転生したらかませ犬らしい件   作:友達の友達

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決勝戦 後編

 光の速度で放たれたセレナの蹴りはギルダーツの横腹を捉え、闘技場の壁に激突させた。

 

 蹴られた箇所を抑えながらこちらを睨み返してくる。

 

「---っ くそ、やりやがったな!!」

 

「まずは蹴りの分、返したぞ」

 

 今のセレナは、肉体を透視するほどの極度の集中力により『透き通る世界』に入っている。

前世で読んだ、【鬼滅の刃】の剣士が使用する、奥義のような技だが、本来ならば、順当に鍛錬を積んだとしても、会得にもう10年以上はかかるはずだった。

 

 しかし故郷で行った極限状態での魔力操作の研鑽が、偶然にもセレナを『透き通る世界』へ導いた。

 これにより、殺気、闘気、雑念、魔力にいたる一切の気配の遮断と、周囲の速度が遅れて見えるほどの動体視力、相手の筋肉、魔力の動きを目視し、より高度な先読みを可能にする。

 

 だが今回、セレナが『透き通る世界』使用した理由はこれらのためではない。

 

 肉体を、制御が難しい竜の魔力そのものに置換する超絶技巧。特に、光は質量を持たないため、一歩間違えれば、置換した魔力が四散し、二度と戻れなくなる。

 仮にセレナが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ではなく、純粋な光魔法の使い手であったなら、容易に行えていただろう。

 だからこそ『透き通る世界』の過剰なまでの集中力でなければ、肉体を光という流動体に変換するという荒業を、実戦の場で使用することは叶わない。

 

(ぶっつけ本番だけど上手くいったな…やってみた感じ、一直線にしか動けないのと、まだ急な方向転換ができないな。それより…)

 

 再び光となって接近し、いつも通り宙を足場に拳の連打を放つ。気配も予備動作もなく放たれる拳を、ギルダーツは勘と経験則でなんとか防御に徹しているが、壁を背に状態なので逃げ場がなく、所々ガード仕損じた拳をくらう。

 先読みにより動きの出だしを完全に塞ぎ、一発一発が鈍い音を立ててギルダーツを消耗させていく。

 

(野郎、軽いジャブの癖に重すぎる。どういうトリックだ……!!)

 

(解せないといった顔だな。まあ、分かったところでどうにもならんが)

 

 種としては、打撃の瞬間に闇の魔力の性質変化による引力を重ね合わせることにより、ただの打撃をクロスカウンター並みに威力を引き上げている。

 ぶっちゃけると『蒼パンチ』

 適当に打っても威力を逃がさないしムダに破壊を撒き散らさないから便利な技だ。

 

「さっきの腹パンの分だ、"常闇竜の闇拳(こくけん)〟」

 

 ギルダーツの腕をかち上げ、腹に拳を叩き込む。ギルダーツは痛みを噛み殺し地面にクラッシュを放ち潜ることで窮地から脱する。地中を掘り進めてフィールドの中心に戻ろうとしている。

 

「逃がさねえよっと」

 

 セレナは震脚を叩きつけフィールドを揺らしギルダーツを叩き出そうととするが…

 

「うおォォォォォォ!!!!」

 

 直前で地中を破壊しながら飛び出した。その間にもセレナはこれ見よがしに人差し指に光を溜めるが、それに気を取られたギルダーツは頭上からの帯電する刺客に一瞬だが気づくのが遅れた。

 

「もういっちょ沈めや"雷鳴竜の天轟降雷(てんごうこうらい)〟」

 

 フィールドを覆うほどの轟雷にギルダーツは貫かれ、地に落とされる。

 空気が悲鳴を上げるほどの轟音に鼓膜が震えるが、それも束の間、雷の柱が砕け散り闘技場に残響が響き渡る。

 

 どうにか雷を破壊できたようだが、数秒雷をくらってダメージを受けている。腹をかばい片膝ついて血を吐きながら息を切らしている。

 

 感電して身動きが取れないところを、溜めておいたレーザーを三発、両肩、残りの軸足を打ち抜いた。

 

 一通り痛めつけると‶透き通る世界〟から脱しデフォルトな状態へ戻る。

 

 これでもまだ倒れないとはな…タフだな。

 

「防御に魔力を使いすぎたようだな。さすがに限界だろ……一応聞くが諦めるつもりは?」

 

「ハァ、ハァ、あるわけねえだろ!いっておくが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士はここからが熱いんだぜ!!」

 

 だろうな。これまで積み上げてきたキャリアと魔導士としてのプライドが許すはずがない。

 

 ギルダーツは血を拭い立ち上がり、不敵な笑みを浮かべる。感情の高まりと共に底を尽きかけていた魔力があふれ出しているのが分かる。

 ……なんだか俺が悪役みたいな展開になってきたな。

 

 ギルダーツは右腕を引き絞り、全魔力を集中させる。

 

「これがオレが放つ最後の一撃だ!受けれるものなら受けてみやがれ!!」

 

 挑発か。避けるのは簡単だが、せっかくの決勝戦最後の大技だ。乗せられてやるよ。

 

 ちょうどギルダーツの顔の高さまで浮くと、岩窟竜の魔力を右手に込め、更に圧縮する。右手から白い膜のようなエネルギーが出現する。

 本来使う予定はなかったが、全てを破壊する魔法には、世界を滅ぼす力が相応しいだろう

 

「受けてたとう。俺からも最強の男(・・・・)の一撃を見せてやる」

 

「いくぞ!!」

 

 互いに猛スピードで接近し、拳を振りぬく。

 

「‟破邪顕正・絶天„!!」

 

 互いの拳が交差するその瞬間、俺は右腕を引き戻し、左手を突き出してギルダーツの拳をつかむ。互いの技をぶつけたいのは山々だが、威力が拡散しこの闘技場は愚か、街を丸ごと焦土に変えてしまうことは目に見えているので、一発ずつ殴り合うようにさせることにした。

 

 技を受けた左手から膨大な破壊の魔力が流れ込み、全身が大爆発を引き起こし、業火の火柱に呑まれる。今度こそ本気で魔力防御を行うが、気を抜けば一瞬で全細胞が蒸発しかねない。

 

 

 

 ギルダーツは技を受けたセレナに驚きはしたが、同時に手ごたえを感じたため勝利を確信したが炎が収まる次の瞬間、驚愕の光景を目にする。

 

「いてぇじゃねえか……オイ」

 

「マジか!?」

 

 炎が収まり現れたのは、無傷のセレナ。ギルダーツの拳を握ったまま技を受けきったのだ。そして再び腕を振りかざし攻撃に入る。

 

「岩の滅竜奥義」

 

 ギルダーツは咄嗟に身を引こうとするが、セレナに万力の力で拳を握られその場に釘付けとなり、逃げられないと悟るとクラッシュを放とうとするが、握られた拳を体ごと引き寄せられ、顔面に拳が叩き込まれる。

 

 

「‟崩界〟」

 

 

 地面に殴り倒した瞬間、右手に込められた魔力が弾け飛び、『バキリ』と文字通りに世界に罅が入る。そこから発生する衝撃波がギルダーツごと闘技場を貫き、グラグラと揺らし蜘蛛の巣状の亀裂が観客席ギリギリまで侵食した。

 

 この一撃を受けギルダーツ白目を剝いて意識をとばし力尽いた。

 見た感じ全身の骨は震動で砕けてはいるが頭蓋は辛うじて守り切ったようだ。体の防御は最低限に、頭部に魔力を集中させたていたな。今の一撃を喰らって生きているとは、ホントに人間か?とはいえこのままでは目を覚ましたとしても元には戻らんだろう。今回は殺し合いではなく決闘なのだ。これほどの使い手を潰してしまうのはもったいない。

 

 未だ顔面に突き刺さっている拳から魔力を流し込み、罅の入った頭蓋と、粉砕した骨、ぐちゃぐちゃになった臓器を後遺症が残らないように、魔力を流して直しておいた。

 

 うん、他人の治癒は問題なく行えたけど、かなり魔力を喰う上、治癒効率は自己治癒の半分以下だ。俺の魔力量なら問題ないが、今の治療で魔力が半分を切った。さすがに馬鹿正直に技を喰らうのはまずかったな。特に衣類を守るために大量の魔力を消費した。

 

 ギルダーツの顔から拳を離し顔を上げると観客たちが今までにないほどに湧き立っている。

 どうやら試合終了のゴングは既に鳴らされていたようだ。

 

 となるともうここに用はないな。

 

 魔闘演舞、賞金目的で参加したが、なかなか楽しかった。

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