ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ 作:カレー大好き
新生アインクラッドの登場にともない、グラハムはかつての戦友から攻略の誘いを受けていた。その事をユウキたちに告げた後に、手伝いをして欲しいと誘う。すると彼女たちは、当たり前だと言わんばかりに速攻でOKしてくれた。
そこまでは滞りなく進んで良かったのだが……グラハムが一目置いている【あの男】の話に入った途端におかしなことになった。
「英雄って……まさか!?」
「そうだ、SAOをクリアした黒の剣士その人であり、私が心奪われた男だ!!」
「「…………えぇ――――――――っ!!?」」
まるで愛を告白しているようなセリフに、双子の姉妹は驚く。彼の奇行はともかく、あの有名な英雄と知り合いだったことに強く反応したからだ。
ユウキの言っている英雄とはSAOをクリアしたキリト――桐ヶ谷 和人のことで、黒の剣士という二つ名以外の情報は年齢を考慮されて関係者以外には秘匿されている。そのため、ユウキたち一般人は名前すら知らなかった。
そんなキリトとグラハムが知り合った経緯は、SAO内で友人となったリズベット――篠崎 里香に紹介されたことが始まりだった。彼女が運営していた鍛冶屋のお得意様だったことがきっかけで、偶然の出会いが生まれたのである。
実を言うと、大分前からお互いの存在を知っていたのだが、それぞれに事情があって直接関わりあおうとはしなかった。しかし、60層を過ぎたこの頃には諸々の問題も解消され、ようやく友好関係を築くことにしたのである。
『初めましてだな、少年! 私の名はグラハム・エーカー。ご覧の通り、変人だ』
『あ、ああ……変人なんだ』
『そうだとも! 周囲からは、我慢弱い、KY,魅惑の男色家とも呼ばれている!』
『初対面でそんなカミングアウトすんな!』
これが最初の会話だった。
いきなりふざけた挨拶をしたせいで、第一印象はあまりよろしくなかった。だが、落ち着いて話してみると意外に良いヤツで、人と深く関わろうとしていなかったキリトにとって貴重な友人となっていく。偶然にも同い年だったことや、お互いに攻略組だったなどの理由もあって、その間柄はゲームをクリアする最後の時まで続くことになった。
ただし、彼の変わった性格のせいで、あらぬ勘違いをしたアスナとひと悶着あったりして、色々と苦労させられたりもしたが……今ではいい思い出となっている(?)。
因みに、SAO帰還者のために作られた高等専修学校でもキリトとの親交は続いており、同じメカトロニクス・コースを専攻して、色々な発明品を作っては切磋琢磨しあっている。グラハム風に言うと、赤い糸で結ばれていたというべきか。
何はともあれ、彼らの関係にはそんな裏話があり、先ほどの展開に繋がっていた。
「(まさか、ソウ兄ちゃんと英雄さんが知り合いだったとはね~)」
ユウキは、グラハムの意外な交友関係に感心した。だが、それ以上に、彼が自分からSAOの話をしたことに軽い衝撃を受けていた。これまでは、お互いに気を使ってSAOの話はなるべく避けていたからだ。
それほどまでに、あの世界は地獄だった。
閉ざされた牢獄から命を懸けて脱出を試みる日々。それは想像以上に過酷だった。追い詰められ、心を病んだ人々が、殺人を犯してしまうくらいに。そんな現実染みた仮想世界の話なんかを彼女たちに聞かせたくない。人間の持つ歪みというものを見せ付けられたグラハムはそう思ってきた。自分の心に負ってしまった傷を隠すように。
それでも、時間が経つにつれて考えが変わっていった。キリトやアスナ、リズベットたちと楽しく過ごした日々までも否定したくはない。いや、する必要も無いはずだ。
当初は、茅場の犯罪に巻き込まれたという憤りで冷静さを失っていたが、あの世界には確かに自分たちの青春があった。恋も友情も、出会いも別れも……現実世界と変わらない、かけがえの無い思い出がたくさんあった。
『ならば、胸を張って語ればいい。頼もしき仲間たちと紡いできたこの絆を!』
半年経ってようやく過去を整理できたグラハムは、今回の誘いを機会に決心した。自分を慕ってくれるこの子たちに、自慢の友人を紹介しようと。
話を聞いたユウキたちも、彼が前向きに変化しようとしていることに気づいて嬉しくなった。しかし、今はもっと気にしなければならないことがある。それは、グラハムの悪い癖についてだ。
「ソウ兄ちゃんの【告白癖】は、男の人にも適用されるんだもんなー……ほんと困っちゃうよ」
「気に入った人には、愛の告白みたいなこと言っちゃうのよね……」
それで勘違いした少女や少年(!?)が、これまでにどれほどいたことか。正確な人数は定かではないが、ユウキたちが把握しているだけでも7人以上は確認されている。ある意味で、キリトよりも厄介な恋愛フラグ建築能力を持っているのだ。
本人にはその気が無いのに自然と相手を惹きつけてしまうのだから、まったくもって油断ならない男である。
「ボクは、ソウ兄ちゃんが新たな世界に目覚めちゃうんじゃないかって時々心配になるよ……」
「ふっ、私のことを良く理解している。流石は幼馴染と言ったところか!」
「今のはまったく感心するとこじゃないんだけど……とにかく、そういうこと言うのは、恋人のボクだけにしてよね!」
「ユウキ、さりげなく嘘をついてはダメよ?」
意外と抜け目の無いユウキは、グラハムに注意しながらさらっと事実を捏造(?)してランに睨まれた。こちらもこちらで油断ならないようだ。
「まぁ、何にせよ話は以上だ。この後、待ち合わせ場所に指定されたユグドラシルシティに向かうことになる」
グラハムの言うユグドラシルシティとは、この世界の中心にある世界樹に作られた都市の名称だ。リズベットはそこで鍛冶屋を営んでおり、彼女と親しくしている仲間たちは大体そこに集まると聞いている。今回の待ち合わせ場所もそういう理由で決まったらしい。
何にしても、あの英雄と仲間たちに会えるのだ。グラハムから詳細を聞いた2人は、思わぬイベントに心を躍らせる。だが、ここまでの話を思い返したユウキは、一つの疑問を抱いた。
「あれ? だったら、町にいた時に転移すれば良かったんじゃない?」
「無論、承知しているが、君たちを驚かしたかったのでね。いつものような行動をわざと演出したのだよ」
「ああ、そういうことか~」
「因みに、待ち合わせの時間は現実世界の午後9時だ」
「まだずっと先じゃん!」
今は午後5時くらいなので、この後夕食と入浴を済ませたとしても十分な余裕がある。二段構えのサプライズに引っかかってナチュラルなツッコミをしてしまったユウキは、可愛らしく頬を膨らませる。
「ところで、何でそんなに遅いの?」
「仲間の1人が社会人なのでね、そのくらいでないとログイン出来ないんだ」
「へぇ、大人の人もいるんだぁ。普通は歳なんて分からないから、何だか面白いね」
「確かにな。だが、私たちの仲間だからといって油断するなよ? あの男は、美しい女性ならばNPCでも口説く好色漢だからな。君たちと会えば確実に狙われるはずだ」
「えへへ~、ソウ兄ちゃんに美しい女性って思われちゃった!」
「もう、気にするところが違うでしょ?」
ランは、お気楽発言をするユウキに呆れた様子を見せる。頬が赤くなっているところを見ると、自分も喜んでいることは丸分かりだが、わざわざ指摘するのは野暮ってモンだ。
それより今は、なにをして遊ぶかを決める方が重要だ。
「とりあえず夕食までは自由ってことだよね?」
「ああ、その通りだ」
ランの言うように、夕食までの2時間くらいは自由に遊べる。彼女たちの母親が晩御飯を作り終えるまでは存分に楽しめるというわけだ。
「ゆえに、これからひと狩りしに行こうと思うのだが、付き合ってもらえるかな?」
「もちろん、キリトって人とデュエルしたいから、もっと強くならなきゃ!」
「私もみなさんについて行けるように、少しでも鍛えとかないと」
「うむ、いい返事だ。当てにしているぞ、フラッグファイター!」
ランとユウキは、意味不明なグラハムの言葉を軽く受け流しつつ、嬉しそうに返事する。結局2人は、大好きなこの少年と遊べれば満足なのだ。適当にあしらっているように見えるけどそうなのだ。
「それじゃあ、早く行こうよソウ兄ちゃん!」
「今日は一杯付き合ってもらうからね」
「ああ、いいとも。このグラハム・エーカー、君たちの望むままに従おう」
グラハムは、無邪気な様子で自分の腕に抱きついてきた可憐な妖精たちを見つめて、小さく笑みを浮かべた。
バーチャルワールドの片隅で行われている、普段通りのスキンシップ。彼がSAOを生き抜くことができた理由がそこにあった。
☆★☆★☆★☆
「てやぁー!!」
勇ましいユウキの声が草原に響き渡る。
先ほど墜落した現場から少し移動した場所でモンスター狩りを始めた3人は、現在、この辺りに出現するオオトカゲ型の敵と戦っていた。このゲームのオオトカゲはステータス異常を発生させる厄介な種類が多く、こいつも麻痺効果のあるガスを吐いてプレイヤーを翻弄する。
今も、ヘイト役を買って出たグラハムに向けて黄色いガスが襲いかかろうとしていた。
「これしきのこと! かわしてしまえば、どうということはないのだよ!」
敏捷度に重点を置いてカスタマイズしているグラハムは、機敏なマニューバで避けて見せた。その反対に、大技を出したオオトカゲは硬直状態になり、好機を得たユウキとランが一気に攻め込む。
「今だ、姉ちゃん!」
「一気に行くわよ!」
素早く駆け寄った双子の姉妹は、鮮やかな連続切りでダメージを蓄積させ、最後の止めとばかりにソードスキルを発動させた。
「「貫けぇ―――!!」」
ユウキは片手剣の技であるヴォーパル・ストライク、ランは細剣の技であるリニアーで強烈な突きを繰り出す。ピッタリと息を合わせて同時に放たれたそれは、衝撃波をともなってオオトカゲに直撃した。
「グォォォォォ――ッ!!」
狙い通りに同時スキルチェインの効果が発生して勝負は決した。2人の集中攻撃でHPバーがゼロになったオオトカゲは、断末魔の声を上げながら光の欠片となって砕け散る。
「いえ~い、やったね!」
「うん!」
上手く連携が決まったユウキたちは、嬉しそうにハイタッチする。
それにしても、すごい剣技だった。彼女たちはごく普通におこなっているが、現実世界では絶対に再現することが出来ない動きだ。
その理由は、もちろんVRMMOのシステムにある。
すべてのVRマシンはユーザーの脳と直接接続して仮想の五感情報を与える仕組みなため、システム側の処理速度を上げることであらゆる行動を【加速】させることが可能となっている。それが、この世界の最大の魅力を生み出しているとも言える。
ただ、その事実を考慮しても、ユウキたちの鮮やかな動きには目を引くものがあった。半年間2人を見てきたグラハムには、経験以上に成長しているような気がするのだ。元々素質があったおかげか、それとも愛の成せる業か。いずれにしても、良いことには違いない。
「見事だったぞ、2人とも! この調子ならば、キリトたちにも引けは取るまい」
「へへ~ん、ボクもそう思うよ」
「もう、ユウキはすぐ調子に乗るんだから」
ユウキは自分でも自信があったようで、グラハムの褒め言葉をすんなりと受け入れる。ランの方も嗜めるような言葉とは裏腹に、彼の言葉を否定しない。彼女たちは、自分の力量をしっかりと把握しているようだ。
「どうやら、私の知らぬ間に努力を積み重ねていたようだな」
「うん、まぁね……」
グラハムが成長の原因について質問すると、ユウキにしては珍しく曖昧な返事をした。
実を言うと、彼女の急成長にはあまりに意外な要素が関係していた。それは、時々頭に浮かんでくる【不思議なイメージ】だった。ALOを始めてからしばらくすると、自分の知らない自分のイメージが【見える】ようになったのである。今よりも遥かに強い自分のイメージが。そのおかげでアバターを使いこなすコツのようなものを掴む事が出来たため、彼女は急成長することが出来た。
もちろん最初は途惑ったが、すぐに気のせいだと思うようになった。いつも一緒に遊んでいるランも、自分と同じように強くなっていたからだ。
実際は気のせいではなく、【もう一人のユウキ】の意識が双子のランにも影響を与えたからなのだが、その真実に気づく者は誰もいない。もちろん、同一人物であるユウキでさえも。
「(やっぱり全部気のせいだよね……。でも……)」
考えれば考えるほど、気になって仕方がない。
やたらと強い自分に見知らぬ仲間たち。そして、少しだけ雰囲気の違う姉。妄想にしては妙に具体的で、思い返すと胸が締め付けられるような、切ない気持ちになる。この現象は一体何なのだろうか。
白昼夢? デジャブ? それともまさか、ボクの右目に秘められていた異能の力が……!
「どうしたユウキ。中二病が自分の設定に酔いしれているような表情をしているが?」
「うぇっ!? そそそ、そんなこと、まったく全然考えてないよ~? あはははは……」
妙に勘の鋭いグラハムに図星を突かれたユウキは、典型的なリアクションで誤魔化した。
とりあえず、今はこの話は置いておこう。
「(別に嫌な感じはしないからね)」
ユウキは、本能的に何かを察して、この不思議現象を受け入れる。だって、あのイメージを感じている時は、温かくて嬉しい気持ちになれるから。
☆★☆★☆★☆
グラハムたちがログインしてから、もうじき2時間が経とうとしていた。現実世界では午後の7時になるので、そろそろ夕食が出来ている頃合だ。
戦闘を楽しみながらもしっかりと時間を見ていた3人は、予定時間の少し前に町へ戻ってきていた。シルフ領首都・スイルベーン、そこに彼らの家があるのだ。
以前までのALOは種族間の戦争がメインだったため移動するだけでも色々と制限があったのだが、その原因だった世界樹攻略イベントが消滅した現在は異種族の交流がかなり自由になった。
そのような経緯の後、グラハムたちはすぐに3人で使える家を買った。今はそこに帰宅して、仲良く寛ぎながら今日の収穫アイテムを整理していた。
「えっと、これは姉ちゃんにあげるね」
「うん、ありがとう。じゃあ、代わりにこれをあげる」
「おーやった! もう少しであれが作れるぞ!」
双子の姉妹は、お互いの素材アイテムを交換して盛り上がっている。今日はなかなか良い物が手に入ったようだ。しかし、いつまでものんびりとはしていられない。
「2人とも、そろそろ戻らねば、遥(はるか)さんに注意されるぞ?」
時間をチェックしていたグラハムから忠告が入る。あまり遅くなると、ユウキたちの母親である遥ママに迷惑をかけてしまう。
「あれ、もうそんな時間なんだ」
「それじゃ、ログアウトしようか」
「うむ。それでは、現実世界でまた会おう、私の可愛い眠り姫たち!」
「うん」
「またね」
状況を理解したユウキたちは、作業を止めてログアウトの準備を始める。空中に現れたメニュー・ウインドウを慣れた手つきで操作して、ささっとログアウトボタンを押す。
そして、しばらく後にすべての感覚が現実世界に戻ってくる。
アミュスフィアのバイザー越しに見える景色は、見慣れた木綿季の部屋だ。実を言うと、3人で木綿季のベッドに寝転がってログインしていたのである。つまり、グラハムはリアルでも彼女たちと一緒にいたのだ。
「へへっ、おかえりソウ兄ちゃん!」
「おかえりなさいソウ君」
先に戻ってきていた木綿季と藍子が、腕に抱きつきながら出迎えてくれた。これが、グラハム・エーカーこと松永 宗太郎(まつなが そうたろう)の日常だった。休日の前は、ほとんど毎週紺野家に集まって遊んでおり、いつもこのような状況になっている。
何も特別なことではなくて、幼馴染の彼らにとっては子供の頃から続けている当たり前の行事だ。しかし、SAO事件を経験してからは、とても大切な時間に変化していた。あの事件は、それほどまでにユウキたちの心に【喪失】という恐怖を与えていたのである。
そのことをよく理解している宗太郎は、2人を安心させるように笑顔で返事することにしていた。
「ただいま、2人とも」
「「チュッ」」
「って、なんで頬にキスするんだ!?」
「さっきのサプライズのお返しだよ」
「そうそう」
「はぁ、俺のヤツより刺激的すぎだろ……」
宗太郎は、照れながら愚痴る。女子中学生になった彼女たちとこんな事をしていては流石にまずい気がする。とはいえ、2人の気持ちは理解しているので、今更止めろとは言いにくい。しかも親公認だし。
「(正直に言えば嬉しいんだけど、狙い撃つにはまだ早いんだよな……)」
ゲーム内の奔放な性格とは違って、現実世界の宗太郎は人並みにシャイボーイだった。
しかし、彼もまた2人のことを愛していた。お互いに気持ちが通じ合っていたからこそ、彼はSAOから生還できた。絶対に生きて2人と再会するんだと、確かな希望を抱くことが出来たおかげだ。
「(ほんと、俺は恵まれてるよな)」
少女特有の甘い匂いと柔らかい感触を受け止めながら思う。もし、彼女たちと出会っていなかったら、彼女たちが彼に恋をしていなかったら。宗太郎は……SAOの中で死んでいただろう。
今より2年半前。茅場の犯罪に巻き込まれ、デスゲームを強要された宗太郎は、激しい怒りを感じた。『人の命を何だと思っていやがるんだ』と。子供の頃に大切な人との永遠の別れを経験していた彼は、人の命というものに対して過敏な反応を示すようになっていたのだ。
『そんなの、人の死に方じゃない!!』
茅場の演説を聞いた彼は、怒りに任せて行動しようとした。速攻でクリアしてアイツのふざけた犯罪を台無しにしてやると。だがその前に、ふと現実世界のことを思い浮かべた。ゲームの感想を聞こうと自分の帰りを待っている木綿季と藍子のことを。
この事件が公になったら、向こうにいる2人はどうなるだろうか。恐らく、彼女たちは自分の状態を見て悲しむはずだ。そう思った途端に、無謀な行動は出来なくなった。
早くクリアしたい。だが、死ぬわけにはいけない。自分は、命がけの戦いに挑みながらも生き続けなければならないんだ。このSAOという仮想現実で。
『たとえ矛盾を孕んでも存在し続ける、それが生きるという事か……』
宗太郎は、好きなアニメキャラの名セリフを思い出した。
頭の中では理解できる。生きて戻るには、この狂った世界を受け入れなければならないということを。しかし、このままでは茅場に対する怒りを抑えられそうもない。
だからこそ宗太郎は、自分の心を偽るためにペルソナを作る事にした。アバター名にしていたグラハム・エーカーという面白キャラを演じることによって、不安定な自分を押さえ込もうと考えたのだ。
『まさかな。よもやロボットアニメ好きがこんな結果になろうとは。……乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!』
こうして、SAOに変なプレイヤーが出現することになった。いざやり始めた途端に思いっきりハマってしまったのは想定外だったが、とりあえず効果があったことは確かなので良しとしておこう。
ただし、2年間もグラハムを演じ続けた結果、変な癖がついてしまった。VRMMOをやると別人のようになってしまうのはそのためだ。木綿季と藍子は、初めて彼とALOをやった際に、その事実を知って驚かされた。まぁ、この状態になるのはゲーム内だけなので、特に問題はあるまい……。告白癖がパワーアップしてしまった点を除けばだが。
何はともあれ、懸命に生き抜いた宗太郎は望んだ場所に帰ってこれた。
そして、ようやく元の生活に戻ることが出来た3人は、共に幸せを噛み締める。大好きな人が生きて傍にいるという当たり前の幸せを。
木綿季と藍子は、宗太郎の腕に思いっきり抱きついて、伝わってくる温もりを存分に楽しむのだった。
「なぁ、早く飯食いにいかないか?」
「まだダメ~」
「もうちょっと~」
「はぁ、やっぱりいつも通りか」
緩みきった表情で答えてくる2人の様子を見て、宗太郎は嘆息する。これも恋人兼お兄ちゃんである彼の役目だ。
「まぁ、2人の胸が気持ちいいから良しとするか」
「そーいうことは口に出しちゃダメでしょー」
「そうだよソウ君、エッチなことはまだダメだよー」
そう言いながらも離れようとはしない甘えん坊な紺野姉妹であった。
とうとうアニメが終わってしまいました……。
ハッピーエンドというわけではありませんでしたが、本当にいい作品でした。
後はゲームが待っていますが、ユウキも動かせるといいなぁ。
ご意見、ご感想をお待ちしております。