ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ 作:カレー大好き
なんかもうね、書き込んでたら思いっきりガンダムな話になってしまいました。
SAO要素が原作キャラだけになってますけど、もう少しだけお付き合いくださいませ。
詩乃が<ウルティマラティオ・デュナメス>を受け取ってから6日後の土曜日。GBOにて、大きな戦争イベントが開催されることになった。大分前からエギルを中心にして進めていた計画で、ようやく条件を満たすことが出来たのである。
無論、宗太郎たちも協力しており、彼らの小隊に加わった詩乃も一緒に参戦することになった。
そして今、エギル主催の【フリーダム・ウォー】に参加するプレイヤーたちが、中立地帯となっている宇宙ステーション【ラプラスⅡ】に集まっていた。
GMとの手続きを終えた後に連邦側のブリーフィングルームにやってきたユウキたちは、これから始まるイベントについて嬉しそうに言葉を交わす。
「ふっふっふ~、今回はシノンもいるから楽しくなりそうだね~」
「そうね、エギルさんの友達って強い人が多いから、面白い戦いになりそう」
この日を楽しみにしていたユウキとランは、遠足前の小学生みたいにはしゃいでいる。
そんな彼女たちの傍にはシノンとSAO生還者組がいて、和やかに談笑している。その面子は、ソウ・マツナガ、キリト、アスナ、シリカの4人だ。
彼らはユウキたちと同様にシノンの活躍を期待しており、特に連邦軍の司令官を務めるキリトは、彼女の狙撃能力を頼りにしていた。
「うちの連中は近接オンリーの脳筋ばかりだから正直助かるよ」
「あんたがその筆頭だから実感篭ってるわね」
「ははっ、まぁな」
シノンに図星を突かれたキリトは苦笑する。彼のアバターは、ガンダム00に登場する刹那・F・セイエイに似た美少年なので、弱気な表情も様になっている。ただし、アムロみたいな天然パーマが色々と台無しにしてしまっていたが。
「ほう。どうやら君はシノンの狙撃能力にご執心のようだが、股間のスナイパーライフルを使わせれば、私の方が腕は上だぞ、天パ少年!」
「色々言いたいことはあるが、とりあえずその呼び方をやめやがれ」
ソウ・マツナガに茶化されて、天パのキリトがムスッとする。この手のアバターでハズレを引いたことが無いため、いじられることに慣れていないのだ。
しかも、恋人のアスナまでいじり甲斐のあるアバターを引き当てているから、周囲の者にとっては余計に面白く感じてしまう。
「色んな人にからかわれてキリトも大変ね」
「それはわたしも同じよ。このアバターのせいで、何故かやたらと怖がられたり、『おかしいですよ、カテジナさん』とか言われるし……」
キリトと同様にアバターに不満を抱いているアスナはシノンに愚痴を言う。彼女は、Vガンダムに登場する最凶の悪女、カテジナ・ルースにソックリな容姿をしているため、多くのプレイヤーから恐れられているのだ。ぶっちゃけると、戦闘時に見せる彼女のバーサーカーぶりがそうさせているのだが、幸か不幸か本人にその自覚は無かった。
「みんなのアバターは、どれも可愛らしくていいのになぁ……」
「ああっ、アスナがいじけた!」
「結構気にしてたんですね」
「わたしとしては、スタイル抜群で羨ましいなと思いますけど……」
急にしょんぼりとしだしたアスナを、ユウキたちが気遣う。自分の胸と見比べているシリカだけは微妙に違う話をしている気もするが、指摘するのは野暮ってモンだろう。
何はともあれ、彼らは彼らなりにイベント前の時間を楽しんでいた。
すると、これまでキリトたちの様子を伺っていた1人の少年が近寄ってきた。Vガンダムに登場するウッソ・エヴィンがメガネをかけたような容姿の彼は、少し緊張した様子でキリトに話しかけてきた。
「あの、キリトさん」
「おう、よく来てくれたなレコン」
レコンと呼ばれた少年は、キリトと顔見知りだった。彼の本名は長田慎一と言って、リアルでは直葉の同級生であり、彼女にALOを勧めた人物でもある。
彼は直葉に対して恋愛感情を抱いており、ALOでも仲を深めようとがんばっている姿を見かけることが出来る。その流れでソウ・マツナガたちと知り合いになり、雑談を交わしているうちにGBOをやっていることも判明して現在に至っている。
「今日は声をかけてくれてありがとうございます」
「ああ、お前の実力はあてに出来るからな。大きな戦果を期待してるぞ。直葉の件に考慮する気はまったくねーけどな」
「は、はぃ……」
無自覚系シスコンであるキリトは、分かり易い態度で義弟候補を牽制する。そんな彼から発せられる邪気に気圧されるレコンだったが、それを哀れんだソウ・マツナガが、すかさずフォローに入る。
「そう萎縮するな、新八。恋とは当人同士の感情こそが大事なのだから、シスコン兄貴の嫉妬など、犬に食わせてしまえばいいさ」
「は、はい、素敵なアドバイスありがとうございます……でも、僕の名前は新八じゃないです」
レコンは、メガネをきらりと輝かせながら反論する。彼もまた、ソウ・マツナガに対するツッコミ要員の1人となっていた。
一方、ジオン側のブリーフィングルームでは、司令官のエギルと主力メンバーが挨拶を交わしていた。
「良く来たな。お前の参戦を歓迎するぜ」
笑顔を浮かべたエギルは、サングラスをかけた少年に向けて言葉をかける。エギルのアバターは、ファーストガンダムに登場するドズル・ザビをスキンヘッドにしたような強面なので、普通の笑顔でも威圧感を感じてしまうほどである。しかし、サングラスの少年は、まったく動じることなく返答する。
「なに、ジオンきっての猛将として知られるエギル殿の誘いとあらば、断る理由など無いさ」
「ははっ、メイジン・カワグチにそこまで言われるとは光栄だ」
ニヤリと口元を歪めたエギルは、メイジン・カワグチの肩を軽く叩く。サングラスの少年は、秘密兵器として声をかけていたユウキ・タツヤだった。GBO常連の2人はソウ・マツナガと同様に親交があり、同じ陣営で共闘する機会も多いのだ。
そのような繋がりで参戦することになった彼は、攻撃部隊の隊長であるクラインとツーマンセルを組むことになっている。メイジンと名乗ることを許された彼の実力はGBOでもトップクラスであり、この人選にはクラインも満足していた。
「アンタが相棒になってくれるんなら、まさに百人力だぜ」
「その言葉、私の本気で応えよう」
そう言うと、2人は力強く握手した。
「私も期待させてもらおうか。噂に名高い【ノースリーブ・ザムライ】の実力とやらを!」
「その二つ名で呼ぶんじゃねーよ!」
変なあだ名で呼ばれたクラインは速攻で拒絶した。しかし、そう呼ばれても仕方が無い理由が彼にはあった。
クラインのアバターはZガンダムに登場するクワトロ・バジーナに似ており、当初はようやくイケメンを演じられると喜んだ。しかし、彼の歓喜はすぐに悲劇へと変わる。このアバターには、いくらコスチュームを変えても必ずノースリーブになってしまうという誰得な機能(?)が備わっていたのである。
もちろん納得できずにメーカーへ文句を言ったが、『仕様です』と返されてはどうにもならない。しかも、彼の不幸(?)はそれだけで終わらなかった。これほど奇妙な特徴がプレイヤーの間で話題にならない訳が無く、短期間の内に『ノースリーブ・ザムライ』や『袖無し』といった不本意な二つ名を付けられてしまったのである。
「ってか、ノーマルスーツまでノースリーブになるって一体どーいうことだよ! 重力から魂を開放したら肩まで開放されるワケ? ニュータイプって、ファッションセンスが新しくなるって意味なワケ? どー考えてもおかしいだろコレ! どっちかって言うと時代を逆行してるんですけど! 流行遅れのオールドタイプに退化してるんですけど!」
これまでの不満が爆発したクラインは、ギャグマンガのように怒り出した。彼もまた、キリトやアスナと同じくアバターに不満を持っていたのである。
「そこまでノースリーブを嫌うとは、キャラに似合わず繊細なのだな」
「セクシーな男のワキは、女を惹きつけるモンなんだがな」
「宇宙空間でワキだしてる変態に惚れる女はいねーよ」
エギルとメイジン・カワグチにからかわれてクラインが不貞腐れる。
それでも彼が、このゲームを楽しんでいることは間違いない。GBOとは、ノースリーブの呪いすら凌駕するほどに魅力的な世界なのだ。
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軽い雑談を終えた後に、両陣営でブリーフィングが始まる。連邦とジオンの司令官はそれぞれキリトとエギルが務めることになっており、壇上に立ったキリトは、ブライトさんのような気分になって語り出す。
「それでは、【ソロモン防衛作戦】について説明する」
大佐という肩書きを持ったキリトは、堂々とした様子でブリーフィングを進行していく。
このゲームのプレイヤーは傭兵という設定だが、GBO独自の世界観によって正規兵と同じ権利を有しているため、このようなシチュエーションが可能となっている。
簡単に説明すると、プレイヤーは【戦国武将】みたいな存在であり、それなりに権力を持っているのだ。
GBOの世界では、長引く戦争によって危機的なまでに軍人が不足しており、それに伴い勢力内における統治能力の弱体化が進んで、各拠点にいる有力者たちが独自に軍事力を得て自治力を強めている混沌とした状況となっている。
そんな世界観の中で、有力者の分身であるプレイヤーは【治安維持のために作った私設武装組織】の指揮官という位置づけとなっており、連邦やジオンは、彼らを正規兵と同等の扱いで雇うことで急場をしのいでいるという設定になっている。
そのため、プレイヤーは所属する軍を自由に変更することができ、それぞれの軍で獲得した功績に応じて階級を上げることもできる。今回の戦争イベントは、作戦の立案が可能となる将官クラスまで昇進しているエギルのおかげで開催できたのである。
以上のような設定に則り、プレイヤー主催のフリーダム・ウォーがおこなわれ、部隊編成から作戦まで自分たちで決めていく。
プレイヤーは、両陣営合わせて12小隊――最大60人まで登録でき、プレイヤーユニットは、一つの陣営でMS30機、艦船6隻まで参加可能となっている。そこにNPC艦隊を加えて、MS総数200機、艦船総数30隻の1個艦隊が総戦力となる。(原作のソロモン攻略戦はこの10倍以上の規模だが、ゲームとしての都合上、大幅に簡略している)
また、大きな攻撃力を有するMAは最大5機まで使用可能だが、小隊におけるMAの使用条件が人数1人分と引き換えに1機のみとなっているため、参加できるMSの数が減ってしまうというデメリットがある。
そのような規則に従って部隊を編成し、10分程度の話し合いの結果、今回の陣容が決まった。
・地球連邦軍
部隊名:黒の艦隊
司令官:キリト(大佐)
旗艦:バビロニア・バンガード級戦艦<タービュレント・ウンディーネ>
艦隊編成:戦艦×7、巡洋艦×23、MS×196、MA×2
・ジオン公国軍
部隊名:エギル・フリート
司令官:エギル(中将)
旗艦:レウルーラ級大型戦艦<ゼネラル・エギル>
艦隊編成:戦艦×9、巡洋艦×21、MS×192、MA×4
ご覧の通り、お互いの個性が垣間見えるデータとなっている。キリトの方は『なるほど』と言った所だが、エギルに至っては『自己主張しすぎじゃね?』とツッコミたくなる固有名詞ばかりである。
ちなみに、連邦の旗艦は『荒ぶるウンディーネ』という意味で、所有者のキリトが船体にデザインされた黄金の女性像からイメージしたものだが、ALOで【バーサークヒーラー】と呼ばれているアスナがそれを深読みして、ちょっぴり揉めたという裏話があったりする。
何はともあれ、お互いの特色が色濃く出ている遊び心に溢れた部隊が完成し、いよいよ準備は整った。
ジオン側のブリーフィングルームで話をまとめたエギルは、やる気を漲らせている仲間を満足そうに眺めて最後のシメに入る。
「勇敢なる精鋭たちよ! 臥薪嘗胆の末にソロモンを奪還する時が来た! 今こそ我らの誇りを踏みにじった地球連邦を叩きのめし、ジオンの栄光を取り戻すのだっ!!」
『おお――――――――――――!!!!!』
「それでは行こう、美しき我らが海へ! ジーク・ジオン!!」
『ジーク・ジオン!!!!!』
エギル・フリートの面々は、ノリノリで勝鬨を上げる。今回のメンバーはそれほどまでに強力だからだ。しかし、対する相手もまた強敵であり、勝敗の行方は実際にやってみなければ分からない。
そんな彼らが雌雄を決する戦場は、数多の因縁が渦巻く宇宙要塞ソロモン。
制限時間となっている90分の間に拠点の中枢部を破壊できればジオンの勝利となり、敵のプレイヤーユニットかエリア移動に必要な艦船を全滅できれば連邦の勝利となる。
しかし今は、結果など二の次である。ただ全力でガンプラバトルを楽しむだけだ。
ブリーフィングルームを出てバトルルームに集まった総勢53人のプレイヤーは、自身の前にある台座にGPベースを接続し、遠く離れたソロモン宙域へと転送されていく。
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一瞬にしてソロモン宙域エリアに転送されたプレイヤーは、それぞれの所属艦から出撃準備を始める。連邦の艦隊はソロモン近海のサイド3方面に展開し、ジオンの艦隊はその300km先に対面するように展開して、手の平サイズのソロモンを臨んでいる。
帰るべき古巣を見てニヤリと笑ったエギルは、早速愛機に乗り込んで全軍に号令を出す。
「もはや多くを語るまい。ただ存分に暴れて来い!!」
『おお――――――――――――!!!!!』
「MS隊、出撃せよ!!」
男らしいエギルの号令と共に、カタパルトからMSが射出される。その半数以上が攻撃部隊としてソロモンを目指し、加速していく。
「さぁて、キリトたちがどうでるか。じっくり拝見させてもらうぜ」
艦隊の防衛を務めるエギルは、急速に小さくなっていくクラインたちを見送りながらつぶやく。今回の攻撃部隊には、エギルとメイジン・カワグチが集めた凄腕プレイヤーが大勢いる。流石のキリトたちでも苦戦は必至のはずだ。
その同時刻。連邦側のキリトたちも出撃を終えて、それぞれの役目を果たすために行動を開始していた。
キリトとアスナの恋人組は主力部隊を率いて進撃。途中ですれ違うジオンの攻撃部隊と交戦しつつ、敵艦隊へ攻撃を仕掛ける。シノンやシリカなどの遠距離攻撃タイプのプレイヤーは、50kmほど先にある暗礁宙域で待ち伏せしてソロモンに向かう敵機を迎撃する。そして、強力な新型機に乗っているランとユウキは、防衛隊の要としてソロモンの玄関とも言えるスペースゲート前に陣取る。
「ソウ君、戦果を期待してるね」
「フラッグファイターの矜持に誓って、君の想いに応えてみせよう」
この場に残るランは、攻撃部隊に加わっているソウ・マツナガにエールを送る。機動力の高い機体に乗っている彼は、主力部隊とは別の進路から攻め込むことになっているのだ。
「ちぇっ、ボクも行きたかったなぁ」
「ふふ、今回は我慢してね?」
未だに自分のポジションが納得できていないユウキは不貞腐れており、苦笑したアスナが優しく宥める。カテジナさんっぽいアバターなので違和感が半端無いものの、中の人は慈愛に満ちたお姉さんだから問題無い。
何はともあれ、仲間内で話している間に各プレイヤーの準備は整った。
「よし。それじゃあ攻撃部隊発進するぞ!」
「了解した。グラハム・エ-カー、先行する!」
「おう、向こうで会おう!」
キリトの合図と共にソウ・マツナガの機体が移動を始めた。彼が操縦する黒い大型の戦闘機は、北極星の方位――エリア上部へ向かって加速していく。
それと同時にキリト率いる主力部隊も動き出す。彼らの目標は、300km先にいる敵艦隊および防衛部隊の撃滅である。ステルスが効いているため望遠画像でも捉えられないが、その代わりに彼らが放つビームとミサイルがじきに襲い掛かってくるはずだ。
「アンチミサイル粒子弾、発射! 続いてビーム撹乱膜、散布開始!」
キリトは、発進すると同時に艦隊へ命令を出す。それに応じて各艦からミサイルが発射され、それぞれ設定された宙域で炸裂する。その数分後にジオンの艦隊攻撃が始まった。
無数のビームとミサイルが宇宙空間を疾走し、アンチミサイル粒子弾とビーム撹乱膜の散布領域に飛び込んでいく。すると、そこかしこに暴力的な花々が咲き乱れる。その様子を間近で見たシノンは、あまりの迫力に息を呑む。
「すごい……」
「初めて見た時はわたしも驚きました」
シノンの<ウルティマラティオ・デュナメス>と並走しているシリカは、彼女の意見に同意する。遠目から見る宇宙戦争は、それほどまでに非現実的であり、ある意味美しいとさえ言える光景だからだ。
しかし、いつまでも見惚れているわけにはいかない。ビーム撹乱膜の減衰と同時に連邦からの艦砲射撃も始まって壮絶さを増していくビームの応酬を横に見ながら、シノンとシリカは自分たちの役目を果たすために動き出す。
「そろそろ迎撃ポイントね」
「はい。それじゃあキリトさん、わたしたちは離れます」
「了解。武運を祈る」
通信画面に映るキリトに敬礼を返しながら迎撃部隊が離脱していく。このあたりの宙域は障害物が多く、待ち伏せに適しているのだ。
ここでシノンは<ウルティマラティオ・デュナメス>による長距離狙撃をおこなうことになっており、新型に乗ったシリカは、強力な砲撃で弾幕を張ることになっている。
「それにしても、今度の機体もやたらと可愛らしいわね」
「はい。キリトさんがわたしをイメージして作ってくれたそうです」
シリカは、ちょっぴり照れた様子で新型ガンダム――<ストライクフリーダムエンジェル>が作られた経緯を語る。
<ストライクフリーダムエンジェル>は、その名の通り<ストライクフリーダムガンダム>を元に改造した機体で、全体的にサイズを縮小して少女のような体型に作り直し、背部ウイングとドラグーン・システムを天使の翼のようなデザインにした趣味全開の一品となっている。さらに、支援機であるピナもパワーアップしており、巨大補助兵装<ミーティア>を元に制作した成竜型特殊戦闘機<ピナさん>となって<ストライクフリーダムエンジェル>をその背に乗せている。もちろん合体も可能で、防御力を犠牲にする代わりに強大な攻撃力を得ることができる。
この機体の砲撃と<ウルティマラティオ・デュナメス>の狙撃が合わされば、この宙域を通過していくジオン側にとって脅威となることは間違いない。
「後は敵が来るのを待つのみね……」
「キリトさんたちとの交戦を避けた敵はすぐに来ますよ」
何度か戦争イベントを経験しているシリカが、敵の進行速度を予想する。
GBOにおけるMSの最高速度は、宇宙速度などの難しい物理法則を省略して2000km/h前後となっており、それほど早いわけではない。加速したり遠心力が働けば宇宙でも相応のGが発生するため、リアルから逸脱しないように人体が耐えられる数値になっているのだ。その上、スラスターを使用すると【オーバーヒートゲージ】が上昇し、それがMAXになるとしばらくスラスターが使えなくなるというリスクがあるため、通常は1000km/h以下の巡航速度で活動することになる。
それでも、順調に進めば十数分でこの宙域に辿り着く。途中で接触するキリトたちがいくらか抑えてくれるだろうが、ジオン側の精鋭が突破してくるのは間違いなかった。
バトル開始から10分ほど経過した頃、両軍の攻撃部隊はお互いに視認できるほどまで接近していた。
その光景を確認したクラインはニヤリと笑い、メイジン・カワグチは闘志を燃やす。
「来たなキリの字!」
「やはり彼らも正面突破を試みるか。お互いに我慢弱い性質なようだなぁ!」
2人は、先頭にいるキリトとアスナの新型機に注目した。
黒いカラーリングが特徴的なキリトの機体は、<ダブルオーガンダム>を元に制作した<ダブルオーガンダム・ソードマスター>である。
本機は、特殊な機能を追加せずに、本体の完成度を高めることで純粋な機体性能の向上のみを追及した【二刀流専用】のMSとなっている。全身の装甲にアレンジを加えて小型GNスラスターを増設し機動力を増強。さらに、SAOで装備していた【コート・オブ・ミッドナイト】を参考に、GNコンデンサーと大型GNスラスターを搭載した腰部アーマーを追加し、凄まじい突進力を獲得している。そして肝心の武装は、SAOで愛用していた【ダークリパルサー】と【エリュシデータ】を再現した特製GNソードを装備し、完全にキリトのスキルに依存したこだわりの仕様となっている。
そんなキリトらしいMSと仲良く並んでいるアスナの機体は、青い髪の妖精のような姿をしている。それは、ALOでアスナが使っているアバターを参考に<ノーベルガンダム>を改造した<フェアリーナイトガンダム>である。
ALOで装備している衣服をガンダム風にアレンジし、背中には妖精の羽を模したフレキシブルスラスターユニットを搭載して機動力をアップさせている。また、【ランベントライト】を再現した専用レイピアの先端にはビーム発生器が仕込まれており、<ノーベルガンダム>と同様に【ビームリボン】を使用することが出来る。それによって攻撃範囲が広まると同時にトリッキーな戦術がおこなえる。
どちらの機体も近接戦に特化した作りで遠距離戦には不得手だが、その弱点を突いたとしても彼らを撃墜するのは至難の業である。
「可憐な妖精の加護を受けた黒衣の剣士と宇宙で相まみえるとは。ロマンチックな演出に賛辞を送らせてもらおう」
「ったく、こんなところでもイチャつきやがって、コンチクショー!」
メイジン・カワグチは新型ガンプラの見事な出来栄えを賞賛するが、大人気無いクラインは別のところで憤る。
「ええい、目障りなバカップルなど宇宙の塵に変えてやらぁ!」
「逸るなクライン! 私たちの成すべき任務は、バカップルの殲滅ではない!」
「って、バカップルってところは否定しないのかよっ!?」
ジオンサイドのおバカな会話は、オープン通信でキリトたちにも聞かれていた。
「なぁアスナ、俺たちってそんなにイチャついてるかな? 結構普通だと思うんだけど……」
「キリト君、何気に気にしてたんだ……。でも今は、メイジンの存在を気にしないとダメだよ」
「あ、あぁ、そうだな。あいつはかなりの強敵だ」
確かに今は彼らと戦うことを考えなければならない。キリトは、8月におこなわれた全国大会で彼を負かした優勝者と互角以上に渡り合ったメイジン・カワグチに一目置いている。それに見合うほどに彼の実力は高く、操るガンプラの完成度もメイジンの名に恥じないものだった。
彼が用意した機体は、【プラモ狂四郎】というマンガに登場した<レッドウォーリア>を現代風にアレンジした<ガンダムアメイジングレッドウォーリア>という名のMSだ。真紅のボディに強力なハイパーバズーカを装備した美しいガンプラであり、メイジン曰く、『客観的に見ても自画自賛に値する程いい機体』となっている。
そんな彼だけでも脅威なのだが、強敵は他にもいた。
「やいキリの字! メイジンばっかり気にしてるようだが、俺のことも忘れてもらっちゃあ困るぜ?」
「もちろん、【袖無し】のクラインを忘れることなんてできないさ」
「チクショーッ! 袖のことは忘れてくれよ! 肌色の服を着てるってことにしといてくれよ!」
痛いところを突かれたクラインは、涙目になりながらシャウトする。しかし、情けない彼とは裏腹に、乗っている機体は実に見事な出来栄えだった。
侍好きな彼の機体は、<シナンジュ>を武者風に改造した<紅蓮武者ネオシナンジュ>という名の絢爛豪華なMSである。<ネオ・ジオング>をスケールダウンして改造した武者鎧を、和風に作り変えた<シナンジュ>に装着し、MSサイズのままで<ネオ・ジオング>の機能を簡易的に実現させている。
主武装は【
この機体は、見た目通りに恐ろしい性能を秘めており、乗っている男がノースリーブの変態でも決して侮ることは出来ない。ソロモンの前にはユウキとランが控えているものの、この2機を相手にしては分が悪いかもしれない。
「だったら、ここで仕留める!」
キリトは、ビームの撃ち合いが始まった戦場で、クラインとメイジン・カワグチを攻撃するべく突進しようとする。しかし、その途中で邪魔が入った。
「そうはさせないぜ!」
「なに!?」
聞き覚えのある声が聞こえたと思った途端に、自分を狙ったビームが飛んでくる。それに気づいて回避すると、クラインたちの後方にいるギラ・ドーガ部隊に隠れていた2機のMSが飛び出してきた。
「久しぶりだなキリト!」
馴れ馴れしい言葉と共に通信画面が表示される。そこに写っていたのは、全国大会でキリトを負かした張本人だった。
「なっ、レイジもいたのか!?」
「オマケにアイラも連れて来てるぜ」
「ちょっと、オマケってどういうことよ!?」
唐突に現れたのは、全国大会の優勝者であるレイジと、彼のガールフレンドであるアイラ・ユルキアイネンだった。レイジは欧州から来た帰国子女で、現在は東京にある中学校に通っている15歳の少年である。そして、彼と同時期に北欧から留学してきたアイラは、東京で食べ歩きツアーをしている時に言葉が通じず困っていた所で偶然レイジと知り合い、今では友達以上恋人未満の仲となっている。
彼らは、レイジの親友であるイオリ・セイの影響でガンプラバトルを始めるようになり、短期間の内に類稀な才能を開花させた。その結果、メイジン・カワグチやエギルとも親しくなり、今回は秘密の助っ人として声をかけていたのである。
「というわけで、お前らの相手は俺たちがしてやるぜ!」
「このバトルに勝ったらエギルのお店で食べ放題なんだから、絶対に負けないわよ!」
「分かり易い買収されてる!?」
どうやらエギルと秘密協定を結んでいるらしい2人は、食欲を力に変えて襲いかかってきた。レイジの<ビルドストライクガンダム・コスモス>はキリトに、アイラの<ミスサザビー>はアスナに向けて攻撃を始める。
「相変わらず正確な射撃だな!」
「それを剣で切り払ってるお前は、相変わらずデタラメだけどな!」
レイジとキリトは、お互いの得意な武器で激しい攻防を繰り広げる。
一方、アイラとアスナのバトルも一気に過熱していく。
「やっぱりアイラは、ファンネルの操作が上手ね!」
「とか言いながら軽く防がないでよね!」
アスナは、ビームリボンを出した【ランベントライト】を高速で振り回して攻撃と防御を同時にこなし、アイラのファンネルを次々に撃墜していく。
男女ペア同士のバトルは五分五分の状況から始まり、長期戦に入りそうな勢いである。
その隙にクラインたちは、次々と連邦勢力をすり抜けていく。ジオンの攻撃部隊には護衛部隊が混ざっていたため、足止めに失敗したのだ。
「あばよ、キリの字! 俺らはこのまま行かせてもらうぜ!」
「口惜しいが、君とのバトルはレイジ君に譲ろう」
「ちぃ、やられた!」
<ビルドストライクガンダム・コスモス>のビームサーベルを二刀流で捌きながら、遠ざかっていくクラインたちを見送る。こうなったら、後方にいるシリカとシノンに任せるしかない。
とうとうMS同士の戦闘が始まり、ジオンの防衛部隊にも緊張が走る。劇中通り、艦船はMSの攻撃に弱いので、防衛部隊の役割は非常に大きくプレッシャーもかかるのだ。
ちなみに、脆いはずの艦船が攻撃の届く位置にいるのは、そうせざるを得ないからだ。身を隠す手段がある地球ならともかく、ほぼ何も無い宇宙空間では正面から殴りあうしかないのである。それに加えて、MSの航続距離が敵味方共に大差無いため、互いに攻撃を受けることが必然となってしまっているという理由もある。だからこそ劇中では、艦船の防御力よりもMSの攻撃力を上げる努力が加速したのだと思われる。
そのような背景を踏襲しているGBOだからこそ、エギルは防衛任務を買って出たのだった。
「あいつらは必ずここへ来るはずだからな」
エギルは、結構猪突猛進なキリトとソウ・マツナガというライバルが来ることを見越していた。
そして、彼らと対等以上にやりあうために取って置きのMAを用意した。
「存分に見せつけてやるぜ。この<パーフェクトノイエ・ジール>の力をなぁ!」
自信作を見せたい気持ちが逸って、思わず叫んでしまうお茶目なエギル。
そんな彼が長い時間をかけて制作したMAは、<ノイエ・ジール>の下部にあるブースターとプロペラントタンクを取り払ったものを、現代風に改造した<ビグ・ザム>の上部に取り付けた、全高90m以上の巨大兵器である。
元となった機体の攻撃力をそのままに、<ビグ・ザム>部分の後部にプロペラントタンクと推進器が一体となった【シュツルムスラスターユニット】を2基搭載して、機動力もアップしている化け物兵器となっている。
これぞまさに『ジオンの精神が形となったような』機体と言える出来であり、エギルが調子に乗ってしまうのも無理はなかった。
とはいえ、彼のライバルも負けてはいなかった。
敵機が来ると予想していた方向へ注意を向けていたその時、思いも寄らぬ方位から来る者をレーダーが捕らえたのである。
「なにぃ、上から来るだと!?」
思わぬ事態に慌てたエギルは、急いでレーダーを確認する。敵機は、艦隊の真上からものすごい速度で接近してくる。
「まさか、あの暗礁宙域を減速せずに突っ切って来たのか!?」
とんでもない相手の技量に思わず驚いてしまう。
ソロモン宙域エリアの上部は、デブリだらけの危険地帯と化しており、ゆっくり移動するだけでも難儀する場所だ。そこを高速移動で通り抜けることが出来る者など数えるほどしかいない。つまり、この敵は凄腕のプレイヤーということになる。
しかし、貴重なイベントなのに石ころに当たってゲームオーバーになる危険を冒すのは、あまり賢い行動ではない。
「そんな無謀なことをしたのは一体どこのバカだ!?」
「あえて言わせてもらおう、グラハム・エーカーであると!」
「やっぱりお前かー!!」
独り言に対して律儀に(?)答えてきた男は、やはりというかソウ・マツナガだった。彼は真っ黒い大型戦闘機を巧みに操り、敵の妨害を受けることなく暗礁宙域を突破して来たのである。高機動型の形態に変形できるMSやMAは、最大3000km/hまで加速可能となっており、彼の機体はクラインたちよりも先に敵陣へ到着したのだ。
「トップファイターである私とこの機体が合わされば、その程度のことなど造作も無い!」
ソウ・マツナガは、自身の愛機に絶対の自信を持って答える。
その異様な機体は、劇場版・機動戦艦ナデシコに登場した<ブラックサレナ>の装甲を改造し、以前制作した<ダブルオーフラッグ>に装着させた<フラッグサレナ>という重MSだ。前にユウキが使っていた<タケミカヅチ>と同様に、著作権に引っかかりそうな機体となっているが、徹底的にガンダム風のアレンジを加えて何とかパスすることが出来た。
主な特徴は、両肩のスラスターバインダーにGNドライヴをそれぞれ1基づつ搭載していることで、通常操作が難しくなる代わりに機動力と防御力を上げている。
武装は、クリアパーツをふんだんに使った【GNグラハムソードⅡ】が2本、尻尾のような位置に装備している【GNグラハムヒートロッド】が1本と数は少ないが、この機体には特別な攻撃法があった。追加装備である【高機動ユニット】の機首に搭載した【GNビームラム】と、出力をアップしたGNフィールドを合わせて体当たりする戦法だ。それは、直径20m以上の弾丸となり、戦艦ですら一撃で沈めてしまう破壊力を持っている。
そして今、ソウ・、マツナガは、必殺技と言うべきその攻撃を実践しようとしていた。
標的としている艦隊は目の前にたくさんいる。後は選んで突っ込むだけである。
「さて、美しい淑女が選り取り見取りだが、黒百合に見初められし乙女は誰かなぁ?」
最高速度まで加速した<フラッグサレナ>は、ビームラムとGN粒子に包まれて一つの流星と化した。その輝きが向かう場所は、サダラーン級機動戦艦<フォン・リヒトホーフェン>の中心部。
猛烈な対空砲火をものともせずに突進し、彼女の身体に黒百合の呪いを叩きつける。
「この想い、君に届け! GNディストーションフィールドアタッ―――ク!!」
真っ赤な大型戦艦に狙いを定めた<フラッグサレナ>は、凄まじい速度で体当たりを敢行し、<フォン・リヒトホーフェン>の船体を真っ二つにへし折った。
「失礼、少々強く抱きしめすぎたようだ」
「ええい、よくもやってくれたな!?」
「だから失礼だと言った!」
あっさり戦艦を撃沈されたことでエギルが叫び、当事者であるソウ・マツナガは何故か逆ギレしてそれに応じる。
会話の内容は色々とアレだが、ガンプラバトルの方は極めてエキサイティングに進行していた。
次回は、ソロモン戦の続きとなります。
今回出番があまり無かったシノン、ユウキ、ランが活躍します。
ちなみに、後1~2話でこの章を終わらせる予定で、次章はALOに戻ります。