廃教会のリビング。リリがうつ伏せになり、ヘスティアがその背中に神の血を一滴落とすと、光がリリの背中を走り、新たな「力」が刻まれていきました。
輝きが収まった直後、ヘスティアは驚きと喜びが混じった声を上げました。
「リリくん、おめでとう! すごいね…変身魔法の他についに攻撃力のある新しい魔法が発現したよ! それにこの数値……サポーターをしながら、これほど魔力……すぐ戦力になれるんじゃないかい?」
ヘスティアが羊皮紙に書き写したリリの能力(ステータス)は、彼女の生存本能と、シュタルクへの思いが結晶化したものでした。
リリルカ・アーデ
Lv.1
• 力 :H 106
• 耐久:H 189
• 器用:G 298
• 敏捷:E 468
• 魔力:D 500
《魔法》• シンダー・エラ(変身魔法)
詠唱:【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】
解呪:【響く十二時のお告げ】
• ゾルトラーク
速攻魔法
《スキル》
• 縁下力持(アーテル・アシスト)
一定以上の装備過重時に能力補正がかかる。補正は重量に比例する。
「……ゾルトラーク。昨夜、あの賢者様から頂いたグリモア…ちゃんと本物ですね、私に攻撃魔法が刻まれました」
リリは震える手でその紙を受け取りました。
その光景を、隣でベルが目を輝かせながら眺めていました。
「……すごいや、リリさん! 魔力が500なんて、本当の魔導師みたいです! 羨ましいなぁ……僕もいつか、派手な魔法を使ってみたいです。ドカンと一撃で強敵を倒すような!」
ベルは両手を広げて、子供のように英雄譚のワンシーンを真似てみせます。
そんなベルの様子を見て、シュタルクがふと尋ねました。
「そういえば、今更だけどさ。ベルってなんでオラリオに来たんだ? やっぱり、物語に出てくるような英雄になりたかったのか?」
「え? あ、はい……。おじいちゃんがよく言ってたんです。『英雄になれ』って。だから僕も、いつか誰かを守れる強い英雄になりたいと思って……」
ベルは少し照れくさそうに頭を掻きました。だが、その瞳には嘘偽りのない純粋な輝きがありました。
「でも、それだけじゃないんです」
ベルは少し声を潜め、でも熱を込めて続けました。
「……おじいちゃんがよく言ってたんです。『男ならハーレムだ!ダンジョンに出会いを求めろ!』って。だから、僕は素敵な出会いを求めて、この街に来ました!」
「……出会い?」
シュタルクはポカンと口を開け、リリはジト目をベルに向けました。
「ベル様……それ、ナンパをしたいってことですか?」
「えっ!? い、いや、そういう不純な意味じゃなくて! こう……運命的な出会いとか、ピンチを助けたり助けられたりっていう、そういう物語のような……!」
顔を真っ赤にして弁明するベルを見て、ヘスティアがクスクスと笑い出しました。
「あはは! ベルくんらしいね。英雄志望とそんな不埒な憧れが同居してるなんて。でも、それもまた君の魅力だよ」
「……ま、出会いも英雄も、まずは死なない程度に強くなってからだな。よし、今日も特訓だ!」
シュタルクは呆れつつも、少年の青すぎる夢を否定せず、その背中を力強く叩きました。
「はい! 僕、もっともっと頑張ります!」
朝日が差し込むリビングに、四人の明るい笑い声が響きました。
リリの思いに、そしてベルの純粋な夢。
【ヘスティア・ファミリア】という小さな家族の絆は、こうして一歩ずつ、着実に深まっていきました。