ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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今回はクエストの説明です。
そして、後半にはお色気シーンがあります。
そういう展開が苦手な人はお許しください。
俺は大好きなんです!


第12話 小さき者たちの危機

 ダイシー・カフェに集まった一同の前でアルゴが発表した情報は、とても興味深いものだった。

 

「今回オレっちが入手した情報は、エクストラクエストの発生条件ダ」

「えっ!?」

「なんだって!?」

 

 既に詳細を聞いているエギルとフィリア以外の皆が驚きの声を上げる。それだけ価値のある情報を手に入れたのも宗太郎への愛があればこそだ。

 

「どうだソー太郎。感激してオレっちを褒めたくなったカ?」

「ああ、見事な成果だ鼠のアルゴ! その功績を誇って、無い胸を存分に張るがいい!」

「褒めながらけなすナ!」

 

 余計な一言を言った宗太郎は、怒れるアルゴに無理やり立たされ、ベアハッグを極められてしまう。胸が小さい彼女でも、満腹の胃袋を圧迫するには十分だ。

 

「貧乳なめると痛い目を見るゼ!!」

「プトレマイオス!?」

 

 自業自得な宗太郎は、リバースしそうな苦しさに耐えながらクネクネと悶える。

 しかし、その表情には余裕の笑みがあった。

 

「はーはっはっは! 残念だったなぁアルゴ! 俺のHPは、君のオッパイと接触することで超回復するのだ!」

「ええい、この変態メ!」

「おいお前ら。俺の店でいかがわしいプレイすんな」

 

 一連のいちゃいちゃ行動を生暖かい目で眺めていたエギルが呆れた様子でつっこむ。

 そして、恋のライバルである少女たちは、若干黒い気配を発している。

 

「これは後でオシオキだね」

「うん。わたしたちもギュッとしなきゃね」

「だったらわたしも♪」

「結局、自分たちも抱きつきたいってことね……」

 

 3人の会話を聞いてしまった明日奈がぼそりとツッコミを入れるが、それ以上は何も言わない。他人の恋路に干渉するより、アルゴの情報について考えたほうが建設的だ。

 

「(エクストラクエストかぁ……。一体どんな話なのかな?)」

 

 明日奈は、新たな冒険を想像して微笑む。

 アルゴが言っていたエクストラクエストとは言葉の通り特別なクエストで、誰でも簡単に参加できるノーマルクエストとはまったく違う。規模も難易度もすべてが高い水準にあり、大抵はレイドボスも存在する。それに伴い、得られる報酬も段違いとなっているため、専門に探求しているプレイヤーもかなり多い。

 例えば、キリトとリーファが偶然見つけた【聖剣エクスキャリバー】のように、世界に一つしかない伝説級武器(レジェンダリーウェポン)を入手できる可能性もある。

 だから、エクストラクエストという単語を聞いた和人は、内心でドキリとした。

 

「(アルゴの情報ってアレのことじゃないだろうな?)」

 

 密かにエクスキャリバーを狙っていた彼は戦々恐々となる。

 半年前、須郷の犯罪に巻き込まれて囚われの身となっていたアスナを助ける際にたまたま発見したのだが、とある理由により放置していた。アスナが復帰した後にリーファとユイを加えた4人だけで偵察したら、あまりに敵が強すぎて先に進めなかったのだ。そのため、強くなってから改めて挑戦しようと企んでいたのである。

 通常の手段では行けない場所にあるので、しばらくは発見されないだろうと楽観していたのだが、そんな矢先にこのイベントが起きた。

 もしかすると、あの場所が発見されてしまったのだろうか。一瞬だけ焦ったものの、それだったらもっと大騒ぎになっているだろうと思い直す。

 

「(だとしたら、別のクエストってことになるよな……)」

 

 そうなると、今度は純粋に興味が湧いてくる。こういう希少なイベントは、熟練プレイヤーだからこそ嬉しいものなのだ。

 もちろん、初体験の紺野姉妹にとっても吉報である。家に帰ってから宗太郎にオシオキすることを決めた2人は、速攻で思考を切り替えるとクエストの話で盛り上がる。

 

「ねぇ明日奈。エクストラクエストって自力で見つけなきゃいけないヤツだよね?」

「ええそうよ。世界中に隠されているヒントを見つけ出して、難しい条件を満たしたプレイヤーだけが参加できる特殊なクエストだよ」

「それじゃあ、アルゴさんはそれを見つけたんですか?」

「いや、オレっちは情報を仕入れただけサ」

 

 そう言って、凄みのある笑みを浮かべるアルゴ。果たして、どのような方法で仕入れたのやら。少しばかり聞くのが怖い気もするが、とにかく彼女の情報収集能力はALOでも健在のようだ。

 

「それで、どんなクエストなんだ?」

「オレっちの入手した情報によると、ピクシーの領地で起きている問題を解決するという内容ダ」

「ピクシーの領地?」

「そんなトコあったっけ?」

「ううん、聞いたことないよ」

 

 初めて耳にする地名に対して、木綿季たちは疑問符を浮かべる。

 ALOにはプレイヤーが選択できる9種族の領地があって妖精世界の全体を構成しているが、NPCであるピクシーの領地は無い。それが基本的な設定であり、新たに仕様が変わったわけでもない。

 

「つまり、そのクエストには専用マップがあるってことか?」

「たぶんナ。結構気合の入ったクエストだロ?」

 

 いつの間にか席に戻っていた宗太郎が疑問に答えると、ちゃっかり彼の膝上に座ったアルゴが笑顔で返す。幼女体型の彼女ならではのスキンシップである。当然ながら紺野姉妹と琴音にとっては面白くないので、あからさまに不機嫌な顔をしている。邪気を放ちながら2人を睨むという分かり易いリアクションをとって、明日奈たちを苦笑させた。

 

「「「ぐぬぬ~」」」

「え~っと……それで、ピクシーの領地で起きている問題ってのは何なの?」

「オレっちがクエストNPCと会話したわけじゃないから詳細は分からなイ。でも、ナビゲーション・ピクシーに問題が発生していることに関係があると思ウ」

「えっ、そんなことが起きてるの?」

「あア。ナビゲーション・ピクシーを利用しない経験者は気づきにくいが、例のクエストが見つかってから徐々にピクシーの数が減っているんダ」

 

 街中で見かけるナビゲーション・ピクシーは、ゲームに関する基本的な質問に答える案内用NPCなのだが、ある日を境に減少し続けて、今ではほとんど見かけなくなっていた。

 運営に聞いてみると、意外にも原因不明という答えが返ってきた。直そうにもシステムに異常は見られないので、手を付けられないという。

 

「それがクエストの影響なの?」

「状況的にはその可能性が高いナ。クエストNPCとして現れるピクシーもそのようなことを言っているらしイ」

「まさか、クエスト一つでそんな大掛かりなことが起こるのか?」

「オレっちも変だと思ってるが、実際に起きてるんだから受け入れるしかないだロ」

「アルゴの言う通りだな。可愛らしいロリとショタに会えなくなるという事実はとても悲しいが、致し方あるまい」

「嫌な受け入れ方するな!」

 

 聞き方によっては危険なセリフを言う宗太郎に、普段どおりツッコミを入れる和人。しかし、心の中ではユイのことを心配していた。ALO内の彼女はナビゲーション・ピクシーに分類されているからだ。

 

「なぁアルゴ。ユイには影響ないよな?」

「あっ、そうだよ! ユイちゃんは大丈夫なの!?」

「安心しろアーちゃん。キー坊が所有しているあの子はプライベート・ピクシーと同じ扱いだから心配ないと思うゾ」

「なんでそう言いきれるんだ?」

「それは、プライベート・ピクシーを所有していることがクエスト発生条件の一つだからダ」

「なるほど、そういうことか」

 

 そこまで聞いて、和人と明日奈は安心する。

 プライベート・ピクシーとは、プレオープンの際に抽選配布されたもので、所有しているプレイヤーはかなり少ない。それがクエスト発生条件になっているとすれば、他のピクシーのように勝手に消えることは無いだろう。

 そもそも、ユイの本体はゲームから切り離されて和人のPCに保存されているから、ゲーム側から干渉されても消えることは無い。もちろん、ALOで活動する際はゲーム内のルールに準じなければならないので、今回のように登場禁止になってしまったら何もできなくなる。しかし、幸いながらその心配はいらないらしい。

 

「何にしても、娘に問題がなくて良かったな。倫理的に」

「ん? 倫理的にってどういうことだよ?」

「お前たちはゲーム内で結婚するほどの仲だからな。ユイが傍にいてくれないと、寂しさのあまり本当に子作りしそうじゃん?」

「「そんなわけあるかっ!?」」

 

 唐突にぶちかまされた宗太郎の下ネタを必死に否定する和人と明日奈。健全なカップルとしては当然の反応……と言いたいところだが、そこには微妙な理由がある。ぶっちゃけると、SAO内で本当に身体を重ねていたからだ。その事実に宗太郎が気づいているかは定かではないが、指摘されると過剰に反応してしまうので、自ら白状しているようなモンである。

 実際、恋バナに興味津々な木綿季が、妙に慌てている2人を怪しんで食らいついてきた。

 

「も、もしかして、明日奈はもうオトナの女になっちゃったの?」

「えっ、そうなんですか!?」

「やるわね明日奈!」

「うぇっ!? ちちち、違うわよ!? 現実ではまだやってな……………………(真っ赤)」

「ふっ、可愛い彼女じゃないか。大事にしてやれよ、和人」

「って、綺麗にまとめようとすんな、諸悪の根源っ!!?」

 

 何気ないやり取りからとんでもない事実を暴露するハメになった。墓穴を掘った明日奈は湯気が出そうなほどに真っ赤になり、巻き添えを食った和人も変な汗を一杯かいている。

 

「にゃハハハ! 酷い目に遭ったなぁ、キー坊!」

「元はといえば、お前のせいなんだがなっ!」

「あばばばば」

「ああっ、明日奈が壊れた!」

「おーい、戻ってこーい」

「まったく、2人は恥ずかしがり屋だなぁ」

「ソウ君は、もうちょっと恥ずかしがるべきだと思うよ?」

 

 もうめちゃくちゃである。とてもではないが、落ち着いて話し合える状態ではない。

 

「ふっ。これが若さか……」

 

 この中で唯一結婚しているエギルは、彼らの初々しい会話を聞いてクワトロ的なセリフをつぶやくのだった。

 

 

 それから数分後。和人と明日奈が落ち着きを取り戻したところで話を再開する。

 

「改めて説明するが、そのクエストの発生条件は3つあル。1つ目は、さっき言った通り参加者の1人がプライベート・ピクシーを所有しているこト。2つ目は、異性のプレイヤーを同伴しているこト。そして3つ目は、先述の男女2人とプライベート・ピクシーの友好度が規定値を超えていることダ。その条件を満たしてからシルフ領の東に広がる古森に行って、クエストNPCと話せばクエストが始まるはずダ」

 

 アルゴは、入手してきたクエスト発生条件をすべて挙げた。それを聞いた一同は、疑問に思ったことを質問する。

 

「友好度って、もしかして隠しパラメータ?」

「ああ、そうだヨ。会話をしたり、アイテムをあげたり、一緒にクエストをプレイしたりすると上昇するんダ」

「それってどんな効果があるの?」

「例えば、友好度の高い相手が近くにいると、魔法の威力や身体能力が少しだけアップする特典があル。他にも、入手できるアイテムにプラスの影響があったりするから、気づかないところで役に立ってるんダ」

「へぇ~、そんなに良いことがあるんだ~」

 

 説明を聞いた木綿季はしきりに感心する。それと同時に、宗太郎を見てくふふと笑う。

 

「だったら、ボクとソウ兄ちゃんの愛情度はカンストしてるから、絶対無敵だね♪」

「ふふっ、可愛いことを言ってくれるじゃないか、こいつっ♪」

「えへへへへ♪」「あはははは!」

「勝手に和むナ!」

「っていうか、愛情度じゃないし」

 

 アルゴの話をダシにして宗太郎といちゃつくお茶目な木綿季。あまりの鮮やかさに、恋のライバルたちも毒気を抜かれて苦笑するばかりである。

 

「それで、そのクエストと友好度がどう関わってくるんだ? 異性のプレイヤーを同伴ってところに関係ありそうだけど」

「まさにその通りだヨ。オレっちが手に入れたクエストNPCのセリフは、『私たちの同胞を我が子のように慈しむ心を持った、愛情深い男女でなければ巫女姫をお救いできない』といった内容だったんダ。そこから推測したものが、さっきの条件ってわけダ」

「なるほど。その条件を満たしているプレイヤーがここに来るから、わざわざ尋ねてきてくれたということか」

「まぁ、本音を言えばお前に会うための口実なんだが、ほぼ正解ダ」

 

 宗太郎の膝に座ったアルゴは、彼の推理を肯定してから和人と明日奈を見た。ユイの親である彼らこそ、このクエストを発生させるキーパーソンだった。

 現在は友好度がネックになって条件を満たすプレイヤーがいないのだが、この2人なら余裕でクリアできるはずだ。そう考えたからこそ、琴音から今日のスケジュールを聞いたアルゴはここに来たのである。

 目的の半分以上は宗太郎との会話を楽しむためだったが、和人たちが協力してくれれば更にクエストで遊べるというわけだ。

 

「キー坊とアーちゃんだったら間違いなくパスできるはずだから、手を貸してほしいんだヨ」

「確かに、ユイちゃんからパパとママって呼ばれてる2人なら完璧だね」

「ああ。これ以上ないくらい愛し合ってるからな。実際に一夜を共にしちゃってるし」

「「それはもう言わないで!?」」

 

 宗太郎の茶化しで再び真っ赤になる2人。しかし、彼らの言っていることはもっともだし、自分たちも自信がある。わたしたちの愛は数値なんかに負けたりしないと。

 

「ふふふ……いいわ。ここまでいじられたらもうヤケよ。わたしを辱めたクエストがどんなものか、この目で確かめてやるわ!」

「明日奈が荒ぶってる!?」

「ちょっとやりすぎたかな~?」

「うん……さっきの自白は衝撃的だったもんね」

「まぁ、自業自得なんだから仕方ないっしょい!」

「お前はもっと気にしろよ!?」

 

 デリカシーがあるとは言い難い宗太郎の発言にツッコミを入れる和人。ただ、正論でもあるだけに、その声にはいつもの力が無かった。

 恋人がいるからこそ起こる悩み……。この世には、リア充ゆえの苦悩というものもあるのだ。

 しかし、彼は孤独ではない。大人のエギルは、そういった事情をよく理解していた。

 

「ははっ、まぁがんばれや和人。俺はここで応援してやるからよ」

「エギルは参加しないのか?」

「ああ。俺もかみさんのご機嫌を取らなきゃいけないからな……もはや気軽に遊べないのさ」

「お前も大変そうだな……」

 

 少しだけシンパシーを感じた2人は、仲間意識を持つことで互いの心を慰めあうのだった。

 

 

 何はともあれ、こうして彼らは不思議なクエストを経験することになった。

 果たして、そこには何が待ち受けているのだろうか。いなくなったナビゲーション・ピクシーと関係があるのか。なぜ男女でなければいけないのか。巫女姫とやらに何が起きているのか。

 その答えは、6日後の土曜日に判明することになる。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 デートを終えて自宅のある街に帰ってきた宗太郎は、木綿季と藍子の誘いを受けて紺野家に泊まることになった。今日は日曜日なのでいつもなら自宅に戻るのだが、今日は2人がどうしてもと言って押し止めた。

 

「やたらと熱心だけど、何か用事でもあるのか?」

「ん~ん。今日のソウ兄ちゃんはアルゴや琴音とくっつきすぎだったから、ちょっとオシオキしたいな~って思ってるだけだよ?」

「そうだよ~。わたしたちの嫉妬心を煽ってくれたお礼に、ちょっとシカエシしようかな~って考えてるだけだよ?」

「……その正直さは可愛いと思うけど、結局やる気まんまんなのね」

「ふっふっふ、なにが起きるかは後のお楽しみだよ……。ねぇ、姉ちゃん?」

「うん。気合を入れて準備をするから、期待して待っててね♪」

「ああ、世界の悪意が見えるようだよ……」

 

 チャーミングな笑顔なのに、なんというプレッシャー!

 とっても可愛らしい悪意を向けられた宗太郎は、自身の不幸(?)を嘆くのだった。

 

 

 それから1時間後。美味しい夕食と一番風呂をいただいた宗太郎は、一足先にやって来た藍子の部屋で寛いでいた。彼が紺野家に泊まる際は姉妹の部屋を交互に使っており、今回は藍子の番というわけだ。

 慣れた動作で自分用の布団を用意し、どさっと寝転がる。エアコンの冷たい風が風呂上りの身体を冷やしてくれる。

 

「甘くて良い匂いだ」

 

 慣れ親しんだ藍子の香りで心地よくなる。まさに、リア充ならではの役得である。

 もちろん良いのは匂いだけではない。部屋の見た目も女子中学生らしく、多感な少年の興味を十分に満足させてくれる。

 ただ一点おかしなところがあって、宗太郎の影響で置いてあるガンプラが異彩を放っているのだが、彼以外の男性を招き入れる予定は無いので問題無い。

 いずれにしても、宗太郎にとっては居心地の良い場所だ。のんびりとした様子で、風呂に入っているだろう2人が来るのを待つ。

 

「わざわざ俺を泊まらせて何をやってくれるのか、お楽しみだな」

 

 宗太郎は、紺野姉妹の言っていたオシオキやシカエシとやらを想像しながら笑みを浮かべる。

 そしてもう一つ、気になっていることも考える。アルゴが教えてくれたクエストのことだ。

 

「それにしても、やたらとピンポイントな条件だったな……」

 

 愛情深いと呼べるほどプライベート・ピクシーを大事にしているプレイヤーなんて条件を出されたら、キリト以上の適役はいない。逆に考えれば、このクエストはキリトを参加させるために作られたとも言えるくらいだ。彼とユイの関係を知っている者ならば、誰もがそう考えるだろう。今の所は、近しい仲間以外に知っている者はいないはずだが。

 

「………………まさかな」

 

 流石にそれはないかと思い直す。もしかすると、ALOの運営陣にはSAOをクリアしたキリトを注目している者がいるかもしれないが、一般人相手にここまで回りくどい干渉はしてこないだろう。

 

「と思うんだけどなぁ……」

 

 二度ある事は三度あるとも言うし、油断は出来ないかもしれない。

 和人は色んな意味でトラブルメイカーだから、例え本人が望んでいなくても茅場や須郷のような変人と関わりを持ってしまう。そして、有名人になった今、変人のほうから接触してくる可能性が生まれてしまっている。だから、先ほどの想像も決して有り得ない話ではなかった。

 

「まぁ、その時はその時だな。野郎なんかのためにストレス溜めて薄毛になりたくないし」

 

 友人思いなのか薄情なのか、判断に困るような答えを出す宗太郎。とはいえ、以前のような事件性を感じるものではないので、とりあえず今は心に止めておくだけにしておくのだった。

 

 

 そのように取り留めの無い思考を重ねること数十分後。ようやくお風呂から上がった紺野姉妹が部屋に入って来た。

 

「おまたせ~」

「オシオキタイムの始まりだよ~」

「はいはい、どこからでもかかってこいやって、なにその格好!?」

 

 上半身を起こして2人を見た宗太郎は驚く。なんと彼女たちは大きめのTシャツだけしか着ていなかったからだ。露になった太ももが一際目を引く格好で、思わずTシャツとの境目に視線がいってしまう。

 すると、そんな宗太郎の意識を汲み取ったかのように、2人はそろってTシャツを脱ぎ出した。

 

「今日は暑いから、全部脱いじゃおーっと!」

「えいっ!」

「ちょっ、おまっ!?」

 

 突然始まったお色気イベントに宗太郎が途惑う中、イタズラっぽい笑みを浮かべた仲良し姉妹が大胆にTシャツを脱ぎ捨てる。

 そしてそこには全裸の美少女が……ではなく、水着を着た木綿季と藍子がいた。

 

「裸だと思った? 残念、水着でした!」

「今日買ったのを着てみたんだ」

「そんなこったろーと思ってたよコンチクショー!」

 

 少しだけ期待していた宗太郎は本気で嘆く。しかし、これはこれで良い眺めである。

 2人の水着は肌の露出が多いビキニで、十分以上に魅力的だ。

 しかも、彼女たちのオシオキはこれからが本番だった。

 

「ってなわけで、オシオキ開始だよ!」

「ちょっと恥ずかしいけど、覚悟してね!」

「うぇ!? 恥ずかしいって、一体ナニをしませうんですかー!?」

 

 水着姿でドキドキしているうちにオシオキタイムとやらが始まった。

 果たして、どんな恐ろしいことをされるのか。なんて思っていたら、2人は宗太郎の上に覆いかぶさって、ギュッと抱きついてきた。これで、仰向けに寝ている宗太郎の上に水着姿の紺野姉妹が密着しているというおかしな状態が出来上がる。

 

「こ、これはっ!?」

「ふっふっふ~。どうだい、ボクたちのオシオキは?」

「こ、こうすると、すごく困るんだよね~?」

 

 確かに困る。それはもう切実に困ってしまう。

 仲の良い幼馴染であり相思相愛でもあるのだが、流石に2人とも受け入れるわけにはいかない。倫理的に。常識的に。未成年らしい健全な付き合い方をしなければならない。

 

「しかし、なんという心地よさだ!」

 

 ほどよく育った4つの胸が、宗太郎の身体に押し付けられてプニュっと形を変える。ビキニの隙間からこぼれるようにはみ出る肌が艶かしい。

 オシオキというよりご褒美っぽい感じだが、宗太郎にとっては危機的状況だった。

 

「ええい! この私が不覚を取られるとは! こうなれば、戦術的撤退だ!」

「あんっ、そんなに激しく動かないで~!」

「きゃっ、くすぐったいよ~!」

 

 ようやく抵抗を開始した宗太郎は、激しく身体をよじって2人の戒めから抜け出そうとする。その結果……ビキニのトップスが上部にずれて2人の胸が丸見えになってしまった。

 しばらくして上半身を起こした2人は、ようやく自分たちの状態に気づく。

 

「「あっ……」」

 

 妙にスースーすると思ったら胸が全開になっているではないか。しかも、宗太郎の目の前で。

 徐々に状況を把握し始めた木綿季たちが顔を真っ赤に染めていく。そんな微妙な空気の中、プルンと揺れる可愛い胸を見つめた宗太郎は、なぜか元気良く挨拶する。

 

「やぁ君たち! 2ヶ月ぶりだね! しばらく会わないうちにまた大きくなったかな?」

「って、オッパイに話しかけるなっ!!」

「ガデッサ!?」

 

 爽やかに誤魔化そうとしたがやっぱりダメだった。

 荒ぶった木綿季が宗太郎の顔に枕を押し付けて視界を遮る。その隙に2人は、胸を隠しながら部屋の外に出ていく。

 

「うう……また見られちゃった……。しかも、あんなに目の前で……」

「でも、ちょっぴり嬉しそうだね?」

「えぇっ!? そそそ、そんなことはないよ? ほんとだよ?」

 

 木綿季に本心を言い当てられた藍子は大いに慌てる。たとえ恥ずかしい思いをしても、魅力的な女性として見てもらえると嬉しくなる。恋する乙女の心はまことに複雑だった。




次回はようやくクエスト開始です。
ピクシーの領地に行って、イベント内容を知ります。
でも戦闘はまだかなぁ。
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