ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ 作:カレー大好き
GGO編の前にシノンとユウキが出会って友好関係を築いていくという内容です。
その際、彼女が宗太郎に惚れるかどうかは考え中であります。
※小説は未読なので、シノンの描写は原作と異なるかもしれません。
第21話 ガンダムビルドファイターズ・オンライン
2025年9月14日。ガンゲイル・オンラインというVRMMOにて1人の少女が戦っていた。通称GGOと呼ばれるこのゲームは銃火器による銃撃戦をメインに扱ったFPSで、その少女もいかつい銃を用いて巨大なモンスターを狙撃していた。
プレイヤーの視界に表示される
バァンッ!!
「……」
シノンと名付けられたアバターは、表情を変えることなく銃弾の行く先を見つめる。フランス製の狙撃銃FR―F2から撃ち出された弾丸は、狙い通りに弱点となっている額へ命中した。見事な腕前である。システム上、長距離狙撃の成功率が極端に低くなっているこのゲームで、彼女ほどの実力を持ったプレイヤーはごく稀だ。
とはいえ、シノンが落ち着いて実力を発揮できるのには理由があって、相手の攻撃が届かない安全地帯にいるおかげだった。トラップにはまって偶然辿りついた場所が、レアなボスキャラを狙撃するのに最適なポイントだったのである。その場所にいれば尻尾から発射されるビームが届かず、一方的な攻撃が可能だった。
しかし、すべてが上手くいっているわけでもない。こちらの攻撃手段も狙撃しかなく、弾丸も心もとなかった。残りのマガジン数と与えられるダメージ量を計算してみたところ、非常に厳しい状況だと分かる。
「(全部弱点に当てないと倒せないか……)」
現状を把握したシノンは内心でぼやく。1発命中させるのも至難の業となる遠距離狙撃を一度もミスすることなく数十発も当てなければならないのだから無理もない。
だが、それでもやってみせると意気込む。元々死ぬ気で最奥部まで来たのだ。諦めるなどという選択肢は有り得ない。いや、それどころか、望むところである。ゲームという枠を越えた目的がある彼女にとって、この状況は好都合とも言えた。
「(これに勝てれば、もっと強くなれる!)」
とある事情により『強さ』を求めているシノンは覚悟を決めた。
その結果、神経を使う狙撃作業を3時間も続けることになったが、苦労の甲斐があってボスキャラの撃破に成功する。
「……」
青白い光となって砕け散るボスキャラを高台から見下ろす。ダメ元で挑戦していたためあまり達成感は無いが、彼女が倒したモンスターは非常に希少な存在だった。
その証拠にGGO内サーバーで僅か10丁しかない超レアものアイテムが報酬となっていた。
表示されたウィンドウを操作してその銃を手に入れると、目の前にオブジェクト化された。それを慌てて持ち抱えると、見た目に見合った重さが伝わってくる。その銃の名は、
「へカート……」
可憐な少女には似合わない大型ライフルを両手で持ちながらその名をつぶやく。この時彼女は、求めていた強さに少しだけ近づけた気がした。
☆★☆★☆★☆
シノンがシリアスな様子で孤軍奮闘していた同時刻。宗太郎と紺野姉妹もVRゲームで遊んでいた。もちろん、シノンがやっていたGGOとは別のVRMMOだ。
タイトルは、ガンダムビルドファイターズ・オンライン。通称GBOと呼ばれているそのゲームは、名前の通り『機動戦士ガンダムシリーズ』を扱った作品である。
宗太郎は、ソウ・マツナガという安直なアバター名でログインし、漆黒の宇宙空間を愛機に乗って飛翔していた。
「ブルーブレイヴス隊、相手のガンダムは更に魅力を増している。見惚れすぎて落ちるなよ!」
「「了解!」」
彼の両サイドに並んで編隊を組んでいる紺野姉妹が元気よく返事する。2人はALOと同様にユウキとランという名で参加している。ちなみに、小隊名のブルーブレイヴスは彼女たちの名前を英語にしたものだ。ガンダム好きな宗太郎に影響された彼女たちもノリノリでプレイしており、ALOと同様にかなりの実力者となっている。
「新しい機体も良い調子だね」
「うん。これならタツヤさんに勝てるかも」
「無論そのつもりだ。待ちに望んだ今宵の舞踏、楽しませてもらうぞ、ガンダム!」
ここでもグラハムになりきる宗太郎は、人型機動兵器・
このようにガンダム世界を擬似体験できるGBOだが、VRMMOとして楽しめるようにもアレンジされている。
ゲーム内容を大まかに説明すると、地球を拠点にしている地球連邦軍とサイド3というスペースコロニー群を拠点にしているジオン公国軍にわかれて陣取り合戦をおこなう、アクション重視のロボゲーとなっている。
プレイヤーは1~5人で1小隊を構成し、所属する陣営と契約を結んだ傭兵部隊として活動することになる。基本的には、敵勢力内に潜り込んだ際に発生する小規模な戦闘で自身を鍛え、定期的に募集される大型クエストで拠点攻略の戦争をおこなう。それを繰り返して一定以上のパワーバランスが崩れると、劣勢の陣営側に新たな拠点が出現してゲーム内容が拡張されていくといった流れだ。
当然ながらプレイヤー同士のデュエルも可能で、中立地帯にある【ガンプラバトル・スタジアム】にて自由に競い合うことが出来る。
ここまでは従来のゲームにも見られるもので、内容自体はそれほど目新しくは無い。
しかし、このGBOには、最新技術を活用した画期的な要素があった。それは、現実のガンプラをスキャンすることで自分だけの機体を使用できることだ。
メーカー指定の素材で作った作品を可動する部分で分解し、模型店などに設置された専用3Dスキャナーでデータ化、それをゲーム内で再度組み立てて登録する。変形機構などのギミックは手動で動かして基点となるモーションを記録することで認識され、後は武装などの設定を入力すればシステムが能力値を自動決定する。その際、プラモの完成度次第で通常の3倍まで能力値を上げられるという特典もあり、ガンプラファンから高い評価を得ている。
もちろんゲーム内だけでも機体を改造できるが、現実でおこなうものより自由度は少ない。しかも能力値の高いパーツを入手するには手間がかかるので、このゲームをやっているプレイヤーはモデラーが多い。
現に宗太郎も自作の機体を使っており、彼の乗っているMSは、フラッグカスタムにツインドライヴを搭載した【ダブルオーフラッグ】となっている。遠近両方に対応できる武装・GNグラハムソードが装備されているため、戦域を選ばない仕様だ。
「私の熱き想い、存分に見せてやるぞ。このダブルオーフラッグで!」
銃のような持ち方の操縦桿を操りながら気合を入れるソウ大尉。そんな彼の意思を反映して、スマートな黒い機体が機敏に動く。
このゲームにおけるMSの操縦は、機体の動作をイメージするだけで操作できる【サイコトレースシステム】を採用している。イメージというものは曖昧で判別しにくいものだが、VRマシンとAI技術が発達したおかげでアバターを動かす程度のことは十分に可能となっていた。事前にいくつかの動作テストをおこない、その際に発せられる脳波パターンを専用AIが学習してMSの動作に反映させるという仕組みだ。それに加えて、コントローラー、フットペダル、音声入力などの操作で、飛行や変形といった特殊アクションもおこなえるようになっている。
無論、自在に動かすにはそれなりの慣れとセンスが必要になってくるが、その分上手に動かせた時の感動は大きい。宗太郎に感化されて始めたユウキとランもすっかりハマって、鋼鉄の巨人を自在に操ってみせる。
「ねぇ姉ちゃん。ボク、この戦いが終わったらソウ兄ちゃんと結婚するんだ」
「なにその死亡フラグ! っていうか、ただの願望でしょソレ!」
のん気な会話で戦闘前の緊張感をほぐす。
彼女たちの機体も宗太郎が作った新型で、ブレイヴ一般用試験機という同型機をそれぞれ異なるタイプに調整している。ユウキの機体は【アサルトブレイヴ】という名の接近戦仕様で、GNロングソードと無線式の誘導兵器・GNファングによる白兵戦で真価を発揮する。それに対してランの機体は【バスターブレイヴ】という名の長距離支援用となっており、両肩に追加したGNビッグキャノンと翼状に装備されたGNライフルビットによる集中砲火で相手を圧倒する。
そんなわけでユウキたちも張り切っているのだが、一戦目は支援に徹することにしている。相手の隊長は宗太郎がライバルと認めた男だからだ。
「今日は絶対に勝とうね、ソウ兄ちゃん!」
「その声援に了解だと言わせてもらおう。しかし私はソウ兄ちゃんなどではない。このほど昇進して上級大尉になったグラハム・エーカーだ」
「訂正したほうが間違ってるよ!」
名前が違うのにあえてグラハムを押し通す宗太郎にランのツッコミが入る。このゲームではガンダムキャラの名前を入力できないようになっているため、SAOで2年以上もグラハムを名乗っていた彼としては物足りないのである。
しかし、彼が特別というわけではない。今回の対戦相手であるタツヤもまたシャアのような口調で話す奇抜な男であった。
その証拠とでも言うように、宗太郎たちの前方からやって来た先頭の機体から独特な雰囲気の通信が入る。
『久しぶりの対戦に血が滾るな、ソウ・マツナガ』
「ふっ、今日という日を一日千秋の思いで待ちわびていたぞ、メイジン・カワグチ」
『それはこちらも同じこと。あの日の感動を再び味わうために、更なる高みを目指すために、私はここに帰って来た!』
「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。あの日の私たちはとても情熱的だった。君と奏でた真夏の記憶は、今もこの胸をときめかせる。ゆえに私は、君との再戦を熱望する!」
『あえて願うこともない。あの日の戦いは、ガンプラの歴史に燦然と輝く名勝負だった。だからこそ、私たちはここにいる。戦う運命に導かれている!』
「ああそうだ、私と君は運命の赤い糸で結ばれていた! ガンプラバトルで愛を紡ぎあうためになぁ!」
いきなり話しかけてきた対戦相手は宗太郎と暑苦しい会話をしだす。
ちなみに2人が言っているあの日というのは生理的なアレではなくて、8月下旬にGBO内で行われたガンプラバトル全国大会のことである。それに参加した宗太郎は準決勝でこの対戦相手――ユウキ・タツヤと戦い、敗北した。その結果、現実でも交友を深めていた2人は、更に情熱的なライバルとなった。
しかし今は真剣勝負の時。必要以上の馴れ合いはしない。
『少しばかり話が弾みすぎたようだ。これではせっかく集まってくれたギャラリーに申し訳が立たん……そうは思わないか? いや! 私はそう思うっ!』
相手の返事を待たずに反語を全て言い切ったタツヤは、自身が操るガンダムアメイジングエクシアを加速させる。
それに反応した宗太郎たちは、飛行形態のクルーズポジションからMS形態のスタンドポジションに変形して迎え撃つ。
「ブルーブレイヴス隊、フォーメーションDでミッションを開始する。彼らの心を射抜いてみせるぞ!」
「「了解!」」
事前に決めた作戦通りに動く3人。ようするに1対1の形に持ち込むオーソドックスな戦法だ。
宗太郎は、自身の相手であるタツヤのもとへまっしぐらに進んでいき、ユウキとランはタツヤの後方から左右に散開してきた機体を追う。
「ストライクはボクに任せて!」
「それじゃあわたしはMk-IIの方ね!」
相手を見定めた2人は、それぞれの武器を手にして攻撃を開始する。
GNロングソードを構えたユウキは、タツヤの戦友が操縦するスタービルドストライクガンダムに立ち向かう。
「見せてもらうよ、全国大会優勝者の実力とやらを!」
『いいぜ。イヤと言うほど見せつけてやるよ!』
ユウキから定番とも言える挑発を受けた対戦相手は勝気な様子で応える。彼の名はレイジと言って、操縦技術に長けたプレイヤーだ。その証拠に、全国大会ではタツヤを破って優勝している。宗太郎との準決勝で消耗していたとはいえ、ガンプラマスターの証であるメイジン・カワグチの称号を与えられた彼に勝った腕前は本物だ。
そして、このレイジに最高のガンプラを与えた相棒がランの対戦相手であるセイだ。大型ビームライフルを装備したビルドガンダムMk-IIを操り、中距離からの射撃戦を仕掛けてきた。
それに対するランの機体も遠距離砲撃型なので、良い勝負になりそうだった。
「行きますよセイさん。ソウ君の作ったガンプラであなたに勝ちます!」
『こっちこそ負けないよ! 僕が一番、ガンプラをうまく作れるんだ!』
こちらもどこかで聞いたようなセリフで盛り上がる。プレイ中の言葉遊びもこのゲームの醍醐味であり、華麗な剣の舞を演じている宗太郎とタツヤも暑苦しい会話をぶつけ合う。
『ほう、勇ましい乙女たちだ。彼女らもまた、この勝負に心躍らせているようだなぁ!』
「当然だ! ガンプラバトルは我らが魂! いついかなる勝負も、ただ燃え上がるのみ!」
『私としたことが愚問だったな! 我らの遊びは常に真剣! すべてをこの瞬間にかけて、ただ突き進むのみ!』
「それこそが揺ぎ無き真理! それこそが戦士の生き様! なれば我らの心は一つ!」
「『燃え上がれ! 燃え上がれ! ガンプラ!』」
言葉通り熱く燃えるタツヤは、アメイジングGNソードを巧みに操りダブルオーフラッグに襲い掛かる。それに対して宗太郎は、キリトを参考にした二刀流で応戦する。
「人呼んで、グラハム・スペシャル!」
『なんと!? それが噂のソードスキルか!』
「否! これはただの剣術だ!」
『不可解な! 特別と言っておいてただの剣術とは!』
「何もおかしくはないさ! ただのキックも、頭にライダーを付ければ必殺技となるのだよ!」
『ええい、勝手な理屈を! 世界観をわきまえたまえ!』
どこまでもめんどくさい会話を貫き通す2人は、互いにトランザムを使って目にも留まらぬ高速戦闘を始めた。セリフはアレでも腕は確かで、バトルを観戦している者たちを魅了する。
『とくと見るがいい! これが、メイジンの名を与えられた男のガンプラバトルだっ!』
「その意気や良し! 君の想いを私の愛で受け止めてみせよう、ガンダムッ!」
『ってか、お前らキャラ被りすぎだろっ!』
あまりのくどさに観客からツッコミが入る。ノリの良い彼らでも流石にここまで個性的な者たちを放っておくことは出来なかった。
何はともあれ、こうして彼らの宴は大いに盛り上がり、楽しい青春の1ページとなるのだった。
☆★☆★☆★☆
GBOで大いに燃え上がった次の日。紺野家にお泊りした宗太郎は、木綿季の部屋でぐっすりと眠っていた。今日は敬老の日なので、月曜日でもゆっくり寝ていられる。
しかし、午前中から出かける予定があるので、いつまでものんびりしていられない。タツヤたちに勝利した記念に祝勝会という名のデートをすることになったのである。
そんなわけで、先に起きた木綿季はさっさと着替えると、気持ちよく眠っている宗太郎を起こすべく行動を開始する。
「くふふ、どうやって起こそうかなー?」
寝相よく眠っている宗太郎を前にして、ニヤリとほくそ笑む。藍子はまだ自分の部屋で着替えをしているので、今が色々とできるチャンスだった。
「それじゃあまずは、添い寝から行ってみよう!」
初手を決めた木綿季は、眠っている宗太郎の右側に寝転がってピッタリと寄り添う。腕に押し付けた胸がムニュっと接触してその存在をアピールする。キャミソールとミニスカートという薄手の格好で抱きついているため、彼女の柔らかさが直接的に伝わる。
「えへへ~、こうしてるとなんか幸せ~♪」
頬を赤らめながら宗太郎の温もりを味わう。普段はバカな子供みたいな彼だが、生まれた時から一緒にいる木綿季は、彼の魅力を十分に知り尽くしている。
その上で、真っ直ぐな愛を向けられているのだから惚れないわけがなかった。今はまだ妹扱いだが、ママみたいなナイスバディに成長すればきっと彼も……。
「大丈夫、ボクのオッパイなら巨乳になれるよ!」
木綿季は、自身の胸に向けてエールを送る。今はまだ歳相応だけど遺伝的には問題ないので高校生になれば一気に育つだろう、たぶん。
「それまでちょっぴり待っててね~、ソウ兄ちゃん」
結構おませな木綿季は、こそばゆいことを言いながら宗太郎の頬にキスをする。一見すると手馴れた様子だが、内心ではものすごくドキドキしていたりする。それでも、好きという気持ちが上回ってさらに大胆な行動に出てしまう。
「ソウ兄ちゃん……ボクの心臓、こんなにドキドキしてるよ……」
色っぽく四つん這いになった木綿季は、熱の篭った言葉を発しながら宗太郎の右手を自身の胸元に押し当てた。
ドクン、ドクンと力強い鼓動を感じる。愛しさが募って思わずやってしまったが、こうしていると自分が生きているという実感が湧いてくる。
サチと出会うことになった例のクエストが、彼女を積極的にする原因となっていた。あの時心を震わせた【死の感触】が木綿季に影響を与えて、大切な人たちとの絆をより一層強く感じさせるようになっていたのである。
「(うん……ちょっと恥ずかしいけど、すごく落ち着く)」
宗太郎の温もりを身近に感じて嬉しくなった木綿季は、とても綺麗な笑顔を浮かべる。その光景は、淫靡さよりも美しさを感じさせた。
しかし、女体に興味津々なお年頃の宗太郎としては、感動だけで終われない。悲しいかな、身体の方は素直に反応してしまう。
「(なにこのワンダーランド!? 目を覚ましたらオッパイ押し当てられてるんですけどっ!?)」
めっさ嬉しいけど反応に困る。だって、すっごい幸せそうな表情してるんだもん。これでは迂闊な対応が出来ないではないか。何となく気まずいので、とりあえず眠ったフリをしてしまったが、この後どうすりゃいいってばよ。なんて思っていたら、木綿季の口から心の篭った言葉が紡がれる。
「ソウ兄ちゃん、大好きだよ」
「(うん……俺も好きだぜ子猫ちゃん。でもゴメンな。今はまだ答えを出せないんだ。お前と同じくらい藍子のことも好きだからな……)」
本当に卑怯なお兄ちゃんで申し訳ない。しかし、大好きだからこそ嘘はつけなかった。
そもそも、このタイミングで起きたら非常に気まずくなること請け合いである。妙なスイッチが入ったらしい木綿季は、宗太郎の右手を自分の右胸に押し付け始めたし……。
「(ちょ、なにやってんの木綿季さん!? 俺の右手があなたのオッパイにめり込んでますよー!?)」
「むむ~、どう見てもボリューム不足か~。もっと大きくならないとエッチなソウ兄ちゃんを満足させられないかな……。オッパイとカレーに対するこだわりは全国レベルだからねー」
「(って、この子なに言ってんの!? 確かに俺はカレー好きの巨乳派ですけど、全国レベルってどういう基準!?)」
タヌキ寝入りをしながら心の中でつっこむ。傍から見てると羨ましい状況だが、興奮している股間の暴れん坊と必死に対話し続けている宗太郎にしてみれば、オッパイの感触を楽しんでいる余裕は無い。まさに天国と地獄である。
しかし、健気な抵抗を試みている彼に対して更なる試練が襲い掛かる。自室で着替えを終えた藍子がこの場面で入室してきたのである。
「ねぇ木綿季、ソウ君起こした……って、なにやってんのーっ!?」
「うきゃっ!? 姉ちゃん!?」
部屋に入ったら妹と義兄がエッチなスキンシップをしていたでござる……。とってもインモラルな場面を目撃した藍子は、瞬間的に顔を赤らめながら妹の暴挙を止めるべく動き出す。
素早く駆け寄って宗太郎の間近にヒザをつくと、アワアワしている木綿季の肩を掴んでたしなめようとする。その際、スカートが揺れてパンツがチラチラ見えていたが、そこに気を回している余裕は無い。
「そそそ、そんなエッチなことしちゃダメでしょ!?」
「な、なんでだよー! ボクたちは相思相愛なんだから問題ないじゃん!」
「それでもダメです! っていうか、いつ相思相愛になったっていうのよ!?」
「信じていれば夢は叶うんだよ!」
「ようするに嘘ってことじゃない!」
「嘘じゃないもん、ちょー確率の高い未来予想図だもん!」
思わぬ遭遇に動揺した2人は、可愛らしい(?)口論を展開する。一般的な意見を挙げれば藍子の言い分が正しい。だがしかし、恋愛に関しては木綿季のほうが上手であった。
「木綿季は少し開放的すぎだよ。もう14歳なんだから、もっと女性らしい慎みを……」
「ふふん。そんなこと言って、ほんとは姉ちゃんもやってみたいんでしょ?」
「えっ!? な、なんでそうなるのよ?」
「だってボクたちは双子だからね、考えてることは大体分かるんだよ~? 実は姉ちゃんもソウ兄ちゃんに触ってもらいたいって思ってるでしょ?」
「さ、触ってもらいたいだなんて、そんなことは……ごにょごにょ……」
「ふっふっふ~、ボクに嘘は通じないよ。ほらっ!」
「えっ!? ちょっ、まっ!?」
ニヤリと微笑んだ木綿季は、宗太郎の右手を藍子の右胸に押し付けた。ノースリーブの服とブラを隔てた先にある彼女の胸が柔らかそうに形を変える。
ムニュムニュ。
「あっ……」
「ほらやっぱり。言葉では否定してたけど抵抗しないね?」
「あうっ……だって……」
少しだけ嬉しかったんだもん。
触れ合うことで安心を感じた藍子は、思わず本音をつぶやいてしまう。彼女もまた木綿季と同様に死の感触を経験して、宗太郎の温もりを求めていたのである。
「姉ちゃんの言う通り、一般的にはイケナイことかもしれないけどさ、すごく幸せな気持ちになれるんだからおかしなことじゃないと思うんだ」
「うん…………そうなのかもしれない」
その木綿季の言葉には同意せざるを得なかった。なぜならそれは藍子自身の実感だったから。この気持ちには嘘をつけない。
ようするに、彼女たちは恋をしているのだ。
「どう姉ちゃん? すごく気持ちいいでしょ~?」
「えっとその……気持ちいいというか、恥ずかしいというか……」
「じゃあもっとやってみよう。こうして刺激を与えればオッパイが大きくなるかもよ?」
「って、そんなに激しく動かさないで~!? あぁん、もうっ!」
彼女たちの恋はちょっぴり過激だった。とはいえこれも仲良しな証だから、温かく見守るべきところだろう。
ただ、青少年として健全な感情(エロ心)を持っている宗太郎としては堪らない。
「(うおぉーっ! 俺の右手が真っ赤に燃える! パイオツ掴めと轟き叫ぶぅ!?)」
何だかよく分からないうちにラッキースケベの連鎖状態に陥ってしまった宗太郎は、色々と限界だった。それでも、大好きな2人のピュアハートを守るために荒ぶるリビドーを押さえ込む心優しいお兄ちゃんであった。
☆★☆★☆★☆
シノンがへカートIIを手に入れた翌朝。現実の彼女がのんびりと起床する。
本名は朝田詩乃。東京の進学校に通う16歳の女子高生である。
「もう朝か……」
下着姿でベッドに寝転がりながら時間を確認する。普段なら憂鬱な瞬間だが、今日は久しぶりに気分がいい。
ダンジョンからの脱出は非常に困難だったが、時間をかけて何とか生還を果たし、とうとうあのレアアイテムを自分の物とした。現実に戻って、その達成感をようやく実感し始めたのである。
「ふふっ、今考えると滅茶苦茶な戦いだったな」
あまりにも無謀な昨夜のプレイを思い出して自分でも呆れてしまう。だが、得られた報酬はとても大きい。
期せずして入手出来た対物ライフル、ウルティマラティオ・へカートII。あれほどすごい銃を使いこなせるようになれば、自分はもっと強くなれる。実を言うと、現実の取引で高く売れることを知って少しだけ心が動いたものの、GGOを始めた本来の目的を思い出して何とか踏み止った。
トラウマを克服するための相棒として『冥界の女神』を選んだ彼女は、ベッドから上半身を起こすと凄みを感じさせる笑顔を浮かべる。
「きっと、あの銃がわたしを導いてくれる……」
詩乃は、自身に暗示をかけるようにつぶやく。本心では本当に強くなれるか半信半疑だったからだ。やはり、実際に死ぬことがない以上、現実と仮想では違いがある。それでもやり続けなければならないのが、今の彼女が置かれている現状だった。
幼い頃に郵便局で強盗事件に巻き込まれ、撃たれそうになった母を守るために犯人から拳銃を奪い、勢いに任せて射殺してしまった。その時に受けたショックが原因で銃器に対する強いPTSDを発症してしまったのだが、それを克服するために始めたのがこの荒療治だった。
「大丈夫。ゲーム内では発作も起きなくなったんだから、効果は出てるはずよ……」
再び自分に言い聞かせるようにつぶやく。
GGOを始めて3ヶ月が経ち、少しずつ改善の兆しが見え始めたものの、現実ではまだダメだ。手で銃の形を作るだけで過去の記憶がフラッシュバックして発作を起こしてしまう。だからこそ、確かな成果を強く求めてしまう。
だが、幸運なことにそれを実現するための希望が手に入った。今はその喜びを味わってもいいだろう。
「よし。さっさと起きて朝食を食べよう」
軽く伸びをしてからベッドを出ると、下着姿のまま台所に向かう。こうして気ままな1人暮らしをしている様子からは、重たい過去を背負っているようには見えない。
でも本当は、心の底から苦しんでいる。誰かに助けて欲しいと思っている。その想いに応えてくれる者はいまだに見当たらないが、彼女は密かに求めていた。自分を理解し、受け止めてくれる素晴らしい友人を。
ってな感じで、ガンダムビルドファイターズ的なノリで行きます。
この章は完全に趣味全開なんだぜ!