ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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今回は、お互いの切り札が登場します。
ガンダムファンの読者なら、ニヤリと笑っていただけるかも?
その代わりに、SAO要素はほとんど無いんですけどね!


第33話 光る戦場

 先行して敵艦隊に強襲をかけたソウ・マツナガは、相手が途惑っている間に戦果を拡大した。最初に撃沈したサダラーン級機動戦艦<フォン・リヒトフォーフェン>に続いて、ザムス・ガル級戦艦<トゥアハー・デ・ダナン>とスクイード級戦艦<イカ娘>を短時間のうちに沈めていく。

 しかし、余裕があるのはここまでだ。猛烈な対空砲火を防ぐのに必要なGNフィールドはGN粒子の消費が激しいため、これ以上攻撃を受けたら維持できなくなる。もし突撃している途中で消失してしまったら、これまでのお返しとばかりに袋叩きにされてしまうだろう。

 

「もう1隻沈められるか?」

 

 ソウ・マツナガは、ガリガリと減っていくエネルギーゲージを睨みながら次の行動を考える。そのちょっとした迷いが隙となり、エギルが密かに配置していたMA部隊に気づくのが遅れてしまった。NPC艦隊に隠れながら接近していた<サイコガンダムMk-II>と<α・アジール>がソウ・マツナガの進路を遮るように出現し、後方から追ってきているエギルの<パーフェクトノイエ・ジール>と挟撃してきたのである。

 

「これ以上はやらせん!」

 

 エギルの怒声と共にメガ粒子砲の雨が降り注ぐ。流石にここまで濃密な弾幕を張られてはすべてを避けることができず、ついに頼みの綱であるGNフィールドが消失して高機動ユニットにビームを食らってしまう。その破損によって機首のビームラムが使えなくなり、GNディストーションフィールドアタックが出来なくなった。

 

「くっ! フラッグを傷つけてしまった。これは始末書ものだな」

 

 エギルにしてやられたソウ・マツナガは自身の失態を悔やむ。これではもう単機で対艦攻撃をおこなうことは出来ない。

 

「(ならば、獲物を変えるまで!)」

 

 瞬時に戦術を変更したソウ・マツナガは、止めを刺そうとした<α・アジール>が近づいてきていることに気づくと、迷うことなく【トランザム】を使って一気に間合いをつめる。相手の油断を突いた強襲攻撃をおこなうつもりなのだ。

 

「私からのプレゼントを受け取るがいい!」

 

 急加速によって発生した強烈なGに耐えながら<α・アジール>の懐へ飛び込む。無謀とも言えるその行動を予測できなかった敵プレイヤーは、ごく僅かな回避時間を驚いている間に浪費してしまう。

 

「うわぁ―――!?」

 

 赤く染まった戦闘機が視界一杯に迫り、瞬く間に<α・アジール>の頭部へ直撃する。そして、断末魔の叫びを上げるパイロットもろともコックピットを押しつぶす。激突する寸前に大破した高機動ユニットをパージして敵機の急所にぶつけたのだ。身軽になった<フラッグサレナ>は悠々と頭上を通過していき、高機動ユニットの残骸を食らった<α・アジール>は頭部を破壊されて沈黙する。

 

「飾りをやられた程度では、フラッグファイターの翼は折れんよ!」

「ははっ、それでこそ俺のライバルだ!」

 

 転んでもタダでは起きないソウ・マツナガにエギルは賞賛を送る。こうまで見事に動かれては、素直に彼の手腕を褒めるしかない。

 しかし、最終的な勝利を譲るつもりは微塵も無い。今のところジオンの方が劣勢となっているが、エギルはまだ勝てる自信を持っていた。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 イタリアの伊達男ことリカルド・フェリーニ(本名)に襲われたシノンは、初っ端からピンチに陥っていた。

 機動力の高いバード形態で一気に間合いをつめた<ガンダムフェニーチェリナーシタ>は、距離を離そうとした<ウルティマラティオ・デュナメス>の頭上を取ると、MS形態に変形してバスターライフルカスタムを向けた。

 

「さぁお嬢さん。この俺と楽しいワルツを踊ろうぜ?」

「はぁ……言動までアイツみたいだわ」

 

 シノンは、軟派なリカルドのセリフに呆れながらも相手より早く動いて見せた。<ウルティマラティオ・デュナメス>の大腿部にマウントされているGNビームピストルⅢを素早い動作で左手に装備すると、華麗な早撃ちで牽制射撃を放った。

 

「うおっとっ!?」

「悪いけど、ダンスはあなただけで踊ってちょうだい」

「ははっ、この俺の誘いを断るとは、身持ちの硬い子猫ちゃんだ!」

 

 連発された粒子ビームを肩に内蔵してある【ビームマント】で防ぎながら軽口を叩くリカルド。その様子にイラッとしつつも距離を取ることに成功したシノンは、更に後方へ逃げながらGNビームピストルⅢを連射して相手の動きを観察する。

 

「(あなたのクセを見せてもらうわ!)」

 

 正確な射撃を撃ち込むことで、あらゆる回避行動を相手に気づかせることなくおこなわせる。ビームマントを使いにくい頭部や足を狙った場合はどう動くか。左腕の大型シールドはどのように使うのか。上方、下方、側面からの射撃はどのように対応するのか。リカルドの好みやクセを少ない情報から読み取る。

 

「流石、スナイパーだけあって正確な射撃だな。こいつぁ、俺のハートまで撃ち抜かれちまいそうだぜ」

「だったら、お望み通りにハ-トを撃ち抜いてあげる!」

 

 リカルドと会話のキャッチボールをしながら、頭の中で戦術を練り上げる。手に入れたデータを使って反撃する時がきたのだ。

 

「目標を狙い撃つわ!」

 

 バスターライフルカスタムから放たれる強力なビームを回避しつつ有利なレンジを保ち続けるシノンは、タイミングを見計らってGNビームピストルⅢを撃ち込む。その粒子ビームは<ガンダムフェニーチェリナーシタ>の頭部へ向かい、一瞬だけ視界を遮る。それに対してリカルドが回避運動をおこなおうとした直後に構えていたアルテミスⅡを撃ち、予測した未来位置へ向けて銃弾を放つ。GGOではできないスナイパーライフルとピストルの2丁同時撃ちという荒業だったが、シノンは見事に成功させて見せた。

 

「なんだとぉ!?」

 

 予想外の直撃を受けた<ガンダムフェニーチェリナーシタ>が痛みを感じたように震える。アルテミスⅡの135mm弾が右足を吹き飛ばしたのだ。

 ヒザから下を破壊されたせいでバランサーが狂い、機体制御が乱れてしまう。その隙に勝負を決めようとしたシノンは、止めとばかりにアルテミスⅡを連射する。

 

「これで終わりよっ!」

「そうはさせるかっ!」

 

 やられそうになったリカルドは、瞬時に【ニュータイプ】を発動して思考速度を上昇させた。少しだけゆっくりとなった世界で自身に向かってくる銃弾を感知し、ギリギリのタイミングでシールドをかざす。

 ズガンッ!! ズガンッ!!

 2発の徹甲榴弾がシールドにめりこんで、直後に爆発する。その前に手放していたため機体の損傷は免れたが、シールドを失ったせいでバード形態に変形できなくなった。

 今のはかなりヤバかったな……。肝を冷やしたリカルドは、久方ぶりの苦戦に冷や汗を流す。しかし、ビギナー相手にやられっぱなしというわけには行かない。シールドの爆発を隠れ蓑にしてバスターライフルカスタムを撃ち、アルテミスⅡの銃身を吹き飛ばすことに成功する。

 

「しまった!?」

「かぁ~っ! あんだけやられといて、こっちはライフルだけかよ!」

 

 自信のあった射撃を外したリカルドは大げさに嘆く。もし壊れたバランサーのせいで機体の姿勢が崩れなければ、さっきのビームは<ウルティマラティオ・デュナメス>の右半身に当たって致命傷を与えていた。つまり、シノンは幸運によって守られたのだ。

 こりゃ参ったね。このスナイパー少女は、可愛くて能力も高い上に運まで良いと来ている。これはなかなか手強い相手だと、リカルドは苦笑いを浮かべる。しかし、その表情はどことなく楽しそうだ。

 

「君の射撃能力は凄まじいな。本当に惚れちまいそうだよ!」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、わたしは簡単に惚れないわよ?」

「なに、今はそれで良いさ。これから見せる俺の魅力で、君を振り向かせて見せるからな!」

 

 そう言うとリカルドは、バスターライフルカスタムの下部に装着された小型ライフルを取り外して左手に装備する。先ほどよりも攻撃的な見た目になり、今後の苦戦を予感させた。

 

「それじゃあ、第2ラウンドを開始しようか!」

「っ!!」

 

 シノンの実力に魅了されたリカルドは、すべての力を出し切って彼女を倒してみせると誓う。それに対するシノンもGNスナイパーライフルⅢを装備して迎えうつ。2人の戦いはこれからが本番だった。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 ソロモンを防衛しているユウキとランは、クラインとメイジン・カワグチの攻撃を受けていた。彼らは紺野姉妹を最大の敵と認識し、全力で排除しなければならないと判断したのである。

 

「ALOを含めてランとの勝負は負け越してるからな。ここらでお兄さんの力を見せ付けてやるぜ!」

「当然、遠慮は無用です!」

 

 クラインの<紅蓮武者ネオシナンジュ>は、ランの<スサノオ400型>と交戦する。強力なGNフィールドを展開できる<スサノオ400型>にダメージを与えるには、対抗策を用意してきた彼の機体が有効だからだ。ソウ・マツナガ率いるブルーブレイヴス隊の機体はすべてGNドライヴ搭載型で、当然のようにGNフィールドを使う。それを承知しているクラインは、日本刀と大型クローアームに【対GN粒子コーティング】を施してきたのである。お金をつぎ込むほどに効果が上がるタイプの武器強化で大人気ないほど鍛え上げてきたクラインは、自信満々でランとのバトルに臨む。

 そのような理由でランとクラインという組み合わせが決まり、ユウキの相手は残ったメイジン・カワグチとなった。

 

「これほど燃えるシチュエーションで君と戦えるとは、まさに僥倖! この喜びを、最高のガンプラバトルで体現してみせよう!」

「だったらボクも、全力全開で応えてみせるよ!」

 

 相手の心意気に乗ったユウキは、GNソードEXを構えて突進する。それに対するメイジン・カワグチは、バックパック左側の武器用アームにマウントされている【ガンブレイド】を左手に装備して迎え撃つ。この武装は、ハンドガンの銃身下部に実体式の刃を取り付けたもので、グリップを基点として縦と横に折れ曲がり、それぞれソードタイプとハンドガンタイプに変形して使うことが出来る。

 

「噂に名高い君の剣技、直に試させてもらう!」

「お望み通り、たっぷり味あわせてあげるよ!」

 

 強気なメイジン・カワグチは、相手の得意な戦闘スタイルで挑んできた。流石の彼でもALOでトップクラスのユウキ相手に剣技で勝つことは難しい。だがここは、ALOではなくGBOだ。

 

「私の剣技は一味違うぞ!」

 

 ユウキの振るう連撃に押されていたメイジン・カワグチは、ユウキの不意を突くように右前腕の側面に搭載されているビームサーベルを使い、それと知らずに振り下ろされたGNソードEXを力強く弾き飛ばした。

 

「あっ!?」

 

 予期せぬ反撃にあったユウキは、思いっきり焦った。それでも追撃を避けようとする意志が働き、咄嗟にバックを試みる。そのおかげでガンブレイドの斬撃を受けることは免れたものの、姿勢が崩れたままであるため、メイジン・カワグチのチャンスはまだ続いている。もちろん、彼がこの隙を逃さずことなど無く、ガンブレイドをハンドガンタイプに変えて<ブレイヴセイバー・オルタナティブ>を狙い撃つ。

 バンッ!! バンッ!! バンッ!!

 

「うわっ!?」

 

 反応速度が良いユウキはギリギリのところでそれを避けて見せる。何とか直撃は免れたものの、数発が<ブレイヴセイバー・オルタナティブ>の装甲を掠めて嫌な震動をコックピットに伝えてきた。流石はメイジン、一筋縄では行かない。

 

「ここで二刀流を使うだなんて思わなかったよ!」

「覚えておくがいい。ガンダム世界では、二刀流も基本技だということを!」

 

 確かに、SAOのような特殊性は無いので誰でも使える剣術ではある。しかし、これほどまでに使いこなすには高いセンスが必要だ。

 やはり、メイジンの名を与えられた彼の才能と実力は本物だと言える。

 

「思っていた以上に強いね……だからこそ倒し甲斐があるよ!」

「それはこちらも同じこと! 【絶対無敵の剣姫】をこの手で討ち取り、最高の栄誉を手にしてみせよう!」

 

 ユウキの挑発に応えたメイジン・カワグチは、奇妙な二つ名を口にする。それは初めて聞く呼ばれ方であったが、何となく懐かしい感じがするものだった。

 

「絶対無敵?」

「ああそうだ。華麗なる剣技でもって数多の猛者を屠ってきた君に敬意を表してつけられた称号だ」

 

 思わず口に出たユウキの疑問にメイジン・カワグチが答える。現在彼女は、1対1でおこなわれるガンプラデュエルの連勝記録を更新し続けており、美幼女アバターとボクっ娘要素の相乗効果も加わって多くのプレイヤーから人気を集めていた。そんな彼らがこっそりとつけた二つ名が絶対無敵の剣姫だった。最近呼ばれ始めたばかりなので、本人は元より周りの仲間も知らなかったが、彼女の実力を知っている者なら誰もが納得する名称である。

 ただし、メイジン・カワグチとは1対1で戦ったことが無いため、その二つ名の通りに勝てるかどうかはやってみないと分からない。これまではソウ・マツナガをサポートする方が楽しくて、姉と共に全国大会のエントリーも辞退しており、メイジン・カワグチと戦う機会が無かったのだが、今回のフリーダムウォーでとうとうその日がやって来た。ようするに、この戦いで絶対無敵の二つ名が彼女に相応しいか試される訳だ。

 無論、それ自体は望むところである。ユウキとて、強いプレイヤーとバトルできることはとても嬉しい。しかし、彼と巡り会うことで絶対無敵という単語を耳にすることになったのは意外すぎるハプニングだった。

 

「(理由は分からないけど、ものすごく気になる言葉だな……)」

 

 そう自覚した瞬間、ユウキの脳裏にファンタジーっぽい風景のイメージが浮かんだ。それは大きな湖に浮かぶ円形の島だった。中央に立派な木が生えており、その根本にはデュエルにうってつけな広場がある――

 

「っ!?」

 

 何かを思い出しそうになったところで、唐突にイメージが途切れる。どうやら、ALOにいる時より定着しないらしい。前に宗太郎が、『例のイメージはALOと強い因果関係があり、それ以外の事象にはあまり影響が出ないようだ』と言っていたが、はっきり言ってよく分からない。因果律量子論とやらを力説されても中二少女の学力ではちんぷんかんぷんである。

 それ以前に、今はバトルの最中だ。もちろん先ほどのイメージは気になるが、現時点ではメイジン・カワグチと真剣勝負したいという気持ちの方が勝っている。

 

「(今考えたって答えは出ないだろうし、後でソウ兄ちゃんに相談すればいいか)」

 

 体勢を整えて激しい鍔迫り合いを再開したユウキは、いつもの元気を取り戻して笑顔を作る。謎めいた秘密を抱えていても、健康的な彼女の心が歪むことはなかった。それは、別世界の自分とリンクしていることを無意識のうちに理解しているからだった。

 

 

 そのようにユウキが不思議体験をしている頃、ランとクラインのバトルも意外な展開を見せ始めていた。圧倒的な攻撃力を持っているはずの<スサノオ400型>が<紅蓮武者ネオシナンジュ>に有効な攻撃を与えられないでいたのである。

 

「あーんもう! Iフィールドのせいでビームが効かない!」

「はっはー! ビーム主体のその機体じゃ、俺様のネオシナンジュは倒せないぜ!」

 

 まんまと策がはまったクラインは、憎たらしいまでのしたり顔を浮かべる。<紅蓮武者ネオシナンジュ>の大型スカートアーマーには<ネオジオング>と同じようにIフィールドジェネレーターが内蔵されており、ほとんどのビーム攻撃を無効化してしまうのだ。

 もちろんIフィールドも無敵ではなく、必殺技に近い威力を誇るGNブラスターキャノンを防ぐことは出来ないが、あれを発射するには若干のタメ時間を要するため、援護の無いこの状況で直撃させるのは非常に難しい。

 

「これじゃあ、相性最悪ですよ……」

「ぐはぁっ! 可愛い女の子にそう言われると、なぜか心が痛んじゃう!?」

 

 思わぬ口撃で精神的にダメージを受けるクラインだったが、ここまでは思惑通りに推移している。キリトと同様に近接一辺倒な彼は、このような状況を作り出すためにレアアイテムである【超小型Iフィールドジェネレーターε】を手に入れて<紅蓮武者ネオシナンジュ>に組み込んだのだ。それはデフォルトで使えるものより遥かに高性能で、エネルギーゲージの消費が大幅に軽減されているため、ビームを当てまくってエネルギー切れを狙うのは得策ではない。むしろ、ランの方が先に息切れしてしまう。

 

「だったら、こちらも白兵戦で!」

 

 意を決したランは、不利と知りながらも白兵戦を試みる。<スサノオ400型>は、折りたたまれていた腕部の関節を展開すると、右腕の先端から大型ビームサーベルを出力させて突進する。

 

「あえて後退しない道を選ぶとは、良い覚悟だぜ!」

 

 その意気や良しとばかりにクラインも突進する。相手は小回りの利かない大型MA。こちらの機動力を活かせば懐に入り込むことも容易いはず。そう判断したクラインは、袈裟懸けに振り下ろされてくるビームサーベルをギリギリまで引きつけてから、それを受け止めた。質量とパワーの差で<紅蓮武者ネオシナンジュ>が弾き飛ばされそうになるが、機体を左回転させることでその力をいなし、<スサノオ400型>の胸元へ飛び込むことに成功する。

 

「もらったぁ!」

 

 必殺の剣を振るおうとするクライン。しかし、決まるかと思われた彼の攻撃は<スサノオ400型>のショルダータックルによって阻まれる。アスナに負けないくらいの反応速度を持つランが、素早い判断でカウンター攻撃をしかけたのである。

 

「させません!」

「なにぃ!?」

 

 不意打ちを食らった<紅蓮武者ネオシナンジュ>が、ガンダムファン御馴染みの効果音と共に吹き飛ばされる。

 それを見たランは、チャンスとばかりに追撃する。

 

「行け、ファング!」

 

 音声入力に従って<スサノオ400型>の脚部から射出された大型GNファング6基が<紅蓮武者ネオシナンジュ>に襲い掛かる。実体兵器のこれならIフィールドも意味は無い。

 

「流石はランちゃん、相変わらずの鉄壁ガードだ! しかし!」

 

 クラインは、左腕にGNファングを食らいながらも逆襲を開始した。攻撃を受けたせいでバランスを崩したと見せかけてランを騙し、彼女が追撃しようと接近してきたところで急加速したのである。ビームサーベルを振りかざしながら突進してきた<スサノオ400型>の下方へ転進すると一気に加速し、無防備な背後を取ることに成功する。

 

「あっ!?」

 

 まんまと一杯食わされたランは咄嗟にGNフィールドを展開したが、魔改造を施された<紅蓮武者ネオシナンジュ>の武装には無力だった。

 

「いっただき!」

 

 絶好の機会を得たクラインは、スカートアーマー後部に搭載されている大型クローアーム2基を射出する。それをアシストAIによる思考操作で誘導し、<スサノオ400型>の下半身後部にある主機ユニットを攻撃した。そこはGNドライヴ[Τ]6基と大型GNコンデンサーを搭載した心臓部とも言える場所で、GNフィールドを食い破った2基の大型クローアームが激突した直後に大爆発を起こした。

 ズガァ―――ンッ!!!

 

「きゃあ―――!!」

 

 技ありの逆襲が決まり、GNドライヴ[Τ]を5基も失ってしまった。

 しかし、やられてしまったランもすぐさま反撃に出る。機体後部に搭載しているGNミサイルを一斉発射して、追撃しようとしたクラインにカウンター攻撃を浴びせたのである。

 

「のわぁ―――!?」

 

 ミサイルの近接信管が作動し、<紅蓮武者ネオシナンジュ>の周囲で次々に爆発が起こる。エクストラスキルの【エース】を発動して何とか離脱に成功するが、傷ついていた左腕を完全に破壊され、全身の装甲もボロボロになってしまった。しかし、まだまだ戦える。

 

「へへっ。やっぱり、そう簡単に勝たせてくれないよなぁ!」

「妹の前でかっこ悪いところは見せたくありませんから!」

 

 2人は、互いに消耗しながらも楽しそうに笑みを浮かべる。このように素直な気持ちでゲームを楽しめる点だけは似たもの同士と言えるかもしれない。もちろん、恋愛に発展する可能性は微塵も無いけど。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 ユウキたちが戦闘を開始してから数分後。高機動ユニットを失ったソウ・マツナガは、執拗なエギルの追撃から逃げ続けていた。10%以下まで減少したGN粒子が十分に回復していないため、攻勢に出れないでいたのである。GNドライヴ搭載機は高い性能と特殊な能力を有する代わりに、GN粒子の増減で機体のステータスも大幅に変化してしまうというデメリットが存在する。つまり、GN粒子が50%に満たない今の<フラッグサレナ>は、全力の半分以下の性能しか発揮できない状態なのだ。やっと到着した連邦の攻撃部隊が艦隊攻撃を始めたおかげで<サイコガンダムMk-II>は離れていったが、それで事態が好転した訳ではなかった。

 

「はーっはっはっは! ガス欠とは情けないなぁフラッグファイター!」

「くっ! 事実なだけに言い返すことが出来ん!」

「やはり宇宙世紀シリーズの機体こそが最強の機動兵器! 所詮は紛い物でしかないアナザーシリーズの出来損ないでは話にならんわ!」

「情けない! そのような禍々しい物言いをエギルに許すとは!」

 

 後方から撃たれまくるメガ粒子砲を避けながらエギルと罵りあう。彼は宇宙世紀シリーズ以外の作品を認めないマニアックなファンで、00シリーズが好きなソウ・マツナガと度々論争を繰り広げていたりする。

 しかし、今回エギルが用意してきたMAの出来栄えは、確かに認めざるを得ない。強大な攻撃力を有するMA2機をそのまま合体させた単純明快な作りだが、だからこそ純粋に強かった。この機体を作るのにかかった金額と時間を純粋に反映した、大人気無い結果とも言えるが。

 

「これも人の執念か……しかし、私の愛とて負けてはいない!」

 

 GN粒子が40%以上まで回復したことを確認したソウ・マツナガは、急速反転して<パーフェクトノイエ・ジール>に突進する。

 

「これしきの弾幕、私の無理でこじ開ける!」

 

 劇中のグラハムのようにかっこつけてみる。しかし、気合だけではどうにもならない時もある。すれ違いざまに<パーフェクトノイエ・ジール>の右肩にあるメガ粒子砲を切り裂くことに成功するが、その代わりに何度かビームの直撃を受けて追加装甲が中破してしまった。並のプレイヤーによる砲撃ならともかく、エギルほどの熟練者を相手にしては無傷でいられない。

 

「ここまで良く戦ったが、その有様ではもう何も出来まい!」

「ふっ。確かに、私1人では今の君に勝てないだろう。だが、3人ではどうかな?」

「なんだと?」

 

 意味深なことを言うソウ・マツナガに疑問を感じたエギルだったが、その時点で失策を犯していた。彼とのバトルに集中しているうちに、死角となっているソロモン方面から急速接近してくる敵機の存在を見逃してしまったのである。コンピューターが反応して警告音を発したものの、敵機が入り乱れている今の状況では頻繁に警告されるため、つい確認を怠ってしまった。そのちょっとした隙がキリトの攻撃を許すことになる。

 

「(どうやら間に合ったようだな)」

 

 運良くエギルの後方からやって来る格好となったキリトは、敵機が自分に意識を向けていないことを見抜いて先制攻撃を仕掛けることにした。遠距離用武器として使えるGNダガーを腰部サイドアーマーから取り出すと、ソウ・マツナガの射撃に気を取られている<パーフェクトノイエ・ジール>に向けて投擲したのである。

 

「なにっ!? 新手か!!」

 

 【エース】の感知スキルで後方から来る攻撃を察するが、流石に気づくのが遅かった。咄嗟におこなった回避も間に合わず、ビグ・ザムパーツの左後部にGNダガーを食らってしまう。その直後にGNダガーが爆発し、付近にあったメガ粒子砲をいくつか道連れにした。この武器は敵に当たった衝撃で信管が作動する短剣型手榴弾となっており、柄の部分に仕込まれた圧縮GN粒子が爆発したのである。

 強襲を受けたエギルは、小破した<パーフェクトノイエ・ジール>を後退させつつ増えた敵機を確認する。

 

「こんな主人公らしいタイミングで来やがったのは、やっぱりキリトか!」

 

 まるで狙ったような登場の仕方に呆れつつ、彼とアスナの機体を見る。来る途中で攻撃部隊にやられたのか、2機とも中破状態だった。しかし、大きく傷ついていたとしても決して侮れない相手であることは百も承知である。

 

「待ちかねたぞ少年!」

「すまない。レイジを倒すのに手間どっちまってな」

「これでも結構急いで来たんだよ?」

「ほぉ。どうやらアスナも健在のようだな。流石はバーサークフューラーと言ったところか」

「だ・か・ら、フューラーってなんなのよ!?」

 

 再び凶悪な二つ名を耳にして憤るアスナ。その名は、シスコンに覚醒したアスナがユウキやランをナンパする男どもを容赦なく撃退していく姿から生まれたもので、既に広まっていた【バーサクヒーラー】という二つ名をもじって作られた称号だ。彼女としては不本意なことだが、真実を知っている仲間たちにとっては微笑ましい名称(?)として密かに受け入れられていた。

 

「それはさておき、綺麗に着飾った紳士淑女が到着したところで、ダンスパーティの再開といこうか!」

「逃げたわね……。まぁいいわ、後でキリト君共々締め上げてあげるから」

 

 調子に乗りすぎて虎の尻尾を踏んでしまったようだ。キリトとソウ・マツナガは、アスナのジト目を受けて冷や汗を流す。

 そんな御馴染みのやり取りを生温かい目で見守っていたエギルは、ちらりと時間を確認して軽くうなずく。よし、ようやく待ちに待った時間が来たぞ。こちらに向かってくるキリトたちに焦ることなく、内心でほくそ笑む。

 

「ここからは俺たちも混ぜてもらうぜ、エギル」

「こっちこそ望むところだ……と言いたいところだが、ここは一旦引かせてもらうぜ」

「なんだと?」

 

 いきなり戦意を弱めたエギルに疑問をぶつける。しかし、彼はそれに答えることなく、自軍の艦隊がいる方向へ後退してしまう。<フラッグサレナ>の奇襲から立ち直ったジオン艦隊は、いつの間にかエリアの右側に集まって強固な防御陣形を形成しており、エギルはそこに向かって急加速していく。

 

「あの引き際、鮮やかだな……なんだってんだ?」

 

 不思議に思い、ぽつりとつぶやく。キリトたちが加わったことで不利だと判断したのか。いや違う。彼は別れ際にニヤリと笑った。その表情を見て違和感を覚えたソウ・マツナガは、慌てたそぶりで辺りの景色を観察した。すると、サイド3方面の景色に異常を発見する。

 

「あれはまさか……」

 

 ソウ・マツナガの見つめる先に大きな光点があり、何故かそれが徐々に大きくなっている。あれは星の輝きじゃない。あの光は――

 

「2人とも! 急いでここを離脱するぞ!」

「えっ?」

「なんで?」

「サイド3から【ソーラレイ】のレーザー攻撃が来る!!」

 

 ソウ・マツナガがそう叫ぶや否や、ソロモンの司令部にいるNPCオペレーターから緊急事態を知らせる通信が送られてくる。このゲームでは、プレイヤーが移動するとその範囲にレーザー通信用の中継器を設置したことになり、ミノフスキー粒子やGN粒子散布下であっても長距離通信が可能となっている。そのおかげですべての連邦プレイヤーが即座に危機を知ることができたが、その脅威から逃げる時間はあまりにも短かった。

 

『地球連邦軍総員に緊急警報発令。サイド3方面に異常な光点を観測。恐らくは、ソーラレイより照射された大規模レーザーによる超長距離攻撃と思われます。着弾予想地点は、ソロモン中央部・第2スペースゲート。到達時間は現時刻から30秒後です。予測射線内にいるユニットは、直ちに安全圏へ退避してください!』

 

 その無慈悲な通信にすべての連邦プレイヤーが戦慄する。あいつら、とんでもないモン持ち出してきやがった。あまりに法外な値段のため、未だに3回しか使われていない究極兵器が自分たちに向けて放たれたのだ。それを恐れるなというほうが無理な話である。

 もちろん、初めて見るキリトたちも、その圧倒的な迫力に息を呑む。

 

「来るぞっ!!」

「光が、広がっていく……!?」

 

 ズゴォォォォォ――――――……ッ!!!!!

 凄まじい光の本流が、間一髪のタイミングで逃れた3人の間近を通過していく。スペース・コロニーを砲身とした巨大なレーザー砲から発射された直径8kmの光線は、あまりに綺麗で、とても恐ろしかった。

 

「きゃぁぁぁぁ―――っ!」

「こいつは予想以上だっ!」

「これほど熱烈に愛されては、火傷では済まないなぁ!」

 

 傍にいるだけで装甲が過熱していき、何かが軋むような音がコックピットに響き渡る。

 

「威力も尋常ではないが、ビームを超えるあの速度こそが最大の脅威といえよう!」

「これじゃあ、NPC艦隊の退避が間に合わないよ!」

「エギルにしてやられたな……」

 

 キリトは、自身の読みが外れたことを悔やむ。ソロモンという場所を考慮してリーズナブルな核攻撃を使ってくると思っていたが、まさかここまで贅沢をするとは。

 しかし、後悔先に立たず。解き放たれた光の矢は、破壊をもたらすためにソロモンへと向かっていく。

 

 

 暗い宇宙空間を一直線に突き進んでいく高出力レーザー。その進路上には、シリカの<ストライクフリダムエンジェル>がいた。何とか1人でセイとチナを撃墜したが、彼女の方もピナさんを破壊され、自身の機体も推進器をやられて移動不能に陥っていた。このような状態ではソーラレイから逃げることは出来ない。

 

「わたしの出番、やっぱり短かったな……」

 

 急速に迫り来るレーザーを前にメタ発言をするシリカ。その直後に光の中へ飲み込まれ、彼女のアバターが機体もろとも消失する。

 

 

 交戦中のシノンとリカルドは、ソロモン方面に移動しながら激しい射撃戦を繰り広げていたが、真横を通り過ぎていく極太レーザーの凄まじい迫力に気圧されて、お互いに動きを止める。

 

「これがソーラレイ!?」

「ははっ、こりゃまた派手な演出だねぇ」

 

 あまりにも非現実的な光景に、流石の2人も驚かざるを得ない。いくらなんでもこれはやりすぎでしょ?

 不条理な攻撃に呆れたシノンは、ユウキとランが無事に逃げてくれることを願いながらソロモンへ急ぐことにした。

 

 

 ソーラレイ発射を知らせる通信が流れた直後、ソロモン近海で戦っていたユニットすべてが予測射線外へ向けて移動を始めた。事前に示し合わせていたジオンプレイヤーは余裕を持って退避行動を始めており、慌てて逃げ出そうとしている連邦プレイヤーをドヤ顔であざ笑う。

 そんな中、ジオン攻撃部隊の要であるクラインとメイジン・カワグチは、未だ逃げずに紺野姉妹との戦闘を継続していた。互いに熱くなりすぎて、中断することが惜しくなっていたからだ。

 ユウキは、<アメイジングレッドウォーリア>のバズーカを避けながら叫ぶ。

 

「まさかソーラレイを使うなんて!」

「君の言わんとしていることは分かるつもりだ。しかし、今の私は客分の身。己の主義に反することも甘んじて受け入れるのみ!」

 

 メイジン・カワグチは、眉をしかめて返答する。彼自身も純粋なMS戦で勝負をつけたいと思っているが、主催者のエギルから『一度だけでもいいからソーラレイをぶっ放してみたかったんだ』と嬉しそうに言われたら素直に従うしかない。

 

「間もなくレーザーが来る。君も早く退避したまえ!」

「うぅ~、仕方ないなぁ!」

 

 スラスターを全開にして遠ざかっていく<アメイジングレッドウォーリア>を口惜しそうに見つめながら、ユウキも移動を始める。

 それと同時に、いつの間にか離れてしまっていたランを探す。

 

「姉ちゃんはどこにいったかな?」

 

 通信可能な範囲にいるので向こうの会話は聞こえていたが、メイジン・カワグチと戦いながらでは姉の状況を確認している余裕は無かった。

 果たして彼女は無事だろうか。強敵であるクラインと戦っているのだから無傷では済まないだろうが……。

 

「いた、姉ちゃん!」

 

 7時方向を振り向いて見つけたランの機体は、ユウキの想像以上に傷ついていた。3基残っていたGNドライヴ[Τ]を更に1基破壊され、左腕と両足もボロボロにされている。主機とコンデンサーをやられてGN粒子が急激に減少したせいで<スサノオ400型>の機動力が大幅に低下し、素早い大型クローアームをかわしきれなかったのである。

 ランの方もGNファングとミサイルで何とか<紅蓮武者ネオシナンジュ>を牽制しているが、クラインはそれらをOSSの【サイコフィールド衝撃波】で粉砕してしまった。

 もはやランには打つ手が無いように思われた。

 

「もう少しで止めをさせそうだが、そろそろソーラレイが来るからな。ここらでサヨナラさせてもらうぜ?」

 

 勝ちを意識したクラインは、大破した<スサノオ400型>を放って立ち去ろうとする。女子の前でかっこつけたがる彼は、こういう大事な時に迂闊な判断をしてしまう弱点があった。それが仇となってランに逆襲の機会を与えてしまう。

 

「このまま黙って行かせはしません!」

「なにぃ!?」

 

 もう何も出来ないと思っていた<スサノオ400型>の右腕からエグナーウィップが射出され、後ろを向いていた<紅蓮武者ネオシナンジュ>の右足に絡みついた。それと同時に強力な電撃が襲い掛かり、コックピットにいるクラインをしびれさせる。

 

「あばばばば、しまったぁぁぁぁぁ!?」

 

 スタン効果のある電撃のせいで体が動かなくなり、彼も離脱出来なくなった。一瞬の油断がクラインの命取りとなってしまったのである。

 

「姉ちゃん、今助けに行くよ!」

「ダメよユウキ! 今こっちに来たらあなたも逃げられなくなるわ! だから、わたしに構わず行きなさい!」

 

 機体の状況が分かっているランは既に覚悟を決めている。速度が低下している<スサノオ400型>ではもう逃げ切れないのだ。

 

「……わかった、姉ちゃんの戦いを無駄にはしないよ!」

「うん、後は頼んだわよ」

 

 姉の想いを汲んだユウキは、後ろを振り返ることなく離脱していく。

 そう、それでいいのよ、ユウキ。こんなナンパな人と一緒にあなたがゲームオーバーになる必要なんて無いわ……。真面目なランは、女好きで気の多いクラインのことがちょっとだけ苦手だった。

 一方、可愛い女子中学生にナンパ野郎と思われているちょっぴり情けないクラインは、ビリビリとしびれながら自身の迂闊さを嘆いていた。

 

「なななな、なんてこったぁ!?」

 

 今更後悔しても後の祭り。今はただ、徐々に迫るソーラレイの光を見つめ続けるしかない。

 そして、とうとう30秒が経ち、ソーラレイから照射されたレーザーがソロモンに着弾した。全長15kmのソロモンに直径8kmのレーザーが直撃し、その表面を蒸発させていく。目標だったスペースゲートは一瞬で消え去り、中枢部へ続く通路がむき出しになってしまった。後は、連邦の生き残りを振り切って内部に潜入できれば、ジオンの勝利が確実となる。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 大きな破壊を振りまいたレーザー攻撃は、短い時間で終了した。予想外の攻撃だったため、連邦軍の被害はかなり大きなものとなった。NPC艦隊を80%失い、MSも40%が撃墜された。プレイヤー艦隊は核攻撃に備えていたことが幸いして全艦無事だったものの、プレイヤーユニットはランとシリカを含めた3人が撃墜されてしまった。その結果、ジオンとの戦力差が逆転して連邦は危機に陥ってしまった。

 司令部からの報告で戦況を把握したキリトは自分たちの劣勢を知り、念のために用意していた切り札を使う決心を固めた。

 

「ソウ、こうなったらアレをやるぞ」

「ほぅ。とうとう私と愛をかさねて、アレをヤル気になってくれたか」

「お前の言ってるアレとは違ぇよ。レコンに頼んでおいたあの作戦をやるんだ」

 

 キリトは、KYな下ネタをスルーしてレコンに通信を繋げる。現在彼は、キリトの命令で自身が所有している戦艦と共にこちらへ向かっていた。ジオンの攻撃部隊がソロモンに到着した時点で入れ違いに前進し、エリアの端から密かに接近していたのである。

 

「レコン、状況は分かってるな?」

「はい、かなりピンチのようですね」

「ああ。この逆境をひっくり返すにはお前の力が必要だ。やってくれるな?」

「もちろん。覚悟はとうに出来てます!」

「それじゃあ頼む。お前の通る道は俺たちが作ってやる!」

 

 短いやり取りで話はまとまった。

 キリトの指示を受けたレコンは、搭乗している<セカンドV>を並走している戦艦に着艦させると、急いでブリッジに向かう。連邦軍の切り札である【遅かったなぁ作戦】をおこなうために。

 空いていた指揮官席に座ったレコンは、ブリッジにいるNPCクルーに指示を出す。

 

「これより【ビームラム攻撃】をおこなう! <シルフィード>最大戦速! 目標、敵旗艦<ゼネラル・エギル>!」

 

 レコンの号令に従い、リーンホースJr.型改造戦艦<シルフィード>が加速していく。

 彼らがおこなおうとしている作戦は、このゲームの隠し技を利用したものだった。リーンホースJr.型の戦艦でビームラムを使った自爆攻撃を敵旗艦に成功させると、劇中のように大規模な核爆発を発生させることが出来るのだ。ジオンの艦隊がまとまっていてくれている今を狙えば、それで勝負を決めることも可能となる。何はともあれ、レコンの操艦に連邦の運命が託されたわけだが、条件は難しくとも試す価値は十分にある。

 

「それにしても、僕ってこういうシチュエーション多いよなぁ」

 

 過去の出来事を思い出したレコンは、思わず苦笑する。以前彼は、旧ALOでおこなわれた世界樹攻略戦でキリトとリーファを助けるために自爆攻撃をおこなったのだが、その手のスキルを自らの意思で入手してしまうところを見ると、かなりのドM気質なのかもしれない。

 いずれにしても賽は投げられた。レコンの性癖など、もはやどうでもいい。

 彼の戦艦が移動を始めた知らせを受けると、キリトたちも自分の役目を果たすために行動を開始する。突っ込んでくる<シルフィード>を落とされないように敵の防御を弱めるのだ。

 

「よし、レコンが来る前にエギルを堕とすぞ!」

「了解!」

「いいだろう。妖精の護衛役は、この私、グラハム・エーカーが引き受けた!」

 

 こうして、フリーダムウォーは佳境へと向かっていく。果たして、ジオンが中枢部を破壊するのが先か、連邦の切り札が炸裂するのが先か。その答えはまだ分からない。




次回は、いよいよフリーダムウォーの決着がついて、この章のエピローグとなります。
予定より話が伸びてしまいましたが、ようやくGBOパートが終わります。
この後の話はALOがメインとなります。

それから、今年の更新はこれで最後だと思います。
このSSはまだ続けたいと思っているので、来年もよろしくお願いします。
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