ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ 作:カレー大好き
ALOを終わらせてから数分後、3人は同じベッドで寝転びながら抱き合っていた。
もちろん、エッチな事をしているわけではなく、じゃれあっているだけだ。幼い頃からやっていることなので、お互いに抵抗感などは無い。それどころか、SAO事件の影響を受けてより積極的におこなわれるようになった。
ただ、若さ溢れる16歳の宗太郎にとっては、かなり複雑な状況でもあったが。
「うりうり~、ボクのオッパイ気持ち良い?」
「もう、女の子がそんなこと言っちゃダメでしょ」
それぞれ個性を感じさせる言葉を発しつつ、自分の胸を押し当ててくる美少女姉妹。はっきり言ってとても羨ましい状況である。しかし同時に、宗太郎を追い詰めてもいた。嬉しい気持ちを素直に開放したら、とても大変なことになってしまうからだ。特に下半身が。
「えへへ~、ソウ兄ちゃ~ん」
「もう少し、もう少しだけ……」
「(胸、尻、太もも……客観的に見ても良い成長っぷりだ。賞賛と好意に値する!)」
何だかんだと言い訳しても、心はソッチに向かってしまう。こういう時、男の子って不便なのよね。というか、可愛い女の子にこれだけ密着されてしまったら意識するなという方が無理だろう。
年相応に成長している2人の胸が、宗太郎の純情ハートをあっという間に魅了していく。
「(なんという心地良さ! この感触……まさしく乙女だ! しかし、身持ちの堅い私の心は、そう簡単に奪えはせんぞ!)」
宗太郎は、グラハムになりきることで理性を保とうとする。気分的には血の繋がったお兄ちゃんだ。そういう設定にしないとイケナイ事を考えてしまう。
「(状況は、圧倒的にこちらが不利。それでも、中二の小娘なぞに負けるわけにはいかんのだよ!)」
現実では常識人だと自負している宗太郎は、自分の欲望と必死に戦う。14歳になった木綿季と藍子は、それほどまでに魅力的だった。彼女たちが美少女であることはもちろんだが、彼に恋していることが一番の理由だろう。ようするに、恋する乙女の力は伊達ではない、ということだ。
その証拠に、彼女たちは宗太郎の気持ちを見抜いていた。
「俺は2人のお兄ちゃん、俺は2人のお兄ちゃん……」
「ふふっ、今更我慢する必要ないのに。アレはもう経験済みなんだから♪」
「誤解を招くような言い方するな!」
宗太郎はドキリとしながらツッコミを入れる。
木綿季が言っているのは、もちろんR-18的なことではない。彼女たちの気持ちいい感触に反応してしまった彼のビッグキャノンを服越しに見たことがあるという意味だ。SAO事件の後、久しぶりに復活したこのイベントで、不覚にも醜態を晒してしまったのである。
あの時は、みんなで恥ずかしくなって大いに慌てたものだが、今では2人とも受け入れていた。それどころか、最近では逆に面白がっているくらいだ。
「姉ちゃんだって全然気にしてないよねー?」
「う、うん。最初はビックリしたけど、ソウ君だったら、その……嫌じゃないよ?」
「ぐはぁ!!」
上目遣いで放たれた藍子のセリフは効果バツグンだった。彼女のような美少女にそんな可愛らしいことを言われたら当然だろう。
「ええい、この私が圧倒されるとは! 侮れんな、女子中学生!」
「口調がグラハムになってる!?」
「ちょっとやり過ぎたかな?」
ついにテンパってしまった宗太郎は、現実でもグラハム化してしまった。それでも、同じようなことを数ヶ月も耐え抜いているんだから彼の忍耐力も侮れない。これも、SAOで2年以上もストイックな生活をしていたおかげと言うべきか。改めて考えると、貴重な青春時代を棒に振った気がして切なくなるけど……。
「はぁ、煩悩に抗ってたら腹減った。飯食いに行くぞ」
「うわっ!」
「きゃっ!」
急に冷静になった宗太郎はむくりと起き上がり、抱きついていた2人も一緒につられて来る。多少強引だが、いつまでも遥ママを待たせるわけにはいかない。
それに、今日は急ぐ必要もある。
「もう、いきなり起き上がらないでよ」
「でも、ご飯と風呂を早めに済ませないとダメだろ? 2時間後に用事があるんだから」
「あっ、そうだった」
「9時前に準備しとかないといけないもんね」
宗太郎の言葉でキリトたちに会うことを思い出した木綿季たちは、ようやく彼の腕から離れた。少し名残惜しそうな表情をしながら。その様子に気づいた宗太郎は、彼女たちの頭をひと撫でしてから立ち上がる。
「ほら、さっさと行こうぜ」
「「うん!」」
自分たちに気をかけてくれる宗太郎に嬉しくなって、双子の姉妹は笑顔になる。恋をすると、ちょっとした優しさでも幸せな気持ちになれるものなのだ。
木綿季と藍子は、お互いに視線を交わしてクスリと笑うと、先を歩く宗太郎の後についていくのだった。
2階にある木綿季の部屋から移動して1階のダイニングに到着する。時刻は午後7時8分。テーブルに目を向けると、既に夕食が用意されていた。後は、メインのシチューを持ってくるだけのようだ。
配膳を手伝おうと思った宗太郎は、キッチンにいる遥ママに話しかける。
「遅くなってすみません」
「別にいいのよ宗太郎君。どうせまた、この子たちが原因なんでしょ?」
「はい、その通りでございます」
「気持ちいいくらい庇う気ゼロだね」
「まぁ、本当のことだからしょうがないよ」
藍子は、遥ママから向けられた微笑みの意味に気づき、少し顔を赤らめながら答える。実を言うと、あのスキンシップは遥ママも承知済みであった。しかも今日は久しぶりに宗太郎が泊まっていくから、娘たちが浮かれていることも分かっている。若者たちの可愛らしい恋愛に理解を示している遥ママは、初々しい3人の様子を暖かい目で見守っているのだ。
「でも、ケジメはしっかりとつけなきゃダメよ? 宗太郎君」
「っ!? イエス、マム!」
「ん? 急にどうしたの?」
「あ~いや、なんでもない、なんでもないよ?」
「「?」」
耳元で遥ママから囁かれた宗太郎は、その艶っぽい声にぞくっとしながらも、言葉に込められた気迫に身震いする。まだ30代の遥ママはとても綺麗で、理想的な大人の女性と言っても過言ではないから余計に効果的だった。
彼女は、息子のように思っている宗太郎に対して大胆なスキンシップをしてくることがあり、年頃になった彼は対応に困る時が多々あった。一家揃って敬虔なクリスチャンだからか、行動も欧米風になっているように感じる。
そういう点で言えば、アメリカ人とのハーフである宗太郎の方が慣れていそうに見えるのだが、彼の国籍が日本だということを忘れてはいけない。大体、年頃の男子である以上は反応せずにいられないだろう。グラハム風に表現すると、『乙女座の私でも、美しい女性と接すれば照れてしまうさ』と言ったところである。
「(こうまで私を惑わすか、紺野家の女たち! だが、それでいい。それでこそ、戦い甲斐があるというもの!)」
なんてことを思いつつ、内心ではドキドキしてしまっている。傍目から見ると羨ましいことでも、当事者にしてみればそれなりに大変なのだ。まぁ、どう言い訳しても贅沢な悩みには違いないのだが、経験値の少ない坊やだから仕方ない。
SAOは女性プレイヤーが少なく、他にも様々な危険があったため、本格的に異性といちゃいちゃしていたのはキリトとアスナぐらいだった。そもそも、現実世界に戻ることを優先していたグラハム自体にその気が無く、一部のプレイヤーから男色家ではないかと噂が立つくらい身持ちが硬かった。キリト並にモテていたのに、まったく気づかなかったのである。そのため、女性とのスキンシップに2年以上のブランクが出来てしまい、可憐に成長した紺野姉妹の魅力に翻弄されているのだった。
「その点だけは中二のままってことかよ、こんちくしょう!」
「ねぇ、木綿季。さっきからソウ君の様子おかしくない?」
「そう? ボクはいつも通りだと思うけど」
木綿季と藍子に好き勝手言われてるけど、今は素直に受け入れるしかない。だって、異性とのお付き合いに関しては同学年みたいなもんだもん。
期せずして自分の情けなさに気づき、乾いた笑みを浮かべた宗太郎は、遥ママから受け取ったシチューを持って静かに席に着くのだった。
こういう時は、美味しいご飯を楽しんで嫌なことは忘れるべきだな。うん。
「さぁ、みんな。神様にお祈りをして夕食をいただきましょう。エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!!」
「今日のソウ君は情緒不安定だね……」
いきなり荒ぶりだした宗太郎を見て呆気に取られる藍子。この短い間に彼の中で何が起こっていたのかはわからないけど、とりあえず今日の食卓はとても賑やかであった。
☆★☆★☆★☆
夕食を食べ終え、みんなで後片付けをしている間に1時間以上過ぎた。現在の時刻は午後の8時半。キリトたちとの待ち合わせ時間まであともう少しだ。
木綿季と藍子は、その20分前からお風呂に入っている。彼女たちは、宗太郎が泊まりに来ると、いつも一緒に入ることにしていた。そこで、彼には聞かせられないガールズトークを楽しむのだ。今日も仲良く湯船につかりながら、女の子らしく胸の話題で盛り上がっている。
「やっぱり、ソウ兄ちゃんも大きい方が好きみたいだよ?」
「ん~、大きすぎると不便だって聞くけど、男の人はそうなのかもね」
いざ聞いてみたらすごく興味深い話題だった。確かに、宗太郎には聞かせられない内容だ。
「ボクたちのオッパイ、大きくなるかなー?」
「ママは大きいほうだから大丈夫だと思うよ」
「でも油断は禁物だよ。姉ちゃんだけ貧乳になる可能性だってあるんだから」
「嫌な例えしないでよ……」
藍子は、ちょっぴり顔をしかめる。彼女も年頃の女の子らしく、胸の大きさを気にしているのだ。今は平均より良い成長を続けているが、この先どうなるかは分からない。
それに宗太郎は、巨乳の方が好みみたいだし……。
「……」
「ほほう、どうやら姉ちゃんも気になってきたようだね?」
「えっ? そんなことはないけど……」
「へっへ~、双子のボクに嘘は通じないよっ!」
「って、ちょ、木綿季! いきなり何するのー!?」
「何って、姉ちゃんのオッパイを大きくしてあげようかなーって思ってね」
「だからって、そんなにいっぱい揉まないでよぉー!」
話しているうちに悪戯心が芽生えた木綿季は、姉の胸を正面から掴んで揉みまくる。同じ女の子同士だからこそ許される禁断のシチュエーションだ。男同士では絶対に表現することができない可愛らしさである。実際にやられている藍子にとっては恥ずかしいだけだが。
「もうっ、自分の胸を揉めばいいでしょ~! 木綿季だってほとんど同じ大きさなんだから……」
「ふふん、その必要は無いよ~。ボクのオッパイは、ソウ兄ちゃんに大きくしてもらうから♪」
「ええ!? 木綿季って、色んな意味ですごいわね……」
とてもアグレッシブな妹の発言に、藍子はため息をつく。木綿季の性格は元々素直な方だったが、SAOで宗太郎を失いかけてから更にその性質が強くなった。
しかし、穏やかな性格の藍子は、妹のように素直な気持ちを表に出せない。その上、姉という立場が妹の前に出そうとする足を止めてしまっている。彼女は、宗太郎と同じくらい木綿季のことが大好きだからだ。
「(でもね、私だって負けるつもりはないよ)」
宗太郎がどちらを選ぶか分からないけど、答えが出るその時まで絶対に諦めない。自分の恋心だって木綿季に負けないくらい本物だから。
恋のライバルである双子の姉妹は、今日も仲良く恋愛バトルを繰り広げるのであった。
そのように2人の美少女がお風呂ではしゃいでいたシーンから十数分後。彼女たちが出てくるのを待っている宗太郎は、居間でうとうとしていた。遥ママとテレビを見ているうちに眠気が出てきてしまったのだ。現在彼は、睡眠時間を削って勉強に勤しんでおり、久しぶりの休息日で溜まっていた疲れが出てしまった。
そんな彼に釣られたのか、隣にいる遥ママまで眠りかけている。いつもは夫が帰ってくるまでちゃんと起きているのだが、宗太郎と同様に気が緩んでしまったらしい。
もちろん、この状況自体に問題は無く、たまたま2人揃ってうたた寝しているだけだ。
しかし、その状況が、後に起こるハプニングにつながることになる。
「……んあ~、ちょっと眠ってたか……って、もうこんな時間かよ!」
何とか自力で覚醒した宗太郎は、寝ぼけ眼で見た時計に驚く。約束の時間まであと15分くらいしかないではないか。
「早く風呂に入らないと!」
慌てた宗太郎は、急いで風呂場に向かう。
もしこの時、遥ママが起きていたら彼を止めていただろう。あの子たちはまだ出てきてないわよと。だが、彼女は今、ソファに寄りかかって目を瞑っている。
その結果、宗太郎はノックもせずに風呂場のドアを開けて……真っ裸の木綿季と藍子を目撃してしまう。
「「「………」」」
視線が合った瞬間、3人の動きが止まり、沈黙が生まれる。
「(うむ、これは絶景……もとい、絶体絶命のピンチですぞ?)」
宗太郎は、徐々に顔を赤くしていく2人の姿を見つめながら思った。寝ぼけていたせいで思わず慌ててしまったが、2人が風呂から上がっていたら自分に声をかけてくれただろうと。そんな当たり前なことに今更気づいたものの、禁断の扉を開けてしまったこの状況では後の祭りだった。
彼の目の前には、小さなパンツを手に持った裸の美少女姉妹がいる。その光景は、まさしくパラダイス。しかし、禁忌を犯した罪人は、楽園から追放されると相場が決まっている。
「その容姿……もはや少女ではなく、乙女と呼ぶべきだな。あれから2年。見違えるように成長したなぁ、紺野姉妹!」
「そんなことを言う前に……」
「とっとと出てけ――――――!!」
ダメ元で何事もなかったかのように接してみたが、やっぱりダメだった。木綿季と藍子の同時攻撃を食らった宗太郎は、風呂場から突き飛ばされて目の前の壁に思いっきり叩きつけられる。
「ウボァ――――――っ!!?」
おかしな断末魔を叫びながら廊下に倒れこむ。とても痛そうだが、当然の結果である。
その数秒後、騒ぎに気づいた遥ママが、何事かと様子を見に来た。そして、一目で大体の事情を察する。
「宗太郎君のエッチ」
「否! 断じて否! これはいわゆる不可抗力というヤツでして……」
「でも、見たのよね? あの子たちの裸」
「はい、見ました、ごめんなさい」
「ふふっ、私は別にいいのよ? あなたが本当の息子になる日が早くなるから」
「やだ怖い! この人本気だわ!」
「もちろん当然でしょ、娘たちの心を奪っちゃったんだから。ケジメはしっかりとつけてもらうわよ?」
「俺の気持ちに彼女たちが応えてくれたらですけどね」
「そんなこと、今更気にする必要もないでしょ」
「はぁ……遥ママには敵わないなぁ」
ニコリと笑ってとんでもない事を言う遥ママに、宗太郎は感服するしかなった。やはり、しっかりと母親している人はすごい。娘の裸を見た男に恋バナするのはどうなのよと思うけど、娘たちがそれほど嫌がっていないのだから問題は無い。
実を言うと、この手のラッキースケベは以前から多々起こっており、木綿季と藍子も次第に受け入れるようになってしまっていた。これも惚れた弱みというヤツだ。もちろん、被害にあった時はちゃんと怒って、デートやプレゼントといった【慰謝料】を手に入れているのだが。
「今度はどんな要求をされるのか……。あえて言おう、私は恐怖を感じている!」
「ふふっ、がんばって謝ってね、お兄ちゃん」
遥ママに茶化された宗太郎は、廊下に寝転がったままため息をつくのであった。
その数分後、むすっとした顔で風呂場から出て来た少女たちに土下座して謝り、デートの約束をすることで何とか許してもらった。結局、予想通りに出費するハメになったものの、そんな可愛らしい要求で許してくれるのだから、むしろ感謝すべきところだろう。
☆★☆★☆★☆
風呂場でひと騒動あってから10分後の午後8時55分。パジャマに着替えた3人は、予定時間ギリギリでALOにログインした。騒動の張本人である宗太郎は、木綿季たちから許しを得たあとに速攻で風呂を済ませ、何とか時間前に準備を整えたのだった。
因みに、今度は藍子の部屋に集まって、3人で宗太郎用の布団に寝転がりながらログインしている。彼が泊まる時は、いつも3人そろって同じ部屋で眠ることになっているのだ。
何はともあれ、急ぎ足でユグドラシルシティにやって来た3人は、そのままの勢いで待ち合わせ場所に向かう。
「ん~、もうすぐキリトに会えるのかぁ。すっごい楽しみだなぁ」
「私もだよ。ソウ君の友達らしいけど、どんな人なの?」
「そうだな……乙女座の私が恋焦がれてしまうほどの美少年、と言えば分かるかな?」
「「そういう情報はいらないよ!」」
そんなBLっぽい説明をされても困る。
「ならば、百聞は一見にしかずだ。その答えは、自分で確かめてみるといい」
「うん、そうだね。早速デュエルしてもらうぞ~!」
「もう、いきなりそんなことしちゃダメよ。キリトさんたちに会ったら、まず最初にお礼を言わなきゃ」
「分かってるよ。なんたって、ソウ兄ちゃんを助けてくれた大恩人だもんね」
浮かれている所をランにたしなめられてしまったユウキだったが、気持ちは同じなので素直に頷く。キリトがいたからこそグラハムも生還できた。だったら、当然お礼をしなければなるまい。
「そのために苦労して手に入れたS級食材をプレゼントするんでしょ?」
「そうね。これなら喜んでもらえると思うわ」
顔を見合わせた2人は、その瞬間を思い描いて笑顔になる。彼女たちが手に入れたS級食材とは、SAOに出て来たラグー・ラビットの肉と同類のもので、滅多に食べられるものではないからだ。このような記念すべきイベントのために取っておいたのだが、ようやく出番が来たわけだ。これをプレゼントすれば、確かに喜ぶだろう。
「ほう、心を射止めるなら、まずは胃袋からというわけか。いい判断だ。誰しも肉欲には抗えんからなぁ!」
「それを言うなら食欲でしょ!」
グラハムのおバカな発言のせいで、せっかくのS級食材がイケナイアイテム扱いにされてしまった。まったくもって、空気の読めない男である。
それでも感心しているのは確かなようで、2人の頭を優しく撫でて労をねぎらう。
「良くやった。君たちの努力に敬意を表させてもらおう!」
「んふふ~、このぐらいどうってことないよ」
「わたしたちに出来ることなんてこのぐらいだから」
「いや、その気持ちこそが大切なのさ。ありがとう、私の愛しき少女たち」
「「……(ぽっ)」」
アダルトな話で場を乱したと思ったら、その直後にイチャイチャ空間を作り出してしまう。グラハムと宗太郎の性格が混ざったこの男は、色んな意味で危険な存在だった。
何はともあれ、おかしな話をしつつ歩みを進めていた3人は、予定時間通りに目的地へ到着する。
「ふむ……どうやらここで間違いないな」
グラハムは、とある店の前で足を止める。彼の目の前にある建物は、目的地の【リズベット武具店】だ。思っていた以上に立地条件のいい場所に建っているところを見ると、キリトたちの援助も受けているのかもしれない。だからこそ、彼らの集合場所になっているのだろう。
「相変わらずのネーミングだな、リズベット。しかし、それでこそ彼女らしい」
グラハムは、何となくSAOを思い出して懐かしくなった。
ここが彼らの新しい拠点なのだな……。そして、自分もここから再出発することになる。ユウキとランとともに、新たな冒険へと旅立つのだ。
もちろん、後ろにいる2人も、新たな出会いを前に気分を高揚させている。
「では、入るとしようか」
「うん、いよいよご対面だね~」
「何だか緊張してきたよ……」
3人はそれぞれの思いを胸に抱きながら店の中に入っていく。
店内はそれほど広くないが、居心地のいい雰囲気を感じさせる内装だ。奥は武具を作る作業場となっており、その手前に客用のテーブル席が設置されている。そこに、グラハムの仲間が勢ぞろいして、笑顔を浮かべながら彼の言葉を待っていた。
「諸君! 夜の挨拶、すなわち『こんばんは』という言葉を、謹んで贈らせてもらおう」
「うわっ! すっごい懐かしい!」
独特なグラハムの挨拶に対して真っ先に反応したのは、この店の主であるリズベットだ。この面子の中で一番最初に知り合った彼女とは親友のような間柄になっており、現実世界でも名前で呼び合っている。その親しさが、この場面でも大いに出てしまう。
「最近は普通の宗太郎に慣れちゃったから、変な感じだわ」
「何を言う。今の私はグラハム・エーカーだ!」
せっかくの再会だったのに、しょっぱなからコントみたいになってしまった。半年ぶりという事情もあるが、それだけではない。現実の本人とグラハムとのギャップが大きかったせいもあって、宗太郎という純和風の名前が強く印象に残ってしまったからだ。
そのため、誰もアバター名を言ってくれない。唯一の社会人であるクライン、同じ学校の後輩であるシリカ、キリトの妹であるリーファが次々と声をかけてきたが、どれも実名であった。
「ふん。この私を愚弄するとは、いい度胸をしている」
「まぁ、それだけ仲がいいってことなんだから気にすんなよ、ソータロー」
「勝手にそう呼ぶ。迷惑千万だな」
「でも、本当に久しぶりだから、わたしも宗太郎さんて言っちゃいますね」
「そもそも、わたしは宗太郎さんしか知らないし」
「ええい、何度言えば分かる! 私はミスター・ブシドーではない!」
「誰も言ってねーよ!」
仲が良いのか悪いのか、再会して早々に口論を始める仲間たち。その様子を傍観していたキリト、アスナ、ユイの3人家族はやれやれと苦笑する。
「はぁ、やっぱりこうなるか……」
「わたしは、グラハム君が変わってなくて安心したけどね」
「はい。お元気そうで何よりです」
ピクシーの姿をしたユイは、定位置としているキリトの頭に座りながら微笑む。SAOが存在していた頃、人間というものを学んでいた彼女は、珍しい性格をしていたグラハムに興味を持った。その結果、2人で一緒に騒いではキリトたちを困らせていたのである。ようするに、ユイとグラハムはお友達なのだ。
「(ふふ、今日からまた一緒に遊べますね。しかも、新しいお友達まで出来そうです)」
そう思いながら、グラハムの後ろにいる少女たちに視線を向ける。その時、彼が連れてきたインプの少女の様子がおかしことに気づいた。なぜか、アスナの方をじっと見つめているのだ。
「ねぇママ、グラハムさんのお連れの方が……」
「うん、ものすごく見られてるけど、何だろうね……」
当然ながらアスナも気づいて、そちらに顔を向ける。すると、インプの少女――ユウキと目が合った。
「っ!?」
自分のことを不思議そうに見つめる優しそうな女性。その姿を目にした途端、ユウキの鼓動がトクンと鳴る。
「(なんだろう、この感じ……)」
初めて会ったのに、なぜか目を惹きつけられてしまう、ウンディーネのお姉さん。一体どうしてなんだろう。そう思った瞬間、ユウキの思考に見覚えのない光景が浮かんだ。夕暮れに染まる景色の中、涙を流したあのお姉さんが自分に語りかけてくる光景を。
『わたし……わたしは、必ず、もう一度あなたと出会う。どこか違う場所、違う世界で、絶対にまた巡り合うから……その時に、教えてね……ユウキが、見つけたものを……』
聞き覚えのない言葉が脳裏にこだまする。
ボクは知らない。このお姉さんも、さっきの光景も。だけど……なんでこんなに切なくなるんだろう。なんでこんなに嬉しい気持ちが湧き上がってくるんだろう。なんで、なんで……。
「う、うう……」
ユウキは、自分でもよく分からない感情に飲み込まれて涙を流した。悲しくて、嬉しくて、涙が止まらない。止まらないんだ。
「うわぁ――――――!!」
「ええっ!?」
「どうしたの、ユウキ!?」
急に泣き出したユウキにみんなが驚く。その原因が全く分からないからだ。
しかし、それは当然だった。この時ユウキは、別世界にいた自分の記憶と同調していたのだから。新たな出会いと同時に、時空を超えた再会を喜んでいたのだから……。
次回は、アインクラッドでのやり取りになる予定です。
アスナが気になるユウキを可愛く表現できたらいいなぁ。
ご意見、ご感想をお待ちしております。