都市セイリス。どこかにあるかもしれないそんな都市の日常。

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少女の日記

1日目

昨々年セイリスに婿入りした兄の、セイリスのおうちに滞在することになりました。先程食べた食堂の食事はみんな同じものを食べていて、何も言ってないのにお椀に注がれたスープ?煮物?は兄の分よりも、義姉の分よりも少し少なめでした。最初は小食にでも見えたのかと思ったけれど、食べ終わると不思議とおなか一杯にかんじます。その流れで蒸気風呂なる熱い霧のお風呂?となったことには少し焦りましたが。夕方だったからか少し混雑してたのか、浴室の人が多めで少し恥ずかしかったです。風呂上りには屋上で少し涼んで、兄が飲みの席から上がってくるまで、義姉と色採りというボードゲームで時間つぶし。話す言葉は少なかったけれど、義姉と少しだけ仲良くなれた気がしました。

 

(翌朝の追記)昨日の食堂でのごはんがまだ残っているようなきがしていました。いつもあの食事だと少し太ってしまわないか心配になります。

 

 

 

2日目

兄夫婦といっしょに観光をさせてもらいました。思っていた「観光」ではなく、住宅街や工房街のようなところでのお買い物に付き合っただけのような気もしたけれど…義姉が観光だと言っていたからそうなのかも?

 

最初は食堂。昨日も食堂だったけどコスパ悪くないのだろうか?あと、昨日の食事が残ってる気がしてて、あまり匙がすすまなかった。それと兄は自炊できてたよね?なぜ自炊しない。面倒くさがりか。

 

セイリスの人は聞いていた通り言葉少なめでわかりにくいと言ったら、兄が「そうでもないよ。見てたら分かる」と言っていたのがひどく印象に残ってます。兄が少し遠いところに行ってしまった気がして//////////(塗りつぶし)

 

途中に寄ってくれた星纏紡績の布屋さん。聞いていた通り大きな布から小さな布まで本当に布しか置いてない!それも説明も「霧に溶ける(霧でもあまり気にならない)」「気御(キゴ?)になじむ(蒸気に煽られても傷みにくい)」「風が走っても避ける(風に強い(これはなんとなくわかった))」とか、比喩が多くて兄の解説無しだとわからなかったかもしれない。義姉は「まぁそんなものかしら」とあいまいな相槌を打ってるし、もうちょっと詳しい解説が欲しい。困惑してた顔がかわいらしかったと義姉が微笑んだのは無表情に見える義姉の表情筋に勝ったのか、それとも笑われただけなのか判断に迷う…

 

大きな布を義姉がプレゼントしてくれたので勝ったということにしよう。

 

ちなみにごはんは昨日とはちがう区画の食堂だった。すこし優しめとのことだったけど正直違いが判らない…兄も慣れればわかると言っていたけれど、2日目の私にそんな期待はしないでほしい。

 

それにしても、霧が多いと聞いていたけれど、やはり洗濯物が乾いている気配がない…かびないかちょっと心配である。

 

 

 

3日目

トランクに入れてた服もなんだか湿気っている気がする。仕方ないので着たら義姉に「外の布は汗っかきだね」と、服を脱がされた。暖房の上ですこし「あたたまって」もらうらしい。汗っかきなのに温めるのはこれいかに?代わりに昨日贈ってもらった布と、あと義姉の物であろう淡い黄色っぽい色の布を巻いてもらい、私も初布服に挑戦した(挑戦するつもりはなかった)。手際よくぐるぐる巻かれる私と小さく鼻歌を歌いながら巻いている義姉。まわりから見たらどう映ったのだろうか。滑稽な光景だったに違いない。

 

できあがったのは義姉とおなじような形になった布の服。巻いてるだけなのに意外と頑丈で崩れにくいことに少しびっくり。でも毎日これを作るのは少し大変そう。私の化粧の時間よりはかからないけど…

 

そのあとはお買い物のお手伝い。兄は私がぐるぐる回ってる間に仕事に行ったらしい。声をかけてほしかった。家の中で兄を待ってた私を義姉が不思議そうな顔で見つめてきてたので少し恥ずかしかった。兄のばかやろう。

 

義姉との食堂での食事が終わった後、隣の席でで食べていたおばさんに「外の人?珍しいね布服。布もちょっと気を張ってるね」と言われた。義姉に翻訳を頼んでも、「うーん、気を張ってる…ちょっと固いきがするってことかなぁ?」と要領を得ないし曖昧だった。どうなってるんだ!説明を要求する!

 

そのあとは少し外を歩き回ってお買い物。バッグとか何も持ってないなぁと思ったら、布服の一枚を脱いで、袋にしながら荷物を詰めてた。あとお財布どこから出したの。マジックかな?夕食は「昨日のとこでいいみたいね」と昨日の食堂。昨日よりちょっと味が薄い?気がしたけど、誤差かも。味の濃いのしか食べてないもんね。あと、化粧はこの町では向きません。崩れます。やばかった。

 

 

 

4日目

今日は義姉も兄も仕事らしい。布服を巻いてくれて、「今日は風も元気だから」という言葉と一緒に薄い布を渡された。たぶん寒かったら被れということだろう。いくら4日目で義妹とはいえ、ほとんど他人に家のカギを渡すのは良いのだろうか…?義姉には危機意識を持ってほしい。きつそう(訂正線)きりっとしている様に見えて意外とのほほんとしていることが分かってきた。

 

食堂での食事の後は、家にいてもやることがない(本当に。家に娯楽用品がない。ゲームでも持ってきておいた方がよかったかもしれない)ので外を散策していると濡れた石畳で足を滑らせた。3日間は兄夫婦と行動してて歩きが遅いなぁと思ってたけれど。なるほど。なるほど。でも近所の子供たちにクスクス笑われたのは非常に遺憾である。君たちだってこうやって滑ったことがあるでしょうって言ったら「姉ちゃんは地面の顔色読めてないなぁ」と馬鹿にされた。さらに遺憾である。

 

そこからはじまったセイリス初心者コースなるものは、やはり私の思う「観光」ではなく、子供たちの遊び場紹介だった。手に石炭を持った子供が家の壁に落書きを始めたときはさすがに止めたが、「自分ちだからいいんだ」と逆に怒られてしまった。たしかによく見たら地面にも壁にもいろんな絵が描いてある。子供たちに手を引かれてたどり着いた先には大きい白い空間で、向こう側の大通りまで続いていた。なんでか聞いたら真ん中にてんてんと置かれてる石の台座?に波線三つが描かれていて、「風が気御とおいかけっこするから」とのこと。ようは風が強いということだろうか(翻訳の自信がない)道の脇の方にはカラフルな絵画で地面が彩られていて、中央は白い床のまま。ちょっと幻想的に見えてしまった。参道と言われたら納得してしまうかもしれない。ちなみに「風が跳ねるからまんなかは寝かす」とのこと。たぶん風が強いから中央は書かないということだと思う。ジェスチャーもそうだった気がする。というよりも真ん中に立ってたわたしが風に煽られて転んだのでそうに違いない。

 

帰って気が付いたが義姉に借りた布服が裂けていたらしい。ごめんなさい。

 

帰ってきた途端に義姉にびっくりした顔をされ「怪我なかった?」と聞かれたときには何事かと思った。そんなに虚弱に見えているのであろうか。あわてんぼうである。

 

布服に関しては返したときに気づいて、裂け目の裏に他のいろんな布を合わせながらああでもないこうでもないとやってる義姉はすこし可愛らしかった。あ、反省してます。ごめんなさい。

 

でも何よりも、裂けてるところを縫わないんだ…ってなる。針とか糸とか、目の前の棚に置いてますよね?

 

今日は初日に行った食堂でごはん。「今日はこっちだろうから」とは何を見て判断したのか…

 

私を太らせるつもりだろうか?それにしても今日は疲れた。(翌日の追記)寝る前にするりと布を羽織らせて来るのはやめてほしい。心臓が爆発しそうだった。寒かろうという気づかいだとはなんとなくわかったが、いたずら成功みたいな顔でくすくす笑う義姉の顔はしばらく忘れない。絶対。

 

 

 

5日目

今日も二人は仕事とのこと。今日はどこに行こう。と布服を巻かれ私は街に旅に出る。

 

とかっこつけても仕方ないので、食堂もそこそこに、せっかくなので観光ガイドに載っていた第一工場区に行くとする。義姉に観光ガイドを見せておすすめを聞いたら出てきた。地図を引っ張り出して「ここの工房だったら中見せてくれるよ。たぶん」とちょっと困った顔で言われたのでとりあえず従おう。やっぱり私の思う観光じゃない気がするけど、義姉の雰囲気を見ると、まぁそんなもんかもしれない。

 

トラムから降りてまず思ったのが、足元がくすぐったい。ずっと規則的に地面が身震いしてるみたいに感じる。ガイドで見たけど、端の見えない道路の先まで、この下に超巨大空洞があるなんてちょっと信じられないかも。

 

おすすめしてくれた工房は機織工房だった。工房長さんに義姉の紹介というとちょっとびっくりした顔で中に通してもらえた。小さめの工房に見えたが、中は意外と広く、地面の下から回転棒があがってきてて、それがいくつかの機織機とベルトでつながっていた。今日まで布物ばかりだったから、このベルト、実は布ではないかと少し疑って見てしまった。皮でした。

 

ちなみに、この回転棒、力の大元は結構離れた大通り沿いにある「星纏第一工場」らしい。この地域全体に回転棒の力を分けてるそう。「足軸」とか「呼吸」とか「アオい回転?」とかよくわかんない言葉があったけどたぶんそういうこと。ココの言葉はニュアンスで感じ取るんだ私。頑張れ。頑張った。

 

少し機織も試させてもらったが、なかなかに難しい。隣で同じ年くらいの娘がすいすいやってるのを見て熟練だなぁと感じる。「私の布だからね。布と話してれば自然にそうなるよ」とのこと?布との会話か。なるほど。わかるん。

 

私なりにお話しした内容を翻訳すると、個々の癖は仕方ないし、無理に合わせようとすると布が泣いてしまうそう。だからセイリスで作られる布はそれぞれに表情があって、選ぶのも楽しい。人に合った布は職人さんも相性がいいらしいので選んでもらった職人さんの布は同じ人に選んでもらえる。とのこと。なるほど。布について少し理解が深まった気がする。

 

そのあと、特別にと地下の大空洞を少しだけ見せてもらった。入ったわけではなく、シャフト室って少し大きめの部屋で回転する棒の横の小窓みたいなところからのぞかせてもらっただけだけど。

 

影が覆っているような深い空間にてんてんとした橙の灯がどこまでも続いている、幻想的な光景。昨日の路上アートがあった風の通り道が昼の参道なら、こちらは夜の神殿のように感じる。時々遠くから重い音が鼓動みたく聞こえるから、ここは長居する場所ではないのでは?と工房長さんに聞くと、驚いた顔で「よくわかるなぁ」と頭をなでられた。セイリスの人は距離感よくわかんないなぁ。でもレディの髪に触るのはけしからんと思います。

 

兄夫婦の家に帰ると、義姉がそわそわ待っていた。なんとなくそう思ったのは義姉との距離感が近づいたからか、慣れたからか。もしくは安心した顔で迎えてくれたからか。

 

そのまま他愛のない話をしながら兄を待って、「軽め」の食堂へ。うーん、やっぱりわかるようでわかんない。多分だけど、どうやってかその日の運動量をみて把握しているらしい。テレパシー?

 

今日は義姉より気持ち多めの配膳だった。おなかがすいているのがばれた?テレパシー?プライバシー侵害だ!

 

明日帰るからか、今日は義姉と少し長めにお話しした。義姉の部屋はやはりというか、こざっぱりしており、だけどいろんな色の布が掛けてある。ほむらさま(熱気かな?)がいいかんじに広がるそう。暖房機の上に石みたいなものをおいて「おちつく」感じのにおいのなかで、あっちの学校のこととか、こっちで困ったこととか、他愛のない雑談をぽつぽつした。存外落ち着く雰囲気に兄はやられたんだ。義姉め魔性の女…。

 

ちなみに、今日の工房は義姉の父の工房だったらしい。教えておいてほしかった。そしたら菓子折りでも持ってちゃんとあいさつしたのに…明日の夕方、食事の後にでも帰りの船に乗る。ちょっとしんみりとした感覚もあり不思議な気分で夜を過ごす私であった。(翌朝の追記)ちょっと読み直してると文章量が多いな私。普段こんなに書かないぞ?と疑問に思う今日この頃。もしや観光旅行的な観光は今日だけだったのでは?と思いながらも正直今日のでおなか一杯かもしれない。これ以上観光ブック沿いで見るとおなかが割れる。ぜったいに。

 

 

 

6日目

 

今日、これは船の中で書いているけど。わずか1週間程で感覚が変わってしまってる私に、私自身が驚いてるし正直ちょっと悔しい。負けた気分。

 

まず朝に、昨日道ですれ違った人の布服、見た目がかわいい感じだったから想像で自分で巻いてみてた。いや、昨日まで義姉に巻いてもらってたのに自分で巻けると思うなよ私。そしていつの間にか扉の隙間からニマニマ見ていた義姉は許さない。いや、身振り手振りで伝えたらそれっぽい巻き方を教えてくれたので許す。でも練習中に布に絡まって転がった私を見て吹き出したのは見逃さなかった。やっぱり許さない。

 

義姉におねがいして先日の工房長さんにご挨拶に行った。義姉の父ならわたしの父だ。兄の結婚式はこっちで静かにやったらしいから、私たちの両親とは顔合わしたのだろう。私は大事な試験で来れなかった。落ちた。国家資格を恨む。

 

改めて挨拶する私と無言で佇む工房長さん(おとうさん)。しばらく見つめあって、義姉を見て、少しの手ぶりで何かしらやり取りをしてたと思ったら、「コレ(義姉)からも紹介されたんなら悪いやつじゃないんは分かっとったし、遠いけどももう家族だろう」と私にもわかる言葉でガシガシと頭をなでてくれた。少しジーンとした気もするけど、髪のセットが崩れました。髪に触るのでプラマイゼロです。あと義姉に「もっと説明してやれ」とあきれ交じりに話してた。いいぞもっと言ってくれ。

 

義姉から観光区の星纏紡績ショップに案内してもらえた。「外にでるならこっちのほうが布が静かだよ。多分。」とのこと。あと、「あまり外の町に出ないから…」と自信なさげに言ってたが、多分嘘だと思う。純粋培養なセイリス人に違いない。直観だが多分当たってる。ちなみに、さらさらと流れるような布を買いました。懐に痛い。

 

少し早めの帰宅と、帰る準備。といっても準備自体は昨日のうちに終わってたので、食堂に行った後、蒸気風呂をくぐって、あとはお家でゆっくり。となってたはずだったのに、家出る直前で兄からの「え。それで帰るんだ」って一言でまだ布服だったことに気づかされる。義姉と目が合うも、驚愕、目から鱗、ハトにビーンズショットみたいな目をしていた。目はここまで感情を映すのかと感心してしまったほどだ。ふたりしてもーもー!と兄を責めながらトランクから服を出して、纏っていた布服を押し込める。兄に素肌を見られた気もするが、緊急事態だ。ゆるせ。

 

ともあれ、あわただしい帰路についたわけだけども、今気づいた。さっきの布服は義姉のではなかっただろうか。

 

とりあえず、向こうについたら洗い方だけ確認しておこう。あと、義姉は絶対にこっちに呼ぶ。そして私と同じ気持ちを味合わせて陰から笑ってやるんだ。とここに誓って、私のセイリスへの旅は幕を閉じるのであった。

 

(追記)観光ガイド制覇してないから暇になったらまた行くかな。




降って湧いて出てきたので、なにも考えずに投稿。
読み終えて不思議な感覚を覚えてもらえればうれしいです。

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