ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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何とかアインクラッドまでやって来ました。
でも、戦闘シーンはありませぬ。


第4話 リスタート

 SAOをクリアした英雄キリト。最速にして最強の剣士。そして、大好きなソウ兄ちゃんを助けてくれた大恩人。これまではまったく接点など無いと思っていた人物だったが、思いもかけない急展開によって出会える機会を得た。

 そのような経緯によりキリトに強い興味を持っていたユウキは、ワクワクしながら待ち合わせ場所の店に入る。しかし、そこで待っていたのは彼だけではなかった。キリトの恋人であるアスナ。彼女こそ、ユウキが出会うべき人物だった。

 

「(この人は……ボクの……)」

 

 大切な人だ。

 初めて会ったのに。まだ名前すら知らないのに。愛しい感情がとめどもなく湧いてくる。嬉しい気持ちで心が一杯になる。なぜならそれが、もう一人のユウキの想いだったから。彼女の魂と触れ合った時から、この出会いは必然となっていた。人知れずに絆が生まれていたこの2人は、いずれどこかで巡りあうことになっていたはずなのだ。それが、グラハムのおかげで偶然早まったに過ぎない。

 

「(よく分かんないけど、すごく嬉しい……嬉しいよぉ)」

 

 アスナと出会ったことがきっかけとなって、別世界の自分の記憶と同調したユウキは、様々な感情が溢れ出して泣いてしまう。時間と空間を越えて、小さな奇跡が起こったのだ。

 とはいえ、そんなことなど知る由も無いみんなは、彼女の反応に途惑うばかりだった。

 

「うわあぁ~ん!」

「ちょ、ユウキ! 何で泣いてるの!?」

 

 隣にいたランは、突然すぎる妹の変化に対応できずおろおろしてしまう。そして、初めて会う他の面子も状況が分からず大いに慌てる。実の姉でさえ持て余している状態なのだから当然だ。

 もちろんキリトも例外ではなく、ユウキを連れてきたグラハムに事情を問う。

 

「おい、グラハム。何でその子は泣き出したんだ?」

「いや、この私にも分からん。女心は秋の空という故事もあるが……恐らくは、この場所に何らかのきっかけがあったのかもしれないな」

「きっかけ……もしかして、わたしをじっと見ていたことに原因があるのかな?」

 

 グラハムの推測を聞いたアスナは、少し前の出来事を思い出す。なぜか自分を見つめていた彼女のことを。確かに、あの時の様子は普通ではなかった。

 

「アスナを見てから泣き出したの?」

「うん……そう言われると、わたしが悪いことしたみたいに聞こえるけど……」

 

 アスナは、リズベットから疑いの眼差しを向けられて無罪だとアピールする。とはいえ、状況を考えると彼女に原因がある可能性が高い。その事実を知ったグラハムは、とある推測を思いついた。

 

「なるほど、そういうことか!」

「何か分かったのか?」

「ああ……。恐らくアスナは、この2人を見た瞬間にこう感じたのだろう。少年のハーレム要員を、これ以上増やすわけにはいかないと。そして、その際に発せられた禍々しい思念波が、ユウキに恐怖心を与えたのだ。まったくもって、傍迷惑にも程があるぞ!」

「それはこっちのセリフよ!!」

「っていうか、さりげなく俺まで巻き込むな!!」

 

 グラハムの身勝手な推測に対して、仲良くツッコミを入れるキリトとアスナ。流石は恋人同士といったところで、息がピッタリ合っていた。

 しかし、肝心な話の方は結局振り出しに戻ってしまった。冷静そうに見えたグラハムも実はテンパっているらしく、あまり役に立ちそうもない。とにかく今は、ユウキを落ち着かせてあげないとならないのだが、良い方法が思いつかなかった。

 

「あわわ、どうしましょう!?」

「わたしに聞かれても分からないよ……」

「俺も泣いてる女の子には弱いからなー」

「あんたには最初から期待してないわよ」

「ひでぇ!?」

 

 歳が若いシリカとリーファはもとより、大人のクラインもこういう展開には慣れていなかった。ランに慰められながら泣き続けるユウキを心配そうに見つめながら、もどかしい時間が過ぎていく。

 そんな気まずい空気の中、意を決したアスナが動いた。

 なぜかは分からないが、あの子が泣き出したきっかけは自分にある可能性が高い。だったら、自分が何とかすべきだろう。責任感の強いアスナは、そのように感じたのである。

 いや、それは少し違う。アスナもまた、ユウキを見ているうちに暖かな感情を抱き始めていた。わたしはこの子と仲良くなりたいんだと。

 

「(それなら、まずは話をしないとね)」

 

 仲良くなるには対話から始める。ごく当たり前な行動をすることで場を落ち着かせようと考えたアスナは、ユウキのそばに歩み寄って優しく話しかける。

 

「ねぇ、ユウキちゃん。何で泣いてるのか、わたしに教えてくれないかな?」

 

 この時アスナは、ランとグラハムの会話から聞き取った彼女のアバター名を呼んでみた。すると、泣きじゃくっているばかりだったユウキが、顔を上げて返事をしてきた。

 

「ぐすっ……分かんない。分かんないけど、お姉さんを見てたら嬉しくなって……涙が止まらないんだ……」

「そう……わたしも、あなたと会えてとっても嬉しいよ」

 

 ユウキの言葉を聞いてにこりと笑ったアスナは、自分の本心を述べる。そして、肩を震わせている彼女の身体をゆっくりと抱きしめた。

 

「「あっ……」」

 

 アスナの意外な行動にユウキとランは驚く。でも、心がポカポカする。アスナの優しさが伝わり、2人は安心感に満たされた。

 何とか状況を改善して落ち着つくことができたアスナは、可愛らしい姉妹の様子を見つめながら考える。

 なぜユウキが泣いていたのか、詳しい理由は分からない。だが、彼女と話してみて思いついた推測が一つだけある。もしかすると、グラハムから自分の話を聞いて、ものすごく美化してくれたのかもしれない。ようするに、憧れの人に会えて感極まったような状態になったのではないかと思われる。

 

「(自分で言うのも恥ずかしいけど……)」

 

 SAOの時も熱烈なファンがいたので、有り得ない話でもない。それなら、こうやって慣らしてあげれば、すぐにでも落ち着くはずだ。

 そんなアスナの予想は当たり、さっきまで泣きじゃくっていたユウキは抱かれた途端に大人しくなった。

 

「……」

「どう、落ち着いた?」

「うん……姉ちゃんに抱っこしてもらってる時と同じ匂いがする。お日様の匂い……」

「ふふ、そう言われるとくすぐったいけど、確かに似てるかもね」

 

 ユウキに言われて隣にいるランを見る。自分と同じウンディーネの姿をしている彼女の雰囲気は、何となく近しいものを感じる。話の流れでアスナに見つめられたランも、顔を赤く染めながら納得しているような表情をしている。そのおかげか、初対面でもすんなりと話しかけることが出来た。

 

「あの、妹がご迷惑をおかけしてしまってすみません」

「ううん、いいのよ。わたしの方こそ、こんなに喜んでもらえてすごく嬉しいから」

 

 アスナとランは顔を見合わせながら微笑みあう。別の世界では一回も出会うことがなかった2人は、小さな奇跡によって邂逅を果たした。

 無論、彼女たちが認識できることではないが、大好きな2人の姉と一緒にいられる機会を得られたこの世界のユウキは、とても幸せな気分に満たされる。その光景は、名画のように美しかった。

 

「へへっ、可愛い女の子同士で抱き合ってる姿ってのもいいもんだなぁ~」

「クラインさん、本音がダダ漏れですよー……」

「はぁ。あんたは相手が美少女だったら何でもいいんでしょ。まったく、これだから節操のない男ってのはイヤだわ」

「うぐっ! さっきから俺にだけ辛辣すぎじゃね?」

「冷静かつ正しい意見よ」

 

 感動的な姿をいやらしい目で見ていたことがバレたクラインは、リズベットたちから軽蔑の目を向けられてしまう。だが、男なら理解できる話でもあるため、グラハムは助け舟を出すことにした。

 

「待ちたまえ。女性陣は否定しているようだが、この私もクラインの意見に賛成だ」

「おっ、流石はハム太郎! 話が分かるぜ!」

「うわ、あんたも同類だったの?」

「何もおかしなことではあるまい。美しいものに心惹かれることは、ごく自然なことだからな。ゆえに、美少年同士の絡み合いも需要があるのだよ!」

「って、ソッチには興味ねーよ!」

「あんたの特殊な趣味と一緒にするな!」

「それは誤解だリズベット。これでも私は、ただのノンケさ」

「「だったら、まぎらわしいこと言うな!」」

 

 実にごもっともなツッコミである。

 ただ、グラハムがふざけた発言をしているのは、ユウキのことを心配していたがゆえだった。普段通りの自分を演じることで、彼女の気持ちを落ち着かせようとしたのだ。客観的には、普通に話しかけてやれよと言いたいところだが、彼自身も途惑っていたので仕方ない。SAOを生き抜いた乙女座の男も、乙女の涙には弱かった。

 何はともあれ、アスナの活躍によって問題は解決したのだから、これ以上グラハムの揚げ足を取る必要はないだろう。彼女のおかげでユウキも泣きやみ、今は普通に会話をしている。それだけで十分だ。

 

「えっと……急に泣いたりしてゴメンね?」

「ううん、別に気にする必要はないわよ、ユウキちゃん」

「あっ……」

「ん? どうしたの?」

「うん……あのね、ボクのことはユウキって呼んで欲しいんだ」

「ああ、そういうことね。だったら私の事もアスナって呼んで?」

「アスナ……。うん、わかったよ、アスナ!」

「ふふっ。それじゃあ、改めてよろしくね、ユウキ」

 

 2人は、お互いの名を呼び合って笑顔になった。まるで、以前から知り合いだったかのように自然な様子で。

 その一部始終を静かに見守っていたキリトとユイは、ほっとしながら家族の功績を褒める。

 

「一時はどうなるかと思ったけど、アスナのおかげで丸く収まったな」

「はい。やっぱりママはすごいです!」

「まさに、母性の成せる業だな。乙女座の私としては、あの包容力に嫉妬を覚えてしまうよ」

「そんなとこで張り合うな!」

 

 キリトは、いきなり会話に混ざってきたグラハムにツッコミを入れる。

 相変わらず、ゲーム内ではおかしなキャラになるな。現実では、親しみ易い面白イケメンなのに……。彼に関する破天荒な記憶を思い浮かべたキリトは、思わずため息をついてしまう。

 その当人は、キリトの気苦労も知らずに、近づいてきたランと親しげに会話しているが。

 

「ソウ君、せっかくの記念日なのに迷惑かけちゃってゴメンね」

「いや、何も気に病むことは無いさ。乙女の涙に逆らうなど無粋の極みだからな」

「くすっ。ソウ君ってわたしたちが泣くと、何でも言うこと聞いてくれるもんね」

「ふっ、私は不器用な男なのだよ」

 

 グラハムは、幼い頃を思い出したランからイタズラっぽい視線を向けられて、柄にもなく照れた。そんなこそばゆい光景を見せつけられたキリトたちは、初々しい2人に向けて生暖かい視線を送るのだった。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 ユウキの号泣という思わぬハプニングが解決してから数分後。一通り自己紹介を終えた彼らは、早速アインクラッドにやって来た。

 今回プレイする場所は、豊かな森に覆われた第3層だ。実装されてから一月も経っていないが、ALOプレイヤーを中心に人気が集まって、既に第2層までクリアされている。

 キリトたちは、勉強やリハビリに時間を割かれて出遅れる形となったため、本格的に参加するのは今回が初めてだった。情報によるとこの層のボスはまだ倒されていないので、復帰記念に親しい仲間だけで倒そうと考えたのだ。そのような経緯でグラハムにも声がかかり、再びこのアインクラッドに帰って来た。彼自身もまた、来るべきだと感じていたから。

 

 

 ユグドラシルシティから転移した一行は第3層の主街区に到着し、そのまま徒歩でフィールドに出る。そこには懐かしい景色が広がっており、当時の記憶を呼び覚ましたグラハムは思わず感慨に耽る。

 

「よもや再びこの地に戻って来ようとは、私もつくづく物好きな男だ」

 

 命を懸けて冒険したデスゲームと同じ風景を前にして、少し複雑な気分になってしまう。そんなグラハムの言葉に重い雰囲気を感じたユウキとランは、心配そうに話しかける。

 

「ソウ兄ちゃん、大丈夫?」

「気持ちが乗らないんだったら、止めた方がいいと思うけど」

「なに、問題などないさ。これは、日常を取り戻すための戦いではなく、楽しむためのゲームなのだからな」

「楽しむためのゲーム?」

「そうだ。遊ぶのだよ。真剣に、心から!」

 

 そうすることで、VRマシンに抱いてしまった嫌悪感や恐怖心を払拭する。そうしなければ、自分は前に進めない。ユウキたちと楽しさを共有できない。だからこそ、グラハムはここに来た。かつて抱いていた情熱を再びこの手にするために。

 恐らくは、キリトたちも似たような心境だと思う。彼らも、この世界を肯定するきっかけを欲しているはずなのだ。そうでなければ、忌まわしい記憶に満ちたこの場所で遊ぶ気になどならないだろう。

 辛い過去を克服するために、あえて新生アインクラッドを遊ぶ。それが、この世界の本来のあり方だと、青春をかけるに値する可能性を秘めた世界だと再確認するために。

 

「なればこそ、君たちには、私と共に遊んでほしいのだよ。この世界の極みに到達するぐらい真剣にな」

「もちろんオッケーだよ。ソウ兄ちゃんと一緒なら、なんだって極めちゃうもんね!」

「私だって、どこまでも付き合うよ」

「良く言った! その心意気、このグラハム・エーカーがしかと受け取ったぞ!」

 

 唐突に盛り上がりだしたグラハムたちは、周りを気にせず無邪気に抱きあう。その光景を初めて見たキリトたちは、呆気に取られながらも微笑ましいと思った。

 

「ほんと仲良いな、あの3人」

「相変わらず、グラハム君だけ浮いてるけどね」

「でも、ちょっぴり羨ましいです」

 

 ユウキたちの仲睦まじい様子(?)に、周囲の面子が茶々を入れる。特に、独り身のクラインはあからさまに悔しがる。

 

「ちくしょーっ! あの子たちも恋しちゃってるのかーっ!?」

「まぁ、グラハムさんはカッコイイですから」

「あの2人に惚れられてても不思議じゃないよね」

「クラインとは違うからねぇ、クラインとは」

「ぐはぁ! 止めさされたー!」

 

 一人惨めに騒いでいたクラインは、シリカ、リーファ、リズベットの三位一体攻撃を受けて打ちのめされる。とはいえ、彼のモテない話は既にネタとなっているため、誰も気に留めない。

 

「うお―――っ! 俺も可愛い恋人が欲しいぞ―――っ!!」

「さて、時間が勿体無いし、そろそろ行くか」

「ああ、そうするとしよう」

「って、完全無視かよ! 少しぐらいかまってくれてもいいじゃんかよぅ!」

 

 男性陣からも呆れられたクラインは、哀愁漂うツッコミを入れる。少し可哀想な気もするが、時間が惜しいのも確かなので仕方ない。非情な(?)キリトたちは、クラインの愚痴を無視して行動を開始する。

 羽を出して空に舞い上がった9人の妖精たちは、一直線に迷宮区へと向かう。

 今日の目標はこの層のボスを倒すことだ。キークエストは既に攻略済みで、ボスフロアまで踏破されているため、迷宮区までは飛んでいける。後はそこを突き進んで、他のパーティより先にボスを倒すのみ。幸運なことに、パワーアップしたボスの攻略に手間取っているようなので、挑戦者が減っている今夜がチャンスだった。

 その辺りの事情を説明されたグラハムは、久々のレイド戦にやる気を漲らせる。

 

「見せてもらうぞ少年! 新しいアバターの性能とやらを!」

「こっちこそ、久しぶりにお前の腕前を見せてもらうぜ」

 

 何だかんだと言って仲が良いキリトとグラハムは、互いの健闘を鼓舞しあう。そして、すっかり元気を取り戻したユウキは、あっという間に親しくなったアスナと楽しげに会話する。

 

「アスナって、キリトと一緒に戦ってたんだよね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあやっぱり、すごく強いんだね!」

「まぁ、剣の扱いはそれなりに自信あるけど、ユウキの期待に応えられるかは分からないよ?」

「それはたぶん大丈夫だよ。ボクの予感は結構当たるんだから」

「ふふっ。だったら、予感通りになるように頑張らないとね」

 

 アスナは、根拠のない自信を見せるユウキが可愛くて、思わず笑みを浮かべる。気分的には、元気な妹を優しく見守るお姉さんだ。実際、ユウキ自身もそのように感じており、ランと同じくらいの親しさを抱いていた。

 

「それでね、後でボクとデュエルしてほしいんだけど、いいかな?」

「もちろんいいよ。わたしもユウキと戦ってみたいし」

「ははっ、やったー!」

「もう。ユウキってば、調子に乗ったらダメだって言ったのに……」

 

 アスナと話すようになってからやたらと盛り上がっている妹を見て、ランはため息をつく。ちょっと前まであんなに泣いていたのに、今はなぜか普段以上に元気一杯だ。姉としては、これ以上の迷惑をかけたくないのだが、当のユウキは心の赴くままに振舞っている。この分だと、まだまだ何か起こりそうだ。

 

「アスナさんたちには、後でしっかりとお礼しなきゃね……」

 

 持ってきたS級食材を使っておいしい料理をご馳走することにしよう。そう思ったランは、どのような料理を作ろうか考え始める。その時、不意に声をかけられた。

 

「よう、ランちゃん!」

「きゃっ……クラインさん?」

「おうよ、【頼りになるお兄さん】ことクライン様だ。ところで、何か考え込んでるみたいだけど、どうしたんだい?」

「あっ、えっと……なんでもないです」

「そうかい? 悩み事があるなら、遠慮しないで言ってくれ。人生経験豊富な俺が、適確なアドバイスをしてあげちゃうぜ?」

「は、はぁ……」

 

 妙に好青年を装ったクラインは、キラッと歯が輝きそうな笑顔を浮かべる。あからさまに下心を感じさせるアピールだ。ぶっちゃけると、アスナに似た雰囲気を持っているランに好意を抱いたのである。グラハムを慕っている様子を目撃したにも関わらずアタックするとは、別の意味で勇敢な男だ。しかも、相手は女子中学生だと知っているのに……。

 

「あんた、その子に手を出したら犯罪だってことを忘れてないわよね?」

「うぐっ! も、もちろん覚えてるに決まってんだろ? あはは~……」

「前にわたしも口説かれたから説得力ないけどね」

「なに! 俺の妹を口説いただと?」

「いやいや、あの時はほんの出来心で……って、反応はえーなキリの字!?」

 

 いつの間にか近づいて話を聞いていたキリトが乱入してきた。妹のリーファが口説かれたとあっては、シスコンと言うほどではない彼でも心中穏やかではいられない。その上、ランを口説こうとしたため、グラハムにも目を付けられてしまう。

 

「おいクライン。今度リーファに言い寄ったら……背後に気をつけるようにしろよ?」

「でなければ、私のエクスキャリバーで後ろの貞操を奪われてしまうぞ!」

「「色んな意味で危険すぎるわ!」」

 

 クラインを懲らしめようとしたら、グラハムのせいで話がアヤシイ方向に行ってしまった。その様子を見ていたリズベットは、肩をすくめながら苦笑する。このようなやり取りは、SAOで何回もあったからだ。

 

「まったく、こいつらが絡むと大抵こうなるのよねー」

「あはは、そうなんですか……」

「何か、ウチのソウ兄ちゃんがご迷惑をおかけしてたみたいで、ゴメンなさい」

「ううん、ユウキが謝る必要はないのよ。もう慣れちゃったし」

 

 騒ぎに気づいて参加してきたユウキたちも、彼らに釣られておかしなやり取りを始めてしまう。まったくもって、グラハムはトラブルメーカーであった。

 因みに、さきほどから静かにしているシリカは、自分だけクラインから口説かれていないことに軽いショックを受けていた。

 

「やっぱり胸なの? 胸の大きさなの?」

「? シリカさん、胸に手を当てて何をしているのでしょうか?」

 

 ユイだけが彼女のおかしな行動に気づいたが、幸か不幸か微妙な乙女心までは分からなかった。




次回は、第三層のボス戦がメインとなる予定です。
自分なりにアレンジするので、ボスの内容は原作と異なります。


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