレートを掲げ、王族や騎士たちから称賛の嵐を浴びている。ハジメはといえば、自分のプレートを見て「錬成師……非戦闘職か……」と少し肩を落としていたが、その隣で恵里が「ハジメくんが作るもの、私楽しみだよ。一緒に頑張ろう?」と、その手を強く握っていた。

そんな中、俺は静かにプレートを胸ポケットへと仕舞い込んだ。

 

「さて、勇者の方々。確認が終わりましたら、そのプレートをこちらへ。記録を取り、皆様に最適な装備と訓練を準備いたします」

 

教会の神官たちが、羊皮紙を手に回ってきた。クラスメイトたちが次々と「はい、お願いします!」と誇らしげにプレートを差し出していく。そして、俺の番が来た。

 

「……久磨誠様ですね。プレートを拝見しても?」

 

若い神官が、当然のように手を差し出してくる。俺は、その手を静かに見下ろし、短く答えた。

 

「断る」

「……はい?」

「聞こえなかったか。このプレートをあんたらに渡すつもりはない、と言ったんだ」

「な、何を仰るのですか! これは重要なデータなのですぞ! それに、神エヒトより授かりし力を秘匿するなど――」

「神が授けたものなら、それは俺の所有物だろ。それに、ステータスは命に関わる機密情報だ。手の内を、出会って数分の、信じられるかも分からない連中にさらけ出す趣味はない」

 

俺の言葉に、教皇イシュタルの目が険しく光る。

「久磨くん、何を言ってるんだ!」と光輝が割って入ろうとしたが、俺はそれを手で制した。

 

「雫も、ハジメも、自分の意志で提出した。それはいい。だが俺は、俺のプライバシーを優先させてもらう。……どうしても天職を知りたいって言うなら、教えてやるよ。俺の天職は『重戦士』だ。それ以上でも以下でもない」

「『重戦士』……。確かに、その体躯を見れば納得はいきますが……しかし、プレートによる確認なしでは……」

 

神官が狼狽えて教皇を仰ぎ見る。

俺は一歩前に出た。それだけで、周囲の空気が重く圧せられるような威圧感を放つ。レベル1とは思えない、鍛え抜かれた肉体の熱。

 

「記録には『重戦士』とだけ書いておけ。どうしてもプレートを奪いたいってんなら、力ずくで来るか? 召喚早々、勇者の仲間を一人『検品拒否』で処刑するつもりなら、それも面白いがな」

 

俺の不敵な言葉に、一人の男が苦笑いを浮かべて割って入った。

王国の騎士団長、メルド・ロギンスだ。彼は俺の体格を鋭い目で見つめた後、神官の肩を叩いた。

 

「……よせ。彼にも一理ある。戦士が自分の手の内を隠したがるのは、生存本能のようなものだ。……久磨殿と言ったか。その体格、嘘を言っているようには見えん。提出は後日でも構わんよ。プレートを隠せるだけの度量があるなら、それもまた戦士としての資質だ」

 

教皇も、深いため息をついて頷いた。今は一刻も早く「勇者」たちを掌握したい時期だ。ここで一人のイレギュラーと揉めて、全体の士気を下げるのは得策ではないと判断したのだろう。

俺はポケットの中のプレートに指を触れ、確信していた。

公表された『重戦士』は、俺の半分に過ぎない。そして、この数値の暴力こそが、奈落の底でハジメと俺が生き残るための、絶対的なパスポートになる。

 

「……ふぅ、冷や冷やしたよ、クマくん。でも、カッコよかった」

 

ハジメが苦笑しながら寄ってくる。

 

「自分の身は自分で守る。それが基本だろ、ハジメ。……さあ、飯だ。異世界の飯が食えるんだろ?」

 

俺は不敵に笑い、困惑する王城の人々を背に、食堂へと歩き出した。

俺のステータス――レベル1にして、全勇者候補を凌駕する物理スタッツ、そして隠された『魔導師』の力。

それを知る者は、今のところ、この世で俺一人だけだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ありふれない廻り者で異世界を絶つ(作者:塵気)(原作:ありふれた職業で世界最強)

灰都と東耶に言葉を残して、夜明けに散った柳生十兵衛。▼己の宿業を断ち後悔なく笑って逝った▼----はずだったのだが▼いつの間にか現代日本の街の中に立っていた。▼人を殺した者として柳生十兵衛は八重樫雫たちに何を教え、学ばせるのか。


総合評価:75/評価:-.--/連載:8話/更新日時:2023年12月14日(木) 14:30 小説情報

人理焼却に化け物ぶち込んでいこー(作者:七天抜刀)(原作:Fate/)

▼ 呪術廻戦?の平安時代に転生して宿儺の親友やってた主人公を人理焼却に突っ込む話▼ちなみに転生と転移の順番は、現代日本(ノーマル?)から平安日本(型月世界に呪術廻戦の世界が融合した世界)に転生。後に世界の裏側(人理焼却の世界線)に転移▼元々ありふれ書こうと思ったけど主人公の設定強くし過ぎて秒で終わるの気付いたんで人理焼却にぶち込みます。なおプロットは皆無


総合評価:67/評価:-.--/連載:2話/更新日時:2026年04月02日(木) 02:55 小説情報

ありふれた術師で世界最強(作者:蛇弟)(原作:ありふれた職業で世界最強)

最後の決戦、人外魔境新宿にて己の全てをもって史上最強の術師にして呪いの王、両面宿儺に挑み敗れた一人の術師が新たな刺激を求めて一足先に旅立つ物語。


総合評価:89/評価:-.--/連載:8話/更新日時:2026年05月09日(土) 04:38 小説情報

ありふれた転生者は異世界でも無双する(作者:白の牙)(原作:ありふれた職業で世界最強)

 転生した世界で天寿を全うし、亡くなった男 上條刀真(とうま)▼ 輪廻の輪に行くとばかり思っていた彼は気づいたら意識と記憶を持って赤ん坊になり知らない世界に転生していた。▼ この小説は凍結中の小説~転生したのでとりあえず剣技を極め最強を目指そう~のその後の話です。▼ 主人公の名前が違いますがご了承ください。▼ その他のタグはこちら▼ 異世界でチート能力を手に…


総合評価:293/評価:7.2/連載:15話/更新日時:2026年05月14日(木) 18:30 小説情報

ドラゴンボールZ 僕は孫悟空の息子(作者:くまたいよう)(原作:ドラゴンボール)

 悟空が死んだ。▼ 悟空の友達にライバル達、皆が死んだ。▼ 絶望の世界で孫悟飯は立ち上がる。▼


総合評価:40/評価:-.--/連載:6話/更新日時:2026年03月18日(水) 20:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>