サボ島沖ニテ

敵艦隊ト交戦シタリ

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以前に書いた駄文です。

私の嫁(古鷹)の活躍噺です。

生ぬるい目で見てあげて下さい。


最後の言葉

轟!!

耳を突き刺す爆音 立ち上る水柱。

それらを切り裂く様に さらなる砲火が破壊の嵐となって夜の海原に吹き荒れていた。

 

敵艦隊中央からの一斉砲撃。

音速の砲弾が旗艦である青葉に直撃。

衝撃で吹き飛ばされ 水面に叩き付けられる。

身につけていた艤装は半壊、青葉自身も意識はあるが自力での航行が不能であるほどの重傷。

 

不意に敵艦隊からの砲撃は止む。

私は助けに行けない、他の僚艦も行けない。

戦場では無縁の沈黙と静謐。

青葉は艦隊から取り残された形となる。

あからさまな罠。

手の骨が軋むほどに艤装を握り締める。

「古鷹、駄目よ」

叢雲が私の前を手で制する。

常に冷静に戦場を見据える彼女が私の迂闊な行動を抑える。

叢雲の目付きは厳しい。

他の艦も救出の機会を窺うが隙はない。

無理に進めばそのまま命を落とす。

青葉はまだ動けない

まだ動けない。

 

弾かれたかの様な一歩

妹を助けるという勅令の様な意思が私の体を動かし、叢雲の制止を振り切る。

「待ちなさいよ 馬鹿!!」

叢雲の罵倒も今は無視。

機関出力を上げ、青葉の救出へ向かう。

 

敵艦隊への距離を測量している時間はない。

全兵装に弾薬を装填、目算で放つ。

「全砲 全座撃てっ!!」

弾幕は薄いが隊列が僅かに乱れる。

更に探照灯を灯火 闇に写し出された艦影は九つ。

その時、敵艦砲門から緋が炸裂する。

 

轟音

着弾はなし 後方の艦隊も無事。

至近弾で水飛沫が舞い、水面が激しく逆巻く。

被害はなかった この幸運は次は無い。

それでも前へ進む。

 

敵艦隊と負傷した青葉の射線上に入る。

主砲は旧式の給弾装置で装填が遅い。

副砲と機銃を水平固定 一斉射。

手応えは無いが弾幕を張る。

後方からの支援砲火で火力を重ねられる。

私は前に出て青葉への砲撃を断つ。

「青葉っ 大丈夫!!」

後方から詰めてきた衣笠が呼び掛け 初雪と共に肩を貸し、青葉を起こす。

「ごめん…」

足以外には大きな負傷は見られない、よかったと心から思う。

「古鷹!!」

衣笠の叫びを掻き消す様に爆音が重なる。

 

「ふ る たか…」

「青葉、大丈夫だった?」

痛みを殺して 無理矢理微笑む。

炸裂弾が左前方で爆発

左足は爆風で千切れかけ骨までが露出。

青葉は瞳から大粒の涙を流す。

私が衣笠に送った打電は一文

離脱セヨ

歴戦の武勲艦である衣笠であっても 早々に判断出来ない命令だった。

「早く、もう限界よ!!」

後方の叢雲の声にも余裕はない。

衣笠は苦渋の決断を下す

「絶対に帰って来なさい!」

私はただ微笑む 返答はしなかった。

 

衣笠と初雪が青葉を曳航し下がる。

私は最後 青葉の顔を見ることをしなかった。

こちらまで泣いてしまいそうだったから。

私はまだ撤退の時間を作ってあげなければならない。

姉として仲間として負け戦を続ける。

 

砲弾の嵐が降り注ぐ。

ジグザグに回避行動を取り、少しでも被弾を減らす。

更に敵艦隊からの魚雷掃射 感8

対潜ミサイルと迎撃魚雷で6つを潰す。

残り2つが迎撃網を抜け直進

まだ後ろは撤退が済んでいないため 回避する為には行かない。

覚悟を決めて錨を降ろす。

 

魚雷が足の主機に直撃。

凄まじい衝撃と激痛そして熱。

左足は回転推進機ごと膝から下が消失

断面からは血が溢れ 水面に朱が加わる。

私は立っていられず膝から崩れる。

第一主砲に零式弾を装填

測量機は既に壊れ 使い物にならず、敵艦隊は常に移動し 的を絞らせない。

私は動けず浮き砲台となる。

放たれた砲弾は外れ 波間に消える。

狙い澄まされた敵艦隊からの砲弾が艤装ごと私の右肩を撃ち抜く。

錨に引かれ体は留まったものの 私の右腕と艤装の破片が後方へ吹き飛ぶ。

 

まだ沈めない

高角砲から最後の一手を放つ。

それは敵艦隊前方で炸裂

照明弾は眩い光を放ち 夜の海原を白く染め上げる。

使える砲座に弾薬を再装填、敵艦を捕捉せずにばらまく。

 

白光が去り 景色が戻る。

私の兵装からは硝煙が立ち上る。

もはや弾薬の一発も有しておらず、五体も満足でない、生きているのが不思議なほどの重傷。

後方の味方は既に闇に紛れ姿は見えない

撤退が完了したようである。

 

前方には5の艦影

ゆっくりと主砲がこちらを向き固定。

砲門が火を吹き、体に衝撃が伝わる

私は意識を失った。

 

意識が戻ったのは海上ではなく水中だった。

海底にはさらに深い闇が広がる。

既に体の痛みは全く感じず、沈んでいくに連れて意識も薄くなってゆく。

私は最後に何か言おうとした

さよなら ごめん ありがとう

何を言おうか迷って発した言葉は泡となって消えていった。

私らしい最後だなと思った。

 




最後までありがとうございました。

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