月は無慈悲な夜の女王 ―― TV版25話からの初期プロット√のエヴァンゲリオン   作:◆QgkJwfXtqk

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"Hope" is the thing with feathers —
That perches in the soul —
And sings the tune without the words —
And never stops — at all —

And sweetest — in the Gale — is heard —5
And sore must be the storm —
That could abash the little Bird
That kept so many warm —

I've heard it in the chillest land —
And on the strangest Sea —10
Yet, never, in Extremity,
It asked a crumb — of Me.

Emily Elizabeth Dickinson (1830-1886)
 






EPISODE 26
   Act.A-1 「希望は羽を纏っている」


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 コンフォート17は葛城ミサト邸のリビング。

 宵闇に沈んだ部屋にあってただ1つの光源となるTV画面には、人類の希望と宣伝されている地球圏航宙船フロイデ(Raumfahrzeuge der zweiten Generation Freude)が死海の特設建造ドックから蒼穹の空に浮かび上がる姿が映されていた。

 人類初の惑星間(星系航行)宇宙船であるフロイデは、双頭の竜 ―― 或いは生物的と言える外観をしている。

 これはエヴァンゲリオンと同様の、使徒由来の生体技術によって生み出されたが故の事であった。

 

「ミサトもアレに呼ばれてご苦労な事よね」

 

 ソファに寝そべり、毛布に包まれている惣流アスカ・ラングレーが全く労わる色の無い声で呟いた。

 独り言ではない。

 合いの手を、同じ毛布に包まっている碇シンジが入れるからだ。

 此方も、余り同情する色の無い声で答えた。

 さもありなん。

 この任務に出るまでの間、家に帰って来てはシンジとアスカの関係性を根掘り葉掘りに聞いて、あるいは揶揄って来たのだ。

 感情と言うか気持ちと言うべき、そんな実に繊細(ナイーブ)な問題に保護者(責任者)ゆえの部分もあるとは言え、それでも好奇心(ニヤニヤ顔)を隠さない形で踏み込んできたのだ。

 それはもう感情的反発が生まれるのも当然であった。

 潜熱としての感情的反発がある故、今の葛城ミサトが大変な仕事をしているとは言え、同情の余地が消えてしまうのも当然の話であった。

 

「地球の反対側、そして月。1月は帰って来れないって言ったし」

 

 フロイデの速度は現時点で0.008光秒に達すると推定されている。

 その最大速度であれば3秒と掛からずに月まで到達が可能であるのだが、如何せん試験も何も出来て居ないし、そもそも地球軌道上には人工衛星が多数浮遊しているのだ。

 そんな場所で最大速度を出せる筈も無かった。

 故に、補助エンジンとしての化学ロケット推進システム、そしてA.Tフィールド非依存型の主推進システムとして熱核ロケットが搭載されており、今回はこれらによって月を目指す事とされている。

 A.Tフィールド推進システムは、姿勢制御を兼ねた補助システムとしての使用される予定となっていた。

 結果、フロイデは月までは3日の旅程と見られていた。

 にもかかわらず、葛城ミサトが1月の不在となるのは月に向かう前に1週間程、衛星軌道上でフロイデの船体調査、不具合確認その他を実施し、又、期間後も各種の運用情報を纏める必要性があるからであった。

 今回、葛城ミサトはフロイデの運航アドバイザーとして乗船している為、様々な面倒を担うのである。

 

「その方が羽を伸ばせるってモンよ」

 

「....羽、そう言えばあの羽、余り格好良くは見えないよね」

 

「アタシが頑張ったってのに、残念だわ」

 

 フロイデの両舷から胸鰭の様に伸びるソレは、A.Tフィールドを利用した推進翼と説明されていた。

 エヴァンゲリオン弐号機で試験されていた装備である。

 A.Tフィールドを通す事で形状を変えられる可変構造体(モーフィング・マテリアル)で作られている。

 エヴァンゲリオン弐号機で実験していた時には発現した時には純白の、天使の翼を思わせる様な優雅な曲線で構築された形であった。

 だが、フロイデのソレは似ても似つかぬ直線主体の形である。

 フロイデの本体の形には似合っても居るが、単独で見た時に()()と言う評価は妥当であった。

 

「仕方が無いよ」

 

「そうね、形にしたのはアタシじゃないし」

 

 シンジとアスカ、それにエヴァンゲリオン弐号機はこのフロイデに乗り、人類補完計画に関る事は無かった。

 NERVのエヴァンゲリオンパイロット(戦闘要員)である為、待機となっていたのだ。

 尤も、エヴァンゲリオン弐号機は技術試験の結果を基にした近代化改装作業の真っただ中であり、エヴァンゲリオン初号機は碇ゲンドウの管理下から帰ってきていない。

 待機、暇であった。

 その時間を有効活用し、2人は勉強と体力づくりに精を出し、或いはハイキングや海に行くなどの青春を満喫していた。 

 そして今。

 だからこそ、夜の帳の下でシンジとアスカは()()()()()()をしていると言えた。

 

「もう少し寄りなさいよ、寒いじゃない」

 

「足まで包もうとすると、この毛布は小さいんだよ」

 

「小さいのは駄目?」

 

 アスカの手がシンジの背中に回り、引き寄せた。

 その蒼い瞳が、垂れがちに歪む。

 実に楽しそうな表情。

 肌と肌が更に密着し、シンジの胸に遮るモノの無い柔らかな感触が触れる。

 一頃のあばら骨が浮き出た様な姿から女性としての、年齢相応の柔らかさを取り戻しつつある体は実に魅惑的であった。

 その柔らかさに誘われ、シンジもまた、自分の手をアスカの細い腰に回す。

 おずおず、では無い。

 しっかりと力を込めている。

 込めないと、アスカが悲しい目をすると知っているからだ。

 大事だと、宝物を手の中に支えようとしていると伝える為の力があった。

 とは言えシンジも思春期。

 顔が赤らむのは仕方のない事であったが。

 

「だっ、駄目じゃないよ」

 

 どもるシンジ。

 それを嬉しくも笑うアスカ。

 

「ばーか」

 

 甘い声。

 アスカは胸の中のシンジの頭、その髪に顔を寄せていた。

 

 そんな毛布の中の2人は、共に裸であった。

 とは言え性的な(匂い)は無い。

 廃退敵的な遊びではないからだ。

 背徳的な遊び、であるのだ。

 それは、寒いという言葉に表れていた。

 そう、エアコンを17度設定の強 ―― パワフル出力で回し、室温計が14度を指す程に部屋を冷やしている。

 その上で、風呂上りに暖かい毛布に裸で包まっているのだ。

 部屋の外は夜でもまだ酷暑と言えるのにかかわらず、である。

 

 実に背徳的(手酷いエネルギーの浪費)であった。

 来月の葛城ミサトに届く請求書、そして銀行口座から引かれる金額は通常の倍になりそうな勢いであった。

 とは言え相手は葛城ミサトである。

 請求書は見ないし、銀行口座/財布の中身は忙しさにかまけて見ていないのだから見つかる危険は無かった。

 実に、実に背徳的(悪ガキ2人)であった。

 

 尚、廃退的(1線を超えない)理由は、まだアスカの体の回復が十分では無いからであった。

 アスカとしてはwelcome(何時でもバッチコイ)!であったし、シンジとしても()

 

「馬鹿って言うなよ。Ich bin nicht dumm(馬鹿じゃ無いよ)

 

 覚えたドイツ語で反論するシンジに、アスカは優しく笑った。

 

Ausgezeichnete Leistung!(大変結構) 先生が良かったからかしら?」

 

Der Lehrer war gut(先生のお陰です)。でも寒いなら、もう少し大きな毛布を買おうかな、って思って」

 

「それは悪く無いわね」

 

 アスカの甘く、湿度のある吐息がシンジの耳朶を擽る。

 その煽りがシンジの(獣性)を刺激した。

 キスをする。

 それは深い深いキスであった。

 

 

 

 

 

 少しだけ、時間が流れる。

 フロイデが月衛星軌道上に到達した日。

 その日、碇ゲンドウの姿はNERV地下最深部(ターミナルドグマ)に設けられた秘匿ゲージ ―― エヴァンゲリオン初号機の傍らに在った。

 居るのは碇ゲンドウだけでは無い。

 腹心の冬月コウゾウ、そして様々な機器を増設した特殊なプラグスーツを着込んだ綾波レイが居た。

 

「開門の儀式が始まったな」

 

 自らの手、左の掌を見る碇ゲンドウ。

 移植されたADAMが薄く発光し、その目がギョロリと動く。

 碇ゲンドウと視線が合う。

 

「予定通りか」

 

「ああ。レイ、問題は無いな?」

 

『はい』

 

 エヴァンゲリオン初号機に乗って居た綾波レイが答える。

 既に起動状態にあった。

 その中にあって様々な配線によってインテリアと一体化した様な特殊なプラグスーツを着た綾波レイは呆っとした、或いは意識の消えた顔をしていた。

 特殊な、新造されたインテリアから伸びる管が鎖骨周辺に繋がっており、常に何かの半透明な液体を投与していた。

 

「行くか?」

 

「後は頼む。冬月先生」

 

「………ユイ君によろしくな」

 

「ああ」

 

 碇ゲンドウがアンビリカルブリッジから虚空へと足を進める。

 ふわりと、浮かび上がった。

 

 

 

 NERV本部施設内に警報が鳴り響く。

 それは聞きなれた警報であり、同時に、最早聞く筈の無い警報であった。

 第二発令所は蜂の巣をつついたような騒ぎとなる。

 MAGIのセンサー群が、使徒を発見したのだ。

 

「ぱっ、パターン青!?」

 

 青葉シゲルの吠える様な報告に、葛城ミサト不在の今、第二発令所 ―― 戦術作戦部を預かっている日向マコトが目を剥いた。

 

「誤報じゃないのかっ!?」

 

 それは、誤報であって欲しいという願いであった。

 だが願いを伊吹マヤが粉砕する。

 

「ネガティブ! マギの全機能は正常に機能しています!!」

 

「バカなっ!?」

 

 余りの非常事態に思考停止に陥ってしまった日向マコトに代わって、青葉シゲルがこの場のスタッフに聞こえる様に声を上げる。

 それは発生場所であった。

 MAGIの管理するセンサーが使徒を発見した場所の確認である。

 

「嘘!?」

 

「どこだ」

 

「ターミナルドグマ、本部施設最深部っ!!」

 

 青葉シゲルの報告 ―― 絶叫に誰かが反応するよりも先に、光りが第二発令所を埋め尽くした。

 爆発。

 

 

 

 その時、シンジとアスカの2人はNERV本部はジオフロントに於いてピクニックを愉しんでいた。

 便宜上としてNERV(ジオフロント)湖などとも言われるジオフロント大空間の滲出水池は、NERVスタッフのレクリエーション空間として整備されている場所があったのだ。

 ジオフロントが安全上(セキュリティ)の意味で完全な密閉空間であるが故の事だ。

 

 青い海パンを着たシンジ。

 赤白の横ストライプのビキニを着たアスカ。

 水着を着て、湖畔にシートを敷いて、ドリンクと軽食、それに気分としてのパラソルを立てていた。

 勉強と体力づくり漬けの日々の息抜きとして実にリラックスしていた。

 

 だからこそ直視する事になったのだ。

 ジオフロントの中央部から吹き上がったピンク色の光りの柱を。

 柱がジオフロントの天井部をぶち抜くのを。

 落ちて来るビル ―― 一般的ビルや偽装武装ビルの破片。

 煙を曳いて落ちて来るソレ等はスローモーションにも見えるが、それは余りにも危険であった。

 爆発の衝撃波は、目に見えるほどにクッキリとしていた。

 恐ろしい速度でシンジとアスカの所に迫ってくる。

 呆然と固まっている暇は無かった。

 

「シンジ、耐ショック!!」

 

 戦闘訓練を重ねていたアスカが先に叫ぶ。

 だが、シンジもエヴァンゲリオン適格者(チルドレン)に選ばれて以降は、それなり以上の訓練を受けていたのだから動ける。

 何かを言うよりも動いた。

 

「アスカっ!!」

 

 アスカに抱き着き、覆いかぶさった。

 アスカも、シンジと離れ離れにならない様にしっかりと抱き着く。

 

 衝撃波の到達。

 吹き抜けていく。

 転がる2人。

 擦り傷だらけになるが、だが奇跡的にも大きな怪我を負う事は無かった。

 

「ナニよコレっ!?」

 

 しっかりとシンジの頭を胸に抱きしめながら喚くアスカ。

 シンジは頬に感じるアスカの胸の柔らかさに意識を持っていかれつつも、爆心地となる光りの柱を見ていた。

 ピンク色の光の柱が、2つに割れた。

 それから更に分かれていく。

 5対10の柱となった。

 開いていく柱。

 その根元からゆっくりと黒い人型が浮かび上がってくる。

 ソレをシンジが見誤る筈は無かった。

 

「初号機!?」

 

 エヴァンゲリオン初号機だ。

 

 

―― ぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおん!!! ――

 

 

 風が、エヴァンゲリオン初号機を軸に渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 




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 ※コメント(a la carte)
 開き直りまして、最終回は1時間スペシャルエディション! と言うノリで行く事にします(お
 4part制なのです
 きっと
 めいびー
 誰だ公式進行管理!
 20話超えたらシリーズを纏める方向でやろうず!!
 ライブ感覚()
 駄目、絶対(シロメ




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