ソードアート・オンライン アイとユウキのセカイ   作:カレー大好き

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今回は、ユウキとアスナがデュエルをする話です。
そして最後に、ちょっとしたイベントも起こります。


第8話 目覚める戦闘妖精

 木綿季が宗太郎に秘密を打ち明けたその日の夜。ALOにログインしたユウキとランは、ユイを連れたアスナと再会することになっていた。彼女ともっと仲良くなりたいと思ったユウキが前日にメールを送り、遊ぶ約束を取り付けたのだ。幸いなことに、アスナ自身もそう思っていたので、話はすんなりと決まった。

 そのような経緯で待ち合わせ場所の央都アルンにやって来たアスナは、先に来ていたユウキとランに出迎えられる。

 

「こっちだよ、アスナー!」

「ママ、ユウキさんがいましたよ」

「うん、ものすご~く目立ってるね」

 

 こちらに向けて元気よく手を振るユウキを見て、アスナは笑みを浮かべる。彼女にとってユウキはもう妹のような存在になっていた。

 そしてそれは、となりにいるランも同様だ。一緒に料理を作った際に話が盛り上がって、すっかり打ち解けていたのである。

 

「おまたせ、2人とも」

「こんばんはなのです」

「はい、こんばんは。今日もよろしくお願いします」

 

 天真爛漫な妹と違って、姉のランは礼儀正しく応対する。そのギャップに再び笑みを浮かべてしまう。

 

「どうしたのアスナ? なんかニヤニヤっとしてるけど」

「えっ!? そんなに変な顔してたかな?」

 

 ユウキに思わぬ指摘をされてちょっぴり焦る。どうやら、自分でも気づかないうちにシスコン属性が備わっていたらしい。

 だって、可愛いんだから仕方ないでしょ。

 

「(もしかして、和人君もこんな感じなのかな?)」

 

 何となく気恥ずかしくなったアスナは、妹と仲が良い恋人を思い浮かべる。

 確かに彼らの関係は良好で、理想的な兄妹だと言える。ただ、あの2人には血の繋がりが無く、妹の方が兄に惚れているという特殊な状況なので、一般的な家族関係とは異なるのだが……その辺は知らぬが仏と言ったところである。

 ちなみに、他の面子はそれぞれ用事があって今はログインしていない。宗太郎と和人は部活で作り始めたメカの研究、直葉は明日までに提出する宿題、珪子は家族と一緒にテレビ鑑賞、里香は友人と買い物、クラインこと壷井 遼太郎は真面目に仕事といった内容だ。それらの用事が終わった後に順次ログインして合流する予定となっている。

 只一人先に来ているアスナは、ユウキたちとの約束を守るために今日の分の勉強を素早く済ませて来ていた。

 

「後から他のみなさんも来るんですよね?」

「うんそうよ。しばらく時間がかかるみたいだから、合流しやすいように近場で遊びましょう」

「だったら、ボクとデュエルしようよ!」

「それはいい提案ね。その勝負、受けて立つわ!」

 

 意外にノリのいいアスナは、不敵な笑みを浮かべてユウキの挑戦を受ける。

 こうして意見がまとまった4人は、近くのフィールドに繰り出すのだった。

 

 

 央都アルンから外に出た一行は、綺麗な泉のある草原地帯にやって来た。この辺りは決闘場としてよく使われている場所で、今も数人のプレイヤーが戦っている。観客も結構いるようで少し落ち着かないが、ここでアスナとの初デュエルをおこなうことにした。

 

「いよいよアスナとデュエルか……」

 

 楽しみな気持ちの中に、なぜか懐かしさも感じる。ユウキにとっては初めてのはずなのだが、経験したことがあるような気持ちになる。ということは、これもやはり……。

 

「例のイメージで見たことがある……気がする」

 

 アスナと初めて会った時に見えたイメージがこんな感じだったかもしれない。すぐに記憶が曖昧になってしまうので確実だとは言い切れないのだが、恐らくはそうだと思う。

 

「だって、こんなにドキドキしてるもん」

「ん? 何か言った?」

「!? ううん、なんでもないよ」

 

 独り言が隣にいるランに聞こえてしまったらしい。しかし、この場は誤魔化しておく。あの話について相談するのはもう少し後にしよう。

 今は、アスナとのデュエルを純粋に楽しむ時だ。

 他のプレイヤーがいない泉の近くにやって来た4人は、早速デュエルの準備を始める。ランとユイは少し離れた所で待機し、アスナとユウキはモード選択をおこなう。

 

「モードはどうする?」

「ノーマルでいいと思うけど、いっぱいやりたいから適当な所でリザインした方がいいかな」

「そうね、先にレッドゾーンに入ったら負けってことにしようか」

 

 ルールを決めた2人は、一定の距離を開けて向かい合う。

 彼女たちが決めたノーマルモードとは、どちらかのHPが0になるまで戦う無制限一本勝負である。ただし、この勝負ではそこまでやる必要が無いので、HPに制限を設けることにする。これもMPの消費を押さえて効率よく遊んでいられるようにするためだ。

 何はともあれこれで準備は整ったわけだが、ユウキに聞きたいことがあったアスナは、デュエルを始める前に質問をしてきた。その内容はALO特有のもので、大抵のプレイヤーが気にしていることだった。

 

「ねぇユウキ。地上戦と空中戦のどっちが得意?」

「ん~、どっちかって言うと空中戦かな。ソウ兄ちゃんと一緒にGBO(ガンダムビルドファイターズ・オンライン)で鍛えてるからね」

「へぇ、そうなんだ~って、別のゲームじゃん!」

 

 予想していた答えと違ったため、思わずノリツッコミをかましてしまうアスナ。若干キャラが違う気もするが、SAOでグラハムと接しているうちにツッコミキャラと化してしまったせいだ。せっかくの美少女がちょっぴり残念になってしまった気がしなくもない。

 しかし幸いな事に、ユウキたちも慣れているので、違和感なく話が進む。

 

「じゃあ、アスナはどっちが得意なの?」

「わたしは地上戦に慣れてるから、飛ばれると不利になるかな。でも、黙ってやられるほど弱くはないわよ?」

「ふふん、望む所だと言わせてもらうよ!」

 

 アスナの強気な発言に感化されたユウキは、グラハムのように不敵な返答をする。あのSAOの最前線で戦い続けた勇者とデュエルするのだから、高揚せずにはいられない。

 

「(ボクだって結構強くなったからね。簡単には負けないよ!)」

 

 グラハムと戦った際の勝率は4割ほどなので勝つのは相当難しいと思われるが、そんなことはどうでもいい。強い相手と戦い、成長していくというゲームの楽しさを知ったユウキは、逆境だからこそ笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、始めようか」

「うん! いざ尋常に勝負だ!!」

 

 お互いに声を掛け合った後、アスナがウィンドウを操作してデュエルを申し込み、ユウキが承諾する。これでデュエルが成立して10秒のカウントダウンが始まる。

 その数字がゼロになる前に抜剣した2人は、心地よい緊張感に包まれ……スタートの合図と共に駆け出した。

 

「先手必勝!」

 

 最初に攻撃を仕掛けたのはユウキだった。いきなり片手剣の単発ソードスキル・ホリゾンタルを放ったのだ。剣を交える直前に一回転して、その運動エネルギーを上乗せした水平切りをアスナにお見舞いする。

 

「てやあぁぁ!」

「くっ!」

 

 間一髪で反応したアスナは、剣を左側に引き寄せて重い一撃を受け止める。

 後方で衝撃波が発生する中、硬直状態のユウキに向けて今度はアスナがソードスキルを繰り出す。彼女が得意としている単発の突き攻撃、リニアーだ。

 

「せぁ!」

 

 アクアブルーの閃光がユウキに迫る。しかし、回避不可能と思われたその一撃は、素早く引き戻されたユウキの剣によって軌道を外された。見事に決まるはずだったアスナの攻撃は、ユウキの左腕を掠めるだけに終わった。

 

「やるわね!」

「そっちこそ!」

 

 最初の激突はほぼ引き分け。流石にアスナを相手にして単純な攻撃は通用しない。ならば、単純じゃない剣術ではどうか。

 

「はぁ!」

「ふっ!」

 

 再び激突した2人は、激しく剣を打ち付けあう。

 アスナが振るった上段切りをユウキが見切ってタイミング良く弾き、そのおかえしとばかりに鋭い水平切りを返すと、予測していたアスナが巧みに防いで見せる。

 こちらもほぼ互角の出だしで、お互いに理想的な相手と巡り会えたと喜び合う。

 

「やっぱりアスナは強いや!」

「ユウキも期待以上だよ!」

 

 まるで待ち望んでいたライバルが現れたかのように感じた2人は、相手を褒め称える。

 だからこそ、勝負は更に盛り上がる。

 

「たあぁ!」

「せいっ!」

 

 勇ましい声と共に美しい妖精の乱舞が繰り広げられる。

 連続で突きを繰り出す。素早くかわして反撃する。防御の隙を突いて強襲する。体術スキルを混ぜて牽制する。これまで培ってきたすべての技術を用いて2人は戦う。

 激しく火花を散らせる攻防は苛烈を極め、見守っているランを徐々に熱中させていく。

 

「すごい……。アスナさんもユウキも。間違いなくトップクラスだわ……」

「そうですね。ママと互角に戦えるユウキさんは、とてもすごいです!」

 

 ユイは自慢のママと同等の強さを見せるユウキを賞賛し、ランもその意見に同意する。

 いや。はっきり言うと、それ以上の想いを抱いていた。

 あまりにも見事な2人のデュエルに心を奪われたランは、感動すると同時に悔しさも感じていた。自分もあの中に混ざって対等に戦ってみたいと。

 

「わたしにもできるかな……」

 

 ふとしたきっかけで望みを抱いたランは、戦っているユウキたちに強い自分を重ねてみた。

 その時だった。ランの脳裏に覚えの無いイメージが見えたのは。

 そこでランは、今よりも強い自分の姿を見たような気がした。あの2人に匹敵するような強さを見せる自分の姿を。

 

「えっ!? 今のはなに?」

 

 突然の超常現象にランは驚く。簡潔に言うと、彼女が見たものはユウキが見たイメージと同じものだ。

 別の世界から意識を跳ばしてきているもう一人のユウキは、幸せに暮らしている姉を見て、彼女にも強い想いを抱いていた。それがテレパシーのような現象となり、ユウキと同様に魂と呼ぶべきものとリンクした。双子の姉妹だからこそできた奇跡で、ランの記憶に変化をもたらしたのである。

 これは別世界のユウキがメディキュボイドと呼ばれる医療用フルダイブ機器に接続してから起き始めた現象であり、繋がっている間は時系列に関係なく情報のやり取りがおこなわれる。つまり、時間という概念が適用されない平行世界という記録媒体から部分的に映像を取り出して見ているような状態となるのである。ゆえに、受け取る側の時間軸に関係なく過去や未来の情報を見ることができる。いわゆる、神の視点というやつだ。

 互いの歴史を見れるだけなので、相手が知った自身の未来を知ることは出来ないが、それだけでも影響力は大きい。現にそれらの記憶が、この世界の紺野姉妹に変化をもたらそうとしていた。

 無論、3人ともに自覚してはいないが。

 

「さっきのは何だったんだろ……」

 

 もしかして、白昼夢とかいうものを見たのだろうか。いきなり異常な現象を体験したランは、思わず考え込んでしまう。しかし、それもすぐに中断される。周囲にいたプレイヤーたちがこちらのデュエルに注目して、いつの間にか大勢集まってきていたからだ。

 

「あの2人すげぇな!」

「あれならユージーンにも勝てんじゃねぇか?」

「しかも美少女だしな!」

「ああ。そこは一番重要だな!」

「戦ってる子たちもいいけど、あそこにいるウンディーネの子も可愛いぞ」

「終わったら声かけてみよっかな」

 

 美しい乙女たちが繰り広げる剣の舞は、外野で見ている者たちをも魅了していく。若干よこしまな感情を抱いている者たちもいるが、そこは仕方ない。彼女たちが身も心も美しいことは間違いないのだから。

 しかし、会話が聞こえてしまったランは困ってしまう。

 

「どうやら、ママたちやランさんのことを褒めてるみたいですね?」

「うぅ、なんか恥ずかしいな……」

 

 グラハムが傍にいないと結構な頻度でこういう状況になるのだが、未だに慣れない。とはいえ今は好都合だった。この騒ぎでさきほどの不安を抑えることが出来たからだ。

 期せずして落ち着くことが出来たランは、再びデュエルの行方を見守ることにした。

 そうだ、さっきのことは後で考えればいい。

 

「今はこっちを見なきゃもったいないよね」

 

 気を取り直したランは、ユウキとアスナに意識を向ける。

 現在の戦況はアスナのほうが有利だった。徐々に経験の差が出てきているようで、小さいダメージがユウキに蓄積されていく。

 鋭い突きで軽く頬を切られた彼女は、顔をしかめながら考える。

 

「(このままじゃ負けちゃう!)」

 

 やはり、地上戦ではあちらに分があるらしい。ならば、こちらの得意な空中戦をおこなえばいい。

 意を決したユウキは、アスナの突きを切り上げで払い飛ばしながら翅(はね)を出し、そのままの体勢で後方に飛び退った。そして、ある程度距離を離したところで勢いよく突進する。

 

「スピードで圧倒させてもらうよ!」

 

 そう言うや否やユウキは飛んだ。

 右利きのアスナでは対処しにくい左側から攻め込めるように、緩いカーブを描きつつ地面すれすれを飛行する。足で走るよりもはるかに速い。それに加えて、ユウキの高度なプレイヤースキルも合わさり、アスナも驚くほどの速度で接近してきた。

 

「でも、間に合う!」

 

 ギリギリのところで反応できたアスナは迎撃しようとする。

 こうなると、今度はユウキの方が圧倒的に不利になってしまう。飛行して攻撃した場合、速度がある分ダメージも大きくなるが、カウンターを食らえばそれが自分に返ってくることになる。

 しかし、グラハムに鍛えられているユウキは、百も承知でこの攻撃を選んだ。なぜなら彼女は、妖精であると同時にフラッグファイターでもあるからだ。

 

空中(ここ)がボクの戦場(フィールド)だ!」

「なっ!?」

 

 上段から振るわれたアスナの剣がユウキに当たると思われた瞬間、彼女は機敏な動作でバレルロールした。螺旋を描くように右回転したユウキは、アスナの左上方へ身体をよけると、すれ違いざまに剣を突き出す。

 

「当たれー!!」

「くうぅっ!!」

 

 光り輝いたユウキの剣は、攻撃モーションで左側に向いていたアスナの胸へと吸い込まれた。見事なクリティカルヒットだ。

 

「ソウ兄ちゃん仕込みの空戦機動は伊達じゃない!」

 

 確かにその通りだった。

 空中戦に慣れているユウキは、アスナが体勢を崩している間に流れるような動作で次の行動に移った。突進した速度を活かしてインメルマンターンをおこない高度を得ると、そこから急降下攻撃を敢行したのだ。

 

「てやあぁぁぁ―――!!」

 

 勇ましい掛け声と共に降下してきたユウキは猛然と剣を振るい、ようやく体勢を整えたアスナめがけて襲いかかった。間一髪で防御が間に合ったものの、大きな運動エネルギーが加わったその一撃はとても重く、身軽なアスナを吹き飛ばしてしまう。

 

「きゃあぁっ!!」

「今だ!!」

 

 これを好機と見たユウキは、激しい着地の衝撃に耐えてすぐさま追撃に入った。

 今こそ、会得したばかりのオリジナルソードスキル・【カプリシャス・ミーティア】を使う時だ。宗太郎によって【気まぐれな流星】と名付けてもらったその技は、名前の通り唐突に降り注いだ。

 

「はあぁぁぁぁ―――!!!」

 

 脅威の7連撃が体勢を崩したアスナに襲いかかる。これが決まれば劣勢のユウキにも勝機が見えてくる。しかし彼女は、すんなりと勝たせてくれるほど甘くはなかった。

 

「まだよ! まだ終わらないわ!!」

 

 既に3撃ほど食らいながらも体勢を持ち直したアスナは、アクアブルーの輝きと共にカドラプル・ペインを放った。稲妻の如く4連撃を繰り出し、優位だったユウキに対して果敢に反撃する。

 

「やあぁぁぁ――!!」

「なっ!?」

 

 まさかあの状態からやり返してくるとは。意外な逆襲を受けたユウキは驚愕する。アスナの反撃はそれほどまでに難易度が高かった。

 このゲームで攻撃を受けるとダメージ硬直が発生するのだが、その時間はかなり短くてソードスキルの連撃中でも多少は動ける。だからアスナもソードスキルを出せたのだ。しかしそれは、超高速で難しいコマンド入力をするようなものなので、並以下のプレイヤーでは非常に難しい動作だった。

 しかも、ユウキの誤算はそれだけで終わらなかった。

 最後の攻撃を同時に受けた瞬間、このデュエルの勝敗が決してしまったのである。彼女の敗北という結末で。

 

「そこまでっ!!」

「……ほぇ?」

「今のでユウキのHPがレッドゾーンに入ったから、アスナさんの勝ちよ」

「えぇ―――っ!?」

 

 これから追撃しようとしていたユウキは、ジャッジ役のランから敗北を告げられて驚きの声を上げる。アスナに起死回生の攻撃を許してしまったことで、惜しくも勝利を逃してしまったのだ。言い換えると、とても見応えのある接戦だったことになる。

 それは、遠巻きに観戦していた見物人たちの反応を見れば一目瞭然だ。

 

「ほんとにすげぇなあの子たち……」

「あんな動きされたらついていけねぇよ」

「っていうか、あのインプの子が最後に使ったヤツってOSSじゃねーか?」

「マジで!? 7連撃ぐらいいってたぞ!?」

 

 ユウキとアスナのデュエルに魅せられた観客は、徐々に騒ぎ出す。

 一方、注目を集めた当人たちは、彼らの会話を気にすることなく先ほどの勝負を振り返る。

 

「ちぇ。もうちょっとで勝てたのになー」

「ほんとにギリギリだったからね。でも、すごく面白かったわ」

「うん、そうだね!」

 

 少しだけ悔しがっていたユウキだったが、アスナの言葉に同意する。

 確かに、胸を張れるような良いデュエルだった。例のイメージにも負けないくらいに。

 実を言うと、先ほどソードスキルを出した時に見えたのだ。まるでこちらに合わせるように、アスナとデュエルしている場面が。

 もちろん自分の記憶ではない。装備も全然違うし、何より強すぎる。

 

「(あのボクはチート気味だからなー)」

 

 ユウキは、おぼろげながらも記憶に止めた【自分】の戦いを思い出す。イメージの中の自分はとても強くて、最後にものすごいソードスキルを使っていた。以前にも見た気がする強力な技だ。

 

「(たぶんオリジナルソードスキルだと思うけど、ボクでも使えるようになるのかな……)」

 

 なぜかあのスキルに強く惹かれてしまう。宗太郎の言うようにあれが別世界の記憶だとしたら、それだけ向こうの自分に思い入れがあるということか。まともに考えるとおかしな話だけど……。

 

「……」

「ユウキ? ボーッとしてどうしたの?」

「うぇっ!? ああ……なんでもないよ、うん」

「そう? ならいいけど……。もし、相談したいことがあるなら遠慮なく言ってね」

「うん。ありがとう、アスナ」

 

 自分のことを心配してくれるアスナの言葉がとても嬉しい。

 本当にアスナはすごいな。ボクの聞きたかった言葉をずばりと言ってくれるなんて。

 後で例の話をしようとしていたユウキは、大好きなお姉さんの優しさに心を打たれるのだった。

 

「やっぱアスナは最高だよ♪」

「え~、突然どうしたのよ?」

 

 急にユウキから抱きつかれたアスナは、くすぐったそうにしながらも柔らかい笑みを浮かべる。

 一方、彼女たちのやり取りを静かに見つめているランは、妹と同じようにさきほど見たイメージを思い返していた。ユウキの戦いを見ているうちに【強い自分】のイメージが湧き上がってきたからだ。

 

「(なんだろう。今ならわたしにも同じような戦いが出来る気がする……)」

 

 なぜそう思えるのか理由は分からないが、とにかく試してみたい。そんな気持ちになったランは、ユウキに向けてデュエルを申し込む。

 

「ねぇユウキ。今度はわたしとデュエルしようよ」

「もちろん、受けて立つと言わせてもらうよ!」

 

 アスナと話して元気になったユウキは、快く承諾する。なんとなくグラハムっぽい言い方でみんなの苦笑を誘いながら。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 1時間後。用事を済ませたキリトは、ALOにログインしてアスナたちの元に向かっていた。

 彼がホームにしているユグドラシルシティから真下にある央都アルンに転移して、そこから目的地へと飛んでいく。

 その途中で先にログインしていたグラハムと出会う。今日は勉強をするので不参加だと聞いていたが、どうやら気が変わったらしい。

 

「なんだ。結局来たのか」

「ああ。少年と深夜の逢瀬を楽しみたかったのでね」

「今すぐ帰れ」

「ふっ、この私が邪険にあしらわれるとは。相も変わらずかたくなだなぁ。もしくは、アスナと交わって男になったとでも言うのかな?」

「さりげなくとんでもない事を言うな!!」

 

 出会って早々にツッコミまくるキリト。それはそれで楽しんでいたりするのだが、何事もやりすぎると疲弊する。

 しかし、彼には特効薬がある。愛しいアスナに会えれば、この程度の疲れなどどうということはない。それがリア充の特権だ。

 そんなわけで、先を急ぐことにする。

 

「とにかく。くだらないこと言ってないで、さっさと行くぞ」

「ほう。それほどまでにアスナを求めるか。少年の心をここまで虜にするとは、やはり女は魔物だな」

「そう言うお前だって、ランとユウキに惚れてんだろ?」

「ふん。何を根拠にそんな予測を……」

「いや、見ただけで分かるから」

 

 道すがら、2人は普通に恋バナ(?)をして盛り上がる。お互いに若さ溢れる16歳なので健全な行為でもある。内容はちょっとアレだけど、微笑ましいことには違いない。

 何はともあれ、高速で飛行した2人は、好きな女性について語り合っているうちに目的地へと到着した。

 しかし、そこでは意外な状況になっていた。アスナたちがデュエルをおこなっている周囲に多くの観客が集まって大いに盛り上がっていたのである。中心を見ると、先に合流していたリーファとランがこれから戦うようだが、あの2人のデュエルがなぜこんなに注目されるのだろうか。

 キリトとグラハムは疑問に思いつつ、アスナたちの元に着陸する。

 

「あっ、キリト君」

「あれ、ソウ兄ちゃんもいる!」

「諸君! 夜の挨拶、すなわち『こんばんは』という言葉を、謹んで贈らせてもらおう」

「いや、それはもういいから」

 

 この状況が気になるキリトは、もはや恒例となったグラハムの挨拶をバッサリと切り捨て、簡潔に質問する。

 

「ところで、この騒ぎはなんなんだ?」

「あーうん。実はね……」

「姉ちゃんがちょーすごいんだよ!」

「そうなんです! ランさんがものすごく強くって、オリジナルソードスキルまで会得しちゃったんですよ!」

「えっ!?」

「なんと!」

 

 やたらと興奮しているユウキとユイが仲良く説明してくれた。どうやらこの騒ぎは、ランに原因があるらしい。

 しかし、オリジナルソードスキルまで会得してしまうとは。あまりに意外すぎる情報を聞いて、キリトとグラハムは目を丸くするのだった。




ランのパワーアップをおこなってみました。
現時点での戦闘力比較は
キリト>グラハム>アスナ>ユウキ=ラン>クライン>リーファ>エギル>リズベット>シリカ
といった感じです。
エギルはまだ出てきてませんけど、どこで出そうかなぁ?


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