家庭教師ヒットマンREBORN 破天荒な雷野郎が来る! 作:ダレ狐
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プロローグ ――夜明けの前に
空がまだ蒼さを帯びた闇に沈んでいる時間帯――夜明け前。
イタリアの片田舎、町外れの小高い丘に三つの人影が立っていた。
一人は、くしゃくしゃの黒髪に鋭い目をした青年。
彼の名はトール。雷の属性を持つ少年にして、かつてボンゴレ自警団の創設に関わった一人。
向かい合うのは、真っ直ぐな瞳を持つ二人の青年――
ジョットとG。
後のボンゴレ初代のボスにして、トールにとっては弟のような存在だ。
「行くのか、トール?」
ジョットが静かに尋ねた。
「あぁ、俺は組織ってやつが苦手でな。ここから先は風来坊として生きる。家督は、弟の方が似合ってるさ」
トールは口の端を吊り上げるが、その眼差しには寂しさが滲んでいた。
「お前を失うのは、戦力を失うに等しい」
Gが呟くように言う。
「……ガキの頃じゃねぇんだ。お前たちは“ボンゴレファミリー”だろ?」
そう言って、トールは背を向けた。その背中には紺地に雷の紋章が描かれた旗――
かつて、自警団として共に戦った証が翻る。
「あばよ、兄弟たち」
風が吹いた。旗が空に舞い、陽が山影から差し始める。
それが、彼らの最後の別れとなった。
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数年前――まだトールが自警団にいた頃。
「……俺は物心ついた頃から、この額に雷がバチバチと燃えるのを知っていた。
けど、それが“死ぬ気の炎”って呼ばれるものだなんて、知ったのはもっと後のことだった」
名家に生まれた少年――トールは、教養や礼儀作法よりも、街をぶらつき、自由に過ごす日々を好んでいた。
退屈だった。与えられた環境も、期待も、決まりきった未来も。
そんなある日、彼は街の広場で数人のチンピラに絡まれていた二人の少年を見かける。
赤髪と金髪の少年――Gとジョット。彼らは自らの額から炎を灯し、敵に立ち向かっていた。
だが、未熟な炎はすぐに消え、二人は倒れ込んでしまう。
「やれやれ、見てられねぇな」
トールは額に手を当て、自らの“雷の炎”を解放し、チンピラたちを撃退した。
「すっげぇ……炎、俺たちと……同じだ……」
「名前……教えてくれよ、兄ちゃん!」
その日から、三人は自然と惹かれ合い、互いを認め合いながら“仲間”になった。
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時は流れ――
かつての仲間たちと共に設立した自警団は、瞬く間に規模を拡大し、“ボンゴレファミリー”の礎となっていく。
そして、初代ボンゴレとその守護者たちの絆も強くなっていった。
だが――トールは組織が大きくなるにつれて、何かが失われていくように感じていた。
自由。信念。子どもたちの未来。
そんな折、トールはD・スペードの持つ“異様な気配”に気づく。
危険な思想、力への執着。そのままでは、ファミリーが歪んでいくことを確信した。
ある夜、彼は当時の“雲の守護者”と密かに語り合い、決断を告げる。
「アラウディ……俺は、自警団を抜ける」
その言葉は、彼の人生を変える転機となった。
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そして現在――
トールはある街にたどり着く。そこは戦火で家族を失った孤児たちや、難民が集う地。
だが、そこもまたゴロツキに支配されていた。
――再び、雷が轟いた。
「ここは……俺たちの居場所だ。いつか、あいつらが自由を手にしたときに――ここで笑えるように」
それからトールの姿を見た者は誰もいない。
しかし――時は流れる。
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数百年後――
日本、成田空港。
静かな夕暮れ。到着ゲートを抜けた一人の少年が、大きく背伸びをする。
「ここが親方の故郷、日本か〜。楽しみだな。沢田綱吉……早く会ってみたいぜ」
少年の額に、かすかに揺れる雷の炎が灯った――。
第1話:破天荒な奴が来る?