ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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軽い手術を受けまして、名状しがたい苦痛と格闘中であります。
やはり健康が一番の宝ですね……。

今回は、クエスト説明回です。
ほんのりと大変な感じになっております。


第14話 狙われた巫女姫

 魔法でピクシーの姿となった一行は、NPCのマリアベルに案内されて小さな街を移動する。

 建物は他の種族の物よりメルヘンな感じにアレンジされており、このクエストだけのために用意されたとは思えない出来栄えだ。流石はフルスペック版のカーディナル・システムと言ったところである。

 当然ながらとっても貴重な光景なので、みんなは夢の国へ遊びに来た子供のように感動する。

 

「うわぁ~、こんなに作り込まれてるなんて、やたらと豪華なクエストだね~」

「うん。とっても可愛いから、ここだけなんて勿体無いよね」

 

 ロリっ娘と化したユウキとランがキャッキャとはしゃぎながら感想を述べる。

 そんな中、フィリアとアルゴはお店と思しき建物をチェックしていた。もしかしたら、ここだけで入手可能なアイテムを購入できるかもしれないと期待したが、どこも閉まっていて中に入れない。

 

「やっぱりドアは開かないわね」

「たぶん、中身が無いんじゃないカ?」

「舞台の書き割りみたいな感じかぁ」

「入れたとしても【底なし】の異空間につながってるだけだろうナ」

「そう考えると、ファンシーなデザインがかえって怖いわね……」

「って、せっかくの感動が台無しだよ!」

 

 身も蓋も無いことを言う2人にジト目を送る。確かにゲームではありがちな仕様だが、あえて言わなくてもいいじゃないか。

 ただ、このクエストにおいては建物に入れない理由がちゃんとあった。その答えは、街に入ってから続いている無人の風景にある。

 

「さっきから誰とも会わないな」

「恐らく、今回のクエストと関係があるとみた。この街の住人は何らかの原因で外に出れないのではないかと推察するが、私の予測は当たっているかな、マリアベル?」

「ええ、その通りです。今この街にいる者たちは、外に出ることを恐れて閉じこもっています」

「ほう、それはなぜかな?」

「現在我々は神の加護を失いつつあるからです」

「神の加護を?」

「そうです。妖精族の中でもっともか弱い我らは、神に加護されることでこの世界に存続しております」

 

 先頭を行くマリアベルは、前を向いたまま語る。

 

「神よりアルヴヘイムの道先案内を仰せつかった我らは、その務めを果たす見返りとして加護の力を授かっているのです。しかし、此度の災厄によって神との繋がりが絶たれてしまいました。そのため、現在の我らは滅びの危機に瀕しているのです」

 

 マリアベルが伝えた内容は、ALOにおけるピクシーの役割をフレーバーテキスト風にアレンジしたものだった。ようするに、ナビゲーションの役割を与えられているピクシーは、カーディナル・システムによってイモータルオブジェクトに設定されているという意味だ。つまり、神の加護を失うということは、破壊できるキャラクターになってしまうことになる。

 そうなれば、心無いプレイヤーに殺されてしまう可能性が出てくるわけだ。もし、この世界を現実として考えれば、外出できなくなってもおかしくない話である。暴力を許されたこの世界に彼らを守る法律なんて無いのだから。

 

「主の庇護にある同胞と違って、今の我々には身を守るすべがありません。ゆえに、神に与えられたこの聖域へ身を隠すしか自身を守る手立てがないのです」

「そうか。だからナビゲーション・ピクシーがいなくなったのね」

「ふぅん、そういうことなんだー」

 

 マリアベルの話を聞いてユウキたちは納得の声を上げる。これでプライベート・ピクシーと友好度が高いプレイヤーが選ばれた理由も分かった。しかし、神の加護を失いつつある理由が分からない。そのため続きを聞こうとしたが、今度ははぐらかされてしまう。今はまだ語る時ではないらしい。

 

「詳しいことは、巫女姫がいらっしゃる祭壇にてご説明します」

「了解した。愛の告白は、美しい姫君の元で聞くとしよう」

「いえ、愛の告白などはしませんけど……」

「皆まで言うな! 先刻承知だ」

「承知してんなら言うなよ」

 

 NPCすら困らせるグラハムの言動に、皆で呆れた視線を向ける。もちろんマリアベルが愛の告白をするはずは無いし、巫女姫もそれを聞ける状態ではなかった。

 

 

 街の中央にそびえ立っている塔の中に入ったキリトたちは、その中心にある祭壇へとやって来た。そこは巫女姫が神々とアクセスする神聖な場所だ。しかし、今は全く機能していない。なぜなら祈りを捧げるべき彼女が、巨大なクリスタルで全身を覆われているからだ。

 

「あれが巫女姫?」

「なんか封印されてるみたいだね」

 

 ユウキとランが巫女姫を観察する。青いクリスタルに覆われた彼女は空中に浮かんでいるような姿で目を瞑っており、意識は無いらしい。見た目はユイたちと同様に幼い少女で、長いプラチナブロンドの髪をいくつものロール状にしている、まさにお姫様といった容姿だ。

 

「このお方がピクシーの領主・巫女姫にあらせられます。祈りを捧げることで神と対話し、示された神託をもって我らをお導きくださる尊き存在です」

 

 マリアベルがみんなの視線を読んで説明し始める。どうやら、巫女姫がこんな状態になったことで危機的状況に陥っているらしい。

 

「モンスターに襲われてこんな状態になっているのか?」

「はい。巫女姫の精神を操ることで神の力を奪い、自身を不死の存在へ進化させようと企んだ者が、結界の隙間から使い魔を送り込んで毒を盛ったのです。その結果、巫女姫は精神を蝕まれてしまい、完全に意識を奪われる前に自らを封印なされたのです」

「なるほど。カーディナル・システムにクラッキングを試みるような敵がいるということカ」

「そう言っちゃうと色々台無しだけど、確かにそんな感じだね」

 

 アルゴとフィリアはそれぞれの意見を出し合って納得する。とんでもない展開だが、設定としては説得力がある。

 

「ところでさ、ソイツは不死になってどうするの?」

「それはわたしにも分かりません。しかし、彼の者があなた方の敵であることは確かであり、不死になれば何人たりとも手出しできなくなります。そうなれば、この世界は滅びの道を進んでいくことになるでしょう」

「滅ぶってアルヴヘイムが?」

「そうです。彼の者は、妖精が発する負の感情を糧に力を増大させる魔性の存在。不死となり、我ら妖精族を殺し続けることで、いずれは世界すら破壊できるようになるはずです。今はまだ巫女姫の封印を破るほどの力も無く、自身の作った結界内で力を蓄えているようですが、再び襲いかかってくるのは時間の問題でしょう」

 

 ユウキの質問に答えたマリアベルの言葉は、予想以上に重たかった。単なるクエストが、世界を危機に陥れる壮大な物語に進化してしまった。しかし、それを聞いたみんなは半信半疑である。

 

「随分話がでかくなったけど、クエストを失敗しただけでそこまで起こらないよね?」

「まぁな。どうせイベントを盛り上げるためのフィクションだよ」

 

 キリトは思ったことを口にする。彼らの言うように、単なるクエストの結果次第で世界が滅ぶことになるなど普通なら考えられない。しかし、オリジナルのカーディナル・システムで稼動しているこのALOでは話が別だ。

 その事実を知っているユイは、真剣な面持ちでキリトの意見を否定する。

 

「いいえパパ。マリアベルさんが言っていることは実際に起こる可能性があります」

「えっ?」

「一体どういうことなの?」

「オリジナルのカーディナル・システムには、ワールドマップを全て破壊し尽くす権限があるからです。なぜなら、旧カーディナルの最後の任務は、浮遊城アインクラッドを崩壊させる事だったのですから」

「ということは、このクエストを失敗したら……」

「もしかすると、イモータルオブジェクトになったボスが世界を破壊し始めるかもしれません」

 

 自分の意見を答えたユイは、可愛い顔に焦燥感を浮かべる。もちろん彼女が嘘をつくはずはないし、知識も確かである。

 だとすれば由々しき事態だ。たとえゲーム内の話だとしても、真剣に遊んでいる彼らにとっては現実と同様に大事なことだった。ユイという仮想世界の仲間がいる以上、ふざけてなどいられないのだ。しかも、復旧できる可能性があるのか分からないため、迂闊な判断もできない。

 

「ねぇキリト君。世界を破壊されたらどうなるの?」

「ようするにマップを破壊するってことだと思うけど……。もし運営側が定期的にバックアップを取っていなかったら、プレイヤーデータ以外は全部初期化するしかないだろうな……」

「ええっ!?」

「全自動でメンテナンスを不要とする代わりに手動によるデータ管理が難しくなっているカーディナル・システムの欠点だナ。あまりに手間がかかるから、大規模なバックアップをおこなっている可能性は低いと思うゾ」

 

 キリトの意見を聞いたアルゴは更に詳しい予測をする。簡潔に言えば、かなりの危機的状況ということだ。

 もし、彼女たちの話が実際に起こってしまったら、現実にも影響が出ることになる。長いキャンペーンクエストを一からやり直しするハメになったり、被ってはいけない貴重なアイテムが没収されてしまうなどの実害が出れば、多くのプレイヤーが怒り狂うはずだ。

 

「そうなると、ヘビーユーザーが大暴動を起こして酷いことになるだろうな」

「当然ALOの運営にも響くと思うゼ。最悪の場合は、二度と遊べなくなるかもしれなイ」

「そんな!」

「ってことは、このクエストってすごくヤバいんじゃ……」

 

 キリトとアルゴの推察を聞いてユウキたちがうろたえる。

 超法規的措置とも言える力が働いて、本来ならそのまま使えないカーディナルシステムの使用を許した結果がこれだ。人間の精神による影響を受けるような不確定要素の強いシステムが、運営側の思惑を超えて異常事態を起こしているのである。

 

「GMに知らせて消去してもらうか?」

「いや。恐らくその手はもう使えないだろう」

「なんでだ?」

「私たちがクエストを受けてしまったからだよ。もし、私たちがこのクエストをリタイアしたとしたら、その時点で最悪の結末が始まってしまう可能性がある。GMで対処できるか確証が無い以上、このままクリアすることが得策だ」

 

 確かに、グラハムの言うことには一理ある。そもそも、こんな話をGMに知らせたとして、まともに対応してくれるか怪しいものだ。ユイの存在を説明できない以上、こちらの説得力はほとんど無いのだから。

 

「こうなったら、俺たちだけでやるしかないな」

「ええ、そうね」

「大丈夫。ボクたちなら何とかなるよ!」

「わたしも全力で戦いますから」

「うん、みんなでがんばろう!」

 

 事態の重大さを理解したユウキたちは、逆にやる気を漲らせる。SAO組は言うに及ばず、ユウキとランも別世界の影響を受けて大きな度胸を得ていたため、このぐらいでへこたれはしない。なにしろもう1人の彼女たちは現実世界で本当の死と戦っていたのだから、その精神力は絶大だ。

 何はともあれ、全員の覚悟は決まった。結局の所、当初の予定通りにクエストをクリアすればいいのだ。そうなればと、勢い込んだキリトが話を進める。

 

「それじゃあマリアベル。俺たちはなにをすればいいんだ?」

「はい。あなた方には、巫女姫の精神を蝕んでいる毒を消し去るために霊薬を入手してもらいたいのです」

「霊薬?」

「ピクシー族の伝承には、あらゆる毒を中和する霊薬を作り出すことが出来る霊獣が存在しているとあります。はるか昔、この聖域に満たされている神気に惹かれて、ここより東方に広がる【清浄なる乙女の森】に住み着いたらしいのです。そこへ赴いて霊薬を入手できれば、悪しき存在の企みも潰えることでしょう」

 

 マリアベルは神妙な面持ちで語る。どうやら、ボスと戦う前にお使いイベントがあるらしい。

 

「目指すべき霊獣は非常に獰猛だと伝えられております。また、その道中でも霊獣に仕えし眷属が襲い掛かってきます。そのため、戦う力の無い我々ではどうすることも出来ません。ですので、勇敢なる妖精の剣士様にご助力をお願いしたいのです」

「ああ分かったよ。俺たちが巫女姫を助けてやる」

「心より感謝申し上げます」

「ところで、男女の組み合わせが必要なのはどうしてなんだ?」

「それも伝承に記してあったのですが、霊獣に対抗するためには強い絆で結ばれた男女が力を合わせる必要があるらしいのです」

「そういうことか……」

 

 今のセリフで大体分かった。その霊獣というのは中ボスで、そいつを攻略するために性別の違いが必要なのだろう。

 

「その他の情報はユイに渡しておきます。後は彼女の案内に従ってください」

「分かった」

 

 今のやり取りで情報の開示がおこなわれたらしく、早速確認したユイがうなずく。

 

「パパ。わたしの準備はオッケーです」

「よし、それじゃあ行くか」

「ああいいとも! 少年とならば、たとえ地獄の果てまでもお供させていただく!」

「まぁ、ほどほどにヨロシクな」

「ふっ。君との愛を貫いて修羅道に堕ちるもまた一興……いや、この場合は衆道と言うべきかな?」

「やっぱりお前は来なくていい!」

 

 せっかく気合を入れたのに、グラハムのせいで台無しになった。あえてシリアスな空気を和まそうとしたのか、単なるバカ野郎なのか。被害者のキリトとしては考え物だが、彼に好意を寄せている少女たちにとってはどちらでもよかった。

 

「もう、ソウ兄ちゃんにはボクがいるでしょー?」

「キリトさんばかりじゃなくて、わたしたちを見て欲しいな?」

「ほう。この私を口説き落とそうとするとは。頼もしいな、フラッグファイター!」

「お前らはどこまでもマイペースだな!」

 

 世界の危機を前にしてもイチャイチャして見せる能天気なグラハムたちにツッコミを入れる。しかし、幸せそうな彼らの前では空しく響くだけだった。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 マリアベルから説明を受けた一行は早速出発する。

 ピクシーの街から出ると一瞬で元の姿に戻ってしまい、ユウキたちは少し残念に思った。特に可愛いものが大好きなランは後ろ髪を引かれる思いをしていた。

 

「元に戻っちゃった……すごく気に入ったんだけどなぁ」

「そうだねー。みんな可愛かったモンね」

「でも、アルゴはあんまり変わらないわね。特に胸が」

「ほウ。そんなにオレっちとオハナシしたいのかなぁ、フィリア?」

「うひゃぁ!? って、なんであんたたちはわたしの胸を揉むのよぉー!?」

 

 余計な一言を言ってしまったフィリアは再び乳揉みの刑を受ける。キリト一家は、そんな彼女たちを生暖かく見守りながら道筋を確認する。

 

「ねぇユイちゃん。清浄なる乙女の森ってここから遠いの?」

「いいえ。マップデータからすると、それほど離れていないようです。ちなみに、このエリアは迷宮扱いなので空を飛べません」

「楽はできないってことか」

 

 ユイの説明を聞いたキリトはガッカリする。飛べない理由はちゃんとあって、ピクシーを守護するために作られたこの空間では他種族の力を抑えられているという設定だった。もちろんモンスターなども同様なので戦闘自体に影響は無いのだが、飛行制限だけは避けられないようになっている。ようは、『ズルしないで地道に攻略しろ』ということだ。しかし、ゲームバランスを保つために飛行禁止になることはよくあるので、その点は特に気にしない。

 今はそんなことより、静かに考え込んでいるグラハムの方が気になる。彼が何に気を取られているのか、一家を代表してユイが質問してみる。

 

「グラハムさん、なにか考え事ですか?」

「うむ。私は、このクエストがユイを意識して用意されたと考えている」

「その根拠は?」

「あるわけがない!」

「少しは考えとけよ!」

 

 いざ聞いてみたら、むかつく答えを返された。しかしアスナは彼の言葉を肯定する。

 

「でも、可能性はあるかもしれないよ? プライベート・ピクシーが関係していることもそうだけど、ボスがプレイヤーの負の感情でパワーアップするって、ユイちゃんと真逆の状況でしょ? 何となくだけど、ユイちゃんのことを調べて作られてるような気がするわ」

「そう言われると確かに関連性はあるな……。ALOのカーディナルがMHCPのユイに気づいてちょっかいを出してきたのか。それとも別の要素が絡んでいるのか。いずれにしても、実際に俺たちが選ばれた以上、疑う価値はあるか」

「ふん、根拠の無い推論に惑わされるなど、片腹痛い」

「お前が言い出したことだろうが!」

 

 自分を置いて話を進められたことにすねたのか、子供っぽく突っかかってくるグラハム。とはいえ、妙に勘の鋭い彼のおかげでこのクエストに疑惑を持つことが出来た。杞憂ならばそれで良しだが、これからは細心の注意を払って進めていくべきかもしれない。

 

 

 それからしばらく経ち、ユイの案内で清浄なる乙女の森の入り口までやって来た。道中はほぼ一本道で敵も出現しなかったが、ここからが本番というわけだ。

 

「いよいよか……」

「どうしたユウキ。緊張しているのかね?」

「う、うん……ちょっとだけ」

「失敗できないと思うと怖くなるよ……」

「同感だな。全滅した瞬間に世界が終わるというのなら、気後れするのもまた道理。だからこそ、あえて言わせてもらおう。生きて未来を切り開け!」

「「……うん!」」

 

 本番を前にして若干弱気になっていた紺野姉妹だったが、エリスママから送られたエールの言葉を聞いては奮い立たないわけにはいかない。

 

「ならば行くぞ、フラッグファイター!」

「「了解!」」

 

 身内ネタで盛り上がった3人は、気勢を上げて森へと駆け出す。しかし、中に入る前にユイから呼び止められた。

 

「ちょっと待ってください!」

「うぇっ!?」

「きゃっ!?」

「なんとぉ!?」

 

 急に声をかけられて驚いた姉妹がバランスを崩し、前を行くグラハムにぶつかって仲良く倒れこむ。

 ズザザァーッ!

 3人は前のめりに倒れて盛大に土煙を上げた。両腕を前に伸ばしたまま地面を滑る様子はギャグアニメそのものである。自分のせいでヘッドスライディングを極めてしまった彼らを見たユイはしまったと思ったものの、とりあえず無かったことにする。攻略を始める前に説明しておかなければならないことがあったのだ。

 

「えっと……この森は特定の条件を満たして進まないと目的地まで進めないようになっているようです」

「その条件ってのはなんだ?」

「残念ながら答えは記されていません。でも、森に入った直後からチェックされる可能性があるので、ここで対応策を考えておくべきだと思います」

「なるほド。それなら、プライベート・ピクシーを所有しているキリトを先頭にした方がいいかもナ」

「そうだね。このクエストはユイちゃんがカギになってるから有り得るかも」

 

 転んだままのグラハムたちは置いといて、とりあえず説明を始めるお茶目なユイ。そんな彼女の話を聞いたキリトたちは、すぐさま納得する。

 ユイが得た情報によると、『霊獣の縄張りと化した森には特殊な結界が張られており、侵入を許された者のみが解除することができる。もし条件を満たすことができなければ、容赦なく排除されるだろう』とある。つまり、条件を確認する審査が森のどこかでおこなわれ、失敗すれば一からやり直しという意味だと思われる。それがどのような形でチェックされるか分からない以上、条件を満たしていそうなキリトを最初から先頭に置くのは理にかなっている。

 何はともあれ、突入する前にやっておくべき事は済ませた。

 

「それじゃあ早速、お宝探しに行こうよ!」

 

 こんな状況でも割と落ち着いているフィリアは、思いっきり自分の趣味を全開にしたセリフを叫ぶ。SAOで攻略組を経験した彼女にとって、この程度の問題などどうということはない。

 無論、それはグラハムも同様で、さっきから静かにしている。そんな彼に視線を向けたフィリアは、楽しい気分を共有しようと話しかける。しかし、そこには彼女の意に反した光景が広がっていた。

 

「ねぇグラハム。こうやって一緒にクエストしてると、SAOの時を思い出すよねーって、なにやってるのー!?」

 

 気づくのが遅かったフィリアは、こそばゆいセリフを言い終えてからツッコミをかます。彼女の視線の先には、さきほど倒れた場所で寝転びながらイチャイチャしている3人の姿があったからだ。

 

「ねぇソウ兄ちゃん。プールに行った後はボクたちだけで海水浴に行こうよ!」

「実はママが旅行を計画してるんだ。もちろんソウ君も一緒だよ?」

「ほう。その情報は青天の霹靂……いや、千載一遇の機会と言うべきか。麗しき乙女たちと真夏のアバンチュール……。想像しただけで、欲望が体の端から滲み出てしまいそうだ!」

「思いっきりくつろいでる!?」

「お前らほんと自由だナ!」

 

 やけに大人しいなと思っていたら、3人仲良く頬杖をついて夏休みの予定を話し合っていた。

 

「ははは……あの子たちも結構大物だね」

「グラハムの幼馴染だからな」

 

 地面に寝転がりながら楽しそうに語らうユウキとランを見て、アスナたちは苦笑するのだった。




次回は、ようやく戦闘開始です。
中ボス戦の終わりまで行けるといいな~って考えております。
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