ギルドの受付嬢ですが、残業が嫌なので定時に帰ろうと思います 作:can'tPayPay
ラノが王都へ去り、平和(という名の二人だけの歪な日常)が戻った第7ギルド。しかし、アリナの胸中にはまだ、一週間も放置されたことへの「不満」が燻っていました。
(――……死ね。死ね死ね死ね! 謝られたくらいで許してあげる私じゃないわよ。……。……ゼノス、あんたにも思い知らせてやるんだから。私が「誰かに向けられる」ことが、どれだけ心臓に悪いことかってね!)
アリナは、かつてない「計画」を立案しました。それは、ゼノスの前で他の男(冒険者)と親しげに接し、彼の冷徹なポーカーフェイスを嫉妬で引き裂くという、古典的かつ危険な賭けでした。
決行:窓口の「演技」
「あら、ベリクさん。今日の依頼、とっても早かったじゃない。……。……。すごいわ、流石ね(微笑)」
アリナが、窓口に来た中堅冒険者の男に、見たこともないような「営業スマイル」を振り撒きました。さらに、わざとらしく彼の手に触れるようにして依頼書を受け取ります。
「えっ、ア、アリナちゃん!? 急にどうしたんだよ、そんなに優しく……」
「ふふ、別に? ……。……。ただ、一生懸命頑張る人って、素敵だなって思っただけよ」
チラリと、隣の事務机を見やるアリナ。
そこには、無表情でペンを走らせるゼノスの姿。彼はピクリとも動かず、ただ淡々と書類を捌いています。
(――……。……。……。……何よ。もっとこう、「糸」を出すなり、ペンを折るなりしなさいよ! 余裕ぶってんじゃないわよ、このクソ事務員!!)
アリナはさらにエスカレートし、他の男にも甘い声をかけ続けました。しかし、ゼノスは一向に反応しません。ついには定時を迎え、アリナは「失敗したかしら……」と肩を落として帰路につきました。
夜の沈黙:暴かれる策略
自宅の寝室。アリナが不機嫌そうにベッドに潜り込もうとした時、背後で「カチャリ」と、眼鏡をテーブルに置く音が響きました。
「……。……。……アリナ。今日の『業務』は随分と楽しそうだったね」
ゼノスの声は、低く、冷たく、そして耳の奥にこびりつくような熱を帯びていました。
「……別に。……。……普通よ。あんたがラノとイチャついてた時に比べれば、あんなの挨拶みたいなものだわ」
「……。……。……ほう。……。……。不自然なほど高い声。不自然なほど多用された形容詞。そして、0.3秒ごとに僕の反応を伺う、その視線……」
ゼノスは音もなくアリナの背後に立ち、彼女の細い腰を「影の糸」で縛り上げるように抱き寄せました。
「……。……。……全部、計算済みだよ、アリナ。君が僕を嫉妬させようとして、あんな稚拙な演技をしていたことなんて……最初の一人目で気づいていた」
お仕置き:事務員の「執着」
「……っ!? 気づいてたなら、何とか言いなさいよ! ……。……あんた、ずっと無視して……!」
「……。……。……嫉妬? ああ、したよ。……。……狂いそうなほどにね。……。……。だからこそ、その報いは……『業務外』で、徹底的に清算させてもらうと決めていたんだ」
ゼノスはアリナをベッドへ押し倒すと、彼女の手首を頭上で固定しました。
彼の瞳は、もはや事務員の理性など微塵も感じられない、琥珀色の「獣」そのもの。
「……っ、ん、ふ……っ、何……、ゼノス、あんた……っ!」
「……。……。……。他人の男に触れたその指。……。……。優しく微笑みかけたその唇。……。……。……すべて、僕の熱で焼き切って、上書きしてあげる。……。……。……朝が来るまで、君の口から出る言葉が、僕の名前と『愛してる』以外にならないようにね」
ゼノスはアリナの首筋に深く、痕を残すように吸い付きました。
昨夜のチョコレートの時よりも激しく、執拗な愛撫。
「……。……。……。嫉妬させて、僕が壊れるのを見たかったんだろう? ……。……。望み通り、壊れてあげるよ、アリナ。……。……。……ただし、その代償は……君の体で、一滴残らず払ってもらう」
「……あぁっ、ん、んんっ……! ……。……。……バカ……、……やりすぎ……っ、はぁ……っ!」
アリナは羞恥と、自業自得の快感で悶え、ゼノスの背中に爪を立てました。
有能すぎる事務員の「計算」からは、一秒たりとも逃げられない。
不器用な挑発の代償は、腰が抜けるほどの甘く残酷な「夜の残業」によって、たっぷりと徴収されるのでした。