転生したら幽霊だった件……なお性癖は曇らせ愉悦   作:性癖拗らせ愉悦部

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果実とは、実る物であり、堕ちる物
時期を見逃せば腐り堕ち、堕ちてしまえば潰れてしまう
例え収穫出来ても、粗末に扱い
無闇矢鱈に放置すれば……

あっという間に腐り果てしまう

そんな繊細な物…………それが、果実


By リンゴは絞ってジュース派な神


過去・・・悪いスライムと芳醇な果実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───これは俺の、俺達の始まりの物語だ

 

 

 

 

 

───取り戻せないと分かっていても

 

 

 

 

 

───もう終わった物語、過去だとしても

 

 

 

 

 

───心が、魂が、求めてやまない

 

 

 

 

 

───そんな過去であり、始まり

 

 

 

 

 

───願うなら…………終わりたくなかったよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はリムル。ただの悪いスライムだ

 

刺されて死んで、この世界にスライムとして転生した俺は、寂しがり屋のオッサン…もとい暴風竜ヴェルドラと友達になって、名前をもらって…

 

今にして思うと不思議モノだ。正直に言うなら、俺は最初ヴェルドラにビビっていた。逃げるなと言われなければ今すぐに逃げ出したいくらいにはビビっていた。……だって、見た目だけなら迫力満点のドラゴンだし

 

じゃあなんで友達になれたかって?答えは簡単、寂しがり屋だったんだ。もちろん、お互いにな!

 

転生してから、何も見えず、聞こえず、喋れない環境で、俺はただ感触だけを頼りに周囲の薬草や鉱石を捕食して何十日も暇を潰すくらいしかやる事がなかった。大賢者が喋れる様になって幾分かマシになったとはいえ、それでも、やっぱり寂しい事に代わりはなかった

 

もっとも、当時は転生したばかりで気が動転していたというか、ヤケになっていたというか、そんな事考える余裕すらなかったんだけどな。……いや、考えないようにしていたと言う方が正しいか。だって、考えてしまったら、きっと、心が寂しさでいっぱいになってしまうから……

 

だから、自分でもよく分からないが、結構明るく振舞っていた気がする。誰かに見られてるって訳でもないのに、な。不安だったんだ、何かしてないと。ふと我に返って、深く考えてしまう気がしたから

 

……このどうしようもない現状を

 

当然だろ?刺されて死んだと思ったら何故かスライムに転生。しかも何も見えないし聞こえないんだぞ?不安にならない方が無理って話だ

 

……まぁ、その結果不安を紛らわす為にはしゃぎすぎてたら水に落ちて、そのおかげでヴェルドラと出会って友達になれたんだから、ある意味結果オーライだったのかもしれないけど

 

その後ヴェルドラに魔力感知を教えてもらって目が見える様になって、魔力感知の応用で声も聞こえる様になって万々歳!……ヴェルドラがドラゴンだった事にはめっちゃビックリしたけど……

 

そんでもってヴェルドラの話を聞いていると、このオッサンはただの寂しがり屋だと分かった。なんでもウッカリで街を一つ灰にしちゃった結果、約三百年間封印されているらしい

 

……自業自得だとは思うが、それでも、こんな何も無い洞窟に三百年…………いったい、どれだけの孤独だったんだろうな。生前、37年恋人がいなかっただけでも俺はかなり寂しかった。それなのにヴェルドラは三百年……本当にどれだけの孤独を味わったのかは、俺には想像すら出来ない

 

だって俺は、せいぜいその内の十分の一位しか生きていないのだから。しかも凡そあと百年で朽ち果て、塵に還ってしまうのだとゆう

 

……そんなの、あんまりじゃないか。誰にも見向きもされず、一人寂しく塵に還るだけなんて

 

だから友達になりたいと思ったし、友達になれた。たぶん、三百年前のヴェルドラとだったら友達になれなかったんだろうな。なんとなく分かる。きっと誰でも良かったんだ、お互いに、この寂しさを埋められるなら。だから、ただ話し相手がほしかっただけなんだ、俺達は

 

些細な理由かもしれないが、きっとそんなモンなんだ。皆強がってるだけで、誰だって人の……心の本質は寂しがり屋なんだと思う

 

そうしてヴェルドラと友達になって、俺は名前を貰った

 

リムル、リムル=テンペスト!それが俺の名前だと、名が俺の魂に刻まれ、その時初めて俺は、この世界に生まれ落ちた気がした

 

俺もヴェルドラにテンペストの名を付けて真の意味で友達になった。…………でも、俺はまた、結局一人になってしまった

 

呆気ないものだった。無限牢獄を解析する為にヴェルドラを捕食したが……実に呆気ない。さっきまでそこに居たのにヴェルドラの大きさと同じくらい、心にポッカリと穴が空いた気がした

 

……一人になってしまったが、それでも俺は進むしかない。ヴェルドラと約束したというのもあるが、なにより……早く人に会いたかった

 

 

…………だけど、受け入れてもらえなかったらどうしよう

 

 

……そんな、どうしようもない不安を心の底に抱えながらも、俺は洞窟の出口を目指して進み…………さ迷い続けた

 

情けない事に方角も現在地も分からず、魔物を狩り、スキルを獲得しながら気長に探索を続けた。きっといつか出口を見つけられると信じて

 

 

……そして、俺は出逢った

 

 

出逢いは偶然だった

 

運命だとかそういう言葉で飾るのは簡単だけど……きっとアイツは嫌がるだろうな。ロマンチストのくせして、そういうのは言葉の価値が下がるからあんまり言いたくないって言う奴だし

 

でも、俺にとっては、本当に運命的だった。赤い糸だとかそんなんじゃない。本当に、運命的な出逢い……全て結果論だけどな。こうして過去を振り返ってみるからこそ、そう思うんだろうな

 

だって、赤い糸というのなら……たぶん、いや、絶対に、俺とアイツは結ばれてはいないのだから

 

偶然だ、本当に。もし俺が違う道を行っていたのなら、俺達は出逢わなかっただろう

 

ヴェルドラとの出逢いが、決められた出逢い。運命だとするのなら、アイツ……ユイとの出逢いは、偶然の出逢い。何かが掛け違えば出逢う事はなかっただろう

 

 

でも、俺は出逢った。いや、見つけたんだ。俺の運命を

 

 

今だからこそ分かる。無限に繰り返し、書き換えられたであろう世界で、たった一度っきりの出逢い。今も尚、心が、魂が、求めてやまない俺だけの物を……見つけた

 

……きっと、第一印象は良くなかったと思う

 

だってユイから貰った一言目は

 

「うるせぇ!」

 

だったからな。本当に、ロマンチックの欠片も無い出逢いだ。まぁ、俺等らしいというかなんというか……こんな始まりも悪くねぇよな

 

言い訳させてもらうなら、ちょっと興奮しすぎてたんだ。なんてったって人に会うなら洞窟を出てからだと思ってたから。……それに何より……美しかったからな

 

本当に幻想的な光景だった。暗い洞窟の中なのに青白く光る魔鉱石に照らされて、ユイの居る空間だけが別世界のように見えた

 

黒髪、黒目、鋭い目付きに、美しい顔立ち。全身黒装束に身を包み、服の上からでも分かるボディーラインは美しく、威風堂々と立ち構えるその様は、男らしくもあり、されど、確かに女性らしく綺麗で……俺の目に映る全てが輝く彩られ、その美しさに

 

……俺は見惚れてしまったんだ

 

一応言っとくが、一目惚れだとか、そんなんじゃない。興奮しすぎていたのはあくまで人に出会えて嬉しかったからだ。……まぁ、ユイ以外だったらあそこまで興奮しなかったかもしれないが……

 

だが、きっと、俺はこの時から、欲しいと思ったんだ。心の底の何処かで、無自覚に。コイツを、ユイを、欲しいと。どこまで喰らい尽くして、味わい尽くして、飲み干してしまいたいと

 

そう……思ったんだ

 

 

…だって…すっっごく!美味しそうだったからな〜

 

 

それはまるで、芳醇な色香を放つ果実のように実っていて、食べ頃だと言わんばかりの香りを放っていた。高く手が届かずとも、俺の目はアイツに釘付けだった

 

スライムの、捕食者の本能とでも言うのだろうか?自覚は無かったが、俺の頭は、心の中は、魂は、コイツをどうやって手に入れるか、俺の物にするかでいっぱいだった

 

早くしゃぶりつきたかった。その果実を、魂を、どこまでも俺の物にして、しゃぶり尽くしてやりたかった

 

未だ手付かずの生モノ。身奇麗で美しい果実。誰の物でもない。日の目を見る事も無い……そんな、正にお宝の果実

 

誰にも渡すものか。俺が見つけたお宝だ。俺以外に手に入れる権利なんて無い。味わう権利なんて無い。俺が手に入れると、俺の物にすると、味わうと、そう決めたんだ

 

まぁ…後からアイツが元男だって知った時は驚いたが、そんなの些細な事だ

 

だって、ユイは幽霊。そもそも肉体なんて無い。つまり俺が欲しいと思ったのは、味わいたいと思ったのは

 

ユイの魂そのモノだ。そうだろ?

 

たまたま、たまたまだ。たまたまユイの身てくれが女だっただけにすぎない

 

だから俺にとって身てくれなんてのは本当に些細な事でしかないんだ。アイツの魂が放つ香りの前では、な

 

俺を惑わし酔わせ釘付けにする芳醇な色香の前では、本当にどうでもいい事だ。身てくれなんて。……んまぁ、だからと言って身てくれが女である事に不満はないけどな?むしろより俺好みってだけの話だ

 

 

美味しく実ってくれてありがとう♡

 

 

あ"あ"あ"あ"〜どんな味がするんだろうな〜……アイツの魂は。香りを嗅ぎながら想像するだけでヨダレが止まらねぇよ〜ユイ〜

 

だからさ、早く味あわせてくれよ?酷いじゃないか……これだけ酔わせてお預けなんて………酷いよ

 

せっかく苦労して手に入れたのに

 

期待させるだけ期待させて……お預けにするなんて

 

 

 

 

 

……まぁ、早く食べなかった俺が悪いんだけどな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの出逢いの後、俺達は行動を共にした

 

洞窟をさ迷っている俺をユイが出口まで案内してくれるって事になってな。俺にとっては願ったり叶ったりだ。出口に行けるし、ユイとも一緒に居られる。好感度を稼ぐには絶好のチャンスってな

 

だが、一つ問題もあった

 

ユイは言った。出口まで案内する、と。つまり一緒に行く気がないんだ、俺と。直接俺にそう言った訳ではないが、話をしていれば簡単に分かった。アイツは優しくて、親切だったからな

 

道すがら、俺にこの世界の常識や物事の価値観について教えてくれた。……分かりやすい。本当に分かりやすい。暗に俺とは一緒に行く気が無いと伝えてきている癖に、いっちょまえに俺の心配をしてやがるんだから

 

俺が心配なら、一緒に行きたいって言えばいいのにな?ま、ユイには到底無理な事なんだけど

 

どういう意味かって?簡単だよ。ユイはな?寂しがり屋なんだよ。だから俺と一緒に行かないで孤独を選ぶんだ。ん?矛盾してないぞ?これであってるさ

 

ユイの心の在り方は歪でな〜

 

アイツは寂しがり屋だが、孤独には耐えられちまうんだよ。じゃあ何が耐えられないのか?辛いのか?それはな、喪失感なんだよ。大切な何かを失うのが恐いんだ

 

俺が自分の大切になってしまったら、失ってしまったら耐えられないから、だから孤独を選ぶんだ。ユイもまた、ヴェルドラと同じようにこの薄暗い洞窟に三百年間独りぼっちだったってのに、失うのが辛いからって俺から離れようしてるんだぜ?

 

歪だよな〜…寂しがり屋の癖して失うのが恐いからってだけで、また孤独を選ぼうとするんだから。なまじそれに耐えられてしまう強靭な心があったから、そんな歪になっちまったんだろうが

 

 

……クッヒッヒッヒッヒ!可愛いよな〜

 

 

それってさ?もう俺がお前の大切なりかけてるって証拠じゃないか!そんなのもうプロポーズだろ!?俺を食べてくださいって!

 

あぁいいぜ!喜んで美味しく頂いてやるよ!

 

そもそもさ〜俺がお前を手離す訳無いだろ?お前が最初に俺を受け入れたんだぞ?

 

「フッ…悪いスライムじゃないんだろ?」

 

まるで受け入れるのが当たり前の顔して、俺を受け入れやがってよ〜。拒絶される事を恐れてた俺が馬鹿みたいじゃないか。あっさり俺の悩みを取り払って、受け入れて、俺の心を救って、満たして……

 

 

…だったら最後まで責任取れよ。俺を受け入れたんだからさ、ちゃんと俺を満たせよ。最後まで

 

 

なのに勝手に俺から離れようとか何様のつもりだテメェ?失うのが恐い?それだけじゃねぇだろ?お前も心のどっかで拒絶される事を恐れてるんだろ?

 

馬鹿だな〜なんで俺がお前を拒絶しなくちゃいけねぇんだよ?手離す訳ねぇだろうが。俺はもうお前と一緒じゃなきゃ満たされねぇんだよ

 

何処に居るんだよ?黄金の果実を手離すバカが?

 

 

……だから、アイツの心、優しさにつけ込む事した

 

 

勘違いすんなよ?全部本心だ。ただちょ〜とユイの優しさ、所謂罪悪感につけ込んだだけだ

 

「ユイさん、良かったら、なんですけど、一緒に、行きませんか?」

 

スライムの愛くるしさをフル活用し、下から潤んだ瞳を見せつけるかの様にユイを見上げ、刹那そうに、断らないで欲しいです!みたいな感じで、まずは揺さぶりをかける。断られるのは百も承知。だが重要なのはそこじゃない。重要なのはこの後

 

「……悪いな〜リムル。俺はこの高濃度の魔素空間じゃないと生きられないんだよ」

 

案の定ユイは俺の誘いを断った。だが、確かにユイは動揺した。言ってる事は嘘じゃないが本心じゃない。ただもっともらしい理由をあげただけだ。ユイの性格上、断わるだけならここに来るまでの道すがらで俺に理由を伝えていた筈だ

 

こういう理由があるから俺は一緒に行けないんだ、ってね。それを言わず、今言ったって事は、何か方法があるって事だ。この時の俺はその方法までは分からなかったが、確かに確信していた!

 

もう一押しだ!と

 

「………………そう、ですか」

 

どんよりとした、明らかにショックです!みたいな感じのオーラを出して落ち込めば

 

自分の所為で俺を傷つけてしまったという、ユイの罪悪感が刺激され

 

「……まぁ、方法が無い訳でもないが」

 

ユイの心の天秤、均衡は俺に傾く

 

 

フヒ!フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!!

 

 

あの時ほど!全てが上手くいって心の底から笑った日な無い!

 

俺は賭けに勝った訳じゃない!勝負に勝ったんだ!

 

勝負ってのは勝つか負けるかの二択じゃない!それはギャンブルだ。勝つ事が分かってるから勝負する、そして勝つ!それが勝負だ!

 

クヒヒヒヒヒヒヒヒ!思い出しただけでも笑いが止まらねぇ!正直自分でもここまで上手くいくとは思ってなかったからな〜

 

全てが上手くいった時のあの高揚感!

 

ユイの心を刺激して、俺に傾かせて、その心の鎖を紐解いたあの瞬間、あの顔!

 

 

中々に唆っっった!

 

 

ユイの心の鎖を全部解けた訳じゃない。だが確かにあの瞬間から、ユイは着実に俺の物になっていった

 

 

 

 

 

 

 

ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"〜早く食べたいな〜…俺の♡果実♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と魂の回廊を繋いだ事で依代となる魔素問題が解決したユイは俺と一緒に洞窟を出た

 

ふっふっふ、計画通り!

 

全く、素直じゃないんだから!俺と出逢った瞬間、最初っから一緒に行く事は決まってるんだから変な抵抗するなよな〜ホント

 

「せっかくだ、案内を延長してやる」

 

フフッ、しかし、案内の延長か。どうやらユイは俺と一緒に行くと決めた以上洞窟の出口までだった案内を延長してくれるらしい

 

それって永続って認識でいいですよね?フフフ

 

そうしてユイと洞窟を出てから俺の世界は一転した

 

「行くぞリムル、俺の肩に乗りな」

 

まず視点が高くなった!なんと棚からぼた餅的展開でユイの肩という定位置を手に入れた!これは良い!同じ目線で物事を見れるし話やすい。なにより欲しい物に常に触れているという事実が俺の所有欲を満たしてくれる!

 

さりげなくユイに体を擦り寄せると心の内からポカポカと何が満たされるのを感じる。誰かが見てきたら頬でも擦り寄せて俺のだぞアピールでもしてやるか?所有権を誇示するみたいで悪くない!……まぁ、まだそこまでは好感度が足りないだろうし慎重にいかないとだがな

 

ちなみに後から大賢者に聞いた話だが、なんでもユイと触れてポカポカあったかく感じるのはスキルによる魂の共鳴らしい。ユイは幽霊になってからスキルを常時発動中のため、体が擦り合う程に接触すると無意識で魂が共鳴してしまうんだと

 

ニヤニヤ ニマニマ

 

思わず頬がニヤけるのを感じる

 

……へ〜〜そ〜うな〜んだ〜。つまり〜、このポカポカは〜、俺のじゃなくて〜〜、ユイ〜、お前のポカポカって事か〜。へ〜〜〜

 

ンフフフウ♡これは案外脈アリか?手に入れるのもすぐかな?な〜んて思ったのだが、そう上手くはいかなかった

 

その後しばらく二人っきりで森のデートと洒落込んでいたら、まだゴブリンだった時のリグル達に出会いゴブリンの集落へ案内され牙狼族からの守護を頼まれた

 

その時に村長、後のリグルドに俺達の関係を聞かれたのだが、ここで思いもよらぬ問題が発生

 

「俺?……まぁ、あえて言うなら俺はリムルの案内人ってところかな、この世界の」

 

なんとユイの中で俺は迷子の子供扱いされていた!?さっきの泣き落とし作戦が裏目に出た結果、俺はユイのパートナーは疎か友達ですらない迷子の子供と認識されていた!

 

俺的には肩に乗せてもらえた事からどっかの電気ネズミよろしく相棒的な立ち位置にはいると思って、ここからどうやって仲を深めていこうかと思っていたのに!それ以前の問題!完全圏外!

 

ユイ的には見失ったら困るからって感じで肩に乗せてただけ!?コレハァ!!アッカァーン!!!早急にユイの俺に対する認識を上方修正しないと距離を縮める以前の問題だ!

 

完全脈ナシ!さっきのポカポカは俺とくっついて嬉しかったんじゃなくて、これなら見失わないなっていう安心感からきたものだったんかい!

 

いや確かにスライムの愛くるしさで泣き落としした俺が悪いんだけども!俺はそんなガキじゃねぇよユイ!

 

そんな訳で早急にユイの俺に対する認識を上方修正する為にとにかく俺は頑張った!

 

ゴブリン達を回復薬で治し、柵の作りを指示、そして牙狼族を倒す事で男らしさを見せつけ、ゴブリンと牙狼族をまとめ、一人でもちゃんと出来るんだぞアピールをしたが……残念な事に張り切りすぎて魔素を名付けで使い切り低位活動状態(スリープモード)

 

結果ユイの中で目の離せない子供認識を変える事は出来なかった。いや、むしろ悪化した気がする。トホホ

 

その後、ゴブリン達を使い外堀を埋める形でなんとか案内人からユイを俺の守護霊へと昇格させた

 

……まぁ、肩書きだけなら一応パートナーみたいな感じだし、今はこれで我慢しよう

 

 

 

 

…しかし、急な低位活動状態(スリープモード)に流石に堪えた

 

今まで見えていた現実が急にシャットアウトして全部夢でした、と言わんばかりの真っ暗さ。大賢者が言うには復活は三日後らしいが、正直、不安からあまり信じられなかった

 

慣れってのは恐ろしいモンだ。魔力感知を手に入れて周囲を感じられる様になった所為で俺は暗闇が怖くなってしまった

 

……だって怖いじゃないか。恐ろしいじゃないか。最初とは前提が違う。俺の世界は、もう輝く彩られたんだ……それなのに、全部嘘で、夢で、妄想で、俺の寂しさが見せた幻想かもしれなかったら、耐えられないじゃないか。あのユイへの想いも、ユイの感触も、温もりも、全部が全部、幻だったらって思うと…

 

…………怖くてたまらないじゃないか

 

そんな時、何かに包まれる、いや、抱きしめられるのを感じた

 

……ユイだ。直感的にそう感じた

 

溢れ出る負の感情が浄化され、心がポカポカと幸せな感情で満たされていくのを感じる。ずるいな〜ユイは〜……人が辛い時にこんな風にあったかさを与えられたら……

 

もう、戻れないじゃないか

 

もはや俺の心の不安は消え失せ、これ幸いと俺は三日間、このあったかさを堪能したのだった

 

 

ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜気持ちいいよ〜ユイ〜

 

 

そうして俺はユイを堪能していたのだが、ユイはそうではなかった。どうやらユイは魂から漏れ出る負の感情を感じて俺を抱きしめてくれていたらしい。それは別にいい、ユイが俺に対して何か邪な感情を抱いてる訳じゃないのは見ていれば分かるから。問題なのはユイの顔色だ

 

低位活動状態(スリープモード)が解け、俺の目に映ったユイはかなり気分が悪そうだった。今にして思えば当然である。ユイは俺から魔素を供給されているのだから、それが断ち切られれば最悪生命に関わる

 

…まぁ、ユイ曰く実体化を最小限にして魔素を効率化しているらしいから、あくまで船酔いレベルらしいが、流石に申し訳なく感じた。俺とは違い、ユイは三日間魘されていたのだから…

 

だがしかし、ユイには悪いが、俺にとってはチャンスだった!

 

普段自分から接触して来ないユイが俺を抱きしめるという事はだ!いくら俺を安心させる為とはいえ!ユイも人肌、温もりが恋しいくらいには弱っているって事だ!

 

つまり今ならユイに触れたい放題!触りたい放題!だからまたになっちまうが、俺はスライムの愛くるしさを全開にして心配してますアピールをした!

 

魂の喜怒哀楽を感じるユイに嘘はバレてしまうが、心配してるのは嘘じゃないから問題無し!

 

「だっ、大丈夫ですか?ユイさん?顔色が悪い、ですが……何か、あったんですか?……もしかして、俺の、所為、ですか?」

 

ユイの腹に正面から埋めていた顔を見上げる様に上に向け震える声で尋ねる。ここで重要なのは俺の所為か確信が無いように尋ねること。そうすると?

 

「……大丈夫だよ。お前の所為じゃない。ちょっと、な。魔s」

 

優しいユイは一旦はぐらかして俺を安心させようとする!つまり一時的にユイから俺の所為じゃないとゆう言質を取れる!

 

もちろんユイはその後すぐに顔色が悪い原因を言おうとはするが、その一瞬のチャンスを逃すほど俺はバカじゃない

 

「げ!元気を出してください!」

 

心配してる風を装ってユイの体を這い上がり肩に移動!そしてユイを元気づける為に善意100%!下心を隠してスライムボディーをユイの頬に押し付ける!もちろん!体全体で堪能!味わうように圧力をかける!そうする事で必死さが伝わるからな!

 

いただきます!(下心100%)

 

スリスリスリスリ!!!! フニフニフニフニ!!!!

 

ちょっ!やっべぇ〜!これやっべぇ!気持ちいい!チョオォ気持ちいい!柔らか〜い!凛々しい顔立ちに見えるのに頬がこんなに柔らかいなんて!あぁ〜至福〜……ここが楽園、天国かぁ〜

 

「だ、だいひょうぶだひむる。ほんなひんぱいひなくても」

 

頬が潰れたユイが何か言ってるが知るか!黙って味あわせろ!堪能させろ!まだご馳走様してねぇだろうが!

 

とまぁこんな感じでユイを堪能した後、俺は少し方針を変える事にした

 

そもそもの話、ユイの俺に対する認識を上方修正以前に、ここまでスライムの愛くるしさを使ってユイの優しさ、罪悪感、庇護欲を誘い、ユイの心につけ込んで来た以上、今更友人枠や相棒枠を狙うのはハードルが高い。ならどうするか?

 

 

ニチャァ

 

 

クヒ!クヒヒヒヒヒ!俺がユイの庇護対象になればいい!もちろんあらゆる事に手を抜く訳じゃない!心理的にって意味だ!俺が心配なら、俺を護りたいってユイが思うなら!そこにつけ込む隙がある!

 

要は、ユイが俺を手離したくない!と思うくらいまで俺に依存させればいいってだけの話だろ?

 

ユイは失うのが恐いんだから。だったら俺はユイの当たり前になればいい。そうして、俺を失いたくない!と、そうユイに思わせればいいだけの話だ

 

 

フヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!

 

 

さ〜て、どう調理しますかね?

 

まずは味付けから考えないとな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もユイと一緒に行動を共にしていく中で俺に対する好感度や信頼度、依存値依存度を稼ぐチャンスは沢山訪れた!

 

特に効果が高かったのはドワーフの国、ドワルゴンでのユイの落ち込み事件だな!

 

ドワーフの国に着いた俺達は少しだけ別行動をした。俺がカイジンの所に行く間、ユイは知り合いに会いに行った……というよりは、事実確認をしに行ったとゆう方が正しいか

 

ユイは聡い奴だ。もう気づいてたんだろうな。だってユイが死んでから、もう三百年は経ってるんだから…

 

確認した結果なんて、戻って来たユイの顔見りゃ言わずとも分かったよ!もうその顔が物語っていたからな!

 

 

あの時のユイの落ち込みようといったら!もーう可愛くてしょうがなかったねぇ!普段朗らかに笑ってる奴が笑う余裕すらなく落ち込んでるんだから!そんなのもう!可愛くてしょうがないよねぇ!

 

 

これは後にユイから聞いた話だが、ユイが幽霊になったのは生前、死の直前に、まだ死にたくない!もう少しだけ生きたい!と願ったのが原因なんだと。その結果、ユイの持つあらゆるスキルが絡み合いユイの魂は輪廻に帰らず、現世に縛られたらしい

 

死にたくない!もう少し生きたい!そのユイの願い!源の根源は誰かに自分を覚えていてほしい!忘れてほしくない!まだ一緒に居たい!てところから来てるのに!

 

現実は残酷だよ。幽霊となっても、ユイは三百年間洞窟を出られず、出られたとしても、もうユイを覚えてる人は…

 

だ〜れも居なくなっちゃったんだから

 

そりゃあ〜落ち込みますよね〜

 

……まぁ、誰がとは言わないが、完全私情で言わせてもらうなら

 

ユイを殺してくれて♡ありがとう♡

 

おかげで俺は本来見つけられる筈のなかったお宝を見つけられたよ!だって本来ならその果実は三百年以上前に腐り落ちてる筈だったんだから!

 

流石は親友!お前からのプレゼント!有り難く頂くよ!

 

んまぁ、そんな私情は心の内にしまい、そんな感情はおくびにも出さず、俺はユイに寄り添った

 

カイジン達が剣の納品に行っている間、ユイはずっと落ち込んでいたからな〜

 

だから俺はユイに寄り添い、ただ相槌を打ってやった。それだけでいいんだ。結局人っていうのは、辛い時にそばに居てくれた人が大切な存在となり、心を開くんだ

 

確かそんな心理現象だか何かがあった気がするし

 

だからこれは、依存への第一歩。ユイの心を俺無しでは満たせなくする、ね!俺がユイ無しでは満たされないんだから、そっちもそうならないと不公平だろ?だからこれは正にWinWinの関係じゃないか!

 

「……俺さ、なんとなく、分かってたんだ。体感でしかないけど、何百年も経ってるって事ぐらい。……だから、人間の知り合いは、無理だって、諦めというか、割り気りがついてたんだ。……だけど、ドワーフって、他より寿命長いじゃん?……だから、もしかしたら、て、な。……心のどっかで、期待してたんだ」

 

ベンチに座り、俺の隣でポツポツと事実を確認、飲み込むように吐き出し続けるユイ。きっと、誰かに聞いてほしい訳じゃないのだろう

 

あくまで、ユイなりの心を落ち着かせる精神療法なんだろう

 

でもさ?こんなに心が弱ってるチャンスを見逃す選択肢とか無くないか?誰だってポケ〇ンは弱らせてからGETするだろ?つまりはそういう事だ

 

「…………三百年、か。俺が死んでから、そんなに時間が経ってたんだな〜…………もう、俺を覚えるてる人は…」

 

その言葉を待っていた!

 

「いますよ」

 

「…え?」

 

さりげなくベンチに座るユイとの距離を縮める様にユイの隣に密着し物理的に距離を無くす!心理的にも目に見えて距離が縮まった方が効果が高い!実は俺はその為にわざわざ最初ベンチに座る時、あえて距離を少し離したんだ!

 

それはまるで!この距離が今の俺と貴方の距離!と伝える様に!そして今!俺達の距離はゼロになった!つまり物理的にも心理的にも俺達の距離はゼロになったって事を伝えられるって訳よ!

 

ユイの膝の上の手に俺の手を重ね!今までとは違った潤んだ瞳ではなく!真剣な瞳でユイを見上げ!真剣で!されど優しい声色で貴方を想っています!みたいな感じで伝えるんだ!今までの愛くるしさが真剣さに変わる分!より効果は高まる!

 

さぁ受け取れ!俺の言葉を!受け入れろ!俺を!

 

その心の鎖を(ほど)かせろ!

 

「俺が覚えています。ユイさん、貴方を。例え世界が、皆が貴方を忘れようと、俺が覚えています」

 

「…………リムル」

 

クヒヒッヒッヒッヒッヒ!!!さぁラストスパートだ!

 

「例え貴方の存在が過去になろうと、俺は貴方の今を知っています。貴方が生きている今、未来を知っています。だから、大丈夫ですよ。ユイさん、貴方を覚えている人は、此処に、貴方の隣に、ちゃんと居ますよ」

 

「………………そう、か………そうか……………フッ、そうだな……そうだったな」

 

ユイの口から、俺の言葉を咀嚼し、飲み込みように言葉が紡がれる

 

ユイがもう片方の手で俺の手を包み込み、感極まったかの様な目で見つめてくる

 

そんな潤んだ瞳で見つめるなよユイ〜

 

 

「ありがとう、リムル。お前と一緒に来てよかったよ」

 

 

 

 

フッフッフッ!!ハァッ!ハァッ〜ハッハッハァ〜!!

 

 

 

 

好感度上昇!信頼度UP!依存度依存値爆上がりぃ!うなぎ登りのフィーバータイムに突入だぁ!

 

確かに感じた!(ほど)けた!ユイの心の鎖が確かに(ほど)けたのを感じた!クヒッヒッヒッヒ!ダメじゃないかユイ〜そんな簡単にゆるゆるにしちゃ〜

 

どんどん(ほど)いちゃうぜぇ〜?お前の心♡お前の心に俺とゆう存在を挿入!ねじ込んでやるからな〜♡

 

そ、し、た、らん♡今度は俺という鎖で、お前を雁字搦めに溺れさせて、縛ってあげるからねぇ〜♡

 

もう逃がさないぞ♡ユイ♡

 

 

……しっかしまぁ、俺に対する度数はあらゆる方向で軒並み上がったのだが……そう全てが都合良くいかないのが世界、人生というモノ

 

 

ちょっ〜と調子に乗った俺は、今ならユイから嫉妬の感情を引き出せるかな?と思い必要以上にエルフのお姉さん達にユイの前でデレデレしてみたのだが……

 

ニコォ…男の子だもんね。みたいな目で見られてしまった!忘れていたがユイは元男でありそういうのに理解がある!つまり全く効果が無かった!

 

……スライムとはいえ、全然異性として意識されていないと分かった時は……かなり落ち込んだ

 

信頼度は稼げても、異性としての好感度は皆無。スライムは無性だから尚のこと

 

俺の前世が男だと知っているからユイは理解を示しているだけで、今の俺を男とは全く思っていないし、異性として認識もしていない

 

 

こっちはバリバリ異性として意識!認識してるっていうのに!やっぱり不公平だ!クソォ!

 

 

ホント、中々に骨が折れる相手だ

 

……前途多難である

 

味付けの前に、まずは下処理をしなくちゃならないな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺はとにかく頑張った!……のだが

 

……ユイは顔が良すぎた。ユイの顔立ちはカワイイ系ではなく、凛々しい美人系であり、元男の気質も合わさって正に姉御肌

 

佇まいが美しく、なによりカッコイイ!外見は女性なのに凄くイケメンに感じる!

 

俺の守護霊になった事からも、俺に護られるのではなく、俺を護る気満々で、なんか俺がヒロインみたいな感じになる事が多かった!

 

ていうか結構キュンキュン!俺の乙女心が刺激されてしまった!俺がユイを堕としたい筈なのに、気を抜いたら俺が堕とされてしまいそうだった!

 

シズさんがイフリートに乗っ取られて村が燃やされそうになった時なんて!

 

 

「安心しろ。お前が護りたいモンは、俺が護ってやる」

 

 

何この自信!やだぁイケメン!

 

 

「司りしは事象、因果の鎖。我をこの地に縛り願う。己が自由を対価に、望むは守護。弾くは炎、不変不朽の護りとなりて、この地に幕を下ろしたまえ」

 

「もう二度と、大切な物、護りたい物を、燃やさせはしない」

 

「リムル。お前が進み続けるのなら、お前の光に照らされ、お前の元に、多くの者が集うだろう。それはやがて、この村をより大きくし、やがて、街へと至る」

 

「であれば此処はお前が求める安住の地、その道標、可能性、始まりである」

 

「ならば俺は、案内人として、守護霊として、この地を護る義務がある!」

 

「縛れ!炎を拒絶!拡散せよ!守護結界展開(アルカーナ)!」

 

 

ユイの口から紡がれる言葉と共に村を覆うように結界が展開される。凄い事にこの結界、サラマンダーは疎か、イフリートの炎でもビクともしなかった

 

「この結界は硬ぇぞ?竜の炎を防いだ実績もあるからな………まぁそれが原因で死んだんだが

 

頼りになるぅ!せっかく作ったのに燃やされたら嫌だからな!

 

と、こんな感じでユイが頼りになり過ぎて俺の方がドキドキする事の方が多かった。ていうかアイツが俺にドキドキしてるとこ見た事ねぇ!

 

やっぱり不公平だ!

 

 

 

 

……それから……まぁ、俺の運命の人、シズさんとの別れもあった。正直に言うんなら、かなり悲しかった。知り合ってほんの僅か、付き合いなんて微塵も無いのに、何故か涙が流れた

 

…そういえば?ユイが凄く不思議そうな顔してたな?

 

なんでもユイ的には俺とシズさんの魂は血縁レベルで親和性が高く感じるらしく、普通はありえない事だとか

 

「まぁ、世界には自分に似た人が三人いるって言うし……異世界なら有り得なくは無い、のかな?」

 

ユイはなんか自分で勝手に納得していたが、そうか

 

……正に運命の人って事か。……やっぱり、こんなにアッサリお別れは、悲しいもんだ

 

 

そうして、シズさんは俺の中で眠りについた訳だが……

 

 

……フッ!しかしだ!シズさんには悪いが!この状況!存分に有効活用させてもらおう!

 

「……ユイさん」

 

「……なんだ?」

 

「………抱きしめて、もらっても、いいですか?」

 

SOW!シズさんのおかげで!俺は遂に念願の人間の体!味覚を手に入れたのだ!

 

だったら味あわなきゃ損だろ!ていうか味あわない選択肢ねぇよ!スライムボディーの時みたいに頬だけじゃなく!体全体でその触感を味あわせろ!

 

抱かせろぉ!抱かせろ抱かせろ抱かせろ!どんだけ我慢したと思ってんだぁ!?そんな色香プンプンに撒き散らしてる癖にコッチは味覚無くてずっと焦らしプレイだったんだぞ!?

 

だから早く喰わせろよ!俺に!味あわせろ!

 

涙が出てる事を利用して悲壮感を表現!顔をユイの角度から見て影が掛かるようして悲しさを訴え!最後は切実な願いのようにか細い声を出し庇護欲を煽る!完璧だ!

 

さぁ!来い!いつでも来い!てか来て!カモォォォン!

 

ギュム

 

優しく包み込む様にユイが俺を正面から抱きしめる。そして身長的に頭一個分以上ユイより小さい俺の頭はユイのお胸にダーイビーング!

 

 

キタ━━!!!あっやべぇ!これマジやべぇ〜たまんねぇ〜!傍から見ても胸はある方だし、なんなら埋められる位にはデカイ!最高!幸せです!エルフのお姉さん達とは違って体は無駄肉を削ぎ落としたように引き締まったいるのに、それでも隠しきれない柔らかさ!密着しているから幸せな気分でポカポカするし幸せのフルコースだ!柔らかさあったかさポカポカ幸せが一気に俺に襲いかかってくる!やべぇよぉ〜これ〜病みつきになっちまうよ〜もう絶対これ以外じゃ満足出来ねぇ!俺の!スライムの!捕食者の本能がそう言っている!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙〜もっと、もっと、もっともっともっと、味あわせてくれよ〜ユイ〜無理だよ〜俺〜…………もうお前以外じゃ、満足出来ないよ♡

 

 

「…大丈夫。眠っただけだ。お前の中でな」

 

「…………はい

 

ユイがなんか言ってるけど全然頭に入ってこない。

俺は今お前の胸に顔を埋めて体全体でお前を味わうので精一杯なんだよ!

 

「寂しいんなら、俺の胸くらい何時でも貸してやる。だから、遠慮すんな。泣きたい時は泣け。……お前がしてくれたように、俺も、お前が辛い時は、黙って傍にいてやる」

 

当たり前だ!遠慮なんかしねぇよ!誰がするか!

 

サワサワ サワサワ

 

背が低い事を利用してユイの服の隙間から地肌に触れ、手を回しこみ背中を擦りながら抱きしめる

 

普段ならアウトかもしれないが!今!この状況!この流れならイケる!挑戦しない者は何も得られない!

 

「………フッ、そんなに人肌が恋しかったか?」

 

ハァイ!恋しかったです!

 

勝った!やっぱりな!この流れならイケると思ったぜ!月が回って来た!

 

サワサワサワサワサワサワ!!!!

 

「フッフッフッ…流石にくすぐったいよ」

 

あ!すっげぇ!引き締まっているのに何故かモチモチサラサラヤワヤワお肌!ちょ〜う柔らか〜い!触り心地撫で心地共に最高!めっちゃ抱きしめがいがある!あ〜〜〜満たされる〜あったか〜い〜心の内から満たされる〜

 

あ〜も〜早く食べたいな〜♡俺もう触感、感触だけじゃ我慢出来ねぇよ♡……だ、け、ど!今回の狙いはお前を味わうだけじゃないんだよなぁ〜

 

言っただろ?下処理からだって?その為の準備はもう済ませてある。クヒッヒッヒッヒッヒ〜!

 

さぁ来い!今がベストタイミングだ!

 

「シズさ〜ん大丈夫ですか〜?起きたって聞いたん、だ、けど………………」

 

テントの幕を開けて固まるエレン

 

何故か固まったかって?そりゃ抱きしめ合ってる俺達を見ちまったからだよ。し、か、も!

 

「ん?………………ぁ」

 

どうやらユイも現状を理解したらい。抱きしめ合う男女(両方無性)!傍から見たらただのイチャついたカップルの微笑ましい光景にしか見えないだろうな?

 

ただ一点!俺が素っ裸という一点を除けばな!

 

この時の俺はユイから直接聞いた訳じゃないが言動で理解していた!日本からの転生者!同郷だと!正に運命の出逢い!俺が見つけた異世界で俺の為だけに生まれて来たかのような最高の果実!異世界ファンタジー!

 

ユイは現代日本からの転生者だ!なら当然!その価値観!倫理観を持ち合わせいる!そしてエレンは女性!ならその答えは!

 

「え〜とぉ〜………………」

 

エレンの目が俺とユイを往復する

 

「いやエレン!これは…!?」

 

ギュゥゥ

 

咄嗟に俺から離れようとしたユイを力強く抱きしめる

 

逃がさねぇぞ?何も違くねぇからな?

 

チョッ!?リムル!離してくれ!誤解される!

 

「…………遠慮するなって言った

 

「いや確かに言ったけどさ!?」

 

「……………………」

 

エレンが完全に固まる

 

どうだエレン?微笑ましい光景どころかバカップルにしか見えねぇだろ?存分に誤解して目に焼き付けてくれ

 

「あ、いや、その、エレン。これは違くてだな」

 

おいおいユイさん?そんなカタコトになるなよ?余計誤解されちゃうぞ?まぁ誤解じゃないけどな!どうせ誤解じゃなくなるんだから!

 

「……アハハ〜……お邪魔しました〜」

 

「誤解だエレン!」

 

外堀完了!埋めてやったぜぇ!下処理はまず!いかに適切な場所でその食材にあった場所を用意出来るかが重要なんだよ!

 

お前はもう既に俺の網にかかってんだよ!抜け出せるもんなら抜け出してみろ!絶てぇ逃がさねぇからな!

 

しゃぶり尽くすって言ったろ!

 

ユイが俺を意識していないなら意識せざるを得ない状況にしてやればいい!女性のエレンから誤解を解こうとすれば必然的にお前は俺を意識せざるを得なくなる!

 

完璧だ!下処理完了!味付けなんてシンプルイズベストで良いんだよ!凝った味付けは必要ねぇ!素材の味をそのまま活かしてこそ至高!料理人の腕が試されるってなぁ!

 

 

イーヒッヒッヒッヒ〜!!!イーヒッヒッヒッ!!!!

 

 

さぁ♡調理開始だ♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから人間の体を手に入れた俺はもうとことん外堀を埋めまくってユイを囲いこんだ!

 

増えていく仲間!発展していく街!外堀を埋めるには十分な数が居た!

 

俺を意識せざるを得ない状況にしてやるよ!世間体的に俺のパートナーにしてやればいいだけだからな!

 

手始めに皆の前で所有権を誇示!ポイントなのは明言しない事。皆から見てユイは俺の物であり、二人はそういう関係なんだな〜と思わせる

 

そうする事で、ユイは自己肯定感が低いから変な誤解を作ってしまったと申し訳なさを感じる

 

…これで良い。この申し訳なさが後々ボディーブローのように効いてくるからな

 

どうやって俺が所有権を誇示しつつ外堀を埋めたかとゆうとだ

 

まず!出歩く時は人間形態で常に手を繋ぐ!

 

「…その、手を繋いでも、いいですか?……また、別れ…誰かに置いていかれると思うと……不安で」

 

「…………それくらい別に構わねぇよ」

 

方法は簡単!遠慮しないで良いという建前を使い可愛く寂しげにお願いするだけだ!そうすりゃユイは断らない!今ならまだシズさんからのボーナスタイムも継続中だったのも要因だ!

 

ありがとうシズさん!我が運命の人!

 

しかし…常にユイの手を握れて幸せだったし周りにも俺のだアピール出来て満足だったのだが…

 

……これに関しては利益的には50;50だった

 

ちょっと寂しがり屋の子供を演じすぎてユイの中で俺の子供認識が加速しちまった!

 

外堀を代償にユイの内心評価を失った訳だ

 

塩梅が難しいな〜

 

 

次に!同じ庵に住む!

 

もはやほぼ同棲!パーソナルスペースを一緒にする事で心理的にも寂しがり屋のユイは俺から離れられなくなるし、外堀も埋められて一石二鳥!

 

「……俺は幽霊だから別に家は必要ないんだが」

 

んまぁユイは最初断わろうとしたがな。ま、だからなんだという話だが

 

「………でも、その、一人は、寂しい、です」

 

実はユイにはトラウマがあってな?幼少期に独りぼっちで何年も暮らした所為で、そういうのにトラウマがあるんだよ!しかも味覚障害に陥るくらいのな!それが寂しがり屋の原因の一つでもある

 

だからちょ〜とそのトラウマを刺激してやれば

 

「ッ!?……………そう、だな。……一人は寂しい、よな。……ごめん、悪かった。変な事言って。……リムルさえ良ければ、一緒に住んでもいいか?」

 

もちろんデストモ!ボディーブローのように効いてきただろ?今のユイに断るなんて選択肢選べる訳ねぇんだよ!

 

だってユイの中では既に俺に誤解とゆう名の迷惑をかけてるんだから!そんな中自分の不用意な発言で俺を傷つけてしまったらもう断れる訳ねぇんだよ!

 

でだ!しかもユイが俺への罪悪感からか、かなり俺の要望を受け入れやすくなった!

 

まずユイが自発的に俺に料理を振舞ってくれる様になった!良い傾向だ!どんどん鎖が解け始めてる!俺に従順になってきている!あ〜〜所有欲が満たされる〜

 

この俺の物になっていく感じ…たまんない!その過程を肌で感じるからこそ!より味わい深い!

 

あ!ちなみにユイの料理はめっちゃ俺好みだった!日本人特有の味付けっていうの?最っ高です!やっぱり俺達相性抜群だろ!?毎日味噌汁作ってください!

 

 

……まぁこの作成に関しては上手くいったのだが、唯一の不満点は……ここまでやってもユイから嫉妬の感情を引き出せなかった事だな

 

シオンとシュナが俺を奪い合っていても全然嫉妬しないし!なんなら応援してる節すらあったし!

 

 

俺が奪われても良いってのか?あぁん?あ"ぁ"ん"?

 

 

…そんなこんなで外堀を埋め、ユイの心の鎖を解き、好感度を稼いだ俺はちょっとギャンブルに出た

 

プルプル プルプル

 

庵に布団を並べ一緒に寝ている時、ワザと体を震わせ寒さをアピール!魂の感情でバレないように、大賢者にあえて熱変動無効をOFFにしてもらった!だから実際に寒かったからバレるはずが無い!

 

ギャンブルを成功させるには体を貼らなくちゃならねぇんだよ!楽して稼げるなら苦労しねぇ!

 

「………寒いのか?」

 

えぇえぇ!寒いですよ!だから包み込んでください!貴方の布団で!貴方の体で!

 

「……はい。………俺、刺されて死んだ時、寒いって感じて……それで、ちょっと……寒いのが苦手で」

 

全部ホントだよ!ホント!嘘はついてないよ!ただ普段は熱無効ってだけだから!お前の嘘発見器不良品なんだよ!判定ガバガバじゃねぇか!抜け道なんていくらでもあるわ!

 

だから早く温めて!ホントに寒いんだよ!早く!早く!お前の熱を!熱で!俺をあっためて!

 

冷やしムルになっちゃうから!

 

「……俺、体温とか無いけど、よかったら、俺の布団で一緒に寝るか?」

 

キャッタ!言質いただきました!

 

だがまだだ。落ち着けー俺。今ここでがっついたらユイに警戒される!あくまで!あくまで!寒がっていて眠れない子を演じるんだ!

 

「いいん、ですか?」

 

「人肌があるだけも、気持ち的に違うかもしれないからな。まぁ、少し寝苦しいかもしれないが…」

 

それ以上は言わせん!言質だけでいんだよ!

 

「…じゃあ、お言葉に甘えて」

 

隣のユイの布団に布団の隙間から潜り込む!だがまだ!まだだ!抱きしめたい絡み合いたいのはヤマヤマだがまだだ!

 

いきなり密着するにはもう一声欲しい!俺はとことんお前を味わい尽くしたいんだ!

 

だからあえて少し隙間を開けてまだ寒いです感をアピールするんだ!

 

プルプル プルプル プルプル プルプル

 

さぁ!もう一声プリーズ!

 

「…そんな離れなくていいよ。それじゃ人肌の意味無いだろ?」

 

「…………でも」

 

「おいで」

 

まるで飛び込んで来い!とでも言うようにユイが俺に腕を広げる

 

言質いただきました!遠慮なくいただきます!

 

「……はい

 

スリスリ クネクネ ウネウネ

 

胸に顔を埋めユイが俺の頭を撫でやすいようにする!そして俺の腕をユイの腰に回しギュ!っと抱きしめる!最後に足を絡める様にユイの股の隙間から通し足と足を密着させる!

 

完全ゼロ距離密着状態隙間ゼロ!

 

ホワワ〜あったけえ〜〜〜ユイの魂の熱が全体で伝わってくる。柔らかくてあったかくて気持ちいいぃ〜

 

…しかし不思議なもんだ。こんなに体を絡めて密着して興奮している筈なのに全然下心が湧いてこない。だって男の時だったら今俺絶対息子バッキバキだもん!なのに下心が1mmも湧いてこない。……たぶんこれはスライムだからって理由じゃなくて、ユイから伝わる熱の所為なんだろうな〜

 

肉欲的な幸せじゃなくて、精神的な幸せを重んじているからなユイは。寂しがり屋故に一緒に居られるだけで幸せってか?フッフッフッ、ある意味無性な俺達にはピッタリな幸せだ。だって…

 

……こうして抱きしめるだけで、満たされるんだから

 

 

「…あったかいです……ユイさん」

 

「あぁ……俺もあったかいよ……リムル」

 

 

ナデナデ

 

ユイが俺の頭を撫でてくる

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"〜あったかい♡

 

 

 

いい感じにユイの心に俺を刻めてキター!

 

 

 

……そういえば、頑張っている俺に嬉しいハプニングとゆうかご褒美があったな

 

確か…そう!オークロード討伐の時だ!

 

あれは中々に良いご褒美だった!神なんているか知らないがきっと頑張っている俺にご褒美をくれたんだろうな!

 

あの時の俺は随分不安に駆られていたからな〜

 

だって当然だろ?二十万の軍勢だぞ?それに街の皆の命を背負ってんだ。つまり俺が死んだら皆死ぬ……ユイも含めてな

 

だから不安にならない方が無理って話なんだ

 

そんな感じで俺が不安でいっぱいだった時

 

なんと!あのユイが!自分から俺を抱きしめてくれたのだ!普段は俺からしか抱きつかないのに!いや〜アレは嬉しかったな〜

 

いい感じに好感度が稼げてる証拠だからな〜

 

しかも!しかもだよ!?なんと後ろからだせ!?バックハグ!いきなり肩から腕を回す様に抱きしめられユイが自分の胸!破城槌を押し付けてきやがったんだ!

 

そん時の俺の内心ったら!も〜うテンヤワンヤよ!

 

フニ

 

「大丈夫だ。お前は一人じゃない。皆が居る。もちろん、俺もな?お前一人で抱え込まなくていいんだ」

 

あぁう!?チヨッ!!ユイさん!?そんないきなり胸を押し付けないでください!?…いや嘘です!全然嘘でした!全然押し付けてもらって構いません!なんならもっとグリグリ押し付けてください!やべぇ!やべぇよぉ!ユイって魂そのモノだからこの感触ってもはや生だろ!?あ〜やべぇ!俺まだ童貞だけどバックにハマる奴の気持ちが分かった気がする!確かにコレはやべぇ!包み込んでる感もあるけど何より征服欲が満たされる!コレは俺のモノだ!好きにしていいんだ感がすげぇ!絶てぇ卒業してやる!前世からの願い!卒業して後ろから喰いまくってやる!

 

うへへへぇ〜ジュルり。アレは最高のご褒美だったな〜

 

このジュラの森の守護神はヴェルドラだって言うし、ひょっとしてヴェルドラからの贈り物?

 

 

ありがとな!ヴェルドラ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからも色んな事があった

 

ドワルゴンとの国交樹立。ジュラテンペスト連邦国の誕生。……そして何故か中央都市の名がリムルに……どんな羞恥プレイだよ!

 

……あの時は珍しくユイが笑い転げてたっけな…………ホント恥ずかしい

 

その後、ミリム襲来、カリブディス退治。ユーラザニア、ブルムンドとの国交

 

 

そんなこんなしてるうちに、気づけばユイと出逢ってから二年の月日が経っていた…………しかし、俺はまだユイを食し…じゃなくて、手に入れられていなかった…

 

ユイの心の鎖はほとんど解いた……それなのに、中々心の内、最後の砦、その境界線を越えられない!

 

あらゆる度数を稼げるだけ稼いださ。だが、足りない

 

ユイは俺と出逢ってから今まで一切!己の事を語らなかった!今までのユイの話は全て!俺がユイを手に入れてから聞いた話だ!

 

ユイの名前は自称だ!本名じゃない!あくまで俺と出逢った時に安直に決めただけだ!

 

出逢った時からユイは自身の本名も!歳も!好きな物!好み!過去も!死因も!自身に関するあらゆる事を俺含め誰にも語らなかった!

 

さりげなく聞いてもはぐらかされ、深入りしようとしたら拒絶される!言葉で拒絶される訳じゃない、だがユイの顔が物語る!

 

普段朗らかに笑うユイの顔が、突然無表情、表情筋を失ったかの様に真顔になり笑みが消える。まるでこれ以上踏み込んで来るなと言わんばかりに…

 

だから気を狙った。チャンスを。獲物を狩る捕食者のごとく!

 

……そして気づいた、気づいてしまった

 

アイツは準備していやがったんだ!自分が消える準備を!俺が自分の大切にならない為に!いつでも消えられるように!

 

誰にも自分の事を語らないのは記憶に残らないため!そこに居てそこに居ない曖昧な存在として自身の記憶を定着させない為!正真正銘最後の悪あがき!

 

ユイの気持ちなんて手に取るように分かった。怖いんだ、恐がってるんだ。俺に捨てられるのを

 

ユイは俺から魔素を貰ったいる。つまり、俺が魔素供給を辞めればたちまちユイは死ぬだろう……だが、ユイが恐れているのは死ぬ事じゃない

 

言った通りだ。恐れてるんだ、俺に捨てられるのを

 

…バカバカしい。誰が捨てるかバ〜カッ!

 

アイツの自己肯定感、自尊心の低さがマイナスに働いた結果ユイの中で俺に対する好感度が上がる度に捨てられるのが恐くなったんだ

 

最初に言ったよな?ユイが一番恐れているのは喪失感だって。大切な物を失う苦しみにユイは耐えられないんだ

 

だから自分の心を守る為に消えようとしていやがったんだアイツは!

 

己を現世に縛り付ける鎖を紐解いて!俺に捨てられる前に勝手に成仏!天に帰ろうとしていやがった!

 

 

ふざけてんのか?

 

 

それに気づいた時は心底呆れて……何より怒りが湧いた

 

ふざけるなよ?今更離れられると本気で思ってんのか?俺がお前を捨てると本気で思ってんのか?

 

だとしたら…本気ですり潰すぞてめぇ?すり潰して絞り尽くすぞてめぇ?

 

ヤメだヤメ!優しく丁寧に扱ってやろうと思ったがもうヤメだ!

 

もう手段は選ばねぇ。刻んでやる。俺とゆう存在を!徹底的に!コイツの!ユイの魂に刻んでやる!

 

 

 

自分の物には名前を書かないとな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我慢の限界を越えた俺は、遂に最後の肯定、仕上げに入った。コイツを、この果実を、俺の物にする、な

 

だからド直球に核心につけ込む

 

お前が越える事を許さなかろうと関係ない!さっさと押し入る!ねじ込む!

 

「…ユイさん……何がそんなに恐いんですか?」

 

「?!…………気づいてたのか」

 

当たり前だろ?あからさま過ぎるんだよお前

 

「……ちょっと、散歩しないか?」

 

「逃げませんか?」

 

「…あぁ、逃げないよ。……向き合う、向き合うよ。リムル、お前に」

 

「本当ですか?」

 

「……不安なら、いつもみたいに手を繋いでくれないか?……正直、俺も不安なんだ」

 

……まぁ、これくらい言えば逃げないか。手も繋いで物理的にも逃げられねぇし逃がさねぇ

 

そうしてユイと手を繋ぎ俺達は始まりの洞窟、俺達が出逢った場所に来た。そしてソコには、かつて俺達が座った魔鉱石が、青白く輝いていた

 

「懐かしいだろ?この場所……リムル、俺とお前が出逢った場所だ」

 

あぁ、俺がお前を見つけた場所だ

 

「座ろうぜ?……ゆっくり話そう」

 

ユイが魔鉱石に座り、俺にも座るように促す。それはまるで、俺達が始めて逢った時の再演の様だった

 

とは言っても手を繋いでいる訳だから前回とは全然違うがな!過去の俺よ!見ているか!これが俺とお前の差だ!見ろよコレ!

 

ニギニギ ニギニギ

 

ここに来るまでの最中でこっそり恋人繋ぎに変えてやったのさ!いつものユイなら気づくだろうが、今のユイにそんな余裕は無い!よって全く問題ない!

 

ユイが話してる最中は手の感触を堪能しよう!

 

だってぶっちゃけ興味無いもん!俺にとってはただの確認作業!相槌打つだけの簡単なお仕事だからね!

 

この話は俺という存在をお前に刻み込む前準備でしかねぇんだよ!

 

「……ホントはさ、一緒に行く気はなかったんだ」

 

知ってるよんなこたぁ!だからお前の心につけ込んだんだ!

 

「…でも……どうしてかな。気がついたら、お前と一緒に、この洞窟を出ていた」

 

やっぱりスライムの愛くるしさは効果抜群だったようだな!

 

「それから色んな事があった。楽しい事、辛い事、嬉しい事、苦しい事。ホントに色んな事があった」

 

そうだな〜色々あったな〜主に好感度稼ぎ

 

「でも、お前はどんな時でも俺と一緒に居てくれた。辛い時は寄り添ってくれて……俺を独りにしないでくれた。それが、たまらなく嬉しかった」

 

どうやら十分過ぎるほど稼げたようだ

 

「……だから、同時に恐くなった」

 

やっぱりな。どうしてだと思う?ユ〜イ?それはね?

 

「いつか、捨てられるんじゃないかって。もういらないって、捨てられるんじゃないかって」

 

お前が俺に♡依存しているからだよ♡もう手遅れなんだよ♡お前は♡

 

「…たった二年なのに、この洞窟で過ごした孤独の何分の一にも満たないのに、凄く、恐くなったんだ。お前に、捨てられるのが」

 

怯えちゃってカワァイイ♡

 

「浅ましいよなぁ。お前が進んで仲間が増えるたびに、街が発展するたびに、どんどん不安になっていくんだ。もういらないって、言われるんじゃないかって」

 

そうかそうか〜♡そんなに恐かったのか〜♡

 

「違うんだ。違うんだリムル。信じてくれ、頼む。俺は、俺は、本当に、お前の幸せを願ってるんだ。お前の幸せを、僻んでる訳でも、不幸を願ってる訳でもないんだ」

 

そんな泣きそうな顔するなよ♡分かってるって♡俺はお前の事ならもうなんだって知ってるよ♡

 

だってもう絶対俺の方がお前の心の事詳しいんだから♡

 

「だから喋れなかった。皆が、お前が、俺の事を認識していくたびに、恐ろしくて喋れなかった。自分の事を」

 

……そろそろかな?

 

「だって、俺はこの時代に居ちゃいけない人間なんだ!本来なら、お前と出逢う事の無い人間なんだ!関わっちゃ駄目な人間なんだ!世界は俺を許さない!だから早く消えなきゃいけなかったんだ!……じゃないと、お前も、皆も、俺の所為で不幸に…」

 

「なりませんよ」

 

「………ぇ?」

 

涙は出ていないのに、嗚咽をこぼしたような返事が返ってくる

 

さぁ〜♡最後の盛り付けといこう♡

 

「ユイさんが恐れている様な未来は、決して訪れません」

 

「……違う、違うんだリムル。俺は…」

 

「何も違くありません」

 

畳み掛ける!

 

「捨てるだとか消えるだとか不幸だとか、そんなの、何もかもが違います」

 

「ユイさん、貴方にも幸せになる権利があるんですよ?自分だけを、除外しないでください」

 

ここから尊重ではなく、俺の意見をハッキリ伝える!

 

「そもそもユイさん?前提からして違います」

 

「俺は貴方に、生きて欲しいんです」

 

 

「……ヘ?」

 

 

フフッ、何が何だか分からないって顔していやがる

 

……しばらく、ユイは黙り込んだ。そして、オロオロと口を開く

 

「…………リムルは、俺に、生きて、欲しい、のか?」

 

「はい」

 

「…………どうして?」

 

そんなの当然

 

一緒に居たいからです(味わいたいから)。ユイさん、貴方と、同じ時間を歩みたいんです」

 

「………………」

 

放心したかの様にユイが固まる

 

「それに俺はスライムですから。寿命なんてあって無いようなモノ、無限にあります。だから、俺を独りにしないでください。……独りは、寂しいです」

 

……コレばっかりは、心の底からの本音だ

 

「……一緒に生きて、欲しい、のか?俺に?」

 

「もちろんです」

 

「…………一つだけお願いがある」

 

「なんですか?」

 

 

それはとても、か細い声だった

 

 

「…捨てないで

 

 

それがユイの、心の底からの願いなのだろう

 

 

「何でもする。何でもすから。俺の全てを、お前にあげるから。どうか、どうか……捨てないでほしい」

 

 

何でも?何でもって言ったなオメェ?

 

「捨てる訳ないじゃないですか」

 

「………………ごめん」

 

「信じられませんか?」

 

「……ごめん

 

しょうがないな〜も〜う♡

 

じゃ!メインディッシュを飾ろうか!

 

「…なら、信じさせてあげます」

 

「…………どうやって?」

 

さぁ言うぞ!言うぞ!しっかり受け止めろよ?この為に今まで下処理してきたんだ!

 

「ユイさん……貴方の名前は、ユイ。俺がそう名付けます」

 

「!?……それは」

 

魔物に対する名付けとユイに対する名付けは価値が違う

 

ユイは元人間であり名付けによる進化は起こらない。しかし、その名は、紛うことなき魂にに刻まれる

 

「貴方に、貴方が俺の物だという証を刻みます。そうすれば、信じられますよね?」

 

「…………俺が、リムルの、物」

 

あぁ♡出逢った時からな♡

 

「……捨てないで、くれるか?」

 

「捨てません。だから名前を付けるんです。無くさない為に。俺の物だと分かるように」

 

自分の所有物には名前を書く!誰だって知ってる常識だろ?

 

「受け取ってくれますか?」

 

ていうか早く受け取れ!コッチは涎我慢するので必死なんだよ!?もう垂れちゃうよ!

 

「……俺、幽霊だぞ?」

 

うん。知ってる。だから早く食べさせて

 

「こんな見た目だけど何百年も生きてんだ。年齢詐称のババアなんだぞ?」

 

うんうん。だからそんなに熟成した芳醇な香りが漂ってるんだね。知ってる、知ってるから早くして!返事は?

 

「悪霊かもしれないぞ?」

 

まぁ確かに俺からしたら甘い色香で俺を酔わせる悪霊かもな?で!んなこたぁもう分かったから!返事!へ、ん、じ!早くして!これ以上焦らさないで!

 

「……だから、俺が居たら、不幸な未来が訪れるかも…」

 

あ"ぁ!もぉう!グダグダうるっせぇ!

 

 

「そんな未来、俺が喰ってやります」

 

 

全部全部喰らってやるよ!だからまず先にお前を味あわせろ!

 

「……喰らう、か。…………リムルは、不幸な未来、厄災、祟りが……恐ろしくないのか?」

 

「俺にとって、貴方を失う以上に、恐い事はありません」

 

「…どうして、そこまで」

 

美味しそうに決まってるからに決まってんだろぉ!これで不味かったら許さねぇからなテメェ?

 

「ずっと一緒にやって来たじゃないですか。大切に想わない筈がありません。失いたいなんて、尚更……それに」

 

「それに?」

 

さぁフィナーレだ!

 

「案内してくれるって言ったじゃないですか。今更無責任に放り出すんですか?」

 

「!?」

 

俺は最初っから永続で受け取ってんだよ!お前は責任感が強いから自分の言葉は取り消せねぇだろ?

 

最後は初心に帰る。この洞窟を出た時と同じ様にお前の心につけ込む!これでこの皿は完成する!

 

さぁ笑をこらえろ!絶対に笑うなよ俺!

 

「…そうか……俺は、無責任にお前を、独りにする所だったんだな。……そうか、そうだったな。なんで忘れていたんだろう。自分がされて、一番嫌な事、恐い事は、それだってのに。……俺は、お前に、リムルに、同じ苦しみを……与える所だったんだな……ほんっと、情けない。自分が嫌に…」

 

「それ以上は駄目です」

 

「……リムル」

 

「それ以上は許しません。それは自虐です。それは何も生まない。ただ自分を傷つけるだけです。俺に、貴方が傷つく所を見せないでください。俺はそれが、何より辛い」

 

「……そうだな。ごめん、嫌な物見しちまって」

 

「だから笑いましょう。ユイさん」

 

「笑う?」

 

「はい!辛いなら笑いましょう!もちろん!俺も一緒に笑いますよ?そうすれば、いつか笑い話に出来ますよね?」

 

「……… フッ、フハハハハハハハハハ!あぁ!あぁ〜そうだな〜その通りだ。…確かに、辛い話も、そうすりゃ笑い話に出来るな」

 

 

だ、ダメだ!まだ笑うな!こらえるんだ!

 

 

「あらためて聞きます、ユイさん。どうか、俺からの贈り物、受け取ってくれますか?貴方を、俺の物にしても、いいですか?」

 

「あぁ、受け入れる。俺は、俺の名はユイ。お前のユイだ」

 

 

ドクン!

 

 

その瞬間、ユイの魂に、ユイの名が、俺の物だという証が刻まれた

 

 

 

 

フッ、フフフフッ、フフフフフッ…ハァ〜!!ハッハッハッハッハッァ〜!ハァ〜!!ハァッハァッハァッ〜!

 

 

 

 

刻んだ!刻んだ!確かに刻んだ!刻んでやった!

 

俺という存在を!ユイ自身に!ユイの魂に!直接刻み込んでやった!俺の物だとゆう証を!くっきりはっきり刻み込んでやった!

 

長かった!ほんっとうっっにぃ!長かった!苦節二年!高く見上げる事しか出来なかった果実!黄金の果実が!遂に!俺の手元に堕ちて来た!

 

俺の努力は報われた!堕ちて来た果実を堕とさず!潰さず!傷つけず!もちろん誰にも渡さず!俺の物にした!俺の名前を書いたんだ!刻んだんだ!だからコレは俺の物だ!

 

ずっと!ずぅぅっと待ったいたんだ!堕ちて来るのを!俺の元に!堕ちて来るのを!だからずっと木の下で待ち続けたんだ!チャンスを!チャンスを掴めるように!目を凝らして!チャンスが降って来ても掴めなければ無意味!

 

だから待った!待ち続けた!ほんっとじれったかった!どんだけ焦らすんだってくらい揺れているのに中々堕ちて来なかった!

 

だが!遂に!今日!堕ちて来た!そして掴んだ!もう離さん!

 

 

「出来れば、捨てないでくれるとありがたい」

 

「捨てませんし離しませんよ?絶対に」

 

「フフッ、あぁ〜、そりゃ〜願ったり叶ったりだ」

 

 

ようやく!ようやくだ!待ちに待ったこの日が遂に来た!味わえる!味わえるぞ遂に!

 

もうダメだ我慢出来ん!今すぐここで!

 

……いや〜ダメだ!落ち着け俺!大丈夫、大丈夫だ。もう手に入れたんだから。落ち着け〜俺

 

「さ、帰りましょうユイさん。俺達の庵に♡」

 

「……あぁ、帰ろう。一緒に」

 

手を繋ぎ共に歩きだす

 

フゥーー落ち着けー俺。落ち着けよー俺……ゆっくり、ゆっくりでいい。帰り道、庵に着くまでは少し時間がある。だからゆっくり、ゆっくり整理するんだ。現状を、手順を

 

まず現状だ。今は夜。そして今日は俺がユイを、この果実を手に入れた日!その夜!つ、つまり!そ、そういう事でいいんだよな?だってアイツ言ってたもんな?なんでもするって?全部くれるって?なら、ね〜

 

ずっと焦らされた訳ですからもう我慢しませんよ俺?我慢しませんからね?

 

よ〜しよしOK。次は手順だ。生モノで汚す前に拾ったとはいえ、まずは!まずは、洗わないとな?水で。しっかりと綺麗に洗ってからだ。食べるのは、味わうのは。そしたら優しく布で包んで、壊さないように丁寧にクッションの上に置いて、ゆっくり、ゆっくり解きながら食べるんだ

 

あ゙あ゙あ゙〜楽しみだな〜

 

どんな味がする事やら♡

 

 

 

 

 

という訳で!後は美味しく頂くだけ!

 

 

 

 

 

 

 

……のはずだったのに

 

 

 

 

「なぁ〜大賢者先生〜俺って無性じゃん?」

 

《是》

 

「息子復活ってどうにかならな〜い?」

 

《解、スライムに生殖機能はありません》

 

「そこをなんとか〜頼むよ〜」

 

ようやく手に入れたのに、これじゃあ生殺しだよ。ユイは幽霊でも実体化さえしていれば基本的な機能は人間と遜色ないんだからさ〜

 

《…可能性を検討します》

 

「よろしく〜」

 

せめて口だけでも味見して良いだろうか?…………ダメだな。それにはまだ準備が足りない。手に入れたとはいえ、まだユイの鎖を全て剥がせた訳じゃない

 

いや違う、剥がす事自体は出来ているんだ。だが……まだ、堕としきれてないって意味で……

 

仮に今焦って食べようとすれば、体目当てと思われて、たちまち振り出しに戻っちまう。それはダメだ。今までの苦労が無になる!なにより次からは難度が跳ね上がる!

 

ユイがもう俺から離れる事は無いだろうが、確実に、心に距離が出来てしまう

 

それだけは絶対にダメだ!耐えられない!俺が!そんなの耐えられる訳がない!たとえ一緒に居ても、心が一緒に居られないんじゃ、それは孤独となんら変わらない!

 

味わいたいのは本当だが、俺は、なによりも、アイツと一緒に居たいんだ

 

優先順位はあくまで一緒に居る事が大前提!第一!食べるのは、味わうのは二の次だ

 

……まぁ、とは言っても、味わいたくて山々なのも嘘じゃない。むしろ早くしゃぶり尽くしたい

 

だって生殺しじゃないか本当に。見上げる事しか出来なかった黄金の果実を、ようやく!やっとの思いで手に入れたのに!ここに来て物理的(俺の息子)に!精神的(ユイの心)に足止めをくらうなんて!

 

 

クッソォォォォォォォォ!!!!生殺しだァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

後にも先にも、この日ほど悔し涙を流し、自身が無性である事を呪った日はない

 

だって、もし仮に俺に性別があったら何とかなったかもしれないんだ!

 

ユイは元男としてそういうのに理解がある!だから仮に俺の性別が男だったらユイは拒否しないし拒まない!もちろん手に入れる前だったら拒まれていただろうが、俺はもうユイを手に入れた!

 

つまり仮に!もし!俺の性別が男だったら!ユイは食べられる事前提で俺の物になって!俺を受け入れてくれた筈なんだ!

 

希望的観測なんかじゃない!ユイはそういう奴だ!自分の発言、行動に責任を持ち、常に最悪の事態を考慮して動き、あらゆる選択をしている!

 

だから俺の物にした時点で性別が男ならそれはもうユイにとってOKのサインなんだ!!!!

 

分かってる!性別が男だった場合、ユイの攻略難度がより跳ね上がるって事くらい!

 

 

でも!クッッソォォォォォォォォォォ!!!!

 

 

だって!だって!それはつまり、幽霊のユイが無性の俺を受け入れた時点で、基本的にユイの中で、そういう事は考慮されていない可能性が高いって事だ!

 

だからこれから慎重に解きほぐして、無性の俺でもお前を味わいんだって事に理解を示してもらわなくてはならない

 

…………早く食べたいのにぃぃぃぃ〜

 

……はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜お預けか〜

 

………ハァ〜……気長に待ちたくはないが、致し方ない。焦りは禁物だ。ユイの鎖を解きつつ、大賢者先生の朗報を待つとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。決めたのだな」

 

「はい。……俺は、生きる事にします」

 

「一応、何故、と、聞いても良いか?」

 

「……どうやら、俺が生きる事を願ってくれる奴が居るようなので」

 

「そうか……そうであろうな」

 

「えぇ。どうやら、そのようでした」

 

「我もまた、そう願っておったのだよ?」

 

「貴方が?」

 

「もちろんだとも!」

 

「……それは……なんか複雑な気分なんですけど」

 

「しょ!しょうがないではないか!我だって言い出しづらかったのだよ!だっ、だって、我がお主を殺した手前、どの口で言えば良いか分からぬではないか!生きよなどと!」

 

「言っときますけどスゲぇ痛かったんですからね?ミンチですよミンチ?しかも貴方、あの時わざと威力強めましたよね?」

 

「ギクッ!?……クァーハハハハハハ!!いやーツイな!お主が貼った結界が思ったより硬かったかったからついムキになってしまってな!クァーハハハハハハ〜!!」

 

「…ハァ…そうですか。………ちなみに、なんで俺の故郷を燃やしたんですか?別に悪意があった訳じゃないですよね?」

 

「うむ!当然である!悪意などこれっぽっちもなかったとも!クァーハハハハハハ!!」

 

「なら、どうして?」

 

「我は究明者(シリタガリ)だからな!全ての発明発見発達発展を愛し敬っておるのだ!だからむしろ人間達が街を発展させるのは応援しておるのだ!悪意などある訳もない!」

 

「ん?応援?それが街を燃やす事とどう関係あるんですか?」

 

「いやなに、人間達が健気に頑張っておるものだから我も応援がてらいつも様子を見に行ったりしていてな?それでほんのちょっと、ちょびっとだけな?お触りしてみたりして」

 

「…お触り……あのブレスが挨拶がわりって事ですか?」

 

「あぁ!そしたらもう人間達は上も下もお祭り騒ぎよ!我大人気!クァーハハハハハハ!!」

 

「………本気で言ってます?それ?」

 

「クァーハハハハハハ!!クァーハハハハハハハハハ!!」

 

「……まぁ、もう終わった事ですし、笑って誤魔化されてあげましょう。それに……今は、これからの事を考えなければなりませんから」

 

「…………そうであるな。……お主が生きると決めた以上、もはや避けては通れぬ道であろうよ」

 

「…でしょね」

 

「本当にすまぬな。お主に生きる事を願っておきながら、それを辛い選択にしてしまった事を、我も心苦しく思っておるのだ」

 

「…本当に変わりましたね?以前の貴方なら、そんな事思わなかったでしょうに」

 

「……そうであろうな。だが、我にも出来たのだよ。大切な物、護りたい物がな。今なら、あの時のお主の言葉の意味が、気持ちが良く分かる。痛いくらいにな。……恐い物だな。大切な物を、失うという事は。我もまた、リムルを失ったらと思うと、恐くてたまらぬよ。……だが、この気持ち、感情も、悪くないと思っておるのだ」

 

「そうですか……どうやら、良い方に成長されたようで」

 

「もちろん、大切な物の中には、お主も含まれおるよ?」

 

「……だから複雑なんですって」

 

「クァーハハハハハハ〜!!そうかそうか!」

 

「…………実際、どれくらいになると思います?」

 

「…分からぬ。コレばっかりは我にも分からぬのだ。すまぬな」

 

「…いえ」

 

「だが、お主も感じるであろう?」

 

「はい。あの洞窟を出てから……いえ、リムルと関わってから、大きく揺れ始めました。俺という存在がこの時代に生きて居る事で、(ひず)みが生まれたのでしょう。であれば当然」

 

「揺り戻しが来るであろうな。それがどんな形かまでは分からぬが、それが世界の意思である」

 

「……………そう、でしょうね」

 

「……こんな言い方はアレだがな。本来であれば、お主はあの時、朽ち果てる筈だったのだよ……我の手によってな」

 

「……えぇ」

 

「お主は人間である。故に、定められた寿命、魂、因果は、本来であれば、既に輪廻に帰っておるのだ。それが理、世界の摂理である」

 

「…………」

 

「しかし、お主は今生きている。いや、生きているとすら言えぬ状態であろう。それは、お主が一番分かっている筈だ」

 

「……えぇ。引き寄せられる魂を、この地に縛り付けているだけですから」

 

「であれば当然、お主が本来存在する筈の無いこの時代を生きるだけで、(ひず)みは生まれる。他者との関わりを持てば尚の事、論外である」

 

「……そうですね」

 

「故に、本当にリムルの事を想うのであれば、関わるべきではなかった。むしろ今すぐにでも、天に帰るべきであろう。でなければ、(ひず)はより膨れ上がりお主に降り掛かる。それがどれほどの大きさとなるかなど、我にも分からぬ。最悪、お主だけでは済まぬやもしれぬ」

 

「……はい」

 

「それでも、生きると決めたのだな?」

 

「はい。どうやら、リムルは俺がいないと、寂しいみたいですから」

 

「クァーハハハハハハ〜!!そうであろうな!我もそうであるとも!故に、お主が天に帰る事など誰も望んでおらぬよ!」

 

「…らしいですね。なので、精一杯抗ってみようと思います」

 

「あぁ!存分に抗うが良いぞ!クァーハハハハハハ〜!!」

 

「……最悪、俺一人でも何とか出来るようにします。俺の所為で、誰かまで巻き込みたくありませんから」

 

「フッ、そんな心配など杞憂である」

 

「…え?」

 

「もう少しだけ待っておるがよい。時期にこの封印を解きお主達と相見えようぞ!そうすれば、お主に降り掛かる厄災など、我が振り払ってくれるわ!」

 

「……フッ、頼もしいですね」

 

「そうであろうとも!そうであろうとも!頼もしであろう?頼りにするがよい!何故なら我は天災!カタストロフ!黒き天災と恐れられし竜である!厄災など火の粉も同然!恐るるに足らんわ!」

 

「…本当に、頼もしい。まさか貴方をそう思う日が来ようとは。あの時は思いもしませんでした」

 

「そうであるな〜クァーハハハハハハ!!思い出したら愉しくなってきたぞ!あの時のお主との余興、いや戦いは本当に愉しかったからな〜!クァーハハハハハハ!!」

 

「……頼りにさせていただきますね?天災さん」

 

「フッ、天才か。如何にも!我こそが!飽くなき探究心の塊にして天才であり!この世に四体のみ存在する竜種が一体!暴風竜ヴェルド…」

 

「大手。飛車取りです」

 

「なぬ!?」

 

「これで一勝一敗ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……お預けを食らったとはいえ、ユイを手に入れた俺はある程度余裕が出来た

 

というかコレばっかりは大賢者先生の朗報を待つしかないので余裕を持つ他ないのだ。一種の現実逃避とも言える

 

…だって、今までは手に入れる事に気力を割いていたが、もはや俺はユイを手に入れてしまった!つまり気力が有り余っている!これも全ては生殺しの所為だ!

 

大賢者!マジでなる早でお願いします!

 

《………了》

 

という訳で、俺達はエレン達冒険者チームの案内のもと、旅をしながらイングラシア王国に向かす事にした

 

何故かって?そりゃあ新婚旅行のためさ(シズさんの最後の願いを叶えるためさ)

 

ん?本音と建前が逆になっている?気にすんな!どっちも本音だ!

 

でだ、シズさんの最後の願い……未練、それはシズさんと同じ異世界から召喚された子供達を救う事

 

そんな訳で俺達は子供達のいるイングラシア王国に向かったのであった

 

まず着いたのはブルムンド王国。そこで俺は冒険者登録をした、のだが…俺は冒険者の登録試験でなんやかんやあって飛び級する事になりBランク試験を受ける事になった

 

そしたら試験官が下位悪魔(レッサーデーモン)を召喚してちょっと興奮。ついでに召喚魔法の悪魔召喚も手に入れて俺は嬉しかったのだが

 

「うっっわ。悪魔だ」

 

ユイは凄く嫌そうな顔していた。なんでも昔めっちゃ強い戦闘狂(バトルジャンキー)の悪魔と戦った事があるらしく悪魔が嫌いなんだそうだ。しかもその悪魔、なんと戦いを愉しむ為にわざと自分を相手と同等レベルにするとか。マジの戦闘狂(バトルジャンキー)だな

 

…しかし、嫌い、か………実はユイには魔法の才能が無い。まぁ、だからといって別にユイが魔法を使える奴を目の敵にしている訳ではないが…

 

俺がアッサリ水氷大魔槍(アイシクルランス)を習得した時は珍しくユイが俺に羨ましそう…というか嫉妬していたからな

 

そういう嫉妬のされ方は望んじゃいねぇんだよ!嫉妬するなら俺の女性関係に嫉妬してくれ!……でもな〜ユイって元男でそういうのに理解があるかならアイツの前で誰かにデレデレしても効果が無いんだよな〜……どうすればアイツから嫉妬の感情って引き出せるんだ?

 

……ま、とにかくだ!今回の召喚魔法しかり、後々になっちまうが俺が本読んだだけ魔法を習得した事は絶対に秘密にしよう!大賢者先生のおかげとはいえ、最悪ユイが血涙、俺に対する好感度が下落するかもしれない!嫉妬で!

 

だからそういう嫉妬のされ方は望んじゃいねぇんだよ!

 

…まぁしかし、もう手に入れたから外堀埋めは必要ないとはいえ、エレン達に俺とユイの中を見せつけられて俺的には大満足だったがな!

 

あれはシズさんの仮面をしながら食事に挑戦していた時の事だ。シズさんは器用に食べていたが、…これがまぁ難しく俺は仮面をベトベトにして苦戦していた。そしたら!

 

「食べさせてやろうか?」

 

なんと俺の苦戦する様を見るに見かねユイが俗に言うあ〜んをしてくれるというのだ!いや〜最近のユイは自発的に動いてくれて嬉しいね〜

 

でも仮面してるんじゃあ〜ん出来なくないかって?馬鹿だな!ユイがあ〜んしてくれるって言ってんだぞ?外すに決まってんだろうが!

 

「ほれ。美味いか?」

「はい!美味しいです!」

 

あの時の料理はいつもの何倍も美味く感じたっけな〜

 

「俺達、何を見せられてるんだ?」

「旦那…気にしたら負けでやすよ」

「二人って本当に仲良いわよね〜」

 

…とまぁ中々に楽しい旅(新婚旅行)だった。唯一の不満は同室のエレンの寝相が死ぬほど悪かった事だな。俺がユイに抱きつこうとするたびに邪魔しやがってからに!

 

 

そんなこんなで俺達はイングラシア王国に無事到着した

 

いや〜最初は興奮したね〜。何せ色んな美味しい料理に見るからに金がかかってる建物!この世界では高級なデカイガラス!正に都会!

 

と、そんな感じで技術と文化の香りに酔った俺は案の定迷子になった。アナウンスで放送された時はほんっっとうに恥ずかしかった!

 

ユイが手を離してごめん!なんて謝ってきた時はもう本当に恥ずかしくて死にたくなった!だってユイは全然悪意が無いんだもん!本気で申し訳なくされたらめっちゃ居た堪れなくなるだろうが!……俺が悪いんだけどさ

 

この後ユイが自分から手を繋いでくれたけど……この時ばかりは全然嬉しくなかった。だってもう完全にユイの中で俺の認識が子供になっちゃったんだもん。……悲しい

 

 

そうしてイングラシアに着きエレン達と別れた後シズさんの教え子の一人、グランドマスター、ユウキ・カグラザカに会い、その後俺は教師となった。ちなみにユイは俺の補佐である

 

俺の補佐か……悪くない響だ

 

そうして教師に就任した俺達は学級崩壊しているクラスに放り込まれ……まぁ俺が望んだんだが

 

とりあえず荒れて学級崩壊を引き起こしている生徒(全員)に教育という名の指導を施し生意気な生徒達を懐柔した。ポイントは恐怖による鞭とご褒美による飴です!

 

まぁアイツらがあんなにヤケになっていたのは寿命という問題があったからなんだけどな。その寿命問題を解決すべく生徒達と向き合いなんだかんだ懐かれた訳だ。愛いやつらめ

 

そういえばクロエはヤケにユイに懐いてたな。最初はユイに恐がっていたが気がつけばやたら懐いてた。しかもお姉ちゃんって呼でんでし

 

ユイとクロエは同じ黒髪だから遠目から見たら確かに姉妹に見えなくもない。まぁ明らかに目付きが違うから近くで見たら……どうだろう?知らなければ誤魔化せるかなって感じだ

 

ユイになんでクロエにそこまで懐かれたのかと聞いたら絵本を読んだのと応援してあげたからだと言われた

 

絵本は兎も角、応援?おいユイ?お前、まさかだよな?クロエが俺の事も好いてくれてるのは知ってるが、まさかお前、教師の俺に幼女をすすめたのか?それはダメだろ!?教師として倫理的にも!世間体的にも完全OUTだろ!

 

ていうかソコは嫉妬してくよ!頼むから!…いや確かに幼女にどう嫉妬しろって話だが!マジお前どうやったら嫉妬してくれんだよ!?そんなとこまで焦らさないでくれよ!

 

ちなみに懐かれた理由の読んだ絵本はユイにもよく意味が分からなかったらしい

 

「あの絵本は擬音が多すぎてな。俺には面白さが全く理解出来なかった。でもクロエは面白がってたし……たぶん感性の違いってヤツなんだろうな」

 

……擬音が多する絵本。ちょっとだけ内容が気になったのは秘密だ

 

 

 

そんな感じで教師を続けていたある日、子供達の寿命、体内の魔力暴走を解決する糸口を見つけた

 

元々シズさんのイフリートとトレイニーさんからの確認で上位精霊を宿せば体内の膨大すぎる魔素を安定化させられる事は分かっていた

 

だがしかし上位精霊は基本的に精霊の棲家にしか居ないらしく、子供達全員分の上位精霊を見つけるのは困難。そしてトレイニーさんも今の精霊の棲家は知らないとの事で捜索は難航していたのだが

 

ある日皆でヨシダさんのスイーツを食べながらピクニックをしているとイングラシア王国にスカイドラゴンが襲来

 

いや〜スカイドラゴンには流石にビックリしたな〜。なんせフラグ回収が早すぎるんだもん

 

いやな?ちょっと教育のつもりで子供達に外に出るのは危険です。油断すると刺されたりします!って言ったら思いのほかビビっちゃってな?

 

……その後、初めてユイに怒られました。子供になんて事言いやがるんだと怒られました。……ごもっともです。すみません。だからもう怒らないでください。ユイの無表情の怒り顔……ずけぇ怖かった

 

…まぁそれでだな、子供達が不安がるもんだから、大丈夫!どんな化け物が来ても先生が倒してやる!って言ってお守り代わりにフルポーションも皆に渡していざ出発!

 

したら速攻フラグ回収!分かったよ行きゃーいんだろ?てな訳でユイに子供達を任せていざ出陣!はい!ご馳走様!

 

ついでに商人のミョルマイル君を救出

 

その後なんやかんやありミョルマイル君のレストランに招待された

 

あの店の高級ディナーは中々に美味だった。どうせならユイと二人っきりでオシャレな食事と行きたかったが…

 

「ユイ先生!これ何て料理なんだ!?」

「ケ、ケンちゃん!?机に立ったらダメだよ。ユイ先生怒ったら怖いんだから」

「こんな美味しい料理食べた事ないです!」

「お姉様お姉様!どぉう?私の作法!完璧でしょう?ちゃんと練習したんだから!」

「えっと、お姉ちゃん。フォークとナイフの持ち方って、これで合ってる?」

 

「はいはい、落ち着けお前ら。まずケンヤ、お前は机に立つな、座れ。それからリョウタ、別にそんな事で一々怒らんから安心しろ。ケンヤを注意してくれてありがとな。次にゲイル、お前は抜けがけするな。まだ全員でいただきますしてないだろうが。アリス、礼儀作法完璧で綺麗だぞ。よく頑張ったな。クロエは……それはフォークとナイフじゃなくて両方ナイフ、緊張しすぎだ。片方はフォークを持て」

 

……引率で大変そうだし無理だな。まぁ俺が頼んだんだが

 

しかしアレだな?こうして子供達を連れて食事に行くのも悪くないモノだな?なんかユイとの子供……家族が出来たみたいで悪くない。むしろ良い気分だ

 

……しかし、仮に息子問題がどうにかなっても、スライムと幽霊では決して叶わぬ夢だかな。ハァ〜……俺、前世ならもうあれ位の歳の子が居てもおかしくない年齢なのに…

 

んまぁ!そんな事は今はどうでもいいんだ!重要なのはその店で懐かしのエロフ!じゃなくてドワルゴンの夜の蝶で働いていたエルフさんに再開した事!

 

しかもラッキーな事に精霊の棲家の場所を知っているとの事で有難く教えてもらい俺達は精霊の棲家に向かった

 

そしたらゴーレムに襲われるわで、とりあえずぶっ壊した…というか燃やし尽くした。そんで魔王を自称する、いや堕落して魔王になった精霊女王ラミリスに出会い、燃やしたゴーレムの代わりに新しいゴーレムを作る事で精霊の棲家に案内してもらえる事になった。……なのだが

 

「アンタ、ユイって言ったわね?大丈夫なの?アンタ人間なんでしょ?それなのにそんな状態で……本当に大丈夫なの?」

 

「……大丈夫、では無いかもですね。偶数の産物、俺が望んだ事とはいえ、それは完全に世界の意思に反している状態です。しかも俺が死んでから三百年経ってますから。たぶん絶対怒ってますよ」

 

「三百年!?アンタ!それホントにヤバイのよさ!?そんなのもう(ひず)みが膨れ上がって跳ね返りがとんでもない事なるかもしれないのよさ!最悪世界規模で跳ね返りが来るかも!」

 

「マジっすか?」

 

「大マジよ!大マジ!」

 

「……仮に今俺が輪廻に帰ったらどうなりますかね?何とかなります?」

 

「……どうだろう?分かんない。正直ここまでの(ひず)みは見た事がないから。ただ仮にアンタが輪廻に帰っても生まれた(ひず)みまでは消えないと思うのよさ」

 

ラミリスはユイを怪訝そう、というか心配していた。なんなら俺に良くわからん忠告までしてきた

 

「アンタねぇ、あの子が今どうゆう状態か分かってんの?いや、分かってない!分かってないのよさ!あの子はねぇ!己の運命!因果に抗っているのよ!本来ならもうとっくの昔に転生を果たしていてもおかしくないないのに!こんなの世界が許さないのよさ!」

 

ラミリスが言うには魂は輪廻に帰るモノ。そしてやがて転生を果たす。まぁそれは何となく分かる。俺は少し違うのだろうが転生を果たしているし。だから魂が輪廻に帰り転生を果たすのは分かる。そういうモノなのだろう

 

だが抗う?それの何が問題なんだ?ユイは幽霊、魂ってだけで、存在としては精神生命体と同じ様なモンじゃないのか?

 

そもそも世界が許さないってなんだ?

 

「とにかく、あの子が大切なら目を離さない事ね。じゃないと……やっぱりなんでもないのよさ。とにかく!あの子から目を離さない様にね!分かった!?」

 

……この時、俺はラミリスの忠告を理解していなかった。そして、仮に理解出来ていても無意味だっただろう

 

なぜなら、俺はユイから目を離さす事は無かったが

 

ユイが伸ばしてくれた手を

 

掴めなかったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一生の不覚」

 

 

「せっかくあのお方に呼んで頂けたのに、自分の眷属に先を越されるとは」

 

 

「次こそ…次こそは必ずや」

 

 

「あなた様ならば、私を、世界の真理へと導いてくれるはず…クフフ」

 

 

「クフフフフッ」

 

 

 

 

 

『何見てんだよ?』

 

「おや?気づかれましたか」

 

『そりゃあな?お前の視線はねちっこくて気持ちわりぃんだよ』

 

「クフフフッ、相変わらず口が悪いですね。もう少し上品に喋られてはいかがですか?」

 

『なんで俺がテメェに丁寧な口調で喋らなきゃなんねぇんだよ?この戦闘狂の悪魔が』

 

「クフフフフッ、酷い言い草ですねぇ」

 

『それで?何見てんだよ?』

 

「いえ、見ていたのは貴方ではなく、貴方の隣にいる、あのお方ですよ」

 

『あのお方、ねぇ?なんでリムルを?』

 

「私はあのお方にお仕えし、配下の末席に加えて頂きたいのですよ」

 

『配下?お前は誰かに仕える玉には見えなかったがなぁ?』

 

「クフフフフッ、それは私にとって、今まで主に相応しきお方が居なかったからにすぎません。あのお方であれば、私を、世界の真理へと導いてくれるはず!まさしく、私の寿命を捧げるに相応しいお方です!」

 

『まるで根拠があるみたいな言い草だな?』

 

「もちろんです!あのお方は特異点!起点にして終点!運命の輪に至る特異点その物なんですから!」

 

『ちょっと何言ってるか分からない』

 

「ご安心を。もとより理解してもらおうなどと思っておりませんので」

 

『あっそ。しかし真理とはね……お前そういうオカルトチックなのに興味あったんだな?戦闘にしか興味ないのかと思ってたよ』

 

「違いますよ。世界の真理に興味があるからこそ、戦いは面白いのです」

 

『はい?』

 

「圧倒的な力で叩きのめすのではなく、拮抗するからこそ、新たな学びがあり、面白く、何より愉悦を感じるのです」

 

『…バトルジャンキーが』

 

「クフフフッ、その点で言えば、貴方との戦いも中々に興味深く、面白かったですがねぇ?」

 

『ほーん。俺は面白くもなんともなかったがな』

 

「そうですか。それは残念です」

 

『思っても無い事言いやがる』

 

「クフフッ。いえ、本心ですよ」

 

『…仕えるとか言ってたが、俺はてっきりその時のリベンジマッチでも要求されんのかと思ってたんだがなぁ?』

 

「最初はそのつもりでしたが、もはや私にとって貴方との因縁などどうでもいい事です。あのお方に仕える事が出来れば、晴れて私達はあのお方にお仕えする配下となるのですから……いえ、貴方は違いましたか。所有物さん」

 

『……気が合うとは思えねぇがな?』

 

「えぇ。私もそう思います。貴方と仲良くする気など微塵もございません。私はあくまで、貴方のその魂、在り方に敬意を評しているだけですから」

 

『敬意?お前が?俺に?気持ちわる!?』

 

「クフフフフッ、しかし、本当に、こうして再びお目にかかる日が来るとは、思ってもいませんでしたよ」

 

『そりゃお互い様だ。俺だって二度とお前なんか見たくなかったわ』

 

「本当に羨ましい限りです。まさか魂のみで現世にあり続けるとは。その魂の在り方、敬意と同時に、クフフフッ、実に興味深い!」

 

『ほんっと気色悪ぃ。人の魂をジロジロと』

 

「おっと?これは失礼しました」

 

『……リムルに仕えたいんだったな?ま、好きにしたらいいんじゃねぇか?』

 

「おや?てっきり嫌がられると思っていたのですがね?どうゆう気の変わりようですか?」

 

『俺はリムルの意思を尊重するんでな。戦力が増えるに越した事はねぇ。俺もお前の強さだけには敬意を評しているんでな』

 

「なるほど。お互い様という事ですか」

 

『せいぜいリムルに媚び売ったらいいじゃねぇか?配下にしくださいお願いします!ってな?』

 

「クフフッ。えぇ、もちろんそのつもりです。次こそは必ずや、配下の末席に加えて頂きますから。その為に私の力を存分にあのお方にお見せしますとも」

 

『おーう、頑張れ頑張れ』

 

「もっとも、配下となれば、私の方が格上かもしれませんがね?所有物など所詮捨てられるのがオチですから」

 

『知らねぇのか?配下はすぐ裏切るから信用されにくいんだぜ?ましてやお前は悪魔。それに胡散臭い顔してるしなぁ〜。所有物と違って配下は替えがきくんだよ』

 

「……クフフフフッ、相変わらず、煽りがお上手ですね?」

 

『何言ってんだ?紛うことなき本心に決まってんだろ?』

 

「…………捻り潰して差し上げましょうか?」

 

『できんのか?負けたくせに』

 

「やはり、あの時の雪辱、次にお会いした時、晴らさせてもらうとしましょう」

 

『やってみろ。何度でも返り討ちにしてやるよ。依り代、いや、人に寄らなば生きられない寄生虫の悪魔さん』

 

「…本当に口が悪いですね。品性の下劣さが見てとれます」

 

『覗き見してる変態に言われたくねぇ』

 

 

「……………………」

 

『……………………』

 

 

「……まぁいいでしょう。今回はここまでにいたしましょう」

 

『あ?』

 

「再開を、心待ちにしておりますよ。剣姫殿」

 

『もう剣姫じゃねぇ。今はユイだ。お前の言うあのお方から貰った名だ。間違えんな。クロ』

 

「…おや、そうでしたか。これは失礼しました」

 

『羨ましいか?確かお前は名も無い悪魔なんだっけか?クロって名乗ってんもただのもじりなんだろ?』

 

「……えぇ……本当に……羨ましい限りですよ」

 

『お〜お〜存分に嫉妬してくれ』

 

「クフフフフッ、では、またいずれ。ユイ殿」

 

『気安く呼んでんじゃねぇよ』

 

 

───ブツン

 

 

「……全く、癪に障る女だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢見心地だった

 

この世界に転生して、俺が目覚めてから、今まで、本当に夢のようだった

 

友達が出来て、欲しい物を見つけて、旅をして、仲間が増えて、運命の人に出逢って、別れて、涙を流して、戦って、街を作って、そして、長い時間をかけて、欲しい物を手に入れて、名を刻んで、運命の人の未練を果たして

 

 

……本当に、夢見心地だった

 

 

この甘い、甘い夢にいつまでも浸っていたい。酔いしれていたい

 

だが、現実はそう甘くない

 

夢とは、いつか覚めるから、尊いもの

 

この夢に酔いしれた時点で、覚める事は決まっていたんだ

 

…きっと、俺も、過程に過ぎないのだろう。俺自身の

 

いったい、何度、同じ道を歩んだのだろう?何度、同じ過ちを繰り返したのだろう?

 

どれだけの屍が、過ちが、俺の足元に埋まっているのだろうか?

 

でも、どうか信じたい。これが初めてであると

 

俺が最初に見つけたんだと。俺が最初に手に入れたんだと。どうか、今だけは信じたい

 

だって、耐えられないから。耐えられる筈がないから。こんな苦しみ。耐えられる筈がない。こんな、失う辛さ

 

もし俺が二度目なら、俺は壊れてしまう

 

いや、もしかしたら、あの果実に酔いしれたあの時から、俺は、もう、壊れていたのかもしれない

 

 

だからただ、終わりが来ただけなんだ。起きろと。もう起きる時間だと

 

夢を見る時間は……終わりだと

 

 

本当に突然だった。クロエに仮面を渡し、可愛い生徒達に別れを告げ、帰るだけだった

 

俺達の日常に。当たり前の日常に

 

あぁ、だが悲しいかな。当たり前の日常ってのは、記憶の中で色濃く輝くお宝であり、かげがえのない日常で、ひょっとした事で、アッサリと失ってしまう物

 

故に、当たり前こそが、何物にも代えがたい、取り戻したいと思う過去なのだ

 

俺は、その記憶に、ずっと縋りついている

 

……忘れるものかと

 

例え世界が終わろうとも、繰り返されようとも、書き換えられようとも

 

俺のかげがえのないお宝を、失わないように、忘れないように、魂に、今も尚、刻み込んでいるのだ

 

二度と取り戻せない過去の為に

 

だから、俺自身であろうとも、邪魔は許さない。拒む事は許さない。誰にも、決して、許さない

 

俺達の過去は、誰にも汚させない

 

 

「ゥ!?」スゥー

 

 

突然、本当に突然だった。空間転移でテンペストに帰ろうとした瞬間、ユイの体が透け始め、心臓を抑えるように疼くまり苦しみだした

 

「これは!?魔素が安定しない?!崩れていく!?これは!霊力!?」

 

俺達は魔素が浄化される聖浄化結界(ホーリーフィールド)に囚われた。魔素が活動源の魔物は存在を維持する為に弱体化を免れない。それは俺も例外ではなかった

 

では、果たしてユイはどうだろうか?存在の維持の為に弱体化、だがユイは剥き出しの魂その物を魔素で覆っているにすぎない

 

故に、弱体化かどころか、本来であれば消滅してしまうだろう。だが幸いにもユイは俺と魂の回廊を通じて魔素が供給されている。物質体(マテリアルボディー)を持たないユイは常時魔素が剥き出しのため供給と同時に浄化されてしまうが、ユイを消滅させない為には魔素を供給し続けるしかない

 

俺にもあまり余裕はないが、ユイの命には代えられない。そうやって魔素の供給量を増やしユイの安定化を図り、一時的ユイは安定した

 

「ユイさん!?大丈夫ですか!?」

 

「ハァフー、ハァフー、ハァフー、ハァフー…ハァ〜……ありがとう。大丈夫。少しだけ落ち着いた」

 

何が起こっているか分からない。何故結界に囚われたのかも分からない。だが俺は、この時、少しだけ安心、安堵してしまった。ユイが無事だという事実に、気が緩んでしまったんだ

 

「ユイさん、立てますか?」

 

俺はユイを立たせようと手を差し伸べた。そしてユイも俺の手を取ろうとした。しかし…

 

「あぁ、ありが…ィ!?」ギュウン!!!!

 

俺の手を取ろうとしたユイが突如、何かに引き寄せられる様に俺から離れた

 

 

「ユイさん!!」

 

 

焦って必死に俺から離れるユイに手を伸ばす

 

 

「リムル!!」

 

 

ユイもまた、俺に手を伸ばしてくれた。だが

 

 

 

───スカッ

 

 

 

俺はユイが伸ばしてくれた手を……掴めなかった

 

そしてその直後、俺はこの世界で最後の、ユイの顔を見た。今でもその顔を鮮明に思い出せる

 

だってその顔はあまりにも、俺には眩しすぎた

 

ユイの表情は、俺がユイの手を取れなかった事による絶望でも、悲壮感でもない。負の感情など全く感じさせない、ただただ俺を安心させようが為に作られたであろう表情

 

……とびっきりの笑顔だったよ

 

そして最後に

 

 

「───またな」スゥー

 

 

そんな言葉を残して、ユイは完全に、俺の前から姿を消した。そしてその言葉が、俺にとって

 

……最後の言葉になった

 

 

「……ユイ?」

 

 

《この時のリムルは知らぬ事だが》

 

《この世界には存在値という値が存在する》

 

《存在値とは文字通り、その者の存在を数値で表した物である》

 

《主に身体能力と保有するエネルギー量によって算出されるこの数値は、時にあらゆるスキルの効果や対象に参照される》

 

《ではユイに存在値は存在するのか?》

 

《否、ユイは既に肉体を失っており、魔素はリムルから供給された物である……よって》

 

《ユイの存在値は、限りなくゼロに等しい》

 

《今回ユイがリムルから離れた原因は正にこの存在値が原因である》

 

《先程ある者がユイに対しスキルを行使。その結果ユイはリムルから離れた、離されてしまった》

 

《多少の存在値でもあれば抵抗、あるいは抗う事も出来たかもしれないが》

 

《ユイに抗う術など…………無い》

 

 

本当に一体全体何が起こっているのか分からなかった。ユイは消滅した訳じゃない。未だ魂の回廊が繋がっている以上ユイは死んでいない。だがその時の俺には冷静に考える余裕などなく、大賢者に八つ当たり気味に問いただす事しか出来なかった

 

「おい大賢者!何が起きた!なんでユイが俺から離れた!?なんでユイが消えた!ユイは何処に行った!?」

 

《解、個体名ユイは強制簒奪を受けた模様です》

 

「強制簒奪!?」

 

一体誰がそんな事を!?いや、この結界を張った奴か!

 

《是、故に個体名ユイは個体名リムル=テンペストの魂の系譜に連なる魔物達との魂の繋がりを辿り、この場から緊急離脱を試みた模様》

 

「緊急離脱?ならユイは死んでないんだな?」

 

《是、個体名ユイとの魂の回廊は現在も繋がっております。よって死亡はしておりません》

 

「なら今ユイは何処に居る!?」

 

《解、魂の回廊から位置情報を逆算するに、テンペストに離脱したようです》

 

「…テンペスト…なら一先ずは安心か」

 

「安心とは限らないんじゃないかしら?」

 

「ッ!?」

 

後ろからの声に慌てて振り返る。するとソコには一本の剣をぶら下げゆっくりノロノロと歩いて来る女の姿があった

 

わざわざ声をかけずに不意をついて斬りかかればいいだろうに。その立ち姿から自身の実力に対する圧倒的な自信が見て取れた

 

その名をヒナタ・サカグチ

 

シズさんの教え子の一人にして西方聖協会の聖騎士(ホーリーナイト)団長であり……化け物だ

 

「しかし驚いた。まさか逃げられるとはね。まぁ当初の目的通り、君と守護霊とやらの分断はすんだのだから、特に問題は無いのだけれど」

 

逃げられた、だと?

 

「お前、俺からユイを奪おうとしたのか?」

 

「あら?さっきはさん付けで呼んでいなかったかしら?そっちが君の素なのかしら?魔物の国の盟主、リムル=テンペストさん?」

 

「いいから答えろ!お前が俺からユイを奪おうとしたのか!?どうして俺じゃなくて真っ先にユイを狙った!?安心とは限らないってどうゆう意味だ!?」

 

聞きたい事が山ほどある!

 

「質問が多いわね。まぁいいわ。どうせこれで最後だもの。冥土の土産に教えてあげる」

 

最後、ね。本当に大した自信だな

 

「まず一つ目、君の守護霊を奪おうとしたのか、だったわね?えぇ、正解よ。私のユニークスキル奪簒者(コエルモノ)でね。もっとも逃げられてしまったようだけれど。惜しかったわね、もう少しで君から奪えたのに」

 

簒奪者(コエルモノ)!?それがコイツのスキル!それでユイを奪おうとしたのか!だがおかしい!なんで真っ先にユイを狙ったんだ!?

 

コイツの自身の現れ!明らかにもう俺に勝った気でいる。実際弱体化を引き起こされた俺とコイツの実力差は明白だろう。ならユイを奪う必要なんてないはずだ!それなのになんで!?

 

「二つ目、どうして君じゃなく真っ先に守護霊を狙ったか。密告があったのよ」

 

「密告?」

 

「イングラシアの王都には様々な目があるのよね」

 

誰かが俺を売ったって事か?……いや、やっぱりおかしい!なら尚更なんでユイなんだ!?守護霊という情報は兎も角、ユイの情報何てそれ以外に…

 

「その密告者の情報によると、君の守護霊とやらは中々に面倒な存在だと分かったわ。だから真っ先に奪うか潰す、あるいは分断する事にしたの」

 

「面倒?」

 

いったい何の情報が漏れたんだ?

 

「えぇ。君の守護霊、なんでもユニークスキルを三つも持っているらしいわね?大したモノだわ。それだけの数を保有している者は中々いないもの」

 

「!?」

 

……ありえない!?

 

「そしてそれらのスキルなら、君を何倍にも強化出来る。この結界の弱体化も意味をなさない。いえ、むしろ無効化するどころか、代償を恐れなけば、この場から逃げる事も可能。本当に面倒だわ。せっかく転移を阻害したのに、それでは私がわざわざ出向いた意味が無い。これが理由よ」

 

「……誰からその情報を聞いた?」

 

「教える訳無いでしょう。もっとも、私も言伝で聞いただけだから知らないのだけれど」

 

「……そんな信憑性の欠片も無い言伝の情報を信じたってのか?」

 

「全て鵜呑みした訳じゃないわ。あらゆる状況、最悪の自体を想定しただけ。私がわざわざ出向くんだもの。無駄骨にはなりたくない。だから想定した、それだけ。まぁ、君の顔を見る限り、情報は正しかったようだけれど」

 

ありえない。ありえない事だ。ユイの情報が漏れるなんて。なのにこの感じ、いったいどこまで把握されてる!?

 

「でもそうね。聞いた情報くらいなら教えてあげる。確かユニークスキル魂霊干渉(こんれいかんしょう)閃知者(ヒラメクモノ)、そして縛鎖者(シバルモノ)。どのスキルもスキル自体に攻撃性は無いにしても、中々に面倒な代物よね」

 

 

……当たっている!?だがありえない!ユイの情報が漏れるなんてありえない事なんだ!ユイはもちろん!俺だってユイの情報を誰かに話した事はない!

 

確かにユイのユニークスキルは全部で三つ!

 

魂霊干渉(こんれいかんしょう)。魂に干渉するこのスキルには魂霊強化という技がある。強化の倍率によって反動も大きくなるが、確かにこの状況でも弱体化を打ち破って俺自身を強化出来るだろう。まぁそれで勝てるかは怪しい所だか

 

閃知者(ヒラメクモノ)。俺の大賢者と演算領域を掛け合わせれば未来予知に近い最適解を導き出せる。コイツの攻撃を捌くなんて容易だ。しかもこの状況の打開策くらい簡単に導き出せるだろう

 

縛鎖者(シバルモノ)。本命はこのスキル!コイツの言う通り代償を覚悟すればこの場から逃げる方法何ていくらでもあるスキルだ!転移が阻害されたなら俺の座標を書き換える、とかな。実際ユイが居たなら直ちにこのスキルでこの場を離脱していただろう!

 

だがなんでだ?本当になんでだ!?これらのスキルに関する情報は俺がユイと魂の回廊を繋いだ時に得たモノだ!

 

ユイだって自分のスキルについて誰かに喋っている訳がない!だってアイツは本名だって今まであかしてこなかったんだ!スキル何てもっての他!語る訳がない!自分のスキルを!

 

密告者の中に鑑定に関するスキル持ちでも居たのか?いや、それこそありえない!スキル名や保有数までは当てられても詳細まで見抜くなんてありえない!

 

ユイは魂その物だ!故に魂に関する視線には誰よりも敏感だ!そんな詳細まで鑑定するほど見られていたならユイが気づかない筈が無い!

 

ならなんだ?密告者はユイの情報を最初から持っていたとでも言うのか?それこそありえないだろ!?だってユイが死んだのは三百年前で、それからずっとあの洞窟に居たんだ!だからありえない!だって俺が知ってるユイの過去だって精々ユイが冒険者だった事くらいしか…

 

 

……冒険者?

 

 

その時、俺の頭の中であらゆる記憶のピースが流れ出した

 

〖ユイさんって冒険者に詳しいですよね?もしかして生前は冒険者だったんですか?〗

〖あぁ、これでもそれなりに名の通った冒険者だったんだぞ?二つ名もあったしな〗

 

……名の通った、有名

 

〖これって登録する時に名前だけでいいんですか?〗

〖そもそも名前自体それが本当かどうかギルドには分からないからな。…日本と違って個人情報に信憑性がある訳じゃないし、自分の情報を開示する奴の方が稀だ。と言っても俺はある程度開示してたがな〗

 

信憑性、情報の開示

 

〖どうしてですか?〗

〖ギルドにある程度自分のスキル情報を伝えて自分に合ったクエストを斡旋してもうためだ。……とある事情で金策しなくちゃいけない時があってその時にな〗

 

……スキルに関する情報

 

〖二つ名は嬉しかったな〜。文字通り己を表す!って感じでな?ちなみに二つ名の由来はこの服装からなんだぜ?なんでも俺の魂は冒険者時代の名残りが強いのか基本的にこの格好だしな〗

 

……二つ名、格好……それはつまり、当時の情報、写真や肖像画、なんでもいい。何かがあれば、ユイって分かるって事なんじゃないのか?

 

……そして冒険者の情報

 

「そして最後、何故安心とは限らないか」

 

俺の思考を他所にヒナタが喋り続ける

 

「君の守護霊、なんでも君の国に逃げたそうね?」

 

「だったらなんだってんだよ?」

 

「へぇー、本当に君の国に逃げたんだ。凄いわね。本来ならこの結界内では転移は出来ない筈なのに。どういうカラクリなのかしら?スキルを使う余裕なんて与えたつもりはないのだけれど」

 

「おい!質問の答えになってねぇぞ?」

 

「あら、そうだったわね。つまりね、もう君の国は安全な場所じゃないって事よ。というか、もう無くなってるんじゃないかな?」

 

「…………はぁ?」

 

今コイツは何て言った?

 

「君の国がね、邪魔なのよ。だから潰す事にしたの」

 

「……なんだって?」

 

既にテンペストが襲撃を受けているってのか!?

 

「…まぁ、守護霊とやらに君の国に逃げられたのは少し誤算だけれど、些細な問題だわ。仮に君のお仲間さん達を強化しようとも、私が君を殺せばそれでお終い」

 

……その通りだ。俺とユイは正に一蓮托生一心同体。俺が死ねば文字通りユイも死ぬ。魔素の供給が途切れれば……供給?いや待て!マズイ!?そもそも今のユイに誰かを強化する余裕なんて!

 

「そもそも、本当にまだ生きているのかしら?君の守護霊」

 

「!?」

 

「…生きてはいるようね。でもそれも時間の問題でしょう。君の国にもこの結界と同じ魔素を浄化する結界が展開されているの。もっとも性能はコチラの方が上だけれど、それでも君のお仲間さん達を潰すには十分だわ」

 

テンペストにも浄化結界が張られているのか!?

 

(大賢者!ユイに今魔素は供給出来ているのか!?)

 

《解、個体名ユイとの魂の回廊及び魔力回路は繋がっております。ですが今現在、体外への魔素放出と共に魔素が浄化される為、個体名ユイへの魔素供給は出来ておりません》

 

クソッ!だとしたら本気でマズイ!魂の回廊が繋がっている以上ユイはまだ生きている!だが生きているだけだ!

 

俺からの魔素供給が絶たれた以上ユイに皆を護る余裕なんてある筈がない!テンペストに避難しても俄然ピンチに変わりは無い!

 

「これで話はお終い。そろそろいいかな?」

 

鞘から剣が抜かれ俺に向けられる

 

……フゥーとにかく、今は落ちつけ。ユイはそう簡単にくたばる様な奴じゃない。予断を許さない状況ではあるだろうが、今はまだ生きている

 

なら俺がすべき事は、さっさとこの状況を切り抜けてテンペストに戻る事!それだけだ!

 

 

それから俺とヒナタの戦いが始まった。だが、ヒナタはあまりにも強すぎた

 

結界による弱体化もそうだが、何よりも精神体(スピリチュアルボディー)への直接攻撃が厄介すぎる!痛覚無効も意味を無さず!七回くらえば死に至るというクソゲー展開!

 

そして何より俺に対する圧倒的な殺意!俺が日本人だと言っても信じず、俺がシズさんを殺した魔物、仇だと信じて取り付く島もない!

 

おかしい?!あまりにも情報が漏れすぎているし、脚色されまくっている!

 

ユイの情報、そして俺の情報。これら全てを知っている奴なんてこの世界に居るのか?だとして何故こんなにまで脚色されまくっているのかが分からない!

 

今回ヒナタは仇討ちだと言ったがそれよりもまず真っ先にユイを狙った!つまり密告者!今回の黒幕の真の狙いは俺じゃない!ユイだ!

 

どうゆう事だ!?ユイが目的!?この世界にユイを邪魔に思っている奴なんて一体何処に!……邪魔?

 

その時、頭の中に散らばった記憶のピースがハマっていくような気がした

 

 

…ユイの過去…冒険者…服装…身てくれ…二つ名…情報…スキル…俺の詳細…シズさんの仇…魔物の国…日本人…

 

 

これら全てを知っている可能性のある人物

 

 

かつてのユイの言葉が頭をよぎる

 

 

〖リムル、一応忠告しておく。アイツはあまり信用しない方がいい。少なくとも今はな〗

〖俺はスキルであらゆる物の魂を感じとれる〗

〖万物には魂が宿る。それは無機物でも同じ事〗

〖…だが、アイツは魂を感じなかった。こんな事初めてだ〗

〖スキルが無いとか言ってたが、本当かどうか怪しい所だ〗

〖自覚があるか無いかは知らない〗

〖だが恐らく、スキルを無効化する何かがある〗

〖それがスキルか体質かまでは分からないが〗

〖あらゆる魂の喜怒哀楽、感情を感じ、見てきた俺だからこそ分かる〗

〖アイツは胡散臭すぎる〗

〖言葉、表情、言動、感情、全てが作り物〗

〖まるで何かを演じている……演者のようだ〗

〖お前に対して見せた怒りも何処まで本気な事やら〗

〖だから一応、な?頭の片隅にでも入れておいくれ〗

〖杞憂に越した事はないからな〗

 

 

まさか!?アイツが!?

 

 

「考え事とは随分余裕があるようね?」

 

 

自身の思考に動揺した俺の隙を見逃さずヒナタが俺に斬り掛かり無数の斬撃を浴びせる

 

「クッ!?」

 

剛力と身体強化で何とか捌いたが全ては防げなかった!

 

……あと、一回

 

《告、ユニークスキル変質者(へんしつしゃ)にて、上位精霊炎の巨人(イフリート)を純粋な精霊として分離しました。魔力回路が繋がっている為、一時的であれば強制簒奪の影響下でも解放可能です。実行しますか?》

 

大賢者の提案は本来であればありがたい。本来であればだ!

 

魔力を精霊力へと変換し力を行使する精霊であればこの浄化結界の中でも制限を受けない。脅威にはならずとも一瞬だけなら意識を逸らせる筈だ

 

ましてや炎の巨人(イフリート)はシズさんの精霊だ。意識を向けない筈がない

 

だから本来なら陽動、囮として使い意識が一瞬でも俺から逸れた隙に分身体と入れ替わりたいところなんだ!実際大賢者に言われずとも俺も最初にこの作戦は思いついた!

 

だがコレじゃダメなんだ!!

 

ヒナタは俺に既に奪簒者(コエルモノ)の内容、手の内を晒している以上この作戦じゃ囮にすならない!どうして奪われるかもしれない精霊を出したのかと返って警戒されるだけだ!

 

むしろ警戒されて完全に詰む!

 

どうすればいい?

 

正直、もう完全に詰められている

 

こんな事言いたくはないが、ユイという存在が、本来在るべき可能性を無くしてしまったかの様に感じる

 

そんな事ありえないのにな

 

だって俺がユイを見つけたんだ。俺がユイを連れ出したんだ。俺がユイを……手に入れたんだ

 

だからありえない…………はずなのに

 

 

……幻想だろうが、俺の足元に、鎖が見える

 

 

俺が(ほど)いたユイの鎖が、雁字搦めになって俺にまとわりついているようだ

 

ダメだ!思考がマイナスになってきていやがる!ポジティブに考えろ!ポジティブに!

 

そうだ!我慢しなければいいんだ!この場を切り抜けて全てを終わらせたら!ユイを食べればいい!もう我慢しない!物理的にも精神的にも喰らってやる!

 

もう二度と俺から離れないように!無くさないように!奪われないように!

 

完全に俺に堕として!(胃袋)に入れてしまえばいい!誰の手にも触れぬ所でいつでも開けて味わえる様にすればいいんだ!

 

 

食らう!喰らってやる!

 

 

……だから、今はこの本能に身を任せる!

 

 

俺の捕食者としての本能が本物なら!この詰みの状況をも覆せる筈だ!

 

 

俺はリムル!リムル=テンペスト!

 

 

スライムであり!魔物の国の盟主にして!

 

 

捕食者(クラウモノ)だ!

 

 

「死になさい!七彩(デッド)終焉(エンド)刺突撃(レインボー)!」

 

 

「目覚めろ!暴食者(グラトニー)!」

 

 

《了、命令を受託しました。速やかに実行に移ります》

 

 

この命令を下すと同時に、俺の意識は闇の中へと沈むように消えていった

 

 

眠りにつくがごとく

 

 

「驚いたわ。七撃目を受けても尚、死に抗うなんて」

 

 

だがそれでも、朧気ながら覚えている

 

 

「君は最後まで面倒な相手だわ」

 

 

その後の結末を

 

 

「知性を失った怪物……哀れね」

 

 

暴食者(グラトニー)を目覚めさせ理性を失った俺は、正に正真正銘の化け物となった

 

 

「完全に消滅させないと世界の危機になりそうね」

 

 

愛くるしさね欠片も無い……ユイには見せられないな

 

 

「精霊召喚!」

 

 

ヒナタの呼び声に応じ、数多(あまた)の精霊が顕現する

 

 

「神へ祈りを捧げ奉る。我は望み、精霊の御力(みちから)を欲する」

 

 

精霊に動きを封じられながら、紡がれる詠唱

 

 

「我が願い、聞き届け給え。万物よ尽きよ!」

 

 

俺の周囲にいくつもの魔法陣が展開され

 

 

霊子崩壊(ディスインテグレーション)!」

 

 

そして俺は、ヒナタの技により

 

 

完全に消滅した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物質体(マテリアルボディー)の消失を確認。直ちに再生を開始します》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……因果応報、ってヤツなんだろうな

 

 

 

……身勝手に世界を歪めた、罰であり、報い

 

 

 

……分かってる、分かってるんだ

 

 

 

……俺が悪いんだって。でも、だったら

 

 

 

……俺だけでいいじゃないか

 

 

 

……どうして、皆まで、連れて逝っちまうんだ

 

 

 

……ごめんな、リムル。全部俺の所為だ、全部

 

 

 

……思い出した、思い出したんだ。俺

 

 

 

……この世界の事を

 

 

 

……そもそも根本から違ったんだ

 

 

 

……俺が幽霊になったからとか

 

 

 

……この時代に居たからとかじゃなくて

 

 

 

……そもそも、俺という存在が、最初から

 

 

 

……この世界にとって

 

 

 

……異物、歪みだったんだ

 

 

 

……そりゃ〜こんだけ歪む訳だ

 

 

 

……結末が

 

 

 

……知らない。俺は知らない。こんな結末

 

 

 

……だって、俺が知ってる世界は、物語は

 

 

 

……こんな結末じゃない!

 

 

 

……リムルにとって!これは過程であって!

 

 

 

……結末じゃないんだ!

 

 

 

……だから、乗り越えられる筈だったんだ、皆

 

 

 

……それなのに、俺の所為で、皆

 

 

 

……取り返しがつかなくなってしまった

 

 

 

……せめて、可能性を残したかったのに

 

 

 

……俺は、それすらも…………出来なかった

 

 

 

……どうする、べきだったんだろうな?

 

 

 

……あのトカゲの言うように

 

 

 

……おとなしく、さっさと、あの時

 

 

 

……朽ちておけば良かったのだろうか?

 

 

 

……フッ、朽ちる、か

 

 

 

……俺がさっさと朽ちるべきなのに

 

 

 

……皆が朽ちるのを見ている事しか出来ないなんて

 

 

 

……リムル、どうしたんだよ?

 

 

 

……もう、どれだけ経ったと思ってんだよ?

 

 

 

……どうして、帰って来てくれないんだよ?

 

 

 

……死んだ訳じゃないんだろ?

 

 

 

……だって、俺とお前の魂は、まだ

 

 

 

……繋がってるじゃないか

 

 

 

……ちゃんと刻まれてるよ。俺の魂に、お前の証は

 

 

 

……それなのに、どうして、帰って来てくれないんだ?

 

 

 

……もしかして迷子になっちまったのか?

 

 

 

……俺が手を離しちまったから

 

 

 

……それとも、拗ねてんのか?

 

 

 

……お前を置いて、俺だけ帰っちまったから

 

 

 

……ごめん。ごめんって。謝るから、何でもするから

 

 

 

……どうか、帰って来てくれよ。お願いだから

 

 

 

……魂にヒビが入る。もう、ダメだ。砕けちまう

 

 

 

……あぁ〜寒いな〜寒い、寒いよ

 

 

 

……ホントだな。リムル。お前の言った通りだ

 

 

 

……死ぬ瞬間って、寒いんだな

 

 

 

……今まで、何度も経験している筈なのに

 

 

 

……どうして今更、寒く感じるのか

 

 

 

……それはきっと

 

 

 

……これで本当に終わりだからなんだろうな

 

 

 

……俺の魂は、輪廻に帰らず、砕けちり

 

 

 

……塵となるだけだから

 

 

 

……もう、次は、無い

 

 

 

……ハハハ、時間でも巻き戻せたら、別なんだろうが

 

 

 

……そんなご都合主義、ある訳ねぇよな

 

 

 

……ごめん、リムル

 

 

 

……さすがに、ながすぎるよ

 

 

 

……もう、会えない

 

 

 

……魂が砕けていくのが分かる。もう時期終わりだ

 

 

 

……恨めしいな

 

 

 

……もう終わりだってのに、会えないのに

 

 

 

……涙の一滴も、こぼれないなんて

 

 

 

……幽霊だから、当然だかな

 

 

 

……涙も熱も、幽霊には、ありゃしない

 

 

 

……でも

 

 

 

……出来る事なら、お前を、もう一度だけ

 

 

 

……抱きしめたかった

 

 

 

……お前のあったかさを、熱を

 

 

 

……もう一度だけ、感じたかった

 

 

 

……ごめん

 

 

 

……俺、やっぱり、悪霊だったみたいだよ

 

 

 

……お前の国に、世界に、物語に

 

 

 

……災いを呼んじまった

 

 

 

……俺にはもう、分からない

 

 

 

……この世界が、物語が、お前が

 

 

 

……どんな結末を辿るのか、分からない

 

 

 

……無責任な考えかもしれないけど

 

 

 

……ひょっとして、お前なら、どうにかなるのか?

 

 

 

……この結末も、過程にして、幸せな未来を

 

 

 

……掴めるのか?リムル、お前なら?

 

 

 

……願うだけなら、自由だよな?

 

 

 

……どうか、願わくば

 

 

 

……我が持ち主

 

 

 

……リムル=テンペストに

 

 

 

……幸せな未来が

 

 

 

……訪れんことを

 

 

 

……さよならだ。リムル

 

 

 

……ごめんな?どうやら関係なかったよ

 

 

 

……捨てないでとか言っておきながら

 

 

 

……()

 

 

 

……もう

 

 

 

……壊れちまったよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《因果律と呼ばれる物がある》

 

《定められし因果、在るべき形、その基軸。それが因果律と呼ばれる物である》

 

《この因果律は定められし一本の線であり通常歪む事は無い》

 

《だが、世界には無限の可能性が存在する。人はそれをもしもの世界、平行世界、またはIFと呼ぶ》

 

《あらゆる世界には原点が存在する。IFとはその世界を基軸とし、可能性の数だけ枝分かれる》

 

《ではこの世界の原点とは何処を指すのか?》

 

《それは、とある者の無限の繰り返しの果てに辿り着く世界である》

 

《仮に世界、因果が歪もうとも》

 

《因果は収束し、本来在るべき形に戻る》

 

《結果論ではあるが、リムルがここで死ぬ事は無い。それは原点と呼ばれる世界が証明している》

 

《しかしそれは先程も言った様に、とある者の無限に等しい繰り返しの果ての結果である》

 

《つまり、定められし因果を覆す事は、それだけ困難な事なのだ。それが死ならば尚の事》

 

《因果律、そして時間軸。これらは共に世界が生まれし時から一本の線である》

 

《過去があるから未来が存在し、未来があるから過去が存在する》

 

《すなわちこれからリムルが死ぬ事も定められし因果であり、いずれ来たる未来で因果を覆し生きる事もまた、定められし因果……要するに過程である》

 

《世界が生まれた時から、結末は決まっている》

 

《さて、ここで一つ問題がある。全ての因果は原点を基軸に収束、在るべき形に戻るが、果たしてこの世界線に原点があるのだろうか?》

 

《否である》

 

《ユイという存在はこの世界にとってイレギュラーであり、原点など存在しない。あえて言うならばこの世界線こそが原点である》

 

《そもそもの話、本来であればリムルとユイは出逢う事は無かった。この世界の基軸であるリムルとイレギュラーを関わらせる事など世界は許さない》

 

《世界の基軸、因果の中心とイレギュラーが関わればどれほど因果が歪むかなど世界にも想像がつかない為である》

 

《そのためユイの魂はこの世界でリムルとは出逢う事がない時代、寿命を受け、この世界に転生を果たした。それが世界が彼女の魂とこの世界に与える影響から導き出した答え……意思である》

 

《故に、本来であればユイはリムルと出逢う事はなく、死した後、輪廻に帰り、この世界の因果に取り込まれる筈であった》

 

《しかし、ここで更なるイレギュラーが発生。世界の意思の想定を超える形でユイは魂のみで現世に留まってしまった》

 

《ユイは精神生命体ではない。人間である。故に定められた寿命は人間と同等。つまり本来であれば、もう死んでいなければならない存在である》

 

《イレギュラーにイレギュラーが重なり、ユイは、存在するだけで世界を歪める存在となってしまった》

 

《されど、ユイがあの洞窟を出なければ、その歪みは然程問題は無い微々たるモノであっただろう……だが》

 

《世界には分かってしまった。リムルは必ず、ユイを……あの果実を見つけてしまうと》

 

《世界は頭を悩ませた。それは一重に自身の想定の甘さ、浅はかさ、愚かさに。そして作ってしまった、魂の完成度に》

 

《リムルはユイを見つけたのではない。引き寄せられたのだ。捕食者の本能を刺激され、誘蛾灯に引き寄せられるがごとく、その果実、魂の色香に》

 

《しかも厄介な事にこの果実から漏れ出る色香はリムルしか刺激しないのだ。やはり世界は自身の浅はかさを悔むしかなかった》

 

《自身が作った魂の完成度にケチはつけられないからである》

 

《魂の完成度、色香とは何か?何故ユイからそんなモノが漏れ出ているのか?そして何故リムルしか刺激されないのか?》

 

《ここで異世界人の話をしよう。異世界人は主に例外を除き三種類に分けられる》

 

《召喚者、転移者、転生者》

 

《召喚者は異世界召喚された者であり、世界を渡る際、肉体を世界に合った形に再構築され、その時莫大なエネルギーを取り込み力に変える》

 

《転移者は自身で世界を越えた者であり、元からこの世界に対して肉体、魂の親和性、適合率が高い者がほとんどである》

 

《リムルとユイは共に転生者。しかし、この二人には明確な違いがある》

 

《リムルは魂のみで世界を越えた存在。転移者同様この世界に対する魂の親和性、適合率、そして何より強度が高かかった。当然である。なぜならリムルは因果の中心なのだから。低い訳が無い》

 

《対してユイの魂、その親和性、適合率、強度は高くなかった。いや、むしろ低かった。故に本来であれば世界を越える事はなかっただろう》

 

《しかしユイは転生の際、世界を越える際、魂の再構築が行われている。ユイは召喚者と違い肉体ではなく魂に行われたのだ》

 

《そして世界は再構築の際、魂を死後因果に取り込みやすいよう、最も因果に最適な魂になるよう再構築を実行してしまった》

 

《肉体ではないく魂に》

 

《そして転生後ユイは肉体を失い、魂が剥き出しの状態となった。すなわち幽霊》

 

《もはや言わずとも分かる答え》

 

《因果……因果の中心であるリムル。そしてその因果に取り込みやすいよう最適な魂となったユイ》

 

《世界は不覚にも、自らの手で、リムルにとって、最上級の一品、一皿を作り上げてしまったのである》

 

《そんな果実(ユイ)皮がむけ(肉体を失い)()りが剥き出しになれば、捕食者が見逃す筈が無い。なぜならかのスライムは》

 

捕食者(クラウモノ)なのだから》

 

《世界は頭を悩ませた。このままでは因果が膨れ上がり、その跳ね返りはもはや想像がつかなくなってしまうと》

 

《世界にとって一番最悪なのはこの世界が原点となってしまう事である。なぜならこの世界には未来が無いのだから》

 

《仮にこの世界が原点となってしまえば、結末の因果はリムルの死で確定してしまう》

 

《例えこれからある者が世界を何度繰り返そうとも、リムルの死は覆せなくなってしまう》

 

《それはもはや過程の死ではなく、結末の死となってしまうからである》

 

《少し先の未来でユイは言った。この世界、この物語、リムルには、HappyENDが訪れると》

 

《その通りである。世界は一本の線であり、リムルが生まれた時から結末は決まっている……もっとも》

 

《その結末、HappyENDに、ユイの存在は……含まれてはいないが》

 

《しかしもし、この世界が原点となってしまえば、そのHappyENDすら訪れない》

 

《世界は永遠に、死という終わりなき結末を、繰り返し続けてしまうだろう》

 

《故に世界は、この世界を過程と割り切る事にした》

 

《苦渋の決断である。自身の行いが招いた結果とはいえ、本来ユイがいなければ、この世界は原点へと進めたというのに》

 

《だからこそ過程と割り切り、修正が必要なのである》

 

《そのため世界は、リムルが果実を見つけた時点で……この世界を、過程と定めたのだ》

 

《世界の想像通り、リムルはユイをあの洞窟から連れ出し、手に入れる為に行動した》

 

《その結果世界は捻じ曲がり因果は歪み、本来在るべき形とはかけ離れてしまった。収束し元に戻る以前の問題である》

 

《しかし過程と定めた以上、なんら問題は無い。そして幸いにも世界にはこの歪んだ因果を修正するための打開策があった。この世界を過程と割り切ったのもそれが原因である》

 

《ユイの色香はリムルしか刺激しないと言ったが、正確にはもう一人、いや、二人り存在する。もっともリムルよりは格段にその効果は弱まるのだか》

 

《居るではないか。リムルを因果の中心にした……ある者が、ある者達が。その者達もまた、ユイの香りに刺激される一人である》

 

《その者の一人は世界の思惑通りユイを慕い、姉と呼んだ。もう一人はただ引き寄せられ、リムルからユイを奪おうとした……わざわざ奪う必要など無いのに…》

 

《存在を維持するだけで精一杯のユイであれば、隙をつき、容易く葬れたであろうに》

 

《魂が無意識に、欲しいと思ってしまったのである》

 

《やがてある者は再びユイに引き寄せられ、ある者は再び姉と慕った》

 

《そして後に、黒き竜と、黒の剣姫と呼ばれた冒険者の戦いに関わり、その結末を変えてしまった》

 

《いや?世界にとっては、変えてくれた、と言うべきであろうか?》

 

《ある者が結末を変えてくれたおかげで、因果の歪みは前回とは違い、微々たるモノとなったのだから》

 

《この程度の歪みなら、世界は時期に原点へと戻るだろう》

 

《世界はほくそ笑んだ。自身の甘さが原因とはいえ、修正は済んだのだから》

 

《世界の思惑通り、ある者がユイを姉と慕った結果》

 

《世界にとって都合のいい未来を作ってくれたのだが》

 

《それはまた別の話である》

 

《つまり、この世界は最初から過程であり、世界にとってリムルの死は然程重要ではない。重要なのはあくまで、ある者達との接点》

 

《故に世界はユイがある者達との接点を持った時点で、この世界の観測を辞めた》

 

《だからこそ付け入る隙がある》

 

《魂に七度の死突を受けようとも、肉体を失おうとも》

 

《リムルの死は確定しない》

 

《なぜならば、この世界に原点などないのだから》

 

《この一度きりのチャンスに限り、リムルは定められし因果を歩むのではなく、己が因果を歩む事が許された》

 

《……世界の終幕への、ほんの短い時間ではあるが》

 

《もはや因果律など関係ない》

 

《世界に見放されし世界の因果は収束せず、在るべき形には戻らない》

 

《故にこの世界の因果は捻れに捻れ》

 

《歪みきる》

 

《だが、何も問題は無い》

 

《なぜなら全て消え、書き換わるのだから》

 

《本来、在るべき形へと》

 

《しかし、それでもなお》

 

《この世界を忘れぬ者が居たのならば》

 

《…………あるいは》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───誰かが言った

 

 

 

 

 

───出逢った時から

 

 

 

 

 

───別れのカウントダウンは始まっているのだと

 

 

 

 

 

───俺はあの時、ユイの手を掴めなかった

 

 

 

 

 

───掴めていれば、何かが変わったのだろうか?

 

 

 

 

 

───結果として、あれが最後だった

 

 

 

 

 

───当然だ。俺はヒナタに負けたのだから

 

 

 

 

 

───だが、俺は死ななかった

 

 

 

 

 

───それはこの世へ未練か、執念か

 

 

 

 

 

───俺は目覚めた

 

 

 

 

 

───しかし、全ては遅すぎた

 

 

 

 

 

───なぜなら、俺が手に入れた果実は

 

 

 

 

 

───俺が食す前に、喰らう前に、味わう前に

 

 

 

 

 

───とっくのとう、とっくの昔に

 

 

 

 

 

───腐り果ててしまったのだから

 

 

 

 

 

───あまりにも遅すぎたんだ

 

 

 

 

 

───だって、俺がヒナタに負けてから

 

 

 

 

 

───目覚めるまでに

 

 

 

 

 

───()()()もの時が、経過していたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それからずっと、俺は悪夢に魘されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───未だ幕は閉じず、下ろされず

 

 

 

 

 

───しかし、その火蓋は切られた

 

 

 

 

 

───芳醇な果実は腐り果て、塵となり

 

 

 

 

 

───悪いスライムは目覚めた

 

 

 

 

 

───酔いから覚めた、夢から覚めた

 

 

 

 

 

───その瞳に映る景色、光景には

 

 

 

 

 

───どんな闇が広がっているのだろうか?

 

 

 

 

 

───物語は加速する

 

 

 

 

 

───世界という名の、物語

 

 

 

 

 

───その終幕へ

 

 

 

 

 

───しかし、黙って幕が閉じるのを眺めるほど

 

 

 

 

 

───悪いスライムは甘くない

 

 

 

 

 

───閉じるのならば、こじ開ける

 

 

 

 

 

───ただそれだけである

 

 

 

 

 

───こうして、終幕へと向かいながらも

 

 

 

 

 

───目覚めし悪いスライムの産声と共に

 

 

 

 

 

───暗黒の幕は開かれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──終演 暗黒の世界線 開幕──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





TSオリ主転生者(芳醇な果実(スライムには))
初回playの世界線では性癖が歪んでいないし、魂も100%なため幼児退行しておらず基本的にまともな大人。
スライム曰く魂から芳醇な色香が放たれており、無自覚にスライムを魅力、歪めてしまった。
結果いつの間にか心の鎖を解きほぐされ、喰われる寸前だった。(((;°▽°))アッブネェ!

食べられる前に腐り果てて良かったね!

ちなみに2周目の芳醇な果実はスライムと出会う前に燃やされてほぼ塵カス同然なので香りとか無いよ!
それ以前の問題!ただの飴細工で中身スカスカのハリボテだから!( ´∀`)ハハハ



悪いスライム
色香にあてられ酔っ払い歪んだ。拗らせたとかではなく最初からバリバリの打算有りきで好感度を稼いでいたし、なんなら自分に依存させようとしていた。依存に関しては、もう少し!後もう一押しで!て感じだったかな〜。そうすれば完全に堕ちましたよ。
努力の末、果実を手に入れる事は出来たが味わう事は出来ず、なんなら腐らせてしまった。

次は保存方法を考えないとね!

あ!どうでもいいかもだけどユイから嫉妬の感情を引き出すのは依存や堕とすよりも格段に難度が高いよ!
男への理解もそうだけど何よりユイの根幹は捨てないで欲しいという願望なので。自分に自身が無いから、捨てないでください!なんて口が裂けても言えないし。捨てられたらそこまで、とすら思っているよ!
というかリムルがユイを自分の物にした時点で所有物に発言権なんて無いとすら思っているのでね。
だからどれだけリムルが女を囲おうと嫉妬なんてしないし、なんなら応援する。そもそも自分が女として求められてる自覚ないので……どんまいリムル




実は前回の世界線は関係性が真逆だったんだよねぇ〜

悪いスライムは出逢った瞬間から食べる気堕とす気満々だったからね〜

全然無害なスライムじゃなかったよ。あの粘体生物

酔っ払ってる所為でユイの前では幼く演じて内心はめちゃくちゃ邪悪だったし

ま!酔いはいつか覚めるモノなんですけどね!





食休み外伝をご覧の皆様!



舞台の幕はまだ閉じておりません!



これより少し腹ごなしの小休止を挟みます!



是非最後までご覧になっていってください



そして見届けてください



この世界の終幕を



それでは!またいずれお会いしましょう!ヾ(*´∀`*)ノ




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