ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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今回からクエスト開始です。
NPCと出会って、別エリアにあるピクシー領に行きます。


第13話 サンクチュアリ

 クエストの話を聞いてから6日経った土曜日の夜。いつものように紺野家に来た宗太郎は、すべての準備を整えて木綿季の部屋にいた。

 ボーイッシュな性格をしている彼女だが、部屋の中は整理整頓が行き届いており、居心地はとても良い。これも、綺麗好きな姉によって教育されまくっているおかげだ。木綿季自身に聞いたら『強いられているんだ!』と訴えてくるかもしれないが、良いことなので黙認である。

 そのような経緯で何とか保たれている女の子らしい(?)部屋で待つこと数十分。2人が階段を登ってくる音が聞こえてきた。

 

「……来たか」

 

 少女マンガを読んで涙を流していた宗太郎がつぶやく。

 今日はいつもより風呂上りが早い。どうやら、貴重なクエストで遊べるということで気合が入っているらしい。

 

「その意気や良し! 恋も遊びも勉強も、貴重な時間をかけるからには全力でやらねばならん!」

 

 少女マンガを読んで流した涙を拭きながら暑苦しいセリフを叫ぶ。言っていることはまともだが、見た目はかなり微妙と言わざるをえない。

 しかし、ヒロインが病気で死んでしまうという内容では仕方ないだろう。自分の母親の事もあるし、何となく他人事ではない気もするのだ。よく知っている誰かが同じ境遇のような感じが……。

 

「こう、ニュータイプの直感というか脳量子波の干渉というか……電波的ななにかが、ビビッと来る感じ?」

「なにがビビッと来たの?」

「ドキリンコっ!?」

 

 突然声をかけられてビックリする。おかしなことを考えている間に木綿季と藍子が部屋に入ってきていた。

 2人の格好は前回のようにTシャツ一枚ではなく、キャミソールとショートパンツという夏らしい姿だ。14歳の少女が発する若さと可愛さに溢れており、これはこれでとっても魅力的である。

 

「やぁ、こんばんは。お風呂で綺麗に洗ってきたようだね。今夜も美しく輝いているよ」

「って、太ももに話しかけないでよ」

 

 宗太郎の奇行にすかさず木綿季がつっこむ。とはいえ、目の前に魅力的な太ももがあれば褒めないわけにはいかないだろう。男として。

 木綿季たちも言うほど悪い気はしておらず、むしろ見せびらかすように堂々と近づいてくる。好きな人に綺麗だと言われれば嬉しくなってしまう。まさに惚れた弱みである。

 しかし、今はのんびりと喜んでいる時間はない。

 

「2人とも。早くしないと約束の時間になっちゃうよ?」

「おっとそうだな。では出撃するぞ、フラッグファイター!」

「「りょーかい!」」 

 

 2人は宗太郎の言葉に元気良く返答すると、アミュスフィアを手に取る。そして、それを装着して彼の両サイドに寝転がる。いつも通り、『川の字』で寝ながらログインするのだ。

 紺野姉妹が真ん中にいる宗太郎に密着することで準備は整った。後は、お決まりのセリフでダイブするのみである。

 

「グラハム・エーカー、出るぞ!」

「ユウキ、行きまーす!」

「ラン、発進します!」

 

 和人ならリンクスタートと言うところを、彼らはガンダム作品の出撃風に叫ぶ。微妙に世界観をぶち壊しながら、3人は仮想世界へと向かうのだった。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 ALOにログインしたグラハムたちは、前回ログアウトしたユグドラシルシティに出現する。他の面子もこの街を拠点にしているので、転移門広場に集合することになっている。

 新生ALOとなった際に種族間の対立関係が大幅に解消されたため、主要な街に転移門が作られた。そのおかげで許可を得た場所なら気軽に転移できるようになった。グラハムたちもそれを利用して、目的地の古森に近いスイルベーンへ転移する予定だ。

 ただ、飛行が大好きなグラハムは少しばかり不満を抱いていた。

 

「転移門か……。便利すぎるのも考え物だな。フラッグファイターならば空を行くべきだと思うのだがね」

「でも、時間が短縮できていいじゃん」

「くっ! フラッグよりもどこ○もドアを望むというのか! 許さんぞドラ○もん!」

「街中で空想のキャラクターにケンカ売らないでよ……」

 

 ちょっぴり恥ずかしくなったランは、大衆の面前でおバカな発言をするグラハムを嗜める。数少ない女性プレイヤーの2人連れというだけでも目立っているのに、これ以上注目を集めたくはない。会話の内容的に。

 

「おいグラハム。来て早々に2人を困らせるなよ」

 

 ランからオシオキを受けていると、後ろから声をかけられる。キリト、アスナ、ユイの仲良しファミリーが合流してきたのだ。

 今日の主役とでも言うべき彼らは、ユウキたち以上に張り切っているように見える。特にユイは気合が入っているらしく、キリトの頭から飛び立つと、元気良く挨拶してきた。

 

「みなさんこんばんは!」

「ぐっどいぶにんぐ、ユイちゃん! 今日はヨロシクね!」

「はい、ど~んとお任せください!」

 

 ユウキに頼まれたユイは、ぺったんこの胸を張ってドンと叩く。その様子が可愛らしくて、アスナとランはにこりと微笑んでしまう。

 

「ふふっ。今日のユイちゃん、元気一杯ですね」

「なんたって今回の主役だからね」

「まさに初めてのお遊戯会だな。娘の成長を皆で見守る。実にハートフルな展開だなぁ」

「ははっ、確かにそんな感じかな」

「そして、それを見守る少年の姿も素敵だと言わせてもらおう!」

「って、お前だけ視点がおかしいだろ!?」

「そうでもないさ。私の心は常に君へと向いている。だから安心するがいい」

「逆に怖いわ!」

 

 ヤバイ告白をされたキリトは怖気を走らせる。彼が合流した結果、さっきより会話内容が怪しくなってしまった。そのせいで周囲から受ける好奇の視線がさらに多くなり、ランとアスナは慌てて男どもを黙らせるのだった。

 

 

 いつもの如くトラブルが起こったものの、グラハムたちは予定時間前に転移門広場へ到着した。そこには既にフィリアとアルゴが来ており、笑顔で出迎えてくれた。

 フィリアの種族はスプリガンで、SAO同様に短剣使いとなっている。一方アルゴの種族は、小柄な身体にピッタリなケット・シーで、小型のクローを両手に装備する格闘武器の使い手だ。2人のアバターはグラハムたちと同様にSAOのデータを引き継いでいるので、フィリアの髪が金髪から黒髪になったことを除けばそれほど変わっていない。

 

「待たせたな、2人とも」

「グラハム!」

「今日も無駄に良い男だナ」

「ふん。世辞はいい」

 

 グラハムから声をかけられた2人は、すぐさま駆け寄って彼の腕に抱きついた。元々その場にいたユウキとランを弾き飛ばして。

 

「きゃっ!?」

「ちょっ、なにすんだよ!?」

「なにって、愛しい彼氏を邪魔な小娘どもから奪還しただけだよ?」

「当然の行動だよナ?」

「って、なに『当たり前だよ』みたいな言い方してんの!?」

「図々しいにもほどがあります!」

 

 理不尽な行動をしておいて堂々としているフィリアとアルゴにムカッときたユウキとランは、当然のように文句を言う。またしても乙女座の男を巡る女の戦いが始まってしまった。

 その光景を静かに見つめていたグラハムは、頭上に乗っているユイと一緒に想いをつぶやく。

 

「愛情深さが暴走すると、このような悲劇を招くというのか……」

「恋って怖いものなんですね~……」

 

 2人仲良くしみじみと言う。キャラ的にギャップが激しい彼らだが、キリトたちに次いで友好度が高くてなぜか話も合う。もちろんそれ自体はいいことで、ユイも楽しそうだ。しかし、問題もある。

 

「ねぇキリト君。やっぱり、グラハム君の性格はユイちゃんの教育に悪いわね」

「ああ、そうだな」

「でも、わたしたちでは、彼を止めることなどできないわね……」

「ああ、そうだな……」

 

 キリトとアスナは、愛娘の情操教育について考え込む。しかし、破天荒すぎるグラハムの性格に対抗する術はなかった。彼らもまた、そんなグラハムのことが好きだからだ。人の意識とは、かくも複雑なものなのである。

 

 

 そんなこんなで集結した一行は、転移門を使ってスイルベーンに到着。すぐさま飛び立って古森へ向かう。

 今回のクエストは、グラハム、ユウキ、ラン、キリト、アスナ、フィリア、アルゴの7人とユイを入れた臨時のパーティで挑戦する。グラハムと遊ぶために用意したものなので、リーファたちには遠慮してもらった。友情も大事だが、恋路を優先すべき時もある。せっかくのイベントなのに、彼女たちを混ぜて単なる女子会にするわけにはいかないのだ。

 

「ただでさえ女子率高いからナ……」

「ん~? なにか言った?」

「いや、別ニ」

 

 丁度ユウキを見た時に気づかれてしまった。うろんげな目をしながら尋ねてくる彼女に対して手短な返事で誤魔化す。

 

「(まぁ、一番の強敵がここにいるんだけどネ)」

 

 不審そうな表情で自分を睨むユウキを見て、アルゴは苦笑する。ご覧の通り彼女は年相応に子供っぽいのだが、恋愛におけるアピール力が高いから油断ならない。恋愛下手で思考も分かり易いランより厄介な相手である。

 

「ソー太郎は、こういう世話を焼きたくなるタイプが好きだからナ……」

「むむ。やっぱりボクの悪口を言ってるでしょ?」

「いいや。認めてるんだヨ……ライバルとしてナ」

「?」

 

 小声になった最後の方が聞き取れず疑問符を浮かべるユウキと、そんな彼女を見て苦笑するアルゴ。天真爛漫なユウキは、お姉さんキャラのアルゴにとって最大のライバルであると同時に可愛い妹でもあった。

 

 

 そのように恋の駆け引きがひっそりとおこなわれている間に目的地上空へ到着する。

 スイルベーンの東方に広がる古森は広大な森林地帯で、前回のアップデートによって希少なドロップアイテムを持っているモンスターが追加され、かなりのプレイヤーが狩りに来ている。現在はとても貴重な武器素材を落とすフルメタル・ラビットが一番のターゲットとなっており、それを狙っていた連中が今回のクエストを発見した。

 

「本当に転移門があったな」

「アルゴの言ってた通りだね」

 

 空中に静止したみんなが目的地を確認する。そこには小さな草原があり、中心付近に小ぶりな転移門があった。数週間前までは無かったもので、何らかの原因でクエストが生成された際に出現したらしい。

 それを見てやる気スイッチが入ったユイは、キリトとアスナを急かす。

 

「パパ、ママ。早く行きましょう!」

「おう」

「そうね」

 

 愛しい娘に頼まれたら即座に言う事を聞くしかない。10代にして親バカぶりを発揮しているキリトとアスナは、速やかに転移門の前へ着地する。その様子を温かい目で見つめていた他の面子も後に続き、鍵となるだろうキリトたちを前にした形で並ぶ。

 すると、転移門の上にエフェクトが発生して、そこから小さな人影が出現した。クエストNPCのピクシーだ。

 

「初めまして、妖精の剣士様」

 

 軽やかに現れたピクシーは、スカートの裾を軽くつまんで淑やかにお辞儀をする。彼女は、ユイと同年齢ぐらいに見える美幼女で、長い金髪がよく似合っている。白を基調とした神官風の服装をしており、それに準じた役割を担っていると思われる。

 

「わたしの名はマリアベル。巫女姫に仕えし者です」

 

 マリアベルと名乗ったピクシーは、礼儀正しく丁寧な口調で話す。セリフの内容からすると、アルゴの話に出て来たクエストNPCで間違いないようだ。

 

「我らの同胞を連れてここに来たということは、おおよその事情を把握しておいでのようですね」

「ああそうだ。俺たちは君の願いを聞くために来たんだ」

「そうですか。あなた方の勇敢なる決断に感謝します。ですが、巫女姫を救うには相応の条件をそろえる必要があります。その確認を取りおこなう許可をわたしに与えてくれますか?」

「許可って、友好度を見るってヤツか?」

「はい。あなた方と共にいる我らの同胞と触れあうことで、彼女に与えられている絆の力が分かります。それが足らなければ、待ち構えている試練を乗り越えることができません」

「その試練ってのはなんだ?」

「詳細については、資格のある方にのみ伝えることになっております」

「……了解した」

 

 マリアベルの説明を聞いたキリトは納得し、そばに浮いている娘にお願いする。

 

「ユイ、出番だぞ」

「はい!」

 

 気合の入っていたユイは元気に返事をすると、マリアベルの前に飛んでいく。空中に静止した2人のピクシーが向かい合って見つめあう。その光景はとてもファンシーで可愛らしい。しかし、当人たちは至って真面目である。

 マリアベルは、自身に与えられた役割を果たすべく静かに右手を差し出す。

 

「あなたの名はユイでよろしいですか?」

「はい」

「それではユイ。わたしの手にあなたの右手を重ねてください」

「分かりました」

 

 ユイは指示通りに右手を重ねる。すると、合わさった2人の手元が輝き出す。このエフェクトが情報を読み取っている状態らしい。

 時間的には約1分といったところか。思っていた以上に長かったが、大きな問題もなく無事に終わった。

 

「……確認が終わりました。もう楽にしてよろしいですよ」

「は、はい……」

「で、結果はどうだったんだ?」

「はい。あなた方の絆は、我らの希望に適った条件を満たしていました。ゆえに、改めてお願いします。我らの窮地をお救いください」

「ああ、そのクエストを受けるよ」

 

 マリアベルから助けを請われたキリトは、二つ返事で引き受ける。その瞬間、クエストが成立して彼らの目の前にメッセージが表示される。

 

 ――【忍び寄る災厄】Quest Start――

 

 その表示を見たフィリアが思わず歓声を上げる。トレジャーハンターである彼女は、レアアイテムを入手できるこの手のイベントが大好きなのだ。

 

「やった! ほんとに成功したよ!」

「当然の結果だ。少年の愛は種族や性別を超越して、この私とも固く結ばれているのだからな!」

「お前は黙ってろ!」

 

 キリトは、NPCが対応できないような問題発言をするグラハムにツッコミを入れる。しかし、当の本人は抱きついてきたフィリアとじゃれあっていて聞いちゃいない。

 その上、周りにいるユウキたちも騒がしくなる。

 

「ドサクサに紛れてなにやってるんだよー!」

「そんなにくっついちゃダメですー!」

「ちょっ、コラッ、なんで胸を揉むのよっ! って、そんなに激しくしないでぇー!?」

 

 調子に乗ったフィリアがユウキとランを挑発した結果、返り討ちに遭っていた。

 

「はぁ、緊張が解けた途端にこれだ……」

「でも、嫉妬してるユウキとランって可愛いと思うけどな?」

「まぁ、そこは否定しないけどさ」

 

 突如始まった3人のケンカ(?)を見てキリトは呆れるが、となりにいるアスナは何となくほっとする。ユウキとランが元気にはしゃいでる姿を見ると、なぜか心が温かくなるのだ。

 

「……ふふっ」

「アスナって、ほんとにあの子たちが大好きだよな」

「えっ…………そうかもしれない、かな?」

「ようするに、シスコンに目覚めてしまったということだナ」

「うっ!」

 

 少しだけ自覚していたことを指摘されてドキッとするアスナ。彼女たちを大切に想う気持ちがそこまで成長してしまったとは。おかしいとは思わないが、周囲の人に認識されると気恥ずかしい。 なんて思っていたら、無邪気なユイがアスナを追い込むように質問してきた。

 

「アルゴさん。しすこんってなんですか?」

「ああ、それは「年下の子供を大切に想う、愛情深い人って意味だ!」

「なるほど、そういうことですか~」

「ふふっ、パパも大変だナ」

「お前たちが変だからな!」

「ははは……」

 

 グラハムたちにつっこんでおいてキリト自身も騒がしい。せっかくのクエストを放っておいて娘の情操教育に気を配る姿に、アスナとアルゴは可笑しくなるのだった。

 その騒動が起きている間、放置されたマリアベルが困り果てていたのだが。

 

「あの、そろそろ話を進めてもいいですか?」

「「ちょっと待ってて、今フィリアとオハナシしてるから!」」

「……はい」

 

 ユウキとランの気迫に負けたマリアベルは大人しく従う。まさかNPCまで痴話喧嘩に巻き込むとは。何とも締まらない冒険の始まりとなった……。

 

 

 ユウキたちがフィリアの胸を揉みまくって満足した所で、いよいよクエスト開始である。

 まずは、このイベントのために用意された転移門を使って専用マップに転移する。すると、出現した先にはピクシーサイズの小さな街があった。森に囲まれた花畑の中心に作られた、とってもメルヘンな街だ。

 

「うわぁ~、可愛い~!」

「ミニチュアの街みたい!」

 

 あまりのキュートさに、一瞬で少女たちのハートをキャッチする。

 その街は中央にそびえ立つ円錐状の塔を円状に取り囲むように作られている。建物のデザインは既存の物をアレンジしているようで、見たことがあるような感じだ。悪く言えばデータの使い回し、良く言えばすべての種族と交友があるピクシーならではの特色といったところか。

 

「でも、わたしたちじゃ入れないよ?」

「巨人が進撃してきた感じになっちゃうよね」

「もちろんその点は考慮しております。この街の周囲には魔法の結界が張られていまして、妖精が中に入るとピクシーの姿になるのです」

「えっ、ほんと!?」

「わたしたちがピクシーになれるの?」

「はい。街の中だけの変化ですので、心配せずにお入りください」

 

 そう言うとマリアベルは5メートルほど前に進み、入り口の手前で止まる。どうやら、その間に魔法の結界があるらしい。

 話を理解したユウキは真っ先に走り出し、その後にランが続く。

 

「よーし、一番乗りだぁ!」

「あっ、待ってよユウキ!」

「それじゃあ、わたしたちも行きましょ?」

「幼児化したグラハムを早く見たいからナ」

「ふっ、いいだろう。ショタとなった私の姿に、悶えまくるといい!」

「お前がピクシーになったら幻想が壊れそうだな」

 

 紺野姉妹の後をおバカな会話をするグラハムたちが追いかける。

 2メートルほど進んだところで魔法が発動したらしく、身体全体が輝き出した。そして、全員の姿をユイと同年齢ぐらいのピクシーに変えた。

 

「ほんとにピクシーになっちゃった……」

 

 自分の変化を確認したランが信じられないといった様子でつぶやく。もちろん他のみんなも同じように驚いていた。しかし、グラハムの姿を見た途端に動きが止まる。ピクシー化した彼はあまりに可愛くて女の子のように見えたからだ。

 

「お前……グラハムか?」

「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。君は本当に少年なのかね?」

「おう、そうだぞ?」

「ああああ……! な、なんという麗しさ! 私は、君という存在に心奪われた!」

「って、その姿で言うなよ!」

 

 幼い男の娘みたいな姿でBLっぽいことを言われたら変な気持ちになってしまう。キリト自身もグラハムに負けないくらいの男の娘になっているので、より一層倒錯的である。

 とはいえ、会話の内容以外はとても美しく、女性陣は思わず見惚れてしまう。

 

「か、可愛いー!」

「なんか色々と負けた気がするわ……」

「よし、画像を保存しておこウ」

「わっ、わたしも!」

 

 ユウキたちは、ショタ好きでなくても心奪われてしまう光景に熱中する。

 その様子をユイと一緒に見つめていたアスナは、見た目とのギャップに苦笑する。

 

「みんな可愛らしくなったのに中身はそのままだね」

「ふふっ、そうですね」

 

 アスナの問いかけに答えるユイもニコリと笑う。確かに中身はアレだけど、見た目は自分と同い年に見えるので、なんとなく楽しい気分になる。

 

「みなさんと同じ背丈なんで、とっても不思議な感じがします」

「そうだね。今は先輩ピクシーのユイちゃんが、わたしたちのお姉さんになるのかな?」

「わたしがお姉さんですか?」

「うん。問題児が多いから大変だけどね」

「……えへへっ、それでも嬉しいです!」

 

 ユイは、お姉さんというポジションがとても気に入った。基本的に成長する事がない彼女にとっては大変魅力的な言葉だったのだ。今回のクエストに参加できて本当によかったと思えるほどに。




次回はクエストの目的説明をしてから最初の冒険に入ります。
それから、次の更新は諸事情により遅れると思います。
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